2次試験の勉強は何から始めるか|最初の1事例と80分の使い方
この記事の結論
- 2次試験は選ぶ試験ではなく書く試験。答え合わせで進める勉強法が使えません。
- 事例Ⅰ〜Ⅲと事例Ⅳは別の科目として扱います。前者は80分の演習、後者は毎日の計算です。
- 事例Ⅰ〜Ⅲの最初の1事例は事例Ⅲ。第1問で問われることがいちばん固いためです。
- 80分は読む・考える・書くに割ります。書く時間は解答字数から先に引きます。
中小企業診断士の2次試験(筆記)は、参考書を読み進める前に、まず80分で1事例を書き切ってみるほうが早く形になります。この記事は、そのための最初の一歩をまとめた入口です。詳しい話は、それぞれの行き先の記事に渡します。

2次試験の勉強法は1次と何が違うか
1次は選ぶ試験、2次は書く試験です。公式の正解が公表されないので、答え合わせで進める勉強法がそのまま使えません。
この記事で分かることは3つです。
- 最初に解く1事例をどう選ぶか。勧めるのは事例Ⅲで、その理由も示します。
- 80分を読む・考える・書くにどう割るか。そのうち削られるのはどこか。
- 解いたあとに何をするか。事例Ⅳだけ回し方を分けるのはなぜか。
1次試験はマークシートで、試験後に正解が公表されます。だから「解く、答えを見る、覚え直す」の繰り返しで進められました。2次試験は、ここが根本から違います。
- 試験実施機関が公表するのは出題の趣旨で、公式解答は公表されていません。
- 答えを選ぶのではなく、字数の上限の中に書きます。100字以内なら、100マスに収める練習が要ります。
- 設問の末尾の言葉(助言せよ・説明せよ・述べよ)で、答案の文末の向きが決まります。
つまり2次試験の勉強は、知識を増やす作業から、書き方を作る作業へ移ります。最初の一歩は参考書を読むことではなく、80分で1事例を書き切ってみることです。書いてみると、知識ではなく時間と字数で詰まることが分かります。
事例Ⅰ〜Ⅲの最初の1事例をどう選ぶか
事例Ⅲから始めるのを勧めます。第1問で何が問われるかがいちばん固く、初見でも読み始める足場があるためです。
設問の位置と論点の結びつきは、事例によって固さがまるで違います。事例Ⅲなら「第1問は強みと弱みを探す」と決めて読み始められます。事例Ⅰにはその足場がなく、どの位置も4割前後で割れるので、初見だと読み方の手がかりが無いまま80分が終わります。
事例Ⅳは棒がいちばん長いのですが、この節の相手ではありません。与件文(事例の会社の状況が書かれた文章)の多くが財務諸表で、問われるのは計算の手順だからです。80分を通して解く練習ではなく、毎日の計算練習として扱います。戦略がまるごと別になるので、この記事では別の節に分けました。
ただし事例Ⅲにも癖があります。2007〜2025年度の事例Ⅲ19事例では、逆接の言葉は1事例あたり平均1.4回でした。逆接より、否定や課題を表す言葉のほうが多く観測されています。なお、印をつける読み方が加点にどう効くかは測っていません。時間感覚を作る目的なら、まず近年の年度から始めるのが当サイトの提案です。
80分を読む・考える・書くに割る
この係数を固定した試算上は、書く時間は解答字数で決まります。先に引いておくと、残りが考える時間の上限になります。

| 事例 | 与件文の平均字数 | 読む | 考える | 書く |
|---|---|---|---|---|
| 事例Ⅰ | 2,559字 | 13分 | 46分 | 21分 |
| 事例Ⅱ | 2,786字 | 14分 | 48分 | 18分 |
| 事例Ⅲ | 2,409字 | 12分 | 47分 | 21分 |
この試算では、削られる余地があるのは考える時間だけです。書く時間は解答字数から、読む時間は与件文の量から決まるためです。ただし解答字数は過小に見積もっている可能性があり、ここで出した書く時間は下限として読んでください。だから、設問を読んだ直後に方針を決める練習が要ります。
読むのは2回に分けることを勧めます
上の帯と表は、与件文を2回読む前提で作っています。これは計算のための都合ではなく、当サイトが勧める読み方です。1回で読み切って書き始めると、根拠の段落を1つ落としたまま答案が進み、気づいたときには書き直す時間が残っていない、というリスクが高まります。
- 1回目は、会社の姿と話の流れをつかむために通して読む。印はほとんど付けない。
- 2回目は、設問ごとに使う段落へ印を付けるために読む。ここで答案に運ぶ材料が決まる。
- 設問を与件文より先に読むことを当サイトは提案する。ただし順序の効果は測っていないので、両方を試して自分で決める。
2回読む余裕がないと感じるときに上げるのは、読む速さではありません。1回目に印を付けすぎている場合は、1回目を「線を引かずに通す」に変えて、線を減らす方法を試してみてください。
1回目の80分は、時計の読み方を決めるだけでよい
測り方は簡単です。設問読み・与件読み・骨子づくり・清書の4つの区切りで時計を見て、終わった時刻を問題用紙の端に書きます。あとで見返すのはこの4つの時刻だけで、答案の出来は見ません。
- 1開始〜12分:設問を先に読み、そのあと与件文を読む。読み終わりの時刻を先に決めておく。
- 2〜36分:どの材料をどの設問に配るかを決める。答案の文はまだ書かない。
- 3〜59分:骨子を設問ごとに一行で書く。ここまでで方針が決まっていない設問は、後回しにすると決める。
- 4残り21分:マスを埋める。埋まらない設問があっても、時間で切り上げる。
1回目でこの通りに進むことはまずありません。それでよく、知りたいのは「自分はどこで時間を使いすぎるか」の1点です。読むのに30分かかったなら、次からは読み方を変えるか、読む範囲を決めて入ることになります。上の数字を自分の実測に置き換えると、この表は自分用の目安に変わります。
解いたあと、何をするか
解いたあとが本番です。書き終えたら同じ年度・同じ事例の解説を読み、自分の答案と突き合わせます。
- 180分を計って書き切る。途中で止めない。埋まらない設問があっても、最後まで進める。
- 2自分の答案を消さずに残す。あとで見返すのは点数ではなく、書き方の癖のほうです。
- 3その年度・その事例の解説を読み、与件文のどの言葉を答案に持ち込むはずだったかを確かめる。
- 4協会が公表した「出題の趣旨」を読み、問われていた能力と自分の答案を照らす。
同じ事例を2回解くのは無駄ではありません。1回目は時間との戦いになり、2回目でようやく書き方の練習になります。1年度ぶん4事例を一気に解くより、1事例を解いて振り返るほうが先です。
事例Ⅳは毎日やる(事例Ⅰ〜Ⅲと戦略を分ける)
事例Ⅳだけは毎日です。1日1問を毎日続ける形を当サイトは勧めます(週1回との効果を比べた測定はありません)。
事例Ⅳは、ほかの3事例と性質が違います。与件文の中心は財務諸表ですが、19年で出た74問のうち54問には字数制限があり、計算と記述の両方を練習することになります。第1問は19年のうち18年が経営分析で、出るものがほぼ決まっています。つまり何をやるかは先に分かっている科目です。
| 比べるところ | 事例Ⅰ〜Ⅲ | 事例Ⅳ |
|---|---|---|
| 回す間隔 | 週に1事例 | 毎日 |
| 1回の長さ | 80分を通して計る | 15〜20分で1論点 |
| 鍛えるもの | 与件文から材料を選び、字数に収めて書く | 計算の手順を最後の数字まで出し切る |
| 振り返り | 解説と突き合わせ、拾えなかった段落を見る | 計算のどこで折れたかだけを見る |
- 1論点を1つ選ぶ。当サイトが初学者向けに提案する順序は、経営分析→CVP→意思決定→投資判断(入りやすさを実測したものではない)。
- 215分で1問。電卓と紙で、最後の数字まで自分で出す。途中で答えを見ない。
- 3外したら、考え方で折れたのか計算で外したのかだけ記録する。両方を同じ「不正解」にしない。
- 4週末に1回だけ、80分で通しの事例Ⅳを解く。ここで時間の感覚を合わせる。
毎日にする理由は、間が空くと手順を思い出す手間が増えると考えているためです。事例Ⅰ〜Ⅲは80分を空けないと練習になりませんが、事例Ⅳは1問だけでも成立します。逆に言えば、忙しい日に守るべきはこちらだというのが当サイトの見立てです。
事例Ⅰ〜Ⅳの入口
事例ごとに問われる論点の型が違います。4つの入口から、自分が苦手な事例へ入ってください。
事例Ⅳだけは性格が違い、計算の手順を再現できるように練習する科目です。経営分析・損益分岐点・意思決定といった論点ごとの解き方は、別の記事にまとめてあります。
1次の知識が足りないと感じたら
手が止まる原因は、書き方ではなく1次の知識のことがあります。その時は分野を指定して1次の問題に戻ります。
事例Ⅰなら組織構造と人事施策、事例Ⅱならマーケティング、事例Ⅲなら生産管理が土台です。用語の意味が曖昧なまま書くと、答案が与件文と切り離された一般論になります。2次の答案に出てくる言葉で詰まったら、その分野だけ1次の問題で埋め直すのが近道です。
本記事の数値は、当サイトが一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会の公表する過去問から機械的に数えた集計です。対象は2005年度事例Ⅰ+2007〜2025年度の76事例、計77事例(論点の集計は2007年度以降の19年分)。80分の内訳と「2回読む」は運営者(中小企業診断士・登録予定)の提案で、試験実施機関が示した数字や読み方ではありません。2次試験(筆記)の公式解答は公表されていないため、当サイトでは模範解答の提示・採点は行いません。試験制度・日程は年度で変わりうるため、必ず試験実施機関の受験案内で確認してください。
この記事のまとめ
- 2次試験は選ぶ試験ではなく書く試験。答え合わせで進める勉強法が使えません。
- 事例Ⅰ〜Ⅲと事例Ⅳは別の科目として扱います。前者は80分の演習、後者は毎日の計算です。
- 事例Ⅰ〜Ⅲの最初の1事例は事例Ⅲ。第1問で問われることがいちばん固いためです。
- 80分は読む・考える・書くに割ります。書く時間は解答字数から先に引きます。
よくある質問
- 1次試験の勉強と並行して2次の勉強を始めるべきですか?
- 2次で問われる論点の土台は1次の科目にあるので、1次が固まっていない段階で答案の練習だけを重ねても、書ける中身が増えません。ただし「2次がどういう試験か」を知るのは早いほうが得です。80分で1事例を書き切る体験を一度だけしておくと、1次の勉強で何を覚えるべきかの見え方が変わります。
- 模範解答はどこで手に入りますか?
- 2次試験(筆記)は公式の解答が公表されていません。試験実施機関が試験後に公表するのは「出題の趣旨」です。市販の書籍や予備校が出しているのは各社の解答例で、公式のものではありません。当サイトも模範解答の提示は行わず、出題の趣旨と与件文を手がかりに、答案に何を入れるかを整理する形をとっています。
- 解答用紙と筆記用具は何を用意すればよいですか?
- 本番の解答用紙は方眼のマス目で、字数はマスで数えます。練習では市販の原稿用紙か、当サイトの事例演習のマス目を使うと本番の感覚に近くなります。筆記用具は、書き直しの多い試験なので、消しやすい鉛筆かシャープペンシルと、よく消える消しゴムを複数そろえておくと安心です。ただし持ち込みが認められる筆記用具や時計の条件は年度で変わるため、必ず試験実施機関の受験案内で確認してください。

