事例Ⅳ第1問の経営分析|19年で18回出た設問の指標の選び方
この記事の結論
- 事例Ⅳの第1問は19年中18年が経営分析。4事例で最も型を準備しやすい設問です。
- 収益性・効率性・安全性から1つずつ選ぶと、3つの指標の意味が重なりにくくなります。
- 18問すべてに字数制限があります。計算より、選んだ理由を字数に収める練習が要ります。
事例Ⅳは計算科目だと思われがちですが、第1問に限れば計算そのものは短い時間で終わります。本記事では計算3分を演習上の目安として提案します(本番の所要時間を実測したものではありません)。時間を使うのは、12通りほどある指標のどれを選び、なぜそれを選んだのかを限られた字数で説明する部分です。ただし、理由としてどんな文章を書いたかと得点の関係は、当サイトでは測っていません。ここでは2007〜2025年度の19年分の出題実績を数えたうえで、令和6年度の財務諸表を使って主な指標を実際に計算し、選び方の手順を組み立てます。数値は試験実施機関が公表している問題PDFから読み取り、貸借対照表と損益計算書の合計が合うことを確かめたものです。
第1問は、19年で18回が経営分析
ここは本番で見極める設問ではなく、型を先に作っておける設問です。準備しておくと本番で迷いにくい、というのが当サイトの見立てです。
事例Ⅳ全体では19年で74問が出題され、そのうち54問(約4分の3、73%)に字数制限があります。計算科目としてだけ準備すると、計算以外の準備が足りなくなります。
第1問はその代表です。指標を出したあとに、必ず説明を書かせます。
事例Ⅳの経営分析:指標は3つの区分から1つずつ選ぶ
令和6年度の事例では、当サイトは収益性・効率性・安全性から1つずつ選びます。同じ区分から2つ選ぶと、指摘の中身が重なりやすくなります。
- 収益性は「売上に対してどれだけ利益が残るか」。売上高総利益率・売上高営業利益率・売上高経常利益率。
- 効率性は「投じた資産をどれだけ売上に変えたか」。総資本回転率・有形固定資産回転率・棚卸資産回転率・売上債権回転率。
- 安全性は「支払いに詰まらないか」。自己資本比率・流動比率・当座比率・負債比率・固定長期適合率。
区分をまたいで選ぶ理由は、採点者に「この会社の姿を3方向から見た」と伝わりやすくなるためです。収益性を2つ選ぶと、どちらも「利益が薄い」という同じ話になりやすくなります。
令和6年度の財務諸表で実際に計算する
12指標を計算すると、D社は有形固定資産回転率と短期の支払能力で上回り、収益性と資本構成(借入と自己資本の割合)で下回る姿が出ます。
| 区分 | 指標 | D社 | 同業他社 | D社は |
|---|---|---|---|---|
| 収益性 | 売上高総利益率 | 59.01% | 70.08% | 劣る |
| 収益性 | 売上高営業利益率 | 1.01% | 4.22% | 劣る |
| 収益性 | 売上高経常利益率 | 3.25% | 5.17% | 劣る |
| 効率性 | 総資本回転率 | 1.76回 | 1.73回 | ほぼ同じ |
| 効率性 | 有形固定資産回転率 | 11.26回 | 6.74回 | 優れる |
| 効率性 | 棚卸資産回転率 | 20.69回 | 214.44回 | 劣る |
| 効率性 | 売上債権回転率 | 21.19回 | 38.99回 | 劣る |
| 安全性 | 自己資本比率 | 14.15% | 35.67% | 劣る |
| 安全性 | 流動比率 | 243.32% | 119.19% | 優れる |
| 安全性 | 当座比率 | 210.20% | 106.14% | 優れる |
| 安全性 | 負債比率 | 606.94% | 180.37% | 劣る |
| 安全性 | 固定長期適合率 | 35.19% | 83.47% | 優れる |
与件文と結び付けやすい優位指標の候補は有形固定資産回転率で、D社は同業他社の1.7倍です。逆に売上高営業利益率は4分の1以下でした。この2つは選ぶ候補になります。
安全性は、強みと弱みが同居することがある
D社は流動比率243%と短期の支払能力が高い一方、自己資本比率は14%です。安全性を1語で片づけると読み違えます。
手元の現金預金が厚いので、目先の支払いには余裕があります。ただし資産の大半を借入でまかなっており、長期借入金は純資産の3倍を超えます。短期の支払能力は高い一方、資本構成に課題がある形です。
指標を1つだけ見て「安全性は高い」と書くと、この構図を取り違えます。安全性から選ぶときは、短期の支払能力を見る指標なのか資本構成を見る指標なのかを、自分で言えるようにしておいてください。
選んだあと、字数にどう収めるか
書く順番を固定します。指標名、値、そうなっている理由の順で、理由は与件文の言葉を使います。
- 13区分から候補を1つずつ出す。差が大きい指標を優先し、計算しやすさでは選ばない。
- 2その差が生まれた理由を、与件文のどの記述で説明できるか確かめる。説明できない指標は落とす。
- 3指標名と値を先に書き、残りの字数で理由を書く。理由が入らないなら指標を選び直す。
時間を使うのは、差の理由を与件文から探す作業です。ここに配分する時間を先に決めておくと、第2問以降に手が回らなくなる事故を防げます。目安の一例としては、計算に3分・理由探しに7分と決めて演習してみてください。何分が自分に合うかは、過去問を何回か解いて自分で決めます。
この記事で言えないこと
- 2次試験は正解が公表されません。ここで示したのは指標の選び方の手順で、模範解答ではありません。
- 出題実績は2007〜2025年度の19事例を数えたものです。第1問が経営分析でなかった年が1年あります。
- 計算に使った数値は令和6年度の1事例分です。他の年度では、優れている指標と劣っている指標の並びが変わります。
- 指標の選び方と得点の関係は、当サイトの分析では相関までで、因果は確かめられていません。理由としてどんな文章を書いたかは測っていません。
- 解く順番、設問ごとの所要時間、設問別の配点も測っていません。3区分から1つずつ選ぶ形と、計算3分・理由探し7分という時間配分は当サイトの見立てです。
本記事の集計と計算は当サイトの独自のものです。問題そのもの(与件文・設問文)の著作権は一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会に帰属します。全文は試験実施機関の公表資料でご確認ください。
この記事のまとめ
- 事例Ⅳの第1問は19年中18年が経営分析。4事例で最も型を準備しやすい設問です。
- 収益性・効率性・安全性から1つずつ選ぶと、3つの指標の意味が重なりにくくなります。
- 18問すべてに字数制限があります。計算より、選んだ理由を字数に収める練習が要ります。
よくある質問
- 12指標のうち、どれを優先して計算すべきですか?
- 当サイトが演習時の初手として提案するのは4指標です。収益性から売上高営業利益率、効率性から有形固定資産回転率と棚卸資産回転率、安全性から自己資本比率を先に出すと、会社の姿の見当がつきます。この4つを優先する効果を検証したわけではないので、本来の手順は主要な指標を計算し、数値の差と与件文との対応で絞ることです。そのうえで、差が大きかった区分だけ同じ区分の残りを計算して選び直します。12指標を毎回すべて出す必要はありませんが、区分をまたいで3つ選ぶという形は崩さないでください。
- 指標はいくつ覚えれば足りますか?
- 本記事で扱うのは、収益性3・効率性4・安全性5の計12指標です。この12個で全年度に足りるかどうかは検証していないので、まずはここから始める形で示しています。覚える数を増やすより、区分をまたいで選ぶ習慣のほうが効きます。
- 計算が合っているか確かめる方法はありますか?
- 貸借対照表なら負債合計と純資産合計の和が資産合計に一致するか、損益計算書なら各段階の利益が上から順に計算どおりかを確かめます。令和6年度の場合は負債2,622と純資産432の和が資産合計3,054に一致します。読み取りを間違えていれば、この検算で気づけます。

