事例ⅣのCVP・損益分岐点|製品が2つになった時点で解き方が変わる
この記事の結論
- 事例ⅣのCVPは19年で10回。ほとんどの年で製品が2つ以上あります。
- 販売数量の比でひとまとまりにすると、1製品と同じ形に戻せます。
- 切り上げの指示があるときは、切り上げた数量で目標に届くかを必ず確かめます。
損益分岐点の公式は「固定費÷限界利益率」ですが、事例Ⅳでこの形のまま解ける年はほとんどありません。製品が2つあり、限界利益率が製品ごとに違うからです。ここでは令和7年度の第2問を使って、販売数量の比でひとまとまりの箱を作り、1製品の問題に戻す手順を示します。数値は試験実施機関が公表している問題PDFから読み取り、計算は手計算と総当たりの2通りで確かめています。
製品が2つあると、限界利益率が1つに決まらない
令和7年度の第2問は限界利益率が製品Xで61.7%、製品Yで75.0%。会社全体の率は、売れ方の比で変わります。
| 項目 | 製品X | 製品Y |
|---|---|---|
| 販売価格 | 600千円 | 560千円 |
| 1基あたり変動費 | 230千円 | 140千円 |
| 1基あたり限界利益 | 370千円 | 420千円 |
| 限界利益率 | 61.7% | 75.0% |
| 個別固定費 | 45,000千円 | 35,000千円 |
限界利益率が違うので、会社全体の率は「Xが何基、Yが何基売れたか」で動きます。ここで片方の率を使うと答えが合いません。
販売数量の比で、ひとまとまりの箱を作る
Xを2基とYを3基で1つの箱と考えます。箱の売上と箱の限界利益が決まれば、1製品の問題に戻ります。
- 1箱の限界利益は、2基×370千円+3基×420千円=2,000千円。
- 2箱の売上は、2基×600千円+3基×560千円=2,880千円。
- 3固定費は個別45,000+35,000と共通400,000で、合計480,000千円。
- 4必要な箱の数は480,000÷2,000=240箱。Xは480基、Yは720基。
- 5損益分岐点売上高は240箱×2,880千円=691,200千円。
検算ができます。480基×370千円+720基×420千円=480,000千円で、固定費とちょうど一致します。ここが合わなければ、比の取り方か固定費の集計を間違えています。
比が「金額ベース」で与えられる年もあります。その場合は箱の中身を金額で組み、数量に直すのは最後です。数量ベースか金額ベースかを読み違えると、答えが大きくずれます。
コストが上がったら、いくつ売れば届くか
変動費5%増・共通固定費10%増の条件で目標利益50,000千円を出すには、製品Yを947基売る必要があります。
- 1変動費が5%上がる。Xは241.5千円、Yは147千円になり、限界利益はXが358.5千円、Yが413千円。
- 2共通固定費が10%上がって440,000千円。個別固定費80,000千円と合わせて520,000千円。
- 3必要な限界利益は520,000+50,000=570,000千円。Xを500基売ると358.5×500=179,250千円。
- 4残り390,750千円をYでまかなう。390,750÷413=946.1基なので、切り上げて947基。
切り上げの指示があるときは、切り上げた数量で目標に届くかを確かめます。946基だと利益は49,948千円で50,000千円に届きません。947基で50,361千円になります。
値上がり率は変動費と固定費で違います。両方に同じ率を掛けると答えが変わるので、どちらに何%かを資料から拾い直してから計算に入ってください。
制約が1つ入ると、CVPではなくなる
令和7年度の第2問は設問3で作業時間の上限が入り、そこから先は意思決定会計の解き方になります。
設問3では組み立ての直接作業時間が年間700時間までと決められ、さらに製品Xの割合を25%以上に保つ条件が加わります。この時点で「いくつ売れば損益分岐点か」ではなく「限られた時間をどちらに配るか」の問題です。
解き方も変わります。1基あたりの限界利益ではなく、1時間あたりの限界利益で比べます。この年はXが717千円、Yが1,676.7千円で、Yを優先することになります。
この記事で言えないこと
- 2次試験は正解が公表されません。ここに書いた数値は当サイトが計算したもので、公式の解答ではありません。
- 計算は手計算と総当たりの2通りで確かめ、同じ結果になることを確認しています。ただし設問の読み取り方が違えば答えも変わります。
- 扱ったのは令和7年度の1事例です。CVPが出た10回のうち、字数制限つきの説明を求められた年が4回あります。計算だけでは終わりません。
本記事の集計と計算は当サイトの独自のものです。問題そのもの(与件文・設問文)の著作権は一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会に帰属します。全文は試験実施機関の公表資料でご確認ください。
この記事のまとめ
- 事例ⅣのCVPは19年で10回。ほとんどの年で製品が2つ以上あります。
- 販売数量の比でひとまとまりにすると、1製品と同じ形に戻せます。
- 切り上げの指示があるときは、切り上げた数量で目標に届くかを必ず確かめます。
よくある質問
- 損益分岐点の公式だけ覚えれば足りますか?
- 足りません。事例ⅣのCVPは製品が2つ以上ある年がほとんどで、限界利益率が1つに決まらないためです。販売数量の比でひとまとまりにして1製品の形に戻す手順のほうが、公式より使う場面が多くなります。
- 個別固定費と共通固定費は分けて扱いますか?
- 会社全体の損益分岐点を求めるときは、どちらも固定費として合計します。分ける必要があるのは、製品ごとの採算や事業部の評価を問われたときです。令和7年度の設問1では、45,000千円と35,000千円と400,000千円をすべて足して480,000千円としています。
- 計算の途中で端数が出たらどうしますか?
- 設問の指示に従います。令和7年度は「割り切れない場合には、最終的な解答において小数以下を切り上げること」とあるので、途中では丸めず最後に切り上げます。切り上げたあとで目標に届くかを検算すると、切り上げか切り捨てかの取り違えに気づけます。

