事例Ⅳの出題の傾向と対策|19年74問の型と、差がつく場所
この記事の結論
- 第1問は19年中18年が経営分析。出るものが4事例でいちばん読める科目です。
- 74問中54問に字数制限。計算だけでは半分以上の設問が埋まりません。
- 空欄ゼロの申告が72%。「まず埋める」は多くの人がすでにやっています。
- 全問埋めた人の4割が60点未満。差がつくのは埋めたかどうかの先です。
事例Ⅳは、4事例のなかで最も「出るものが読める」科目です。平成19年度から令和7年度までの74設問を数えると、第1問はほぼ毎年が経営分析で、計算の2問と記述の1問が続く並びが近年は固定的でした。この記事は前半で出題の型を実測で示し、後半で再現答案の空欄率から「どこで差がついているか」を見ます。対策の部分には、実測なのか当サイトの見立てなのかを毎回書き分けました。
19年74問の型マップ
第1問は19年中18年が経営分析。計算2問をはさんで最終問に記述、という並びが近年は固定的です。
| 論点 | 設問数 | 出た年度 | 配点の幅 | 字数制限あり |
|---|---|---|---|---|
| 経営分析 | 18問 | 18年度 | 20〜40点 | 18問 |
| 投資判断 | 17問 | 15年度 | 15〜40点 | 7問 |
| セグメント・意思決定 | 11問 | 9年度 | 15〜30点 | 9問 |
| CVP・損益分岐点 | 10問 | 10年度 | 18〜34点 | 4問 |
| リスク管理 | 10問 | 9年度 | 12〜30点 | 9問 |
| 企業価値・M&A | 4問 | 4年度 | 20〜31点 | 4問 |
| 資金調達 | 3問 | 3年度 | 20〜45点 | 3問 |
| キャッシュフロー | 1問 | 1年度 | 35〜35点 | 0問 |
最も多いのは経営分析で、19年のうち18年に出ています。しかもその全部が第1問です。第1問が経営分析でなかったのは平成24年度の1度だけで、このときは投資判断が置かれました。
次に多いのが投資判断17問、セグメント・意思決定11問、CVP・損益分岐点10問、リスク管理10問です。上位5論点で74問中66問を占めます。準備の対象は、事実上この5つに絞れます。
近年5年(令和3〜7年度)はさらに形が固まっています。第1問が経営分析、第2問と第3問がCVPと投資判断のペア、最終問に記述という並びです。第2問と第3問はどちらが先に来るかだけが年で入れ替わります。
設問数は4問が基本です。3問だったのは平成24年度と平成25年度の2年だけで、それ以外の17年はすべて4問でした。
計算科目ではない、が対策の前提
74問のうち54問(73%)に字数制限があります。第1問と最終問は、どちらも9割以上が記述です。
上の表の右端の列を見ると、経営分析は18問すべてに字数制限が付いています。リスク管理も10問中9問、セグメント・意思決定も11問中9問です。純粋な計算だけで終わるのは、実質的に真ん中の2問だけになります。
つまり対策は計算と記述の2本立てになります。電卓の練習だけを積むと、第1問と最終問で手が止まります。この配分の詳しい実測は別の記事にまとめました。
「まず埋める」は、もう全員やっている
再現答案677セットのうち489セット(72.2%)が空欄ゼロの申告でした。埋めること自体は、もう差のつく場所ではありません。
空欄が増えると得点の分布は確実に下へずれます。年度ごとの差を吸収して見ると、空欄率が10ポイント増えるごとに平均で3.9点低いという関係でした。方向ははっきりしています。
ただし関係は弱いものです。相関は−0.246で、空欄率で説明できる得点の差は6%しかありません。「1問埋めれば約4点増える」という読み替えもできません。これは関連の記述であって、予測ではないためです。
逆側を見ると、もっとはっきりします。空欄ゼロと申告した489セットのうち196セット(40.1%)が60点未満、17セット(3.5%)が40点未満でした。全部埋めても、点が来るとは限りません。
これは因果ではありません。空欄が多い人は準備不足や時間切れである可能性が高く、「空欄そのものが点を下げた」のか「実力が届かないから空欄も点の低さも起きた」のかを、このデータでは分けられません。
捨て問は、みんな同じ場所
空欄は答案全体に散らばりません。特定の1〜2問に集中します。最も高い設問では答案の51.3%が空欄でした。
令和4年度の第3問設問3は、答案の半分が空欄でした。解けなかったのは自分だけではありません。上位5つはいずれも計算2問の後半の小問で、時間切れになりやすい位置にあります。
ここから言えるのは、全部を追わない判断が実際に取られているということです。ただし空欄率30%以上の帯は平均46.62点で、60点以上に届いたのは13件中1件でした。落とす対象は1〜2問までに収めるのが妥当です。
得点帯ごとの、次の1手
40点台と50点台のあいだには崖があります。まず狙うのは、毎年ほぼ必ず出る型と、記述の部分点です。
| いまの得点帯 | 起きていそうなこと | 次の1手 |
|---|---|---|
| 40点台 | 計算2問をほぼ落とし、記述も短く終わっている | 第1問の経営分析を確実にする。19年中18年で第1問に置かれ、字数制限も18問すべてに付く |
| 50点台 | 型は分かるが、計算の詰めや条件の読み落としで削られる | 上位5論点を、小問の最後の数字まで出し切る練習に絞る |
| 60点台以上 | 型は取れている。残るのは配点の大きい設問の取りこぼし | 配点30点前後の設問を1つ選び、後半の小問まで到達する形を作る |
40点台をまず抜ける価値は、別の記事の実測が示しています。事例Ⅳが40点台だった人の合格率は5.6%、50点台では50.0%でした。ここを越えるかどうかで景色が変わります。
記述については、実測でひとつだけ言えることがあります。記述設問の平均が56字までの帯は平均59.7点、64〜73字の帯は64.3点でした。10字ごとにおよそ1.6点という弱い関係です。
ただし相関は0.189で、説明力は3.6%しかありません。「たくさん書けば点になる」とは言えません。言えるのは「短く済ませない」までです。字数制限がある以上、上限も伸びません。
80分の回し方(当サイトの見立て)
ここから先は実測ではありません。配点と型の分布から置いた目安で、得点との関係を測ったものではありません。
- 1開いたら4問の配点と字数制限を先に確認する。近年は第1問25点前後、第2問と第3問が計算、最終問に記述という並び。
- 2第1問の経営分析を先に固める。19年中18年で第1問に置かれ、字数制限も18問すべてに付いている型。
- 3計算2問は小問の最初から順に取る。空欄が集中するのは後半の小問なので、そこは最後に回す。
- 4最終問の記述に時間を残す。リスク管理が19年中9回で、計算を伴わない年も少なくない。
この順序は「配点の大きい順」ではなく「確実に取れる順」で並べています。上位5論点で74問中66問を占めるので、型の練習の対象を広げる必要はありません。
この記事で言えないこと
- 本記事の得点データは、インターネット上に公開されている得点開示・再現答案を集計したものです。個人が特定できない集計値のみを掲載し、特定の提供元の名指しはしていません。
- 空欄の分析の母集団は事例Ⅳの答案677セットです。設問ごとの空欄が分かる収集分だけに絞ったもので、別の記事で使った3,085件とは母集団の作り方が違います。
- 空欄は本人の申告です。再現答案は記憶による再現なので、「空欄だった」と書くかどうかに揺れが残ります。
- 令和7年度は空欄がほとんど記録されていません(202セット中201セットが空欄ゼロ)。年度をまたいだ空欄率の比較はできません。
- 書いた内容が合っていたかは測れません。公式解答が無く、得点も事例ごとの1つだけだからです。「埋めたが誤答」と「埋めて正答」を区別できません。
- 設問ごとの得点は存在しません。「この設問を埋めると何点得か」は、この記事では一切言っていません。
- 空欄と得点の関係は相関であって因果ではありません。空欄率で説明できるのは得点の差の6%です。
- 論点のラベルは当サイトが1問ずつ付けたものです。分類の粒度が違えば、設問数も年度数も変わります。
本記事の集計は当サイトの独自のものです。問題そのものの著作権は試験実施機関に帰属します。2次試験(筆記)の公式解答は公表されていないため、当サイトでは模範解答の提示・採点は行いません。
この記事のまとめ
- 第1問は19年中18年が経営分析。出るものが4事例でいちばん読める科目です。
- 74問中54問に字数制限。計算だけでは半分以上の設問が埋まりません。
- 空欄ゼロの申告が72%。「まず埋める」は多くの人がすでにやっています。
- 全問埋めた人の4割が60点未満。差がつくのは埋めたかどうかの先です。
よくある質問
- 事例Ⅳは何から手をつければよいですか?
- 第1問の経営分析からです。19年のうち18年で第1問に置かれ、字数制限も18問すべてに付いています。出題の型がいちばん固く、記述の練習も同時にできるためです。そのうえで投資判断とCVP・損益分岐点に広げると、上位5論点で74問中66問を覆えます。
- 解けない設問は空欄でよいのでしょうか、それとも埋めるべきですか?
- 再現答案677セットでは、空欄ゼロの申告が72.2%と大多数でした。埋めること自体はすでに多くの人がやっており、そこで差はつきません。一方で空欄率30%以上の帯は平均46.62点、60点以上に届いたのは13件中1件です。落とすのは1〜2問までに収めるのが妥当だと考えます。
- 全部埋めれば60点は取れますか?
- 取れるとは限りません。空欄ゼロと申告した489セットのうち、196セット(40.1%)が60点未満、17セット(3.5%)が40点未満でした。空欄率で説明できる得点の差は6%しかありません。差がついているのは埋めたかどうかではなく、その中身のほうです。

