事例Ⅳの出題の傾向と対策|19年74問の型と、差がつく場所
この記事の結論
- 第1問は19年中18年が経営分析。出るものが4事例でいちばん読める科目です。
- 74問中54問に字数制限。計算だけでは半分以上の設問が埋まりません。
- 字数が0の設問が無い答案が97.5%。「まず埋める」はほぼ全員がやっています。
- 全問埋めた人の44.7%が60点未満。差がつくのは埋めたかどうかの先です。
事例Ⅳは、4事例のなかで最も「出るものが読める」科目です。平成19年度から令和7年度までの74設問を数えました。近年は、計算の2問と記述の1問が続く並びが固定的です。この記事は前半で出題の型を実測で示し、令和8年度に向けて手をつける順番を置いたうえで、後半で再現答案の空欄率から「どこで差がついているか」を見ます。対策の部分には、実測なのか当サイトの見立てなのかを毎回書き分けました。
事例Ⅳの出題の傾向と対策:19年74問の型マップ
第1問は19年中18年が経営分析。計算2問をはさんで最終問に記述、という並びが近年は固定的です。
| 論点 | 設問数 | 出た年度 | 配点の幅 | 字数制限あり |
|---|---|---|---|---|
| 経営分析 | 18問 | 18年度 | 20〜40点 | 18問 |
| 投資判断 | 15問 | 14年度 | 20〜40点 | 5問 |
| CVP・損益分岐点 | 11問 | 11年度 | 18〜34点 | 5問 |
| セグメント・意思決定 | 11問 | 9年度 | 15〜30点 | 9問 |
| リスク管理 | 11問 | 10年度 | 12〜30点 | 10問 |
| 企業価値・M&A | 4問 | 4年度 | 20〜31点 | 4問 |
| 資金調達 | 3問 | 3年度 | 20〜45点 | 3問 |
| キャッシュフロー | 1問 | 1年度 | 35〜35点 | 0問 |
表で最も多い経営分析は、18問すべてが第1問に置かれています。第1問が経営分析でなかったのは平成24年度の1度だけで、このときは投資判断が置かれました。
次に多いのが投資判断(設備投資のNPV)15問、セグメント・意思決定(どの製品や部門を残すかの選択)11問、CVP・損益分岐点(利益計画)11問、リスク管理11問です。上位5論点で74問中66問を占めます。当サイトは、まずこの5論点から練習することを勧めます(残る3論点を捨ててよい、とまでは測っていません)。
近年5年(令和3〜7年度)はさらに形が固まっています。第1問が経営分析、第2問と第3問がCVPと投資判断のペア、最終問に記述という並びです。第2問と第3問はどちらが先に来るかだけが年で入れ替わります。
設問数は4問が基本です。3問だったのは平成24年度と平成25年度の2年だけで、それ以外の17年はすべて4問でした。
令和8年度に向けて、どこから手をつけるか
直近5年は、経営分析・CVP・投資判断の3つが毎年出ています。読めないのは最終問だけで、意思決定・リスク管理・資金調達が入れ替わりで出ています。
| 論点 | 19年で出た年 | 直近5年(令和3年度→令和7年度) | 来年出る見込み | 見込みの幅 |
|---|---|---|---|---|
| 経営分析 | 18年 | ●●●●● | 89% | 71〜99% |
| 投資判断 | 14年 | ●●●●● | 72% | 49〜91% |
| CVP・損益分岐点 | 11年 | ●●●●● | 67% | 43〜87% |
| セグメント・意思決定 | 9年 | ●・・●・ | 48% | 25〜71% |
| リスク管理 | 10年 | ・●●・・ | 47% | 24〜70% |
| 企業価値・M&A | 4年 | ・・・・・ | 26% | 8〜48% |
| 資金調達 | 3年 | ・・・・● | 22% | 6〜44% |
| キャッシュフロー | 1年 | ・・・・・ | 12% | 2〜31% |
見込みは、何も分からない状態から始めて、1年ごとに「出た」「出なかった」で少しずつ見積もりを動かして出しました。1次試験の頻出度と同じく、古い年ほど軽く数えています。
この数字は、実際の出方より控えめに出ます。たとえばCVPは直近5年すべてで出ているのに、見込みは6割台です。平成の頃に出なかった年も数えているためです。見込みの幅が広いのも、19年分しかデータが無いからです。数字の細かな上下より、直近5年の●の並びを重く見てください。
| 手をつける順 | 論点・設問 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 最優先 | CVPと投資判断の、前半の小問 | 直近5年で毎年出ている。再現答案の統計では、ここの計算が合っていた人ほど合計点が高かった(令和6・7年度とも) |
| 2 型だけは押さえる | 最終問の3候補(意思決定・リスク管理・資金調達) | どれが出るかは読めない。3つとも型は少ないので、各記事の型と解答例を1回ずつ通しておく |
| 3 落とさない程度に | 第1問の経営分析 | ほぼ毎年出るが、多くの人が書けるため合計点の差になりにくかった。時間をかけすぎない |
| 4 後回し | 投資判断の後半の難しい小問/企業価値・キャッシュフロー計算書 | 後半の小問は正解した人が少なく、合計点との関係が測れなかった。企業価値などは直近5年で出ていない |
「2」を経営分析より上に置いたのは、最終問が毎年20点前後あり、型を一度も見ていない論点が出ると白紙に近くなるからです。経営分析はすでに多くの受験生が得点できていて、ここで上乗せできる点は限られます。ただし事例Ⅳが40点台の人は、後の節のとおり第1問を先に固めてください。どちらも見立てで、得点を設問ごとに測ったものではありません。
計算科目ではない、が対策の前提
74問のうち54問(73%)に字数制限があります。第1問と最終問は、どちらも9割以上が記述です。
上の表の右端の列を見ると、経営分析は18問すべてに字数制限が付いています。リスク管理も11問中10問、セグメント・意思決定も11問中9問です。計算中心の設問は第2問・第3問に置かれる傾向があります。ただし令和5年度の第2問・第3問には記述があり、平成24年度は第1問が計算でした。
つまり対策は計算と記述の2本立てになります。電卓の練習だけを積むと、第1問と最終問で手が止まります。この配分の詳しい実測は別の記事にまとめました。
「まず埋める」はすでにほぼ全員が実践済み
再現答案677セットのうち660セット(97.5%)に、字数が0の設問が1つもありませんでした。埋めること自体では差がつきにくい、というのが当サイトの見立てです。
この標本では、空欄がある側の平均が50.06点、無い側が61.61点で、11.5点の差でした。ただし空欄がある答案自体が17件(2.5%)しかなく、この差は少ない件数の上に乗っています。
逆側を見ると、もっとはっきりします。空欄が無かった660セットのうち295セット(44.7%)が60点未満、29セット(4.4%)が40点未満でした。全部埋めても、点が来るとは限りません。
ただし、この関連はごく弱いものです。相関は−0.128で、空欄率で説明できる得点の差は2%足らずです。そのうえ因果でもありません。空欄が多い人は準備不足や時間切れである可能性が高く、「空欄そのものが点を下げた」のか「実力が届かないから空欄も点の低さも起きた」のかを、このデータでは分けられません。
空欄そのものが、この標本ではほとんど無い
677セットの6,325設問のうち、字数が0だったのは22設問(0.35%)でした。最も高い設問でも、その年の答案の10.3%です。
空欄が1件でもあったのは令和2・5・6・7年度だけで、平成30年度・令和元年度・令和3年度・令和4年度は字数が0の設問が1つもありませんでした。空欄が特定の小問に集中していると言えるほどの件数は、この標本には残っていません。
ここから言えるのは、空欄として記録に残ったものがまれだということまでです。空欄があった17件の平均は50.06点で、60点以上に届いたのは2件でした。落とす対象は1〜2問までに収める、というのが当サイトの目安です(件数が少ないので、この目安は実測ではなく見立てです)。
得点帯ごとの、次の1手
この標本では、40点台と50点台のあいだで合格率が大きく変わりました。まず狙うのは、毎年ほぼ必ず出る型と、記述答案を最後まで完成させることです。
| いまの得点帯 | 起きていそうなこと | 次の1手 |
|---|---|---|
| 40点台 | 計算2問をほぼ落とし、記述も短く終わっている | 第1問の経営分析を確実にする。19年中18年で第1問に置かれ、字数制限も18問すべてに付く |
| 50点台 | 型は分かるが、計算の詰めや条件の読み落としで削られる | 上位5論点を、小問の最後の数字まで出し切る練習に絞る |
| 60点台以上 | 型は取れている。残るのは配点の大きい設問の取りこぼし | 配点30点前後の設問を1つ選び、後半の小問まで到達する形を作る |
その合格率は別の記事の実測です。令和6年度の106人のうち、事例Ⅳが40点台だった18人では5.6%、50点台の24人では50.0%でした。小さな標本なので幅はありますが、この標本では大きな差が見られました。
記述については、実測でひとつだけ言えることがあります。日本語を含む答案の1設問あたりの平均字数で677セットを4つの帯に分けると、69字までの帯は平均60.28点、106字を超える帯は65.20点でした。
ただし間の2つの帯は58.01点・61.87点で、字数が増えるほど点が上がる並びにはなっていません。相関も0.194(字数で説明できる得点の差は3.8%)で、字数の数え方を変えると0.17〜0.22の幅で動きます。差はほとんど見えない、という程度の数字です。言えるのは「最も長い帯の平均が他より高かった」までで、最適な字数も因果も分かりません。空欄で出さずに書き切る、というのが当サイトの見立てです。
80分の回し方(当サイトの見立て)
ここから先は実測ではありません。配点と型の分布から置いた目安で、得点との関係を測ったものではありません。
- 開いたら4問の配点と字数制限を先に確認する。近年は第1問25点前後、第2問と第3問が計算、最終問に記述という並び。
- 第1問の経営分析は型が固い。19年中18年で第1問に置かれ、字数制限も18問すべてに付いている。
- 計算2問は小問が積み上がる。どこで見切るかを、自分の演習で分数を測って決めておく。
- 最終問の記述に時間を残す。リスク管理が19年中10回で、記述を求める設問が多い。
解く順序に正解はありません。当サイトには本番の解答順を測ったデータが無く、どの順が得かも答案には残らないためです。順序は過去問を3回分ほど解いて、自分の実測で決めてください。決め方の手順は別の記事にまとめました。
この記事で言えないこと
データの出どころ
集計方法: 答案の字数が0の設問を空欄と数えました。母集団はAAS収集の再現答案677セット(2018〜2025年度)です。集計は当サイトのスクリプトで再現でき、2026-09-14に元の集計が再現できなかったため差し替えました。
- 本記事の得点データは、インターネット上に公開されている得点開示・再現答案を集計したものです。個人が特定できない集計値のみを掲載し、特定の提供元の名指しはしていません。
- 空欄の分析の母集団は事例Ⅳの答案677セット(AAS収集分のみ)です。設問ごとの空欄が分かる収集分だけに絞りました。関連記事「事例Ⅳは合否をどれだけ動かすか」の開示得点3,085件や、解答の一致率を見た378件とは別の母集団です。
- 論点のラベルは当サイトが1問ずつ付けたものです。分類の粒度が違えば、設問数も年度数も変わります。
空欄の数え方に残る揺れ
- 空欄は「答案の字数が0」で数えています。表の枠だけを書いた答案は字数が0にならないので空欄には入らず、計算過程を書かずに数字だけを書いた答案も空欄には数えていません。
- 再現答案は記憶による再現です。本番で空欄だったかどうかと、投稿に残っているかどうかは一致しません。
- 令和2年度の第2問設問2は、収集分の全39件で答案の本文が空でした。取り込みの欠落と判断し、空欄には数えていません。
- 令和7年度は空欄がほとんど記録されていません(202セット中201セットが空欄ゼロ)。年度をまたいだ空欄率の比較はできません。
この記事では測れないこと
- 書いた内容が合っていたかは測れません。公式解答が無く、得点も事例ごとの1つだけだからです。「埋めたが誤答」と「埋めて正答」を区別できません。
- 設問ごとの得点は存在しません。「この設問を埋めると何点得か」は、この記事では一切言っていません。
- 空欄と得点の関係は相関であって因果ではありません。空欄率で説明できるのは得点の差の2%足らずです。
本記事の集計は当サイトの独自のものです。問題そのものの著作権は試験実施機関に帰属します。試験実施機関が試験後に公表するのは「出題の趣旨」だけで、公式解答は公表されていません。そのため当サイトでは模範解答の提示・採点は行いません。
この記事のまとめ
- 第1問は19年中18年が経営分析。出るものが4事例でいちばん読める科目です。
- 74問中54問に字数制限。計算だけでは半分以上の設問が埋まりません。
- 字数が0の設問が無い答案が97.5%。「まず埋める」はほぼ全員がやっています。
- 全問埋めた人の44.7%が60点未満。差がつくのは埋めたかどうかの先です。
よくある質問
- 事例Ⅳは何から手をつければよいですか?
- 第1問の経営分析からです。19年のうち18年で第1問に置かれ、字数制限も18問すべてに付いています。出題の型がいちばん固く、記述の練習も同時にできるためです。そのうえで投資判断とCVP・損益分岐点に広げると、上位5論点で74問中66問を覆えます。
- 解けない設問は空欄でよいのでしょうか、それとも埋めるべきですか?
- 再現答案677セットでは、字数が0の設問が無い答案が97.5%でした。埋めること自体はすでにほぼ全員がやっており、そこで差はつきません。一方で空欄があった17件の平均は50.06点で、60点以上に届いたのは2件です。落とすのは1〜2問までに収めるのが妥当だと考えます(17件という少ない数の上の話なので、強い根拠ではありません)。
- 全部埋めれば60点は取れますか?
- 取れるとは限りません。字数が0の設問が無かった660セットのうち、295セット(44.7%)が60点未満、29セット(4.4%)が40点未満でした。空欄率で説明できる得点の差は2%足らずです。差がついているのは埋めたかどうかではなく、その中身のほうです。
- 計算問題と電卓の練習はどうすればよいですか?
- 1日1問を毎日続ける形を当サイトは勧めます(練習頻度と習熟の速さを比べた測定はありません)。電卓は本番で使う1台に決め、メモリー機能(M+・MR)と定数計算だけは指が迷わない状態にしておいてください。当サイトには論点ごとに計算だけを1問ずつ登る「財務の塔」があり、上位5論点の手順を短い時間で回せます。ただし塔の制限時間はゲームの設計値なので、本番の目安時間としては使わないでください。

