事例Ⅳの合計点は、真ん中の計算2問でほぼ決まる|再現答案378件の統計
この記事の結論
- 事例Ⅳの合計点のばらつきの6〜8割は、第2問・第3問の計算が合っていたかで説明できます。
- 第1問(経営分析)の指標名の一致は、他を同じにするとほぼ効いていません。多くの人が書けるからです。
- 難しい小問は、当たった人が少なすぎて(1〜19%)重みが統計に写りません。
- 同じ方法を事例Ⅰ〜Ⅲに当てると、与件文の言葉を使っているかでは合計点をほとんど説明できませんでした。
2次試験は設問ごとの得点が開示されません。分かるのは事例ごとの合計点だけです。それでも事例Ⅳは、計算の答えが数値で出るので、「その小問が当サイトの解答例と一致していたか」を答案本文から機械で決められます。そこで再現答案378件の合計点を、小問ごとの一致で回帰しました。出てくるのは「その小問で一致している人は、他を同じにして合計点が何点高いか」。配点ではありませんが、どこで差がついているかは見えます。
設問別の得点は無い。だから、合計点を小問の一致で説明する
答案の数値が当サイトの解答例と一致しているかを小問ごとに0〜1で数え、合計点を回帰しました。答案本文は1行も読んでいません。
使ったのは、受験生が公開している再現答案と、本人が申告した開示得点です。令和6年度は176件、令和7年度は202件(収集元をまたぐ重複疑いは片側を除外)。答案の本文には触れず、数の照合だけをスクリプトで行いました。
- 令和6年度:当サイトの解答例と一致しているか。前提が割れる小問(節税の計上時点・埋没原価・4,905円と4,895円)は両方を一致扱い。
- 令和7年度:当サイトの解答例が無いので、答案に出る計算値のうち多くの人が書いた値(多数派)との一致で代えました。多数派は正解ではありません。
- 統計は、小問ごとの順位相関と、全小問を同時に入れた回帰(標準化)。有意性は並べ替え検定で、複数比較の補正をかけています。
この記事の数字は相関です。「係数が大きい小問=配点が大きい」ではありません。得点は自己申告で、標本は再現答案を公開した人に偏っています。
令和6年度:第2問設問1と第3問設問1が、合計点の約8割を持っていた
全小問を同時に入れた回帰で、合計点のばらつきの79%が説明できました。効いたのはセールスミックスと差額キャッシュフローの2小問です。
| 小問 | 解答例と一致した割合 | 合計点との順位相関 | 他を同じにした差(点/1SD) |
|---|---|---|---|
| 第1問 設問1(指標名3つ) | 58% | −0.02 | 0.0 |
| 第2問 設問1(セールスミックス) | 54% | +0.55 | +7.3 |
| 第2問 設問2(Y社向け価格) | 19% | +0.21 | +0.2 |
| 第3問 設問1(差額CF) | 40% | +0.66 | +7.6 |
| 第3問 設問2(NPV) | 12% | +0.49 | +2.8 |
| 第3問 設問3(期待値NPV) | 1% | +0.16 | −0.4 |
| 総字数 | 812字(平均) | +0.22 | +0.3 |
第2問設問1と第3問設問1は、単独でも同時に入れても強く効いています。この2つは「型を知っていれば誰が解いても同じ数字になる」小問で、実際に半数前後の人が一致していました。合っている人と合っていない人の間に、合計点の差がはっきり出ています。
第3問設問2(NPV)は、単独では強い相関(+0.49)ですが、同時に入れると係数が小さくなります。NPVが効かないのではありません。NPVに一致した人は全員が設問1にも一致していて(入れ子)、回帰は2つを分けられないだけです。
令和7年度も、同じ形が出た
多数派の計算値との一致で回帰しても、合計点のばらつきの61%が説明でき、効いたのはやはり第2問・第3問でした。
| 小問 | 多数派と一致した割合 | 合計点との順位相関 | 他を同じにした差(点/1SD) |
|---|---|---|---|
| 第1問 設問1 | 82% | +0.11 | −0.5 |
| 第2問 設問1 | 63% | +0.38 | +5.0 |
| 第2問 設問2 | 48% | +0.40 | +3.8 |
| 第3問 設問1 | 70% | +0.38 | +2.1 |
| 第3問 設問2 | 50% | +0.63 | +8.2 |
| 総字数 | 1,085字(平均) | +0.39 | −1.2 |
基準が違うので数字をそのまま比べることはできませんが、形は同じです。第1問はほぼ効かず、第2問・第3問の計算が効く。令和7年度は第3問設問2が最も大きく、1標準偏差の差で8点前後でした。
多数派との一致は、多数派が正解に近い年にしか効きません。令和6年度で同じ方法を試すと説明力は0.18まで落ちました。正解が問題文の数と同じだったり、2桁だったりすると候補から外れ、当たった人が少ない小問では多数派が立たないためです。令和7年度の数字は、この弱さを含んだ値だと読んでください。
第1問は差がつかない。難問は差が写らない
経営分析は多くの人が書けるので差がつかず、難問は当たった人が少なすぎて統計に写りません。差がつくのは、その中間です。
第1問の指標名の一致は、両年とも他を同じにするとほぼゼロでした。劣位の2指標は多くの答案で揃っており、優位の1つは複数の指標が成り立つため、どれを選んでも合計点は変わっていません。第1問で差をつけようとするより、落とさないことが仕事です。
反対に、令和6年度の第2問設問2(19%)、第3問設問2(12%)、設問3(1%)は、一致した人が少なすぎて係数が出ません。配点が軽いのではなく、当たった人がいないので統計に写らないのです。ここは「取り切れば差がつく」場所ではなく、「取れないのが普通」の場所です。
差がついているのは、半数前後の人が一致している小問です。令和6年度の第2問設問1・第3問設問1、令和7年度の第2問と第3問設問2。型を知っていれば解ける、しかし条件を1つ読み違えると落ちる。その真ん中の帯に、合計点の差が集まっています。
事例Ⅰ〜Ⅲでは、同じ方法がほとんど効かない
与件文の言葉を使っているかで令和7年度 事例Ⅰ〜Ⅲの合計点を回帰すると、説明できたのは3〜13%でした。
事例Ⅰ〜Ⅲには数値の答えが無いので、当サイトの解説が「この設問にはこの与件文の言葉」と指した材料を答案が使っているかで、同じ回帰をしました(令和7年度・各202件)。結果は事例Ⅰが6%、事例Ⅱが3%、事例Ⅲが13%。事例Ⅳの61〜79%とは桁が違います。
有意に出たのは事例Ⅲの第1問(強み)と第4問だけで、事例Ⅰは総字数だけが効きました。与件文の語をなぞっているかどうかは、Ⅰ〜Ⅲの合計点をほとんど分けていません。当サイトが以前の解析で見た「与件をなぞるだけの答案は高得点でない」と同じ向きです。
これは、当サイトの解説が指す材料が間違っている可能性も、採点がそこを見ていない可能性も、どちらも否定しません。言えるのは、Ⅰ〜Ⅲで得点を分けているのは「語の有無」の側ではなく、要素の中身や因果の形の側にありそうだ、ということまでです。
この数字を、勉強の配分にどう使うか(見立て)
事例Ⅳは、真ん中の計算2問の「型」と「条件の読み」に時間を置く。第1問は落とさない、難問は捨て方を決めておく。
- 1第2問・第3問の型を、条件の読みごと固める。セールスミックス(制約2本のどちらが効くか)、差額キャッシュフロー(差額・残高→フロー・売却損の税効果)、NPV(係数のずらし方)。この3つで合計点の大半が動いています。
- 2第1問は、指標の選び方より書き方の型を固めて、時間をかけない。差がつかない場所に時間を使わない。
- 3難問(境界値・期待値・埋没原価)は、計算過程に前提と途中の表を書いて部分点を残す。当たりに行かない。
以上は当サイトの見立てです。相関から逆算した配分であって、採点基準ではありません。ただ、AIに同じ事例を解かせた実験でも、割れたのは同じ場所でした。別の測り方から同じ形が出たことを、手がかりにしてよいと考えています。
この記事で言えないこと
- 配点。係数は「他を同じにしたときの合計点の差」で、採点基準ではありません。相関であって因果でもありません。
- 得点の正確さ。得点は自己申告で、標本は再現答案を公開した人に偏ります。
- 令和7年度の基準の正しさ。多数派の計算値は正解ではなく、多数派が正解に近い年にしか効きません。
- 一致の取りこぼし。数の照合は文字列で行っており、書き方の揺れで拾えないものがあります。一致した割合は下限です。
再現答案は公開されているものを、本人が申告した得点とともに集計だけに使いました。個別の答案や得点は載せていません。分析のスクリプトと結果は当サイトが保管しています。
この記事のまとめ
- 事例Ⅳの合計点のばらつきの6〜8割は、第2問・第3問の計算が合っていたかで説明できます。
- 第1問(経営分析)の指標名の一致は、他を同じにするとほぼ効いていません。多くの人が書けるからです。
- 難しい小問は、当たった人が少なすぎて(1〜19%)重みが統計に写りません。
- 同じ方法を事例Ⅰ〜Ⅲに当てると、与件文の言葉を使っているかでは合計点をほとんど説明できませんでした。
よくある質問
- 第2問と第3問の配点が高い、ということですか?
- そうは言えません。この統計が示すのは「その小問で一致している人は合計点が高い」という相関で、配点そのものではありません。第1問が効かないのは配点が低いからではなく、多くの人が書けて差がつかないからです。難問が効かないのも、当たった人が少なくて統計に写らないからです。
- NPVの設問は効いていないように見えますが、捨ててよいですか?
- いいえ。令和6年度の第3問設問2は単独では強く効いており(+0.49)、同時に入れた回帰で係数が小さいのは、設問1に一致した人の中にNPVの一致者が全員含まれているためです。設問1が取れていることが前提で、そのうえでNPVまで届く人が上にいます。令和7年度では第3問設問2が最も大きく効きました。
- 事例Ⅰ〜Ⅲで、何が得点を分けているのですか?
- この統計では分かりませんでした。与件文の言葉を使っているかでは3〜13%しか説明できず、当サイトの過去の解析でも「与件をなぞるだけの答案は高得点でない」向きが出ています。要素の中身や因果の形の側にありそうだ、というところまでが今言えることです。

