開示得点の下1桁は「4」と「9」が多い|傾斜配点の噂を数えた
この記事の結論
- 106人の事例Ⅳでは、下1桁が4か9の得点が41.5%。均等なら20%です。
- 偶然でこうなる確率はおよそ100万回に1回(χ²=33.5、p=9.3×10⁻⁷)。
- ただし偏りが立つのは2024年度で、他の年度では検出できていません。
- 原因は特定できません。答案の書き方を変える理由にはならない現象です。
受験者のあいだで「事例Ⅳには傾斜配点があるらしい」「開示得点は調整後の点らしい」と語られてきました。得点開示のデータには、この噂を直接確かめる材料はありません。設問ごとの得点は開示されないからです。それでも一つだけ数えられるものがあります。得点そのものの数字の並びです。数えてみると、事例Ⅳの得点は下1桁が4か9になりやすいという偏りが出ました。この記事は、その偏りがどこまで確かで、どこから先が分からないのかを整理したものです。結論を先に言うと、原因は特定できません。
設問ごとの配点は見えない。見えるのは得点の並びだけ
開示されるのは事例ごとの得点だけです。設問ごとの得点は存在しないので、傾斜配点そのものは直接確かめられません。
得点開示で返ってくるのは、事例Ⅰ〜Ⅳそれぞれの得点1つずつです。「第2問で何点取れたか」は分かりません。したがって「この設問の配点が実は低い」という形の主張は、このデータでは検証も反証もできません。
一方で、得点そのものの数字の並びなら数えられます。もし採点が5点刻みなら、得点は5の倍数に固まるはずです。そこで、得点を5で割った余りが均等に散らばっているかを調べました。
先に断っておきます。この記事は現象の記述までで終わります。原因の特定はしていませんし、このデータではできません。
偏っているのは「下1桁が4か9」だった
106人の事例Ⅳでは、下1桁が4か9の得点が41.5%を占めました。5つの余りが均等なら20%です。
縦線=均等なら20%
均等かどうかをカイ二乗検定で調べると、χ²=33.5(自由度4)、p=9.3×10⁻⁷ でした。偶然にこれだけ偏る確率は、およそ100万回に1回という水準です。
よくある言い換えを1つ訂正しておきます。これは「5の倍数に固まる」現象ではありません。下1桁が0か5の得点は20.8%で、期待どおりの20%ちょうどです。偏っているのは4と9だけでした。
対象を2018〜2025年度の事例Ⅳ763件に広げても、下1桁が4か9は29.2%で最多です(χ²=46.7、p=1.7×10⁻⁹)。全4事例3,085件では23.2%でした。
偏りがはっきり立つのは2024年度だけ
8年度のうち偏りがはっきり立つのは2024年度です。2018〜2023年度はどれも均等から有意にずれません。
縦線=均等なら20%
2024年度は262件で χ²=98.1、p は 10⁻¹⁵ を下回ります。2025年度は202件で27.2%、p=0.048 と弱く、しかも多重比較の補正をしていない値です。ここは「偏りの気配がある」以上のことは言いません。
2018〜2023年度は件数が28〜93と少なく、43.9%ほどの偏りなら検出できますが、27%程度の弱い偏りは見落としうる水準です。「昔は無かった」ではなく「昔のデータでは検出できていない」が正しい言い方になります。
前節の106人は全員2024年度です。つまり106人で見えた偏りは、実質的に2024年度の偏りを見ていることになります。
低い点ほど強く、事例Ⅰにも似た癖がある
偏りは低い得点帯ほど強く出ます。同じ傾向は事例Ⅰ〜Ⅲにもあり、事例Ⅳだけの癖ではありません。
| 得点帯 | 事例Ⅳ | 事例Ⅰ〜Ⅲ | 差 |
|---|---|---|---|
| 0〜39点 | 56.2%(32件) | 30.6%(49件) | +25.6pt |
| 40〜49点 | 49.2%(118件) | 25.3%(332件) | +23.8pt |
| 50〜59点 | 30.5%(200件) | 24.1%(873件) | +6.5pt |
| 60〜69点 | 22.4%(210件) | 18.3%(842件) | +4.1pt |
| 70点以上 | 19.2%(203件) | 12.8%(226件) | +6.4pt |
どちらの列も、低い得点帯ほど割合が高くなっています。事例Ⅳ全体で29.2%と目立つのは、事例Ⅳに低い得点帯の人が多いことでかなりの部分が説明できます。
そのうえで、低い帯では事例Ⅳのほうがなお強く出ます。0〜39点帯で+25.6ポイント、40〜49点帯で+23.8ポイントの差です。60点以上の帯では差が4〜6ポイントに縮み、有意ではなくなります。
事例Ⅰにも別の偏りがあります。事例Ⅰの772件では下1桁が1か6の得点が25.0%を占め、χ²=26.9、p=2.1×10⁻⁵ でした。事例Ⅱ・事例Ⅲは均等からずれません(p=0.76・p=0.68)。桁の偏りは事例Ⅳだけの話ではないということです。
「計算問題は配点が低い」は成り立たない
94点の答案が実在します。公表配点を各設問の上限とみなすと、第2問と第3問だけで44点以上が入っている計算になります。
噂の一つに「みんなが解けない計算問題は、実質的に配点が低いのではないか」というものがあります。損益分岐点分析や設備投資の判断を指した話です。これは算術だけで確かめられます。
令和6年度の事例Ⅳの公表配点は、第1問25点・第2問20点・第3問30点・第4問25点です。第2問が損益分岐点分析、第3問が設備投資の判断でした。第1問と第4問はどちらも記述を含みます。
公表配点が各設問の上限だとすると、第1問と第4問を満点で取っても50点にしかなりません。ところが令和6年度の事例Ⅳには、94点という開示得点が実在します。残る44点以上は、第2問と第3問から来ていることになります。
この計算は「公表配点が各設問の上限である」という前提に乗っています。前提そのものは公表資料からは確かめられません。ただし前提を崩すなら「公表配点より多く取れる設問がある」ことになり、噂とは逆向きの話になります。
原因は特定できない(候補は4つある)
候補はいくつも挙がりますが、どれかに決める材料がデータの中にありません。断定できないのが正直なところです。
- 採点表の刻み。設問ごとの部分点を積み上げた合計が、たまたま下1桁4・9で止まりやすい配点だった可能性。
- 一律の加減点。素点に何らかの調整が入り、結果として特定の余りへ寄った可能性。
- 低い点の付け方の癖。低得点帯で強いことから、答案が薄いときの部分点の与え方に由来する可能性。
- 収集の過程。開示得点を書き写してまとめる段階で入った偏り。ただし収集元をまたぐ重複80組のうち78組で得点が一致しており、転記の精度は低くありません。
この4つを切り分ける材料がありません。設問ごとの得点が開示されず、このデータにも入っていないためです。「傾斜配点がある」とも「ない」とも、ここからは言えません。
気にしなくていい理由
下1桁の偏りは、答案の書き方を1文字も変えません。受験者の側に動かせる変数がないためです。
- 狙って取りにいける得点がありません。下1桁を選んで答案を書くことはできません。
- 原因が採点の側にあるなら、全員に同じように効きます。対策の差は生まれません。
- 2024年度に集中している以上、次の年も同じ形で出る保証がありません。これを前提にした準備は空振りします。
1点を争う位置にいるなら、効くのは配点の噂ではなく得点そのものの中身です。事例Ⅳは合格者と不合格者の差が15.36点あり、合計点のばらつきの38.6%を単独で作っている科目でした。時間はそちらに使うほうが確実です。
この記事で言えないこと
- 本記事の得点データは、インターネット上に公開されている得点開示・再現答案を集計したものです。個人が特定できない集計値のみを掲載し、特定の提供元の名指しはしていません。
- 母集団の統計ではありません。得点開示を受けたうえで再現答案を公開・提供した人に偏ったデータです。
- 106人はすべて2024年度(令和6年度)です。この年は偏りが最も極端な年でもあり、この年に固有の何かがある可能性は残ります。
- この106人の標本内合格率は54.7%(95%信頼区間45.2〜63.9%)です。2次筆記試験の実際の合格率は例年2割弱とされ、この標本は合格側に大きく偏っています。
- 得点は自己申告と転記を経ています。桁の偏りを扱う記事なので、転記の段階で入った偏りを完全には排除できません。
- 設問ごとの得点はこのデータに存在しません。傾斜配点があるともないとも、この記事では判定していません。
- 第2問と第3問で44点以上という計算は、公表配点を各設問の上限とみなした算術です。前提が崩れれば結論も変わります。
本記事の集計は当サイトの独自のものです。2次試験(筆記)の公式解答・採点基準は公表されていません。配点は試験実施機関が公表した問題の記載によります。
この記事のまとめ
- 106人の事例Ⅳでは、下1桁が4か9の得点が41.5%。均等なら20%です。
- 偶然でこうなる確率はおよそ100万回に1回(χ²=33.5、p=9.3×10⁻⁷)。
- ただし偏りが立つのは2024年度で、他の年度では検出できていません。
- 原因は特定できません。答案の書き方を変える理由にはならない現象です。
よくある質問
- 事例Ⅳには傾斜配点があるのですか?
- このデータでは判定できません。開示されるのは事例ごとの得点だけで、設問ごとの得点が存在しないためです。確かめられたのは「事例Ⅳの得点は下1桁が4か9になりやすい」という現象までで、その原因が採点表の刻みなのか、調整なのか、収集の過程なのかを切り分ける材料はありません。
- 得点は5点刻みで付けられているのですか?
- 少なくともこのデータはそれを支持しません。106人の事例Ⅳで下1桁が0か5だった割合は20.8%で、5つの余りが均等な場合の期待値20%とほぼ同じでした。偏っていたのは下1桁が4か9のほうで41.5%です。「5の倍数に固まる」という言い方は誤りになります。
- この偏りを知っていると、答案の書き方は変わりますか?
- 変わりません。下1桁を選んで答案を書くことはできず、原因が採点の側にあるなら全員に同じように効くためです。加えて偏りは2024年度に集中しており、次の年も同じ形で出る保証がありません。1点を争う位置にいるなら、配点の噂ではなく得点の中身に時間を使うほうが確実です。

