事例Ⅳの因果チェーン総覧|設問の言い回しを解法と落とし穴に変換する29本
この記事の結論
- 変換表の中身は作成者の見立てです。8カテゴリ29本を落とし穴つきで並べました。
- 第1問が経営分析だった年は19年中18年。4事例でいちばん読めます。ここは実測です。
- 74問中54問に字数制限。計算だけでは半分以上が埋まりません。
- この事例で落ちるのは知らないからではなく、同じ場所で毎回つまずくからです。
事例Ⅰ〜Ⅲの因果チェーンは「言い回し→手法→効果」でした。事例Ⅳだけは3列目を変えます。効果を書く設問より、正しく計算し切る設問のほうが多いからです。ここでは「言い回し→使う解法・公式→落とし穴」の形にしました。中身は作成者の経験則ですが、分類は当サイトが74問に1問ずつ付けた実測の論点そのものです。
3列目が「効果」ではなく「落とし穴」である理由
8カテゴリ29本の中身は作成者の経験則です。分類だけは当サイトの実測の論点ラベルをそのまま使っています。
事例Ⅲまでの変換表は、右端に効果を置きました。与件の困りごとを手法に読み替え、効果まで書くのが答案だからです。事例Ⅳは違います。多くの設問で、求められるのは数字そのものです。
そして、落ちるときの理由が決まっています。解法を知らないのではなく、税を引き忘れる、埋没原価を混ぜる、単位を取り違える。毎回同じ場所です。だから右端は効果ではなく落とし穴にしました。
使い方は単純です。設問を読んで左列に当たりを付けたら、中列の式と右列の注意を同時に思い出します。計算に入る前に、落とし穴を先に見るのがこの表の使い方です。
以降の表には、見立てか実測かをキャプションに必ず書いています。表だけを拾い読みするときは、そこを先に見てください。
出るものが4事例でいちばん読める(ここは実測)
第1問は19年中18年が経営分析。上位5論点で74問中66問を占めます。準備の対象は絞れます。
この8つが、そのまま下の変換表の8カテゴリになります。他の事例と違い、見立ての分類を別に作っていません。ここでは分類そのものが実測で、見立てなのは各行の中身(言い回し・解法・落とし穴)だけです。
配点の幅や年度ごとの並びまで見たい場合は、傾向をまとめた記事のほうに型マップの表を置いています。この記事は、型が分かった後に何でつまずくかを扱います。
1枚のまとめ(保存して使う)
下の8分類・29本を1枚にしました。演習中に横に置いて、左の言い回しから引くのが使い方です。

毎年出る2つを、解法と落とし穴に変換する
経営分析とCVPは、出題数でも上位です。ここでの取りこぼしは、型を知らないからではありません。
経営分析(4本)
| 与件・設問の言い回し | 使う解法・公式 | 落とし穴 |
|---|---|---|
| 同業他社と比べて優れている点・劣っている点 | 収益性・効率性・安全性から1つずつ選ぶ | 3つとも同じ領域から選んでしまう。領域が偏ると分析にならない |
| 劣っている点を2つ、優れている点を1つ | 設問が指定した数と向きのとおりに並べる | 向きの取り違え。比率が高いほど良いとは限らない(負債比率など) |
| 小数点第3位を四捨五入して答えよ | 設問の指示どおりの桁と単位(%・回・日)で書く | 単位落ちと丸め方。%と倍を混ぜると別の数字になる |
| その特徴を80字以内で述べよ | 指標名+数値+与件に書かれた原因、の順で1文ずつ | 数値だけ書いて、与件のどの事実が原因かを書かない |
CVP・損益分岐点(4本)
| 与件・設問の言い回し | 使う解法・公式 | 落とし穴 |
|---|---|---|
| 費用を変動費と固定費に分けて | 損益分岐点売上高=固定費÷(1−変動費率) | 変動費率を「率」に直さず金額のまま分母に入れる |
| 目標利益を達成する売上高 | (固定費+目標利益)÷限界利益率 | 税引後の目標利益をそのまま使う。税引前に戻してから足す |
| 製品が2種類ある・構成比が与えられている | 構成比で加重平均した限界利益率を使う | 全社の平均で解く。構成比が変われば答えも変わる |
| 安全余裕率を求めよ | (売上高−損益分岐点売上高)÷売上高 | 分母を損益分岐点売上高にしてしまう |
この2つは、解き方を知らない人がほとんどいない枠です。それでも差が付くのは、設問の指示(数・向き・桁・税の前後)を読み落とすからです。手を動かす前に、指示だけを線で囲む習慣が効きます。
計算2問を、解法と落とし穴に変換する
投資判断と意思決定は、差額だけを見る科目です。関係ない数字を混ぜたところで落ちます。
投資判断(5本)
| 与件・設問の言い回し | 使う解法・公式 | 落とし穴 |
|---|---|---|
| 現在の機械を新しい機械に取り替える | 取替投資は新旧の差額キャッシュフローだけで比べる | 旧設備の売却損益にかかる税の増減を落とす |
| 正味現在価値を求めよ | 各年のCF×現価係数の合計−初期投資 | 減価償却費を現金支出として引いたままにする |
| 税引後のキャッシュフローで評価する | (収入−現金支出−減価償却費)×(1−税率)+減価償却費 | 減価償却費の節税効果を足し戻し忘れる |
| 残存価額・◯年後に売却する | 売却時のCFは売却額±売却損益にかかる税 | 簿価と売却額の差に税がかかることを無視する |
| 運転資本が増加する | 増加額は投資として支出、終了時に回収として戻す | 回収の年に戻すのを忘れて、全期間で過小評価する |
セグメント・意思決定(4本)
| 与件・設問の言い回し | 使う解法・公式 | 落とし穴 |
|---|---|---|
| この事業(店舗)を継続すべきか | 貢献利益=限界利益−個別固定費で判断する | 共通固定費を配賦した後の営業利益で判断する |
| どの製品を優先して作るべきか | 制約条件1単位あたりの限界利益で比べる | 製品1個あたりの利益で選ぶ。制約が違えば順序も変わる |
| 自社で作るか、外から買うか | 埋没原価を除いた差額原価だけを比較する | すでに発生した費用を計算に入れてしまう |
| この注文を追加で受けるべきか | 追加分の増分収益と増分費用だけを見る | 平均原価で判断して、受けられる注文を断る |
この2つに共通するのは、与えられた数字を全部使おうとすると間違えることです。設問が問うているのは差額だけで、そこに関係しない数字は意図的に混ぜてあります。使わない数字を先に消してください。
最終問と、たまに出る4分類
リスク管理は最終問の常連です。企業価値・資金調達・CF計算書は出る年が限られます。
リスク管理(4本)
| 与件・設問の言い回し | 使う解法・公式 | 落とし穴 |
|---|---|---|
| 海外との取引で為替が変動する | 為替予約・通貨オプションでヘッジする | 「リスクが無くなる」と書く。固定するだけで、機会も同時に失う |
| 需要が読めない・複数の場合が示されている | 期待値=各場合の確率×値の合計 | 確率の合計が1になっているかを確かめない |
| 枝分かれする選択肢が図で示されている | 後ろから期待値を計算して枝を選ぶ | 前から計算する。採らない枝の値を混ぜる |
| リスクについて助言せよ(記述) | 変動の要因+影響の向き+対応策の3点で書く | 一般論だけで、与件に書かれた事情に触れない |
企業価値・M&A(3本)
| 与件・設問の言い回し | 使う解法・公式 | 落とし穴 |
|---|---|---|
| 企業価値を求めよ | フリーキャッシュフローを加重平均資本コストで割り引く | 負債コストに(1−税率)を掛け忘れる |
| 買収価額は妥当か | 純資産や収益還元の考え方と比べる | 設問が置いた前提(永続か、n年間か)を読み落とす |
| 安全利子率とβが与えられている | 安全利子率+β×市場リスクプレミアム | βを掛ける相手を市場収益率そのものにしてしまう |
資金調達(3本)
| 与件・設問の言い回し | 使う解法・公式 | 落とし穴 |
|---|---|---|
| 借入で調達するか、増資か | 自己資本比率と利益への影響(利息は損金)で比べる | 有利さだけ、または危なさだけを書いて片側で終える |
| 手元の資金が足りない | 回収・在庫・支払のサイトを短くする | 売上を増やすという一般論で答えて、資金繰りの話にしない |
| 資金について助言せよ(記述) | 手段+根拠となる数値+留意点の3点で書く | 前の設問で出した数値を、答案でまったく使わない |
キャッシュフロー計算書(2本)
| 与件・設問の言い回し | 使う解法・公式 | 落とし穴 |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 税引前利益+減価償却費±運転資本の増減−法人税等 | 運転資本の符号。売上債権の増加はマイナスになる |
| フリーキャッシュフローを求めよ | 設問が置いた定義に従って計算する | 設問が定義を与えているのに、覚えている一般の定義で解く |
後半4つは、出る年が限られます。ただしリスク管理だけは別で、最終問の常連です。計算を伴わない年もあるので、記述の型を先に作っておくと時間が余ります。
指示を線で囲む・使わない数字を消す・記述で数値を使う
この事例で差が付くのは知識ではなく手順です。3つとも、解き始める前と後の作業です。
指示を線で囲んでから解く
設問の数・向き・桁・単位・税の前後は、すべて指示として書かれています。手を動かす前にそこだけ囲むと、経営分析とCVPの取りこぼしが減ります。式を思い出す前にやる作業です。
使わない数字を先に消す
投資判断と意思決定では、関係しない数字が意図的に混ぜてあります。埋没原価や共通固定費がそれです。差額に関係するものだけを残してから計算に入ってください。
記述では必ず数値を使う
74問のうち54問に字数制限があります。計算した数値を答案で使わない記述は、根拠のない一般論になります。出した数字と与件の事実を1つずつ入れてください。
この記事で言えないこと
- 変換表の中身(言い回し・解法・落とし穴)は作成者の見立てです。どの落とし穴が実際に多いかを測ったデータはありません。
- 分類の8カテゴリは当サイトの実測の論点ラベルです。ラベルの粒度が違えば、設問数も年度数も変わります。
- 並んでいる公式や解法は、この試験で一般に使われているものです。当サイトが作ったものではありません。
- 19年という窓は、事例Ⅳでは19事例しかありません。18年という数字は、外れた年が1年あるという意味でもあります。
- 2次試験は正解が公表されません。設問ごとの得点も存在しないため、どの落とし穴が何点を失わせたかは誰にも分かりません。
本記事の変換表は作成者の見立て、実測部分は当サイトの独自集計です。問題そのもの(与件文・設問文)の著作権は一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会に帰属します。全文は試験実施機関の公表資料でご確認ください。
この記事のまとめ
- 変換表の中身は作成者の見立てです。8カテゴリ29本を落とし穴つきで並べました。
- 第1問が経営分析だった年は19年中18年。4事例でいちばん読めます。ここは実測です。
- 74問中54問に字数制限。計算だけでは半分以上が埋まりません。
- この事例で落ちるのは知らないからではなく、同じ場所で毎回つまずくからです。
よくある質問
- この変換表は実測データですか?
- 分類だけが実測です。8カテゴリは当サイトが74問に1問ずつ付けた論点ラベルそのものですが、各行の中身(言い回し・解法・落とし穴)は作成者の経験則です。どの落とし穴が実際に多いかは測っていません。表を読むときは、各表のキャプションを確認してください。
- なぜ事例Ⅳだけ3列目が「効果」ではないのですか?
- 事例Ⅰ〜Ⅲは、手法を書いて効果まで書くのが答案です。事例Ⅳは多くの設問で数字そのものが答えになります。落ちる理由も、解法を知らないことではなく、税や埋没原価の扱いを毎回同じように間違えることです。だから右端を落とし穴にしました。
- 何から手をつければよいですか?
- 第1問の経営分析からです。当サイトの実測では、19年のうち18年で第1問に置かれています。出題の型がいちばん固く、字数制限も付くので記述の練習も同時にできます。そのうえで投資判断とCVPに広げると、上位5論点で74問中66問を覆えます。
- 公式を覚えれば点になりますか?
- 公式は入口です。この総覧が右端に落とし穴を置いているのは、公式を知っていても同じ場所で落ちるからです。減価償却費の節税効果、埋没原価、指示された桁と単位。式を思い出す前に、その設問の落とし穴を思い出すほうが早く効きます。

