「出題の趣旨」は何を問うと言っているか|2次試験は分析で始まり助言で終わる
この記事の結論
- 第1問の趣旨が「分析」と書いている事例は39事例中38(97.4%)でした。
- 最終問が「助言」か「提案」の事例は37事例中34(91.9%)。分析で始まり助言で終わります。
- 事例Ⅰは分析64%、事例Ⅲは助言・提案71%。求められる能力が事例で違います。
- 「助言が増えた」は、趣旨で測ると有意になりませんでした(p=0.079)。
2次試験は正解が公表されません。ただし試験実施機関は毎年「出題の趣旨」を公表しており、何を問うたのかを公式に語っている文はここにしかありません。そこで平成24〜令和7年度の207設問について、趣旨が名指ししている能力を数えました。定型文の「〜する能力」の動詞を13語の辞書で機械的に拾い、能力を読み取れた171設問(83%)を分母にしています。
第1問は分析、最終問は助言で終わる
第1問の趣旨が「分析」と書いている事例は97.4%、最終問が「助言」か「提案」の事例は91.9%。14年分でこの形はほぼ崩れていません。
出題の趣旨は「〜する能力を問う問題である」という定型文で書かれています。この「〜する能力」にあたる動詞を拾い、事例ごとに第1問と最終問が何を名指ししているかを数えました。
出題の趣旨は、たとえばこう書かれています。「C社の強みと弱みについて、分析する能力を問う問題である。」(令和7年度 事例Ⅲ 第1問。出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)同じ事例の第4問は「助言する能力を問う問題である」で終わっています。
実務上の意味ははっきりしています。趣旨が「分析する能力」と書いている設問に助言を書けば、問われていないことを書くことになります。逆に最終問で分析だけを書いて終えると、求められている助言が無い答案になります。
第1問で状況を切り分け、最終問で打ち手を出す。設問の並びを見た時点で、答案全体の骨格はおおむね決まっていると考えて構いません。
事例Ⅰは分析、事例Ⅲは助言に寄っている
事例Ⅰは分析が64%、事例Ⅲは助言・提案が71%。この2つは95%信頼区間が重ならず、偶然では説明しにくい差です。
| 事例 | 設問数 | 分析 | 助言・提案 |
|---|---|---|---|
| 事例Ⅰ | 58 | 64%(50.9〜74.9) | 28%(17.8〜40.2) |
| 事例Ⅱ | 53 | 45%(32.7〜58.5) | 62%(48.8〜74.1) |
| 事例Ⅲ | 58 | 31%(20.6〜43.8) | 71%(58.0〜80.8) |
事例Ⅰの分析64%と事例Ⅲの分析31%は、信頼区間が重なりません。同じ筆記試験でも、書くべき文の形が事例によって違うということです。事例Ⅰは切り分ける言葉、事例Ⅲは打ち手の言葉を先に用意しておけます。
事例Ⅱはその中間です。助言62%に加えて提案が20%混じるので、誰に何をどう売るかを分析と提案の両方の言葉で書く準備が要ります。
事例Ⅳは比較の対象にしていません。趣旨を取れているのが令和7年度の4設問だけで、割合として出せる数ではないためです。
助言が増えたと言えるかは、資料で変わる
趣旨で測ると助言系は46.1%から61.0%へ+15.0ポイント。ただしp=0.079で、偶然を否定できませんでした。
設問文の要求動詞を数えた別の集計では、要求が「説明せよ」から「助言せよ」へ移ったと書きました。同じことを出題の趣旨の文で測り直したのが次の表です。設問単位で「助言系か分析か」を前期と後期で比べています。
| 期間 | 助言系の割合 | 95%信頼区間 |
|---|---|---|
| 2012〜2018年度 | 46.1% | 35.3〜57.2% |
| 2019〜2025年度 | 61.0% | 49.9〜71.2% |
0.05を下回らないので、この資料では「増えた」と言い切れません。方向は出ているが偶然を否定できない、が正確な言い方です。
2つの集計は矛盾していません。どちらも助言が増える向きです。ただし断定できるのは設問文の要求動詞で測ったときだけで、趣旨の文で測ると届きません。どちらの資料の話かを確かめてから受け取ってください。
同じ現象でも、測る資料を変えると結論の強さが変わります。設問文は受験者への指示、出題の趣旨は出題側の説明で、書き手も目的も違うためです。当サイトはどちらの数字も、何で測ったかを明記して出します。
趣旨を答案の点検にどう使うか
解き終わったら、趣旨が名指しした能力と自分の答案の文末を突き合わせます。分析を問われて助言で終わっていないかを見ます。
- 1過去問を解いたあと、その年度の出題の趣旨を1設問ずつ読む。試験実施機関の公表資料にあります。
- 2趣旨の「〜する能力」の部分に線を引き、分析・助言・提案・考察のどれを名指ししているかを取り出す。
- 3自分の答案の文末と突き合わせる。分析と書かれているのに「〜すべきである」で終わっていたら、問われていないことを書いています。
- 4第1問と最終問はとくに厳しく見る。第1問は分析、最終問は助言・提案が既定の形です。
この点検は正解合わせではありません。趣旨は「何を問うたか」を書いた文であって、どう書けば加点されるかは公表されていないからです。それでも、問われていないことを書く失点は、この手順で減らせます。
土台が薄いと感じた分野は、1次の分野別演習で埋め直せます。事例Ⅰで問われる分析の言葉も、事例Ⅲで問われる打ち手の言葉も、もとは1次の分野です。
この数え方で言えないこと
- 207設問のうち36設問(17%)は、趣旨が能力の語を使っていません。分類から漏れていますが、問われている能力が無いわけではありません。
- 動詞は13語の辞書で拾っています。「検討し提案する」のように複数を名指しする趣旨は両方に数えるため、延べ数と設問数は一致しません。
- 事例Ⅳは令和7年度の趣旨しか取れていません。他年度は未取得で、事例Ⅳの傾向はこの記事では扱えていません。
- 趣旨は「何を問うたか」であって「どう書けば加点されるか」ではありません。加点の検証は別の作業です。
- 有意でなかったことは、増えていないことの証明ではありません。差が小さいか、設問数が足りないかのどちらかです。
本記事の集計は当サイトの独自のものです。出題の趣旨そのものの著作権は一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会に帰属します。全文は試験実施機関の公表資料でご確認ください。数値は2026年8月時点のものです。
この記事のまとめ
- 第1問の趣旨が「分析」と書いている事例は39事例中38(97.4%)でした。
- 最終問が「助言」か「提案」の事例は37事例中34(91.9%)。分析で始まり助言で終わります。
- 事例Ⅰは分析64%、事例Ⅲは助言・提案71%。求められる能力が事例で違います。
- 「助言が増えた」は、趣旨で測ると有意になりませんでした(p=0.079)。
よくある質問
- 出題の趣旨とは何ですか?
- 試験実施機関が年度ごとに公表している、各設問で何を問うたのかを説明した文です。2次試験は正解が公表されませんが、趣旨は公表されます。「〜する能力を問う問題である」という定型文で書かれており、この記事はその「〜する能力」の動詞を数えました。
- 95%信頼区間とは何ですか?
- 同じ数え方を繰り返したときに、本当の割合がその範囲に入ると期待できる幅です。事例Ⅰの分析64%は50.9〜74.9%、事例Ⅲの分析31%は20.6〜43.8%で、2つの幅が重なりません。設問数が少ないほど幅は広くなるので、幅が重なる比較は差があると言い切れません。
- 並べ替え検定とは何ですか?
- 前期と後期のラベルを無作為に入れ替えて差を作り直す作業を20,000回繰り返し、実際に観測された差がどのくらい珍しいかを見る方法です。今回はp=0.079で、偶然でこの差が出る確率を十分に小さいとは言えませんでした。
- 趣旨を読めば書き方が分かりますか?
- 分かるのは「何を問うたか」までです。趣旨は採点基準ではなく、どう書けば加点されるかは公表されていません。ただし、分析を問われた設問に助言を書くといった方向の取り違えは、趣旨を読めば防げます。

