事例Ⅲ第1問の強み・弱み|19年で17回出た設問は、与件文のどこを見るか
この記事の結論
- 事例Ⅲの第1問は19年で17回が強み・弱みの分析。出題の趣旨も毎年「分析する能力」と言っています。
- 強みの根拠は与件文の前半(沿革と事業内容)に置かれ、設計・一貫体制・熟練技能・提案力の形で繰り返し出ています。
- 選ぶ基準は「後の設問で使うか」。第2問以降の改善や新事業につながる強みから書くのが定石とされています。
事例Ⅲの第1問は、4事例の第1問の中でいちばん問われ方が固い設問です。19年で17回が強み・弱み(またはその言い換え)の分析で、試験実施機関が公表する「出題の趣旨」もほぼ毎年「分析する能力を問う」と書いています。つまりここは、事前に型を作って臨める場所です。この記事では、19年分の問われ方を一覧にし、与件文のどの記述が強みの根拠になってきたかを、当サイトが公開している事例本文(問題PDFと機械照合済み)からの逐語引用で示します。設問文の数字は問題PDFを確認して転記しました(本文抽出で壊れる1桁の数字は画像で目視)。
19年で17回。4事例でいちばん固い第1問
第1問が強み・弱みの分析だった年は19年中17回。例外は2つだけで、どちらも「課題」を問うた年です。
同じ「第1問の定番」でも、事例Ⅳの経営分析(19年で18回)と並ぶ固さです。事例Ⅰの第1問は7回、事例Ⅱは13回なので、開いた瞬間に何をする設問か分かるのは事例Ⅲと事例Ⅳだけ。ここで時間を使わない準備が、そのまま後の設問の時間になります。
19年の第1問で問われたことの一覧
「強みと弱み」が7回、「強みだけ」が4回、経営資源・特徴・成長要因などの言い換えが6回、課題が2回。言い換えの年も、探すものは同じです。
| 年度 | 問われたこと | 字数・形式 |
|---|---|---|
| 令和7年度 | 強みと弱み | ⒜⒝各60字 |
| 令和6年度 | 強み | 80字 |
| 令和5年度 | 生産面の強みを2つ | 各40字 |
| 令和4年度 | 外部経営環境の変化の中での販売面・生産面の課題 | 80字 |
| 令和3年度 | 革製バッグ業界における強みと弱み | ⒜⒝各40字 |
| 令和2年度 | 強みと弱み | ⒜⒝各40字 |
| 令和元年度 | 事業変遷を理解した上での強み | 80字 |
| 平成30年度 | 経営環境の変化の中でも業績が維持されてきた理由 | 80字 |
| 平成29年度 | 新規事業の生産管理上の課題と対応策(例外の年) | 140字 |
| 平成28年度 | カット野菜業界における強みと弱み | ⒜⒝各40字 |
| 平成27年度 | 新規参入で強みとなる点を2つ(設問1) | 各40字 |
| 平成26年度 | 事業変遷を理解した上での強みと弱み | 60字 |
| 平成25年度 | 市場参入で活用すべき競争優位性(設問1) | 60字 |
| 平成24年度 | 創業からの成長要因 | 100字 |
| 平成23年度 | 生産技術面の特徴と営業面の特徴 | ⒜⒝各40字 |
| 平成22年度 | 強みと弱みを2つずつ | 各20字 |
| 平成21年度 | 業績を安定的に維持している理由 | 120字 |
| 平成20年度 | 有効に活用できる経営資源+それを生かした経営戦略 | 20字+80字 |
| 平成19年度 | 強みと弱みを2つずつ | 各20字 |
並べると2つのことが見えます。1つ目は、言い換えはあっても中身が変わらないこと。「業績が維持されてきた理由」(平成30年度)も「成長要因」(平成24年度)も、答えの材料は強みです。2つ目は、令和4年度のような例外の年があること。設問文の最後の名詞(強みか、課題か)を確かめてから書き始める癖は、固い設問でも省けません。
出題の趣旨は、毎年「分析する能力」と言っている
2次試験に公式解答はありませんが、出題側が何を問うたかを語る「出題の趣旨」は毎年公表されています。第1問の趣旨は、ほぼ毎年同じ形です。
- 令和6年度「C社の強みについて、分析する能力を問う問題である。」
- 令和3年度「C社の事業内容を把握し、革製バッグ業界におけるC社の強みと弱みを分析する能力を問う問題である。」
- 令和元年度「金属熱処理業として創業し事業拡大を図ってきたC社のこれまでの事業変遷を把握して、C社の強みを分析する能力を問う問題である。」
「事業内容を把握し」「事業変遷を把握して」という前置きが繰り返されるのが特徴です。強みは1文で拾うものではなく、会社の歩みの中から拾うものだ、と出題側が言っています。当サイトが趣旨を照合できたのは2012〜2025年度の範囲で、その中で第1問の趣旨に「分析」の語が無かった年は、課題を問うた平成29年度・令和4年度の系統だけでした。
趣旨の引用は試験実施機関が公表する「出題の趣旨」からの逐語です。趣旨は問うた能力を語るもので、模範解答ではありません。
見る順番は、設問文→冒頭と沿革→後の設問
強みの材料は与件文の前半に、それを使う場所は後の設問にあります。第1問なのに、最後まで読んでから戻るのが遠回りに見えて近道です。
- 1設問文の指示を数える。「強みだけか、弱みもか」「2つと言われているか」「生産面・販売面の限定があるか」「業界名が入っているか(=その業界の中での比較で書く)」。令和5年度は「生産面の強みを2つ」、令和3年度は「革製バッグ業界における」でした。
- 2与件文の冒頭(企業概要)と沿革の段落を読む。設立の経緯、増やしてきた部門、取ってきた資格や設備。強みの根拠になった記述は、ほとんどこの範囲に置かれています(次の節の対応表)。
- 3後の設問をざっと読む。新規事業への参入、生産能力の増強、新規顧客の獲得。第1問で書く強みは、そこで活きるものから選ぶのが受験生・合格者の間で定石とされています(当サイトの整理。採点基準ではありません)。
- 4弱みは「後の設問で改善させられること」から選ぶ。生産計画が月1回、標準化されていない、特定の取引先に依存。改善の設問の裏返しが弱みの候補になります。
与件文のこの記述が、強みの根拠になってきた
直近8年の与件文から、強みの根拠になりうる記述をそのまま抜きます。毎年言葉は違っても、型は「一貫体制」「設計・提案」「熟練技能」「他社がやらない工程」の4つに集まります。
| 与件文の記述(逐語) | 強みの型 | 答案での言い方(手がかり) |
|---|---|---|
| 「金型設計と金型製作部門を新設し」(平成30年度) | 一貫体制 | 金型設計から成形加工までの一貫対応 |
| 「設計から製作、据付工事までを受注する」(令和2年度) | 一貫体制 | 設計・製作・据付までの一貫受注体制 |
| 「完成品までの一貫受託生産ができるようになり」(令和3年度) | 一貫体制 | 企画先の要望に応える一貫受託生産 |
| 「熱処理は内製せず熱処理業に外注する傾向が強い」(令和元年度) | 他社がやらない工程 | 多くの同業が外注する熱処理を内製している=希少な工程を持つ |
| 「熟練職人が縫製、仕上げ加工する高級品」(令和3年度) | 熟練技能 | 熟練職人の縫製・仕上げ技術 |
| 「難易度の高い金型製作技術の向上に努めて」(令和4年度) | 技術力 | 難易度の高い金型製作技術 |
| 「コスト低減や生産性向上に結びつく提案などが可能である」(令和4年度) | 設計・提案力 | 顧客のコスト低減につながる提案力 |
| 「工場設備レイアウト設計を担当し、工場の生産性を高めることを顧客に提案してきた」(令和6年度) | 設計・提案力 | 顧客の生産性を高めるレイアウト設計の提案力 |
| 「コンクリート凝固後の抜き取りやすさが顧客から評価されている」(令和7年度) | 顧客からの評価 | 顧客に評価されている製品特性(使いやすさ) |
共通点は、どの記述も「〜してきた」「〜できるようになり」と沿革の文で書かれていることです。出題の趣旨の「事業変遷を把握して」は、この場所を指しています。逆に、与件文の終盤にある新規事業の相談ごとの中には、強みではなく第2問以降の材料が置かれています。
字数の型と、書き方の見本
最頻の形は「⒜強み・⒝弱み各40字」と「強みだけ80字」。どちらも骨組みは「名詞で言い切る強み+与件の根拠」です。
80字1欄の年(令和6年度など)は、強みを2〜3個、「①〜②〜」と並べて根拠を1語ずつ添えます。令和6年度なら、与件文の「工場設備レイアウト設計を担当し、工場の生産性を高めることを顧客に提案してきた」がそのまま1つ目の柱になります。
強みは①顧客工場の生産性を高める設備レイアウト設計からの提案力②要望に応じた特注対応の設計・製作力③材料調達から据付までの一貫対応力。設立以来の顧客の信頼も厚い。
80マス / 80マス
⒜⒝各40字の年は、欄ごとに1〜2個へ絞ります。40字は「①〜②〜」と2つ入れると根拠を書く余白がほぼ消えるので、強みが3つ見つかった年は、後の設問で使う2つに絞るのが型です。
字数を使い切るより、名詞で言い切ることが先です。「技術力がある」ではなく「難易度の高い金型製作技術」。与件文の言葉を1語入れるだけで、どの会社にも当てはまる一般論から、この会社の答案になります。
書いてはいけない答案の見分け方
- 一般語だけの強み。「技術力が高い」「品質が良い」は与件の言葉が無く、どの会社でも書けます。与件文の名詞(金型設計・熱処理・レイアウト設計)を入れます。
- 後の設問で使わない強み。第2問以降と何もつながらない強みは、選び直しの合図とされています(見立て)。
- 弱みの欄に機会・脅威を書く。「業界の需要減少」は会社の外側の話で、弱み(会社の内側)ではありません。
- 課題の年に強みを書く。令和4年度は「課題」、平成29年度は「課題と対応策」でした。設問文の最後の名詞を確かめてから書きます。
- 「2つ」の指示を守らない。令和5年度「2つ」・平成22年度「2つずつ」のように数えられる指示の年があります。
この記事で言えないこと
- この型で何点取れるか。2次試験に公式解答は無く、当サイトは事例Ⅲの得点の実測を持っていません。「定石」「型」はすべて受験生・合格者の公開情報を整理した見立てです。
- 来年も第1問が強み・弱みであるか。19年で17回は高い頻度ですが、平成29年度・令和4年度のような例外の年は実際にあります。
- 2011年度以前の出題の趣旨との照合。当サイトが趣旨を照合できたのは2012〜2025年度の範囲です。
件数は当サイトの集計から導出し、設問の数字は問題PDFで確認して転記しました(1桁の数字は画像で目視)。対応表の与件文引用は、公開中の事例本文(PDFと機械照合済み)との一致をテストで機械的に確かめています。それでも解釈の誤りがゼロとは言えません。演習には、必ずお手元の問題冊子をあわせてお使いください。
この記事のまとめ
- 事例Ⅲの第1問は19年で17回が強み・弱みの分析。出題の趣旨も毎年「分析する能力」と言っています。
- 強みの根拠は与件文の前半(沿革と事業内容)に置かれ、設計・一貫体制・熟練技能・提案力の形で繰り返し出ています。
- 選ぶ基準は「後の設問で使うか」。第2問以降の改善や新事業につながる強みから書くのが定石とされています。
よくある質問
- 強みと弱みは、それぞれいくつ書けばよいですか?
- 設問文に数の指示がある年(2つ・2つずつ)はその数に従います。指示が無い年は字数から逆算します。40字なら1〜2個、80字なら2〜3個が、公開されている再現答案で多い形です。数より大事なのは、後の設問で使う強みを先に置くことだと当サイトは整理しています。
- 「業界における強み」と書かれた年は、何が変わりますか?
- 比較の相手が決まります。令和3年度「革製バッグ業界における」なら、同業と比べて珍しいこと(熟練職人の縫製、一貫受託生産)が強みで、どの会社にもあること(真面目な社風など)は強みになりません。令和元年度のように、多くの同業が外注する工程を内製していること自体が強みになった年もあります。
- 第1問は何分で通過するのがよいですか?
- 当サイトの実測では、事例Ⅲの80分は読解と記述で配分がほぼ決まっており、第1問は型で書ける分だけ短くできます。かけた時間より、後の設問との整合(第1問で挙げた強みを後で使ったか)を見直す時間を残すほうが効くというのが、公開されている合格者の解き方に共通する考え方です。

