2次試験の与件文に、時代はどう映ったか|21年分で増えたのは1つだけ
この記事の結論
- 8つのテーマのうち、2020年度以降に有意に増えたのは感染症・災害の1つだけでした。
- 「DXが増えている」「人手不足が増えている」は、この測り方では支持されません。
- 感染症・災害も令和7年度は1.1まで下がりました。備えすぎる必要はありません。
2次試験の与件文は、その年の中小企業が置かれた状況を映します。では実際に何が増えたのでしょうか。よく聞くのは「最近はDXや人手不足がテーマになっている」という話です。2005〜2025年度の77事例について、時代を映すテーマ語8群を数え、2019年度以前と2020年度以降で比べました。検定は並べ替え検定を20,000回、多重比較はHolm法で補正しています。
増えたと言えるのは、感染症・災害だけだった
8テーマのうち補正後も有意だったのは感染症・災害の1つ。1万字あたり0.1回から8.9回へ、約80倍になりました。
| テーマ | 2019年度以前 | 2020年度以降 | 補正後のp値 |
|---|---|---|---|
| 感染症・災害 | 0.1回 | 8.9回 | 0.0004 |
| 人手不足 | 1.7回 | 3.0回 | 0.84 |
| デジタル化 | 3.3回 | 4.7回 | 1.00 |
| コスト高・価格転嫁 | 0.8回 | 1.2回 | 1.00 |
| 事業承継 | 2.3回 | 2.9回 | 1.00 |
| 海外・インバウンド | 3.6回 | 3.9回 | 1.00 |
| 環境・持続可能性 | 2.9回 | 3.1回 | 1.00 |
| EC・通信販売 | 1.0回 | 1.1回 | 1.00 |
人手不足とデジタル化は数字の上では増えていますが、事例ごとのばらつきが大きく、偶然でこの差が出る確率を否定できませんでした。増えている「ように見える」段階です。
2020年度に跳ね、令和7年度には下がった
2005〜2018年度は全年ゼロ、2020年度に13.4へ跳ね、令和7年度は1.1まで下がりました。
跳ねた年は2020年度です。試験が行われたのは2020年10月で、感染症の影響が与件文に入るまでに1年かからなかったことになります。制度や統計と違い、与件文は同時代の話をそのまま書けるためです。
その後は年ごとに上下しながら、令和7年度で1.1まで下がりました。感染症を前提にした答案の型を厚く準備する意味は、以前より小さくなっています。
この結果を、勉強にどう使うか
テーマを当てにいく準備はしません。増えたと言えるものが1つしかない以上、当てる根拠がないためです。
- 1流行のテーマを追いかけて対策を厚くしない。8つのうち7つは統計的に増えていない。
- 2テーマではなく設問の型で準備する。事例ごとの定番論点は出題実績から読める。
- 31次の知識を、2次で使う言葉として確かめ直す。テーマが何であれ土台は変わらない。
与件文の時代性は、書かれている題材が変わるだけで、問われている力は変わりません。組織をどう変えるか、誰に何を売るか、どこで工程が詰まっているか、数字をどう読むか。この4つは21年間ずっと同じです。
この数え方で言えないこと
- 語の数え上げは辞書ベースです。言い換えや同義語は拾えません。回数は下限とみてください。
- テーマ語の選び方そのものが結果を左右します。語を足すと過去の集計値も変わるため、8群は最初に決めて後から動かしていません。
- 後期は24事例しかありません。年ごとの上下は事例数が少ないぶん振れます。年単位の値を根拠に「今年は増えた」と言うことはできません。
- 有意でなかったことは「増えていない」の証明ではありません。差が小さいか、事例数が足りないかのどちらかです。
本記事の集計は当サイトの独自のものです。問題そのもの(与件文・設問文)の著作権は一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会に帰属します。全文は試験実施機関の公表資料でご確認ください。
この記事のまとめ
- 8つのテーマのうち、2020年度以降に有意に増えたのは感染症・災害の1つだけでした。
- 「DXが増えている」「人手不足が増えている」は、この測り方では支持されません。
- 感染症・災害も令和7年度は1.1まで下がりました。備えすぎる必要はありません。
よくある質問
- DXや人手不足の対策を厚くしなくてよいのですか?
- この集計では、2019年度以前と2020年度以降で有意な増加が確認できませんでした。ただし有意でないことは増えていないことの証明ではありません。1次の知識としてどちらも必要なので、2次のためだけに特別厚くする根拠は弱い、という読み方が妥当です。
- 並べ替え検定とHolm補正とは何ですか?
- 並べ替え検定は、前期と後期のラベルを無作為に入れ替えて差を作り直す作業を20,000回繰り返し、実際に観測された差がどのくらい珍しいかを見る方法です。Holm補正は、8つのテーマを同時に検定すると偶然の当たりが出やすくなるため、その分だけ基準を厳しくする調整です。
- 感染症の記述は今後も出ますか?
- 分かりません。令和7年度は1万字あたり1.1回まで下がっており、直近では減っています。ただし本記事は過去の出現を数えたもので、将来の出題を予測するものではありません。

