事例Ⅲの最後の設問は「これから」の話——19年中16年が新事業・受注拡大、趣旨は8年とも「助言する能力」
この記事の結論
- 事例Ⅲの最終問の論点は、19年のうち16年(84%)が新事業・受注拡大でした。
- 直近8年は、出題の趣旨が8年とも「助言する能力を問う問題である」で終わっています。
- 字数は100〜140字、配点は20点か30点。事例Ⅲでいちばん重い設問のひとつです。
- 8年のうち5年は設問文が社長の構想を名指ししています。方向ではなく実現方法を書く設問です。
事例Ⅲは第1問で「強みと弱み」を聞かれることが多い、というのはよく言われる話です(19年中17年)。では最後の設問はどうでしょうか。当サイトでは2007〜2025年度の事例Ⅰ〜Ⅲの全設問に論点ラベルを手作業で付けています。そのラベルで事例Ⅲの最終問だけを取り出すと、19年のうち16年が「新事業・受注拡大」でした。さらに直近8年は、協会が公表している出題の趣旨を逐語で並べると、8年とも同じ言葉で終わっています。この記事は、その型と、そこから読み取れる「何を書く設問なのか」をまとめたものです。
19年分の最終問を並べる
事例Ⅲの最終問は、19年のうち16年(84%)が新事業・受注拡大の論点でした。
事例Ⅲの序盤は、生産計画・工程管理、納期・リードタイム、在庫・調達といった「いま工場で起きている問題」が並びます。ところが最後の設問だけは傾向が変わり、新しい取引・新しい製品・新しい事業といった「これから」に寄ります。19年のうち16年、割合にして84%です。8年を超える年数があり、半分を大きく超えているので、ここは「定番」と言ってよい水準です。
例外は3年です。2008年度は標準化・技能育成、2009年度は生産計画・工程管理、2011年度はIT・情報共有が最終問でした。いずれも2011年度以前で、2012年度以降の14年はすべて新事業・受注拡大が最終問に置かれています。ただし「必ずそうなる」と読むのは行き過ぎです。
出題の趣旨は、8年とも同じ言葉で終わる
2018〜2025年度の最終問は、公表されている出題の趣旨が8年とも「助言する能力を問う問題である」で終わっています。
論点ラベルは当サイトが付けたものなので、それだけを根拠にするのは心もとないところがあります。そこで、協会が試験後に公表している「出題の趣旨」を、最終問について逐語で並べました。文章として手元にある2018〜2025年度の8年分です。
| 年度・設問 | 出題の趣旨(逐語) | 字数 / 配点 |
|---|---|---|
| 2018年度 第5問 | 「C社の経営環境と事業内容の現状を把握し、立地環境や経営資源を生かして付加価値を高めるための今後の戦略について、助言する能力を問う」 | 120字 / 20点 |
| 2019年度 第4問 | 「新工場が稼働し、X社からの新規受託生産が開始された後のC社の戦略について、助言する能力を問う」 | 120字 / 20点 |
| 2020年度 第4問 | 「モニュメント事業の充実と拡大を狙うC社の戦略について、助言する能力を問う」 | 120字 / 20点 |
| 2021年度 第4問 | 「直営店事業を計画しているC社が、経営資源を有効に活用し、最大の効果を得るための自社ブランド製品戦略とそのための社内対応について、助言する能力を問う」 | 140字 / 30点 |
| 2022年度 第5問 | 「ホームセンターX社との新規取引に応えることによって、C社の今後の戦略に影響する製品や市場、業績などに生じる新たな可能性について、助言する能力を問う」 | 100字 / 20点 |
| 2023年度 第5問 | 「工場増築などの設備投資によって生産体制を構築し、新規事業の生産に対応しようとするC社社長の構想の妥当性とその理由、またその際の留意点について、助言する能力を問う」 | 140字 / 30点 |
| 2024年度 第5問 | 「小規模の工場施設や物流施設の新設や更新を計画している企業と直接契約し、自社企画の製品を設計、製造することで事業を拡大しようとするC社社長の構想について、C社の経営資源の課題などを整理し、成功するために必要な推進方法を助言する能力を問う」 | 120字 / 20点 |
| 2025年度 第4問 | 「新事業として食品用・医療用製品へ参入するため、C社の課題を整理し、実現するために必要な社内の取り組みについて、助言する能力を問う」 | 120字 / 30点 |
8年とも「助言する能力を問う」で終わっています。見落としやすいのは2019年度で、設問文は「述べよ」でした。それでも趣旨は助言です。設問文の語尾が「述べよ」であっても、この位置では助言を書くことが求められていた、と読めます。
字数と配点——事例Ⅲでいちばん重い設問のひとつ
8年とも100〜140字、配点は20点か30点。30点の年が3年あります。
字数は100字が1年、120字が5年、140字が2年です。配点は20点が5年、30点が3年。100点の事例のうち20〜30点がここに集まっているので、時間切れでいちばん最後に手を付けて薄くなると、失点が大きく響きます。
字数と配点は年度によって変わります。ここに書いた範囲は2018〜2025年度の実績で、来年これと同じになる保証はありません。
設問文が「方向」を先に書いている年がある
8年のうち5年は、設問文にC社社長の構想が書かれています。方向を決める設問ではなく、実現方法を書く設問です。
2020・2021・2022・2023・2024年度の5年は、設問文に「C社社長は〜と考えている」「C社社長が積極的に取り組みたいと考えている」といった形で、社長がやりたいことがはっきり書かれています。この場合、答案で「その方向がよいかどうか」を一から検討し直す必要はありません(2023年度のように妥当性を問われている年は別です)。書くべきなのは、その構想を実現するために社内で何をするか、というほうです。
- 1最終問の設問文を先に読み、社長の構想が書かれているかを確かめる(書かれていれば、答案の方向はそこで決まっている)。
- 2その構想に対して、与件文のどこが追い風(強み・既存の経営資源)で、どこが向かい風(課題)かを拾う。趣旨でも「経営資源」という語が3年、課題の整理を求める書き方が2年で出てきます。
- 3序盤の設問で答えた改善策(生産計画・標準化・情報共有など)と矛盾しない形で、実現の手立てを並べる。
- 4字数の範囲に収める。120字なら要素は3つ前後が目安です。
残り3年(2018・2019・2025年度)は設問文に社長が出てきません。それでも趣旨は助言でしたから、与件文のどこかに書かれている会社の意向を拾って方向を決めることになります。設問文に書かれていないときほど、与件文の後半(会社の今後についての記述)が効いてきます。
この記事が示せるのは「何が問われてきたか」までです。どう書けば点が入るかは、答案と得点の対応を別途調べる必要があり、当サイトでも検証の途中です。ここに書いた書き方は、出題の趣旨の言葉から素直に導ける範囲にとどめています。
第1問と最終問で、事例Ⅲの両端が決まっている
第1問は強み・弱み(19年中17年)、最終問は新事業・受注拡大(19年中16年)。事例Ⅲは両端が読みやすい事例です。
事例Ⅲは、入口で「いまのC社の強みと弱み」を確認し、中盤で工場の問題を潰し、出口で「その強みを使って次に何をするか」を助言する——という並びが19年を通しておおむね保たれています。第1問と最終問の両方が8割超で同じ論点に当たるのは、事例Ⅰ〜Ⅲの中では事例Ⅲだけです(事例Ⅰには定位置と言える論点がありません)。
この記事のまとめ
- 事例Ⅲの最終問の論点は、19年のうち16年(84%)が新事業・受注拡大でした。
- 直近8年は、出題の趣旨が8年とも「助言する能力を問う問題である」で終わっています。
- 字数は100〜140字、配点は20点か30点。事例Ⅲでいちばん重い設問のひとつです。
- 8年のうち5年は設問文が社長の構想を名指ししています。方向ではなく実現方法を書く設問です。
よくある質問
- 事例Ⅲの最終問は必ず「新事業」ですか?
- 必ずではありません。19年のうち16年(84%)です。2008・2009・2011年度は生産現場側の論点が最終問でした。ただし2012年度以降の14年はすべて新事業・受注拡大です。
- 設問文が「述べよ」なら助言でなくてよいのですか?
- 2019年度は設問文が「述べよ」でしたが、公表された出題の趣旨は「助言する能力を問う問題である」でした。語尾だけで判断しないほうが安全です。
- この記事の年数はどこから来ていますか?
- 論点の集計は2007〜2025年度の19年分、出題の趣旨の逐語引用は文章として手元にある2018〜2025年度の8年分です。範囲が違うので、記事中でも分けて書いています。

