令和3年度 事例Ⅲの解説|与件文のどこを使い、答案に何を書くか
この記事の結論
- 2次試験に正解は公表されません。公表されるのは設問ごとの出題の趣旨です。
- 令和3年度 事例Ⅲは4問中3問が助言。分析だけの準備では足りません。
- 解答字数は20字から140字まで5種類。書く量の切り替えが要る年です。
- 答案に入れる要素は与件文に紐づけます。この記事は段落番号まで示します。
2次試験は正解が公表されないので、答案が当たっていたかを誰も確かめられません。ただし試験実施機関は毎年「出題の趣旨」を公表しており、何を問うたのかを出題側が語っている文はここにしかありません。この記事では令和3年度 事例Ⅲの4設問について、趣旨を引用し、そこから答案に入れる要素と字数の配り方を導きます。この年は第1問だけが分析で、残る3問の趣旨は助言でした。解答字数も20字から140字まで5種類あります。要素は一般論ではなく、すべて与件文の記述に紐づけ、どの段落から来ているかを添えています。
この年の事例Ⅲは、どんな回か
与件文2,323字・解答字数の合計400字。80分の内訳は読む12分/考える52分/書く16分です。
| 設問 | 要求語 | 配点 | 解答字数 | この位置で多い論点 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 述べる | 20点 | 40字 | ◎ 強み・弱みの分析 90%(69〜97%) |
| 第2問 | 助言 | 30点 | 20字 / 80字 | 生産計画・工程管理 42%(23〜64%) |
| 第3問 | 述べる | 20点 | 120字 | 新事業・受注拡大 32%(15〜54%) |
| 第4問 | 助言 | 30点 | 140字 | ◎ 新事業・受注拡大 67%(44〜84%) |
| 設問 | 書く時間の目安 | 考える時間の目安 |
|---|---|---|
| 第1問 | 2分 | 10分 |
| 第2問 | 4分 | 16分 |
| 第3問 | 5分 | 10分 |
| 第4問 | 6分 | 16分 |
読む時間は与件文の分量から、書く時間は解答字数から決まります。動かせるのは真ん中の考える52分だけなので、これをどの設問に配るかが、この年の80分の設計になります。上の数字は前提を置いた試算なので、自分の読む速さ・書く速さを一度計って置き換えてください。
与件文の形(段落ごとの字数と語の数)
逆接と否定・課題を表す語がいちばん多いのは第3段落で、合わせて2語です。
本文は載せていません。段落ごとに何字あり、逆接・否定・年代の語が何回出てくるかだけを数えたものです。これらの語が集まる段落は課題を問う設問の根拠になっていることが多いので、どこを速く読み、どこで手を止めるかの当たりをつける用途に使ってください。
① この会社に何が起きたか
下請けから始まった革バッグの工場が、熟練職人の手仕事で作る自社ブランドを育て、直営店を出すかどうかの前で立ち止まる話です。
まだ解いていない年度は、先に解いてから読むことをすすめます。この記事は与件文の中身に触れます。
C社は革バッグを作って売る50名の会社です(総務・経理5名、製品デザイン5名、製造40名)。バッグメーカーX社の縫製の一部を請け負う下請けとして創業し、工程を増やして一貫生産までできるようになりました。しかしX社が生産を東南アジアへ移して量が減り、いまは4社から10アイテムを預かる形で、中心は安い品です。
同じ時期に製品デザイン部門を作り、自社ブランドを育ててきました。旅行雑誌に取り上げられて手作り感のある高級仕様が注目され、作れる量を超える注文が来たことが決め手になります。いまは自社のウェブサイトが販売の中心で、品目25、売上の20%ほどですが収益に貢献しています。
(直営店を出して自社ブランドを広げたい。企画も製造も、いまのままでは不安がある。)
工場は5工程(裁断・縫製・仕上げ・検品・包装と出荷)。生産管理の担当者が1人で、受託も自社ブランドも修理も受け、月1回の計画を立てています。受託は注文を受けてから作り、多めのロットで残りを在庫に。自社ブランドは見込みで作るため、足りなくなったり余ったりします。
縫製は熟練職人6名を含む最多の工程で、自社ブランドでは1人が裁った革から立体まで受け持ち、仕上げも続けて担当します。ただし熟練職人の高齢化が進み、若手には作業を細かく分けて受け持たせているため、1人でバッグを作る技術が育っていません。社長は直営店を出すかどうかで迷っています。
「自社ブランドは、縫いから仕上げまで一人で受け持つ。ほとんどが手縫いだ。」
(作業を細かく分けて覚えている。ただ、1つのバッグを最後まで作れるようにはならない。)
ここからは、この年の読みどころです。与件文を正しく読めても、設問との噛み合わせを外すと点になりません。
- **第2問は課題が20字、対応策が80字です。** 20字は1文にもなりません。工場の何を課題と呼ぶかを1つに決めてから書かないと、対応策の80字がどこにもつながらなくなります。
- **第2問は受託品の話に限られています。** 自社ブランドの作り方(1人で仕上げまで担当)を書くと、対象がずれます。多めのロットと在庫、月1回の計画とその都度の直しが、受託側の手がかりです。
- **第3問は製品デザイン部門の話です。** 社長の気がかりは2つあり、企画・開発の経験が乏しいことと、製造が対応できるかどうか。第3問は前者、第4問は後者に寄っています。
- **第4問は2つのうちどちらを選ぶかを決める設問です。** 熟練職人の手作りで高級感を出すか、分業と標準化でアイテム数を増やすか。両方の良いところを取る書き方をすると、選んだことになりません。140字あるので、選んだ理由と、その先の対応まで書けます。
読みどころは当サイトの見立てで、公表された正解ではありません。2次試験に公式解答はないので、ここは「どこで噛み合わなくなりやすいか」の整理として読んでください。
② 使ってほしい資産|与件文のどの言葉を答案に持ち込むか
この事例の資産は、一貫して作れる受託の力と、熟練職人の手仕事で作る高級な自社ブランド、そしてオンラインの販路に固まっています。
以下の段落番号は、与件文の先頭から数えた順番です。【C社の概要】のような見出しの行も1段落として数えています。ただし【生産の現状】だけは第7段落の末尾に付いており、独立した段落にはなっていません。
左の列は与件文をそのまま引いたものです。右の列は、それを答案の語に置き換えたもの。置き換えれば加点されるという意味ではありません(加点の基準は公表されていません)。答案の字数が短いので、同じ内容を短い語で持ち込む必要がある、という事情によるものです。
| 与件文の言葉 | 答案での言い方 | 段落 | 効く設問 |
|---|---|---|---|
| 「X社が企画・デザインした製品の完成品までの一貫受託生産ができるようになり」 | 完成品までの一貫受託生産 | 第3段落 | 第1問(強み) |
| 「製品デザイン部門を新設し、自社ブランド製品の企画・開発、販売を進めてきた」 | 自社ブランドを担う製品デザイン部門 | 第4段落 | 第3問 |
| 「手作り感のある高級仕様が注目された」 | 手作り感のある高級仕様 | 第4段落 | 第1問(強み)・第4問 |
| 「高価格品であったが生産能力を上回る注文を受けた経験があり」 | 高価格でも能力を超えた受注の実績 | 第4段落 | 第4問 |
| 「小売店との取引も始められた」 | バッグ小売店との取引 | 第4段落 | 第4問 |
| 「インターネットによるオンライン販売も開始し、今では自社ブランド製品販売の中心となっている」 | 自社ブランドの中心となるオンライン販売 | 第4段落 | 第3問・第4問 |
| 「C社売上高の20%程度ではあるが、収益に貢献している」 | 収益に貢献する自社ブランド | 第4段落 | 第1問(強み) |
| 「天然素材のなめし革を材料にして、熟練職人が縫製、仕上げ加工する高級品」 | 熟練職人が作る高級品 | 第6段落 | 第1問(強み)・第4問 |
| 「そのため自社ブランド製品の修理も行っている」 | 自社ブランド製品の修理対応 | 第6段落 | 第4問 |
| 「新製品は、インターネットのオンライン販売情報などを活用して企画している」 | オンライン販売情報を使った企画 | 第6段落 | 第3問 |
| 「C社内の製造工程では一番機械化されている」 | 機械化された裁断工程 | 第12段落 | 第2問 |
| 「一番多くの熟練職人6名が配置されている縫製工程」 | 熟練職人6名の縫製工程 | 第13段落 | 第1問(強み)・第2問・第3問 |
| 「そのほとんどの作業は丁寧な手縫い作業(手作業)で行われる」 | 丁寧な手縫いの作業 | 第13段落 | 第4問 |
| 「縫製工程のリーダーが各作業者の熟練度を考慮して決めている」 | 熟練度を見た作業の割り当て | 第13段落 | 第2問 |
| 「若手職人の養成を行っている」 | 若手職人の養成 | 第15段落 | 第2問・第4問 |
15行は2つの束に分かれます。前半の7つが自社ブランドの事業に関わるもの、後半の4つが工場の中の力です。残りは受託生産の実績と小売店との取引にあたります。
第1問で使う強みは、この表の上下から拾います。受託で完成品まで作れることと、自社ブランドを手仕事で作れること。C社は性格の違う2つの事業を同じ工場で回しています。
第4問で効くのは自社ブランド側の6つです。雑誌で注目されたこと、能力を超える注文が来たこと、修理まで引き受けていること。どれも手仕事の路線を支える材料になります。
③ 改善してほしいこと|与件文が課題として書いている言葉
課題は生産計画と在庫、縫製工程への負荷の集中、そして人の育ち方の3系統です。第2問と第3問はここからほぼ作れます。
表の形は②と同じです。左が与件文の言葉、右が答案での言い方。数が多いのは、与件文の後半が工場の現状を工程ごとに書き並べているからです。
| 与件文の言葉 | 答案での言い方 | 段落 | 効く設問 |
|---|---|---|---|
| 「受注量は多いものの低価格品が主となっている」 | 低価格品が中心の受託生産 | 第3段落 | 第1問(弱み)・第4問 |
| 「製品デザイン部門には新製品の企画・開発経験が少ない」 | 新製品の企画・開発経験の乏しさ | 第7段落 | 第1問(弱み)・第3問 |
| 「生産計画は月1回作成し」 | 月1回の生産計画 | 第8段落 | 第2問 |
| 「計画立案後の受注内容の変動や特急品の割込みによって月内でもその都度変更される」 | 計画のたび重なる変更 | 第8段落 | 第2問 |
| 「1回の受注量は年々小ロット化している」 | 受注の小ロット化 | 第9段落 | 第2問 |
| 「受注量よりも多いロットサイズで生産を計画し、納品量以外は在庫保有している」 | 受注量を超えるロットと在庫 | 第9段落 | 第2問 |
| 「欠品や過剰在庫が生じることがある」 | 自社ブランドの欠品と過剰在庫 | 第10段落 | 第3問 |
| 「発注から納品までの期間が1カ月を超える資材もあり」 | 納期の長い資材 | 第12段落 | 第2問 |
| 「資材欠品が生じた場合、生産計画の変更が必要となる」 | 資材の欠品による計画変更 | 第12段落 | 第2問 |
| 「C社製造工程中最も負荷が大きく時間を要する工程となっている」 | 負荷が最も重い縫製工程 | 第13段落 | 第2問・第3問 |
| 「すべてを一人で製品ごとに熟練職人が担当し」 | 1人で仕上げる自社ブランドの生産 | 第13段落 | 第3問・第4問 |
| 「熟練職人の高齢化が進み、今後退職が予定されている」 | 熟練職人の高齢化と退職 | 第15段落 | 第1問(弱み)・第3問・第4問 |
| 「細分化した作業分担制で担当作業の習熟を図ろうとしているが」 | 細分化した作業分担制の育成 | 第15段落 | 第4問 |
| 「バッグを一人で製品化するために必要な製造全体の技術習熟が進んでいない」 | 全体の技術が身につかない若手 | 第15段落 | 第1問(弱み)・第3問・第4問 |
| 「製品の出来栄えのばらつきが発生した場合、手直し作業も担当する」 | 出来ばえのばらつきと手直し | 第16段落 | 第2問 |
②③はどちらもC社の内側を並べた表です。X社が生産を海外へ移したことのような、会社の外で起きた出来事は載っていません。材料は①に書きました。
15行のうち7つが計画と在庫と資材の話です。月に1度しか計画を作らず、そのつど直し、受注より多く作って在庫を持ち、納期の長い資材を切らす。第2問の材料はここに集まっています。
残る5つは人と工程の話です。縫製に負荷が集まり、自社ブランドは1人で仕上げ、熟練職人は退職を控え、若手には全体の技術が身についていない。第3問と第4問はここから組みます。
手がかりは、公表された出題の趣旨にある
趣旨は設問ごとに「何を問うたか」を書いた文です。この年の事例Ⅲは、第1問だけが分析で、残る3問は助言でした。
出題の趣旨は「〜する能力を問う問題である」という定型文で書かれます。この「〜する能力」の部分が、答案の文末の向きを決めます。分析と書かれていれば起きている事実を切り分け、助言と書かれていれば打ち手を示します。
令和3年度 事例Ⅲは、革製バッグを作るC社の事例です。4設問の配点・字数と、趣旨が名指ししている能力を並べると次のようになります。
| 設問 | 配点 | 解答字数 | 趣旨が名指しする能力 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 20点 | 40字以内(2欄) | 分析 |
| 第2問 | 30点 | 20字以内と80字以内(各2欄) | 助言(課題を整理し対応策) |
| 第3問 | 20点 | 120字以内 | 助言 |
| 第4問 | 30点 | 140字以内 | 助言 |
字数の種類が多い年です。20字、40字、80字、120字、140字の5種類。20字は名詞で言い切る欄、140字は要求が3つ入る欄。同じ書き方では埋まりません。
第2問と第4問で60点、全体の6割を占めます。しかも第2問は20字が2つと80字が2つで、書く欄が4つ。手数がいちばんかかる設問です。
第1問 業界の中での強みと弱み|40字ずつ
趣旨は「事業内容を把握し」と前置きしています。受託生産と自社ブランドの2本立てを踏まえたうえでの強みと弱みです。
出題の趣旨(引用)。「C社の事業内容を把握し、革製バッグ業界におけるC社の強みと弱みを分析する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
名指しされている能力は分析です。打ち手を書く欄ではありません。しかも「革製バッグ業界における」と範囲が付いているので、業界の中で他社と比べたときの位置づけを示す必要があります。
| 観点 | ②③のどの材料を使うか |
|---|---|
| 強み(内部) | 完成品までの一貫受託生産/熟練職人が作る高級品/手作り感のある高級仕様/熟練職人6名の縫製工程/収益に貢献する自社ブランド |
| 弱み(内部) | 低価格品が中心の受託生産/新製品の企画・開発経験の乏しさ/熟練職人の高齢化と退職/全体の技術が身につかない若手 |
強みは5つ、弱みは4つ。40字に入るのは2つか3つです。強みは自社ブランドの品質と、受託で完成品まで作れる体制の2系統から取ると、事業の両輪が示せます。
弱みで迷うのは、低価格品が中心という記述を入れるかどうかです。これは受託の側の話で、業界の中での立ち位置を表しています。この記事は、それと人の問題を並べました。
次は正解ではありません。趣旨が求めた分析を40字ずつに収めるとこうなる、という例です。
以下2つは当サイトの解答例です。模範解答ではありません。
熟練職人が手作りする高級な自社ブランドと、完成品まで一貫して作れる受託の体制。
38マス / 40マス
受託は低価格品が中心で企画・開発の経験が乏しく、熟練職人の高齢化も進む点。
37マス / 40マス
第2問 受託品の効率化|課題20字と対応策80字
趣旨は「課題を整理し、その対応策」の形です。課題だけを書いても、打ち手だけを書いても、要求の半分になります。
出題の趣旨(引用)。「C社の受託製品の受注生産工程について、効率化を進める上で必要な課題を整理し、その対応策を助言する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
対象が限られています。受託の品の工程です。自社ブランドの話や、直営店の話をここで書くと、趣旨が示した範囲から外れます。
20字の欄は課題を名詞で言い切る場所、80字の欄はその課題に対する打ち手を書く場所です。20字に打ち手を混ぜると、対応策の欄と中身が重なります。
- 計画の側。月1回の生産計画と、計画のたび重なる変更(第8段落)。
- 在庫の側。受注の小ロット化が進むのに、受注量を超えるロットと在庫を持っている(第9段落)。
- 資材の側。納期の長い資材があり、資材の欠品による計画変更が起きる(第12段落)。
- 工程の側。負荷が最も重い縫製工程が、受託品と自社ブランドと修理を抱えている(第13段落)。
- 人の側。熟練度を見た作業の割り当てはあるが、熟練職人6名の縫製工程に作業が集まる(第13段落)。
- 品質の側。出来ばえのばらつきと手直しが検品で発生している(第16段落)。
- 使える資産。機械化された裁断工程と、若手職人の養成がすでに始まっている(第12・第15段落)。
課題は2つに束ねられます。1つは計画と在庫と資材をまとめた段取りの話、もう1つは縫製に負荷が集まる工程の話。7つの材料は、このどちらかに入ります。
縫製の側の打ち手は、作業を分けることです。部品ごとに縫う作業なら若手でも担えるので、熟練職人を腕の要る作業へ寄せられます。作業の手順をそろえておくと、育成の速さも変わります。
段取りの側は、計画の周期とロットの決め方です。受注が小さくなっているのに多めに作れば、在庫だけが増えます。資材も計画から必要量を出して発注する形にすると、切らす回数が減ります。
手順書や所要量計算という言葉は与件文にありません。書かれている状態から導いた打ち手で、ここは当サイトの見立てです。
次は正解ではありません。趣旨が挙げた課題と対応策を、20字と80字に収めるとこうなる、という例です。
以下4つは当サイトの解答例です。模範解答ではありません。
負荷が集中する縫製工程の生産性の向上
18マス / 20マス
部品ごとに縫う作業と全体を組み立てる作業を切り分け、手順を標準化して若手に部品側を任せる。熟練職人は腕の要る作業と修理に専念させ、縫製工程の負荷を平準化する。
79マス / 80マス
小ロット化に対応した生産計画と在庫削減
19マス / 20マス
生産計画の作成を月1回から短い周期に改め、受注量に合わせたロットで作って在庫を減らす。資材は計画から必要量を出して発注し、納期の長い品は早めに手配して欠品を防ぐ。
80マス / 80マス
第3問 自社ブランドの開発強化|120字
趣旨は製品企画面と生産面の2つを名指ししています。どちらかだけを厚く書くと、要求の半分が空になります。
出題の趣旨(引用)。「C社自社ブランド製品の開発強化の計画を実現するために必要となる製品企画面と生産面の課題について、助言する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
設問文は課題を問うています。趣旨の能力は助言なので、困っている状態を並べるだけでは足りません。どうすれば実現できるかまで書きます。
材料が無いわけではありません。すでに自社ブランドを企画してきた部門があり、オンラインで顧客の反応も取れています。足りないのは経験と、作れる量です。
- 企画の課題。新製品の企画・開発経験の乏しさが、社長の不安として書かれている(第7段落)。
- 企画の材料。オンライン販売情報を使った企画が、すでに新製品の手がかりになっている(第6段落)。
- 企画の担い手。自社ブランドを担う製品デザイン部門が5名いる(第4段落)。
- 企画の接点。自社ブランドの中心となるオンライン販売から顧客の反応が届く(第4段落)。
- 生産の課題。負荷が最も重い縫製工程に、受託品も修理も集まっている(第13段落)。
- 生産の課題。1人で仕上げる自社ブランドの生産が、熟練職人に依存している(第13段落)。
- 生産の課題。熟練職人の高齢化と退職に対し、全体の技術が身につかない若手(第15段落)。
- 在庫の課題。自社ブランドの欠品と過剰在庫が生じている(第10段落)。
企画の側は、経験の不足をどう埋めるかです。顧客の反応がオンラインから届いており、修理を通じて使い込んだあとの声も入ってきます。この2つを集めて残す形にすると、企画の材料が積み上がります。
生産の側は、作れる量の確保です。自社ブランドを増やすと、いまの形では熟練職人が受託の作業から抜けることになります。若手が製品を通して作れるようにならないと、量は増えません。
修理から顧客の声を集めるという案は、修理を引き受けている事実から導いたものです。与件文に声を集めているという記述はないので、ここは当サイトの見立てです。
次は正解ではありません。趣旨が挙げた2つの面を120字に収めるとこうなる、という例です。
製品企画面は、経験の乏しい製品デザイン部門を強くすること。オンライン販売と修理から届く顧客の声を集めて蓄積し、企画に活かす。生産面は、熟練職人に頼った生産能力を高めること。若手が製品全体を作れるように育て、縫製工程の負荷を下げていく。
117マス / 120マス
第4問 直営店に向けてどちらを選ぶか|140字
趣旨は製品戦略と社内対応の2つを求めています。どちらを選ぶかだけを書くと、要求の半分が空になります。
出題の趣旨(引用)。「直営店事業を計画しているC社が、経営資源を有効に活用し、最大の効果を得るための自社ブランド製品戦略とそのための社内対応について、助言する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
設問文が2つの道を示しています。熟練職人の手作りで高級感を出すか、若手も含めた分業と標準化で品目を増やすか。趣旨は「経営資源を有効に活用し」と条件を付けているので、いま持っているもので選びます。
答案の形は3つに割れます。どちらを選ぶか、なぜそちらか、そのために社内で何をするか。140字あっても、理由を厚く書くと社内対応が消えます。
- 手作りを支える材料。手作り感のある高級仕様が雑誌で注目された(第4段落)。
- 手作りを支える材料。高価格でも能力を超えた受注の実績がある(第4段落)。
- 手作りを支える材料。熟練職人が作る高級品と、丁寧な手縫いの作業(第6・第13段落)。
- 手作りを支える材料。自社ブランド製品の修理対応まで引き受けている(第6段落)。
- 分業が難しい理由。熟練職人の高齢化と退職が控えている(第15段落)。
- 分業が難しい理由。細分化した作業分担制の育成では、全体の技術が身につかない若手が残る(第15段落)。
- 社内対応の種。1人で仕上げる自社ブランドの生産を、若手にも広げる必要がある(第13段落)。
- 社内対応の種。低価格品が中心の受託生産を絞れば、縫製工程の余力が生まれる(第3・第13段落)。
手作りの側を選ぶのが素直です。値が張っても注文が来た実績があり、雑誌が取り上げたのも手作り感でした。直営店という売り場は、その良さを直に伝えられる場所でもあります。
分業と標準化の側は、いまの人の状態では取りにくい道です。熟練職人が退職を控え、若手には全体の技術が身についていません。品目を増やしても、作る力が追いつかない恐れがあります。
社内対応の芯は、若手の育て方を変えることです。作業を細かく分けて覚えさせる形のままでは、1人で製品を仕上げられる職人が育ちません。熟練職人が残っているうちに、通しで作らせる必要があります。
受託の低価格品を絞るという案は、収益に貢献しているのが自社ブランドだと書かれていることに支えられています。ただし取引を減らす判断までは書かれていないので、そこは当サイトの見立てです。
次は正解ではありません。趣旨が挙げた2つの要求を140字に収めるとこうなる、という例です。
熟練職人の手作りで高級感を出す道を選ぶ。理由は①手作り感のある高級仕様が注目され、高価格でも能力を超える注文の実績があり、②分業と標準化は熟練職人の退職と若手の技術不足では品質を保てないため。対応は、若手に製品を通して担当させ熟練職人が指導し、受託の低価格品を絞り縫製工程の余力を作る。
140マス / 140マス
書いた答案を数える
答案を書き終えたら、上の②③の表から作ったこの一覧で、自分が何を入れられたかを数えてください。
| 設問 | 与件文から持ち込める材料 |
|---|---|
| 第1問 | 完成品までの一貫受託生産/手作り感のある高級仕様/収益に貢献する自社ブランド/熟練職人が作る高級品/熟練職人6名の縫製工程/低価格品が中心の受託生産/新製品の企画・開発経験の乏しさ/熟練職人の高齢化と退職/全体の技術が身につかない若手 |
| 第2問 | 機械化された裁断工程/熟練職人6名の縫製工程/熟練度を見た作業の割り当て/若手職人の養成/月1回の生産計画/計画のたび重なる変更/受注の小ロット化/受注量を超えるロットと在庫/納期の長い資材/資材の欠品による計画変更/負荷が最も重い縫製工程/出来ばえのばらつきと手直し |
| 第3問 | 自社ブランドを担う製品デザイン部門/自社ブランドの中心となるオンライン販売/オンライン販売情報を使った企画/熟練職人6名の縫製工程/新製品の企画・開発経験の乏しさ/自社ブランドの欠品と過剰在庫/負荷が最も重い縫製工程/1人で仕上げる自社ブランドの生産/熟練職人の高齢化と退職/全体の技術が身につかない若手 |
| 第4問 | 手作り感のある高級仕様/高価格でも能力を超えた受注の実績/バッグ小売店との取引/自社ブランドの中心となるオンライン販売/熟練職人が作る高級品/自社ブランド製品の修理対応/丁寧な手縫いの作業/若手職人の養成/低価格品が中心の受託生産/1人で仕上げる自社ブランドの生産/熟練職人の高齢化と退職/細分化した作業分担制の育成/全体の技術が身につかない若手 |
- 材料の数ではなく、選んだ理由を言えるかを見る。同じ材料でも、設問の要求語に合っていなければ答案は噛み合いません。
- その材料が与件文の第何段落から来たかを、答案を見ながら言えるか。言えないものは、与件文ではなく自分の一般論から来ています。
- 文末の向きが要求語と合っているか。助言なら施策の提案で、説明なら理由の記述で終わっているか。
書けなかった材料が多い設問は、与件文の読み落としではなく、時間が足りなかっただけのことがあります。どちらだったかは、答案を書いた直後にしか思い出せません。数え終えたら、その場でひとこと書き残しておくと次に効きます。
答案の書き方の型
100字前後のマスに要素を詰めるには、書き方の型が要ります。この型は年度と事例を問いません。
- 因果を明示する。「◯◯により△△」の形にすると、材料と結論のつながりが読み手に伝わります。
- 番号で並べる。「①…②…」は、要素をいくつ入れたかが自分にも採点する側にも見える形です。
- 名詞で締める。「〜を強化」「〜の向上」と体言で終えると、同じ内容が短いマス数に収まります。
この型は、用語そのものに点が入るという意味ではありません。字数の上限が決まっている以上、同じ内容をより短い形で持ち込めるほうが要素を多く入れられる、という事情によるものです。与件文にない事実をそれらしい言葉で埋めても、加点の根拠にはなりません。
この記事で言えないこと
- 2次試験は正解が公表されません。ここで示したのは要素の選び方と字数の収め方で、正解ではありません。
- 趣旨は「何を問うたか」であって「どう書けば加点されるか」ではありません。加点の検証は別の作業です。
- 設問ごとの配点は公表されていますが、要素ごとの内訳は公表されていません。第2問の30点を課題と対応策でどう配るかは分かりません。
- 第2問の課題を2つにまとめたのは当サイトの整理です。材料は7つあり、束ね方は1通りではありません。
- 第3問で修理から顧客の声を集める案を出したのは当サイトの見立てです。与件文には修理を行っているとしか書かれていません。
- 第4問で手作りの道を選んだのも当サイトの判断です。分業と標準化を選ぶなら、それを支える記述を与件文から出す必要があります。
- 段落番号は与件文の先頭からの通し番号です。【C社の概要】のような見出しの行も1段落として数えています。
- 字数は句読点も1字として数えています。実際の解答用紙のマスの数え方は、受験案内と解答用紙でご確認ください。
本記事の要素の整理と解答例は当サイトの独自のものです。出題の趣旨と問題(与件文・設問文)の著作権は一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会に帰属します。全文は試験実施機関の公表資料でご確認ください。
この記事のまとめ
- 2次試験に正解は公表されません。公表されるのは設問ごとの出題の趣旨です。
- 令和3年度 事例Ⅲは4問中3問が助言。分析だけの準備では足りません。
- 解答字数は20字から140字まで5種類。書く量の切り替えが要る年です。
- 答案に入れる要素は与件文に紐づけます。この記事は段落番号まで示します。
よくある質問
- この記事の解答例をそのまま覚えればよいですか?
- いいえ。2次試験は正解が公表されないため、この例が当たっているかは誰にも確かめられません。使い道は、趣旨が挙げた要素が字数にどう収まるかを見ることです。要素の選び方と削り方を自分の答案に移してください。
- 第2問の20字の欄には何を書けばよいですか?
- 課題を名詞で言い切ります。打ち手を混ぜると、隣の80字の欄と中身が重なります。20字は2つの単語がやっと入る長さなので、対象の工程と、そこで達成したい状態を並べる形が収まります。
- 第4問で分業と標準化を選んではいけませんか?
- 禁じられてはいません。ただし与件文は、熟練職人の退職が控え、若手に製品全体の技術が身についていないと書いています。分業を選ぶなら、それでも品質を保てる根拠を与件文から出す必要があります。この記事は手作りの道を置きました。
- 第2問と第3問で同じ縫製工程の話を書いてよいのですか?
- 使えます。ただし狙いを変えます。第2問は受託品の効率化のため、第3問は自社ブランドを増やす力を作るためです。趣旨も、第2問は受託製品の工程、第3問は自社ブランドの開発強化と対象を分けています。
- 与件文の段落番号は、どう数えていますか?
- 先頭からの通し番号です。この年は【C社の概要】が第1段落、【自社ブランド製品と今後の事業戦略】が第5段落として独立しています。ただし【生産の現状】だけは第7段落の末尾に付いており、独立した段落にはなっていません。




