令和5年度 事例Ⅲの解説|与件文のどこを使い、答案に何を書くか
この記事の結論
- 2次試験に正解は公表されません。公表されるのは設問ごとの出題の趣旨です。
- 令和5年度 事例Ⅲは設問が5問あります。1問あたりの時間が短くなります。
- 第1問だけが分析で、残る4問は趣旨が助言と書いています。
- 趣旨は5問中3問が「課題を整理し、その対応策」の形です。両方を書きます。
2次試験は正解が公表されないので、答案が当たっていたかを誰も確かめられません。ただし試験実施機関は毎年「出題の趣旨」を公表しており、何を問うたのかを出題側が語っている文はここにしかありません。この記事では令和5年度 事例Ⅲの5設問について、趣旨を引用し、そこから答案に入れる要素と字数の配り方を導きます。この年は設問が5問あり、第1問以外はすべて趣旨が助言と書いていました。要素は一般論ではなく、すべて与件文の記述に紐づけ、どの段落から来ているかを添えています。
この年の事例Ⅲは、どんな回か
与件文2,422字・解答字数の合計520字。80分の内訳は読む12分/考える47分/書く21分です。
| 設問 | 要求語 | 配点 | 解答字数 | この位置で多い論点 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 述べる | 10点 | 40字 | ◎ 強み・弱みの分析 90%(69〜97%) |
| 第2問 | 述べる | 20点 | 100字 | 生産計画・工程管理 42%(23〜64%) |
| 第3問 | 述べる | 20点 | 120字 | 新事業・受注拡大 32%(15〜54%) |
| 第4問 | 述べる | 20点 | 120字 | ◎ 新事業・受注拡大 67%(44〜84%) |
| 第5問 | 述べる | 30点 | 140字 | 新事業・受注拡大 100%(57〜100%) |
| 設問 | 書く時間の目安 | 考える時間の目安 |
|---|---|---|
| 第1問 | 2分 | 5分 |
| 第2問 | 4分 | 9分 |
| 第3問 | 5分 | 9分 |
| 第4問 | 5分 | 9分 |
| 第5問 | 6分 | 14分 |
読む時間は与件文の分量から、書く時間は解答字数から決まります。動かせるのは真ん中の考える47分だけなので、これをどの設問に配るかが、この年の80分の設計になります。上の数字は前提を置いた試算なので、自分の読む速さ・書く速さを一度計って置き換えてください。
与件文の形(段落ごとの字数と語の数)
逆接と否定・課題を表す語がいちばん多いのは第4段落で、合わせて1語です。
本文は載せていません。段落ごとに何字あり、逆接・否定・年代の語が何回出てくるかだけを数えたものです。これらの語が集まる段落は課題を問う設問の根拠になっていることが多いので、どこを速く読み、どこで手を止めるかの当たりをつける用途に使ってください。
① この会社に何が起きたか
ホテルと旅館の注文で回ってきた食品工場が、受注の回復と材料の値上がり、そして食品スーパーとの新規事業に同時に向き合う話です。
まだ解いていない年度は、先に解いてから読むことをすすめます。この記事は与件文の中身に触れます。
C社は業務用食品を作る60名の会社(うちパート40名)。売り先は温泉地の高級ホテルと高級旅館5軒で、それぞれの料理長から依頼が来て、和洋の総菜や菓子、パン類を少しずつ多くの種類作っています。社長は高級ホテルの料理人出身で、ホテル内レストランの品揃えを支える調理工場として1990年に立ち上げました。
「ホテルの料理人だった。厨房の仕事が分かる工場をつくりたくて興した。」
工場は班ごとの加工室に分かれていますが、設備の並びはホテルや旅館の厨房とほぼ同じ作りです。総菜の工程は前処理・計量カット・調理の3つで、どれも汎用の調理器具を使った手作業。作り方の指示は口伝えで、工場管理者とパートリーダーがパート従業員に直接教えています。
「班ごとに私が付いて教えている。材料の量は、長年の経験で見積もっている。」
何を作るかを決めるのは売り先です。料理長が来社して食材も量も手順も口頭で伝え、納入が始まってからも出来ばえを見て変更を指示します。口頭の仕様は工場管理者がメモ書き程度のレシピに起こしてきましたが、整理されていません。材料の手配はパートリーダーの経験に委ねられ、在庫の入出庫の記録が無いため在庫は増える方向へ動き、廃棄も出ています。
(作り方は料理長から口で聞く。書き留めてはいるが、整っていない。)
新しい話として、中堅の食品スーパーX社と総菜の商品企画を進めています。季節感と高級感で違いを出す案で、このために製品開発部が新設され、外から人を招きました。納める数は2日前に確定し、配送は1日2回。X社は10数店舗まで広げたい考えです。社長は前のめりですが、いまの生産力では受けきれないと見ています。
ここからは、この年の読みどころです。与件文を正しく読めても、設問との噛み合わせを外すと点になりません。
- **第1問は強みを2つ、40字で書きます。** 20字ずつです。しかも「生産面の」と限定されているので、料理長との関係や社長の経歴といった生産以外の話を入れると、外れます。
- **第2問から第4問は、同じ工場の弱点に別々の角度から当たります。** 口伝えの仕様と整理されないレシピ、経験に委ねた材料手配、記録の無い在庫。どの設問でも同じことを書くと、3問が同じ答案になります。どの弱点をどの設問で使うかを先に割り振ってください。
- **第4問は「自社企画」で、これまでとは仕事の向きが逆です。** これまでは売り先が決めた品を作ってきました。誰が何を決めるのかが変わる、という点が新設された製品開発部の意味です。
- **第5問は工場増築の構想が妥当かを問う、判断を求める設問です。** 140字あります。増築に賛成か反対かを言わずに一般論を書くと、判断したことになりません。
読みどころは当サイトの見立てで、公表された正解ではありません。2次試験に公式解答はないので、ここは「どこで噛み合わなくなりやすいか」の整理として読んでください。
② 使ってほしい資産|与件文のどの言葉を答案に持ち込むか
この事例の資産は、料理人としての経験・多品種少量に応える柔軟さ・衛生管理・新設の開発部に固まっています。
以下の段落番号は、与件文の先頭から数えた順番です。【企業概要】のような見出しの行も1段落として数えています。
左の列は与件文をそのまま引いたものです。右の列は、それを答案の語に置き換えたもの。置き換えれば加点されるという意味ではありません(加点の基準は公表されていません)。答案の字数が短いので、同じ内容を短い語で持ち込む必要がある、という事情によるものです。
| 与件文の言葉 | 答案での言い方 | 段落 | 効く設問 |
|---|---|---|---|
| 「最近新設した製品開発部」 | 新設した製品開発部 | 第2段落 | 第4問 |
| 「多品種で少量の食品を受託製造している」 | 多品種少量の受託製造力 | 第3段落 | 第1問・第4問・第5問 |
| 「ホテル調理場の作業内容などのマネジメントに熟知した現経営者」 | 調理場の管理に熟知した経営者 | 第4段落 | 第1問・第5問 |
| 「ホテルや旅館での料理人の経験がある」 | 料理人経験のある工場管理者 | 第7段落 | 第1問・第4問 |
| 「各製造班にはベテランのパートリーダー」 | 各班のベテランパートリーダー | 第7段落 | 第1問・第2問 |
| 「食品衛生管理上交差汚染を防ぐようゾーニングされている」 | 交差汚染を防ぐゾーニング | 第8段落 | 第1問・第5問 |
| 「鍋やボウル、包丁など汎用調理器具を使って手作業で進められている」 | 汎用調理器具による手作業 | 第10段落 | 第1問・第2問 |
| 「口頭で直接指示を受けて試作し決定する」 | 料理長と直接やり取りする試作 | 第12段落 | 第1問・第4問 |
| 「朝食用製品については販売先消費日の前日午後に製造し当日早朝に納品する」 | 短納期に応える納品 | 第15段落 | 第1問・第5問 |
| 「季節性があり高級感のある和食や洋食の総菜」 | 高級感のある総菜の企画力 | 第17段落 | 第4問・第5問 |
| 「中堅食品製造業で製品開発の実務や管理の経験がある」 | 製品開発の経験を持つ外部人材 | 第17段落 | 第4問 |
11のうち人に関わる3つ、「調理場の管理に熟知した経営者」「料理人経験のある工場管理者」「各班のベテランパートリーダー」が、この会社の芯です。第1問の生産面の強みは、ここから取れます。
「汎用調理器具による手作業」は読み方が2つあります。機械に頼らないから多品種少量に応えられる、という強みの側面と、生産性が上がらない、という弱みの側面です。この記事は第1問では強みの側に置きました。
残る「多品種少量の受託製造力」「交差汚染を防ぐゾーニング」「短納期に応える納品」は、新しい仕事を引き受けられる根拠になります。第5問で構想が妥当だと言うときの土台です。
③ 改善してほしいこと|与件文が課題として書いている言葉
課題は第11段落から第14段落に集中しています。口頭に頼る管理と、記録の無い在庫が、4問のうち3問の出発点です。
表の形は②と同じです。左が与件文の言葉、右が答案での言い方。第14段落だけで4行あるのは、調達から在庫、納期までの流れがひとつの段落に詰まっているためです。
| 与件文の言葉 | 答案での言い方 | 段落 | 効く設問 |
|---|---|---|---|
| 「総菜製造班は販売先ごとに製造を行っている」 | 販売先ごとの班編成 | 第7段落 | 第2問・第5問 |
| 「各加工室の設備機器のレイアウトはホテルや旅館の厨房と同様なつくりとなっている」 | 厨房と同じ設備レイアウト | 第8段落 | 第2問・第5問 |
| 「パート従業員に直接作業方法を指導、監督して行われている」 | 口頭指導に頼る作業管理 | 第11段落 | 第2問・第5問 |
| 「販売先のホテルや旅館が季節ごとに計画する料理メニューの中から、その販売先料理長が選定する食品で」 | 販売先主導の製品決定 | 第12段落 | 第4問 |
| 「工場管理者が必要によってメモ程度のレシピ」 | 標準化されていないレシピ | 第13段落 | 第2問・第4問 |
| 「月度生産計画に必要な食材や調味料の必要量を経験値で見積り」 | 経験値による必要量の見積り | 第14段落 | 第3問 |
| 「長年取引がある食品商社に月末に定期発注する」 | 月1回のまとめ発注 | 第14段落 | 第3問 |
| 「入出庫記録がなく、食材や調味料の在庫量は増える傾向にあり、廃棄も生じる」 | 入出庫記録の欠如と在庫の増加 | 第14段落 | 第3問 |
| 「その時点で納品遅れが判明し、販売先に迷惑をかけたこともある」 | 前日に判明する納品遅れ | 第14段落 | 第3問 |
| 「納品数量は納品日の2日前に確定する」 | 2日前に確定する納品数量 | 第18段落 | 第5問 |
| 「納品は商品の鮮度を保つため最低午前と午後の配送となる」 | 1日2回の配送 | 第18段落 | 第5問 |
| 「現在の生産能力では対応が難しく」 | 生産能力の不足 | 第19段落 | 第5問 |
②③はどちらもC社の内側を並べた表です。訪日の観光客の増加や中食の需要といった外側の変化は、この2つの表には載っていません。材料は①に書きました。
第7段落から第13段落の5行は、作る現場のやり方の話です。班が売り先ごとに固定され、設備は厨房と同じ並びで、指示は口頭。書き残されたレシピも整っていません。第2問と第4問はここから作れます。
第14段落の4行は、材料の流れの話です。必要量が経験頼み、発注は月に1回、記録が無いので在庫が積み上がり、遅れは前日まで分からない。第3問が問うている3つの管理は、この4行に全部あります。
第18段落と第19段落の3行だけが、新しい仕事の側の条件です。2日前に数が決まり、1日に2回運ぶ。いまの力では受けきれない。第5問の留意点は、この3つと既存事業のやり方を突き合わせると出てきます。
手がかりは、公表された出題の趣旨にある
趣旨は設問ごとに「何を問うたか」を書いた文です。この年の事例Ⅲは、5問のうち4問が助言でした。
出題の趣旨は「〜する能力を問う問題である」という定型文で書かれます。この「〜する能力」の部分が、答案の文末の向きを決めます。分析と書かれていれば起きている事実を切り分け、助言と書かれていれば打ち手を示します。
令和5年度 事例Ⅲは、ホテルと旅館に納める業務用食品を受託製造する会社の事例です。設問は5問あります。配点・字数と、趣旨が名指ししている能力を並べると次のようになります。
| 設問 | 配点 | 解答字数 | 趣旨が名指しする能力 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 10点 | 40字以内 | 分析(生産面の強み) |
| 第2問 | 20点 | 100字以内 | 助言(課題の整理と対応策) |
| 第3問 | 20点 | 120字以内 | 助言(調達・在庫・工程の課題と対応策) |
| 第4問 | 20点 | 120字以内 | 助言(企画開発の課題と社内対応策) |
| 第5問 | 30点 | 140字以内 | 助言(妥当性と理由、留意点) |
設問文のほうは、第2問から第4問が「述べよ」で終わっています。ところが趣旨はどれも助言と書いています。事実の説明で答案を終えると、趣旨が求めた対応策の側が空になります。
もうひとつ、第2問から第4問の趣旨はどれも「課題を整理し、その対応策について」という同じ形をしています。課題だけでも打ち手だけでも半分です。この年の事例Ⅲは、5問中3問がこの型でした。
設問が5問あるので、1問あたりに使える時間は4問の年より2割ほど短くなります。第5問だけ30点で140字なので、ここに厚みを残す配分になります。
第1問 生産面の強みを2つ|40字
趣旨は「生産面の強み」と限っています。営業の力や売り先との関係を書くと、問われていない答案になります。
出題の趣旨(引用)。「C社の生産面の強みについて、分析する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
名指しされている能力は分析です。5問のうち、分析はこの1問だけ。しかも配点は10点で字数は40字と、いちばん軽い設問です。設問文が「2つ」と数まで指定しているので、迷わず2つ挙げて終わります。
| 候補 | ②のどの材料か | 生産面と言えるか |
|---|---|---|
| 人の技術 | 料理人経験のある工場管理者/各班のベテランパートリーダー | 言える |
| 生産の柔軟さ | 多品種少量の受託製造力/汎用調理器具による手作業 | 言える |
| 衛生の管理 | 交差汚染を防ぐゾーニング | 言える |
| 納期への対応 | 短納期に応える納品 | 言える |
| 売り先との関係 | 料理長と直接やり取りする試作 | 生産面とは言いにくい |
40字で2つなので、1つあたり20字弱です。人の技術と生産の柔軟さを取ると、あとの設問とも噛み合います。第2問は人の育て方の話、第5問は量産への移行の話なので、どちらもこの2つを前提にできるからです。
「料理長と直接やり取りする試作」は魅力的ですが、趣旨が生産面と限っているので置き場に迷います。第4問の企画開発で使うほうが素直です。
次は正解ではありません。趣旨が求めた生産面の強みを40字に収めるとこうなる、という例です。
①料理人経験の工場管理者とベテランパートの技術力、②多品種少量の受託製造力。
38マス / 40マス
第2問 増えた受注に応える|100字
趣旨は「課題を整理し、その対応策」。設問文が生産面と限っているので、採用や営業の話は入りません。
出題の趣旨(引用)。「コロナ禍後の増加する受注量に対応するためのC社生産面の課題を整理し、その対応策について、助言する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
設問文が前提を示しています。受注が減った2020年以降、工場の稼働が落ちて出勤日数を調整した結果、高齢のパート従業員も辞めてしまった。そこへ受注が戻ってきて対応に困っている、という状況です。
人が減って仕事が増えた、という設問です。人を増やす話に逃げると、生産面という限定から外れます。いまいる人で回る形に作り替える、という向きで組み立てます。
- 詰まりその1。口頭指導に頼る作業管理なので、教える人がいないと新しい人が動けない(第11段落)。
- 詰まりその2。標準化されていないレシピしかなく、作り方が人に付いている(第13段落)。
- 詰まりその3。販売先ごとの班編成なので、忙しい班と空いた班があっても応援できない(第7段落)。
- 詰まりその4。厨房と同じ設備レイアウトで、量をさばく並びになっていない(第8段落)。
- 残っている力。各班のベテランパートリーダーがいて、教える側に回れる(第7段落)。
- 残っている力。料理人経験のある工場管理者が3名いて、作業内容を判断できる(第7・第11段落)。
- 前提。汎用調理器具による手作業なので、機械に置き換える余地がある(第10段落)。
打ち手の順番は決まっています。作り方を書き出して誰でも読める形にすること。それができて初めて、複数の作業をこなせる人を育てられ、班をまたいだ応援が成り立ちます。
設備の並びを直す話は、量が増えたときにだけ効きます。ホテルの厨房と同じ作りは、一品ずつ作るには向いていても、同じ品を数多く作るには向きません。字数が余ればここまで書けます。
100字なので、打ち手を3つ並べて効果を1文で締めるのが限界です。趣旨が「課題を整理し」と書いているので、打ち手の中に何を直すのかが読み取れる形にします。
次は正解ではありません。趣旨が挙げた課題と対応策を100字に収めるとこうなる、という例です。
①メモ程度のレシピと作業方法を標準化し、マニュアルとOJTで教育する。②販売先ごとの班編成を見直し、多能工化して班をまたぐ応援を可能にする。③加工室のレイアウトを整え機械化を進める。以て生産性を高める。
100マス / 100マス
第3問 材料高騰にどう対応するか|120字
趣旨が「資材調達管理、在庫管理、製造工程管理」と3つを名指ししています。1つでも欠けると要求が埋まりません。
出題の趣旨(引用)。「最近の材料価格高騰に対応するため、C社の資材調達管理、在庫管理、製造工程管理の課題を整理し、その対応策について、助言する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
この設問の趣旨は、書く枠をそのまま渡しています。調達、在庫、工程の3つ。設問文は材料の値上がりで収益性が下がっていることだけを示していますが、趣旨を読めば答案を3つに割ればよいと分かります。
値上がりそのものは止められません。同じ量を安く買うか、無駄になる量を減らすかのどちらかです。③の第14段落の4行は、どれも後者に効きます。
- 調達の課題。経験値による必要量の見積りで、計画と結びついていない(第14段落)。
- 調達の課題。月1回のまとめ発注なので、要る時期と買う時期がずれる(第14段落)。
- 在庫の課題。入出庫記録の欠如と在庫の増加が起きており、廃棄も出ている(第14段落)。
- 在庫の課題。前日に判明する納品遅れがあり、欠品と余剰が同時に起きている(第14段落)。
- 工程の課題。標準化されていないレシピなので、使う量が人によって振れる(第13段落)。
- 工程の課題。汎用調理器具による手作業で、下ごしらえで落とす量が安定しない(第10段落)。
- 手元にある情報。生産管理課が月ごとの生産計画を作っている(第14段落)。
調達の直し方は、計画から要る量を計算することです。月ごとの生産計画はすでに作られているので、そこから所要量を出せば、経験に頼る見積りを置き換えられます。買う時期も要る時期に寄せられます。
在庫の直し方は、まず記録を取ることです。入りと出が分からないと、適正な量も決められません。記録があれば古いものから使う運用も成り立ち、廃棄が減ります。
工程の直し方は、レシピの標準化です。第2問と同じ打ち手ですが、狙いが違います。第2問は人を育てるため、第3問は使う量を安定させて歩留りを上げるためです。締め方を変えると、2つの答案が重なりません。
次は正解ではありません。趣旨が挙げた3つの管理を120字に収めるとこうなる、という例です。
①調達は月度生産計画から所要量を計算し、経験値の見積りをやめて必要量を必要な時期に分納発注する。②在庫は入出庫を記録し、適正在庫と先入先出で廃棄を減らす。③工程はレシピを標準化して歩留りを高め、食材の共通化を進める。以て原価を下げる。
117マス / 120マス
第4問 自社企画の製品をどう作るか|120字
趣旨は「社内対応策」と限っています。売り方や販路の話を書くと、問われている範囲から外れます。
出題の趣旨(引用)。「自社企画製品の販売を実現するために、創業から受託品の製造に特化してきたC社の製品企画開発の課題を整理し、そのために必要となる社内対応策について、助言する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
趣旨は課題の出どころまで書いています。創業から受託品の製造に特化してきたこと。つまり、何を作るかを自分で決めた経験が社内に無い、というのが出発点です。
ただし、材料が無いわけではありません。料理長のもとで試作を重ねてきた実績があり、料理人だった人が3名いて、外から開発の経験者も来ています。無いのは経験ではなく、それを束ねる仕組みです。
- 課題の芯。販売先主導の製品決定が続いてきたので、自社で企画を起こす手順が無い(第12段落)。
- 課題の芯。標準化されていないレシピなので、過去の試作が次に活きない(第13段落)。
- 使える資産。料理長と直接やり取りする試作を長く重ねてきた(第12段落)。
- 使える資産。料理人経験のある工場管理者が3名おり、味と作り方の両方を判断できる(第7段落)。
- 使える資産。新設した製品開発部と、製品開発の経験を持つ外部人材がいる(第2・第17段落)。
- 使える資産。高級感のある総菜の企画力を、すでにX社への提案として出している(第17段落)。
- 情報の入口。営業部員が販売先料理長と接しており、要望が集まる位置にいる(第14段落)。
社内対応策の骨は3つです。誰がやるかを決めること、過去を蓄えること、進め方を作ること。2名しかいない製品開発部だけでは回らないので、工場側とつなぐ体制にします。
レシピの整理がここでも効きます。第2問と第3問では現場のためでしたが、第4問では企画の材料になります。何をどう作ったかの記録が残っていれば、新しい品を考えるときの出発点になるからです。
販路や価格の話は書きません。趣旨が「社内対応策」と限っているためです。X社との売り方は第5問の側で扱われます。
次は正解ではありません。趣旨が挙げた社内対応策を120字に収めるとこうなる、という例です。
①新設した製品開発部を核に、工場管理者とパートリーダーを加えた開発体制を作る。②整理されていないレシピをデータベース化し、試作の実績を企画の土台にする。③外部人材の経験で開発手順と原価管理を整え、④営業部が集めた販売先の要望を反映する。
117マス / 120マス
第5問 工場増築の構想は妥当か|140字
趣旨は妥当性・理由・留意点の3つを求めています。3つのうち1つでも抜けると、要求の3分の1が空になります。
出題の趣旨(引用)。「工場増築などの設備投資によって生産体制を構築し、新規事業の生産に対応しようとするC社社長の構想の妥当性とその理由、またその際の留意点について、助言する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
構想の中身は3つです。敷地の中に工場を増やすこと、専用の生産設備を入れること、新しく採った人を中心に生産体制を作ること。妥当かどうかは、この3つそれぞれについて言えます。
妥当だと答えるのが素直です。与件文は生産能力の不足をはっきり書いており、X社は店舗を増やしていく計画だからです。妥当でないと答えるなら、それを支える記述を与件文から出す必要があります。
- 妥当の根拠。生産能力の不足を、社長自身が新規事業への対応の障害として挙げている(第19段落)。
- 妥当の根拠。X社は単価の高い店から始めて10数店舗まで広げる計画で、量が増える(第18段落)。
- 妥当の根拠。既存の受注も回復しており、いまの工場を新規事業に回す余地が無い(第5段落)。
- 留意点の種。新規事業は同じ品を数多く作る仕事で、多品種少量の受託製造力とは性格が違う(第3・第18段落)。
- 留意点の種。2日前に確定する納品数量と1日2回の配送という、既存事業には無い条件が付く(第18段落)。
- 留意点の種。新規採用者が中心なので、口頭指導に頼る作業管理のままでは立ち上がらない(第11段落)。
- 留意点の種。交差汚染を防ぐゾーニングを、増やした工場でも保つ必要がある(第8段落)。
留意点でいちばん重いのは、既存事業から人を抜かないことです。既存の受注は回復しており、そこを支えているのはベテランのパートリーダーと工場管理者だからです。ここは当サイトの見立てです。
新しく採った人を中心にするなら、教える仕組みが先に要ります。第2問で挙げた標準化が、ここでも前提になります。同じ打ち手が別の設問で違う役目を持つ、という組み方です。
投資の大きさにも触れられます。X社は数店舗から始めて段階的に広げる計画なので、設備も一度に全部そろえる必要はありません。需要の伸びに合わせる、という形にすると過大な投資を避けられます。
140字で、妥当性・理由2つ・留意点3つが限界です。趣旨が3つを並べている以上、どれかを厚く書いた時点で別のどれかが消えます。
次は正解ではありません。趣旨が挙げた3つを140字に収めるとこうなる、という例です。
妥当である。理由は①現在の生産能力では新規事業に対応できず、②X社が10数店舗まで拡大する計画で量が見込めるため。留意点は①既存の多品種少量と量産を分離し既存事業の人員を減らさないこと、②新規採用者向けに作業を標準化し教育すること、③店舗数の拡大に合わせ段階的に投資すること。
137マス / 140マス
書いた答案を数える
答案を書き終えたら、上の②③の表から作ったこの一覧で、自分が何を入れられたかを数えてください。
| 設問 | 与件文から持ち込める材料 |
|---|---|
| 第1問 | 多品種少量の受託製造力/調理場の管理に熟知した経営者/料理人経験のある工場管理者/各班のベテランパートリーダー/交差汚染を防ぐゾーニング/汎用調理器具による手作業/料理長と直接やり取りする試作/短納期に応える納品 |
| 第2問 | 各班のベテランパートリーダー/汎用調理器具による手作業/販売先ごとの班編成/厨房と同じ設備レイアウト/口頭指導に頼る作業管理/標準化されていないレシピ |
| 第3問 | 経験値による必要量の見積り/月1回のまとめ発注/入出庫記録の欠如と在庫の増加/前日に判明する納品遅れ |
| 第4問 | 新設した製品開発部/多品種少量の受託製造力/料理人経験のある工場管理者/料理長と直接やり取りする試作/高級感のある総菜の企画力/製品開発の経験を持つ外部人材/販売先主導の製品決定/標準化されていないレシピ |
| 第5問 | 多品種少量の受託製造力/調理場の管理に熟知した経営者/交差汚染を防ぐゾーニング/短納期に応える納品/高級感のある総菜の企画力/販売先ごとの班編成/厨房と同じ設備レイアウト/口頭指導に頼る作業管理/2日前に確定する納品数量/1日2回の配送/生産能力の不足 |
- 材料の数ではなく、選んだ理由を言えるかを見る。同じ材料でも、設問の要求語に合っていなければ答案は噛み合いません。
- その材料が与件文の第何段落から来たかを、答案を見ながら言えるか。言えないものは、与件文ではなく自分の一般論から来ています。
- 文末の向きが要求語と合っているか。助言なら施策の提案で、説明なら理由の記述で終わっているか。
書けなかった材料が多い設問は、与件文の読み落としではなく、時間が足りなかっただけのことがあります。どちらだったかは、答案を書いた直後にしか思い出せません。数え終えたら、その場でひとこと書き残しておくと次に効きます。
答案の書き方の型
100字前後のマスに要素を詰めるには、書き方の型が要ります。この型は年度と事例を問いません。
- 因果を明示する。「◯◯により△△」の形にすると、材料と結論のつながりが読み手に伝わります。
- 番号で並べる。「①…②…」は、要素をいくつ入れたかが自分にも採点する側にも見える形です。
- 名詞で締める。「〜を強化」「〜の向上」と体言で終えると、同じ内容が短いマス数に収まります。
この型は、用語そのものに点が入るという意味ではありません。字数の上限が決まっている以上、同じ内容をより短い形で持ち込めるほうが要素を多く入れられる、という事情によるものです。与件文にない事実をそれらしい言葉で埋めても、加点の根拠にはなりません。
この記事で言えないこと
- 2次試験は正解が公表されません。ここで示したのは要素の選び方と字数の収め方で、正解ではありません。
- 趣旨は「何を問うたか」であって「どう書けば加点されるか」ではありません。加点の検証は別の作業です。
- 設問ごとの配点は公表されていますが、要素ごとの内訳は公表されていません。第5問の30点を妥当性と理由と留意点でどう配るかは分かりません。
- 第1問でどの2つを強みに選ぶかは当サイトの判断です。候補は5つあり、選び方は1通りではありません。
- 第5問で既存事業から人を抜かない点を最優先に置いたのは当サイトの見立てです。与件文に人員配分の記述はありません。
- 段落番号は与件文の先頭からの通し番号です。【企業概要】のような見出しの行や、図を指す行も1段落として数えています。
- 字数は句読点も1字として数えています。実際の解答用紙のマスの数え方は、受験案内と解答用紙でご確認ください。
本記事の要素の整理と解答例は当サイトの独自のものです。出題の趣旨と問題(与件文・設問文)の著作権は一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会に帰属します。全文は試験実施機関の公表資料でご確認ください。
この記事のまとめ
- 2次試験に正解は公表されません。公表されるのは設問ごとの出題の趣旨です。
- 令和5年度 事例Ⅲは設問が5問あります。1問あたりの時間が短くなります。
- 第1問だけが分析で、残る4問は趣旨が助言と書いています。
- 趣旨は5問中3問が「課題を整理し、その対応策」の形です。両方を書きます。
よくある質問
- この記事の解答例をそのまま覚えればよいですか?
- いいえ。2次試験は正解が公表されないため、この例が当たっているかは誰にも確かめられません。使い道は、趣旨が挙げた要素が字数にどう収まるかを見ることです。要素の選び方と削り方を自分の答案に移してください。
- 設問文が「述べよ」なのに、助言を書いてよいのですか?
- 令和5年度 事例Ⅲの第2問から第4問は、趣旨がどれも「課題を整理し、その対応策について、助言する能力」と書いています。事実の説明だけで終えると、趣旨が求めた対応策の側が空になります。
- レシピの標準化を3つの設問で使い回してよいのですか?
- 使えます。ただし締め方を変えます。第2問は人を育てて生産性を上げるため、第3問は使う量を安定させて歩留りを上げるため、第4問は過去の試作を企画の材料にするためです。狙いが違えば答案は重なりません。
- 第5問で「妥当でない」と書いてはいけませんか?
- 禁じられてはいません。ただし与件文は生産能力の不足を明記し、X社が店舗を増やす計画も書いています。妥当でないと答えるなら、それを支える記述を与件文から出す必要があります。この記事は妥当だと置きました。
- 与件文の段落番号が資料の見出しとずれるのはなぜですか?
- この年の事例Ⅲには【企業概要】【生産の現状】【新規事業】という見出しの行と、図を指す行が入っており、この記事ではそれらも1段落として数えているためです。中身のある段落だけを数えると番号がずれます。




