事例Ⅲの因果チェーン総覧|与件の言い回しを手法と効果に変換する43本
この記事の結論
- この総覧は実測ではなく、作成者の見立てです。12カテゴリ43本の変換表です。
- 第1問が強み・弱みの分析だった年は19年中17年(89%)。ここは実測です。
- 最終問が新事業・受注拡大だった年は19年中16年(84%)。骨格は実測でも確かめられました。
- 分類の切り方が違えば数も変わります。2つの体系の数字を足さないでください。
このサイトの記事は、ほとんどが実測データです。この記事だけは違います。中身は「与件の言い回し→理論・手法→効果」という変換辞書で、作成者の経験則をまとめたものです。ただし、この見立てが示す骨格のうち2点だけは、当サイトが別に持っている19年80問の集計で確かめられました。どこまでが見立てで、どこからが実測なのかを分けて示します。
この総覧は実測ではなく、見立てです
12カテゴリ43本の変換表は作成者の経験則です。当サイトの実測とは別ものとして読んでください。
事例Ⅲの設問は、与件の困りごとを読み替えて手法に置き換え、効果まで書く形が多くなります。この総覧は、その置き換えの型を12カテゴリ43本に整理したものです。
並んでいる理論や手法は、ECRSやかんばん方式のように、この試験で広く使われている言葉です。当サイトが作った分類ではありません。どの言い回しにどれを当てるかの組み合わせが、作成者の見立てにあたります。
使い方は単純です。左列の言い回しを見たら、中列と右列がすぐ出てくる状態にしておきます。答案では矢印を接続語に変えるだけで、文の骨格ができます。
以降の表には、見立てか実測かをキャプションに必ず書いています。表だけを拾い読みするときは、そこを先に見てください。
この骨格は、当サイトの実測でも確認できた
第1問は強み・弱みの分析が19年中17年、最終問は新事業・受注拡大が19年中16年。分類体系が違うのに向きは一致しました。
| 見立て | 当サイトの実測ラベル | 19年での該当年数 |
|---|---|---|
| 第1問はほぼ毎年「強み(弱み)」 | 強み・弱みの分析 | 17年(89%) |
| 最終問はほぼ毎年「戦略・高付加価値」 | 新事業・受注拡大 | 16年(84%) |
分類の名前も、分類の数もそろっていません。見立ては14分類、当サイトは8分類です。それでも第1問と最終問の位置づけは、別々に作った2つの体系で同じ結論になりました。
つまり、この2問は何が来るかを待たずに型を先に作れます。第1問は強みと弱みを並べる書き方、最終問は第1問の強みを回収して方向を示す書き方です。残りの設問に時間を回せます。
同じ19年でも、分類の切り方で数字は変わる
見立ての「戦略・高付加価値9+新規事業・参入8」を、当サイトは「新事業・受注拡大28」で受けています。数字は足し合わせないでください。
当サイトの「新事業・受注拡大28」は、見立てでいえば「戦略・高付加価値9」と「新規事業・参入8」を含む、より広い枠です。同じ19年を数えても、分け方が違えば数字はこれだけ動きます。
使うときは、どちらか一方の体系に統一してください。2つの数字を足したり、割合の分母に混ぜたりすると、実態と合わない数になります。
1枚のまとめ(保存して使う)
下の12分類・43本を1枚にしました。演習中に横に置いて、左の言い回しから引くのが使い方です。

生産現場の設問を、手法へ変換する6分類
前半6カテゴリは工場の中で完結する打ち手です。情報共有・生産計画・生産統制・標準化・段取り・品質と能力の順に並びます。
情報共有・部門間連携(見立てでは4問)
| 与件の言い回し | 理論・手法 | 効果 |
|---|---|---|
| 営業と工場が相互理解不足・連絡ミス | 受注から納品までの情報をDB化しリアルタイムで全社共有 | 手戻り削減・納期短縮 |
| 受注情報・仕様変更が生産に届かない | 受注/設計・仕様変更/生産計画/在庫を一元管理 | 計画と現場の乖離解消 |
| 営業が工場の状況を見ずに受注 | 生産余力・生産予定を営業へ共有し予約管理する | 生産混乱の予防 |
| 外注に多くを依存・連携が弱い | 外注企業とデータ共有(発注・仕様・進捗) | 短納期化・外注管理改善 |
生産計画(見立てでは9問)
| 与件の言い回し | 理論・手法 | 効果 |
|---|---|---|
| 計画が毎日変更・場当たり的 | 計画作成頻度の短サイクル化(月次から週次へ) | 変動への追随 |
| 工程ごとにバラバラに計画 | 全工程を一括した全社的生産計画の立案 | 部分最適の解消 |
| 需要が読めず過大在庫・欠品 | 需要予測に基づく計画・販売と在庫の連動 | 欠品と過剰在庫の抑制 |
| 在庫を持たず納期対応したい | 受注生産化・生産統制の強化で見込生産を回避 | 在庫リスク回避・納期遵守 |
生産統制・進捗(生産計画と同枠)
| 与件の言い回し | 理論・手法 | 効果 |
|---|---|---|
| 納期遅延・進捗が見えない | 進捗管理の徹底・進捗の可視化 | 納期遵守 |
| 工程管理が混乱・日程変更が常態化 | 工数見積の標準化・日程計画の統制 | 工程管理の安定 |
| 繁忙期に能力不足・残業の偏り | 余力管理・負荷の平準化・外注や応援の配分 | 残業削減・平準化 |
| 現品・仕掛がどこにあるか不明 | 現品管理・ロケーション管理 | 探索ロス削減 |
標準化・属人化・技能(見立てでは3問)
| 与件の言い回し | 理論・手法 | 効果 |
|---|---|---|
| 作業がばらつく・品質が不安定 | 作業標準化・マニュアル化・標準時間の設定 | 品質安定・能率向上 |
| ベテランの経験と勘・高齢化で承継が難しい | 標準化に加えOJTや多能工化で技能を移転しDB化する | 属人化解消・技能承継 |
| 立ち上げ・段取りが熟練頼みでロス | 作業標準化・要領書の整備 | 立上りロス削減 |
段取り・リードタイム・小ロット(見立てでは4問)
| 与件の言い回し | 理論・手法 | 効果 |
|---|---|---|
| 段取りに時間がかかり大ロット化 | 外段取り化・段取り作業の標準化と改善 | 小ロット化・リードタイム短縮 |
| 発注ロットが小ロット化している | 発注ロットに合わせた加工ロットの設定 | 在庫とリードタイムの最適化 |
| 後工程の要求に同期できない | 後工程引取(かんばん)方式の構築 | 同期化・在庫圧縮 |
| 工程間で停滞・運搬が多い | レイアウト改善・工程の近接化と流れ化 | 運搬と停滞の削減 |
品質管理・生産能力向上(見立てでは6問)
| 与件の言い回し | 理論・手法 | 効果 |
|---|---|---|
| 不良やクレームが出る・原因を追及できない | QC小集団・特性要因図で原因を追い、記録して再発防止 | 品質安定・クレーム減 |
| 特定工程がボトルネック | 工程分析・稼働分析でネックを特定して改善 | 能力向上・稼働率改善 |
| 受注増に生産能力が追いつかない | 工程改善(ECRS)・段取り改善で能力を創出 | 生産能力向上 |
6つのどれも、行き着く先は「見えるようにする」か「ばらつきを減らす」のどちらかです。手法の名前を覚えるより、与件のどの一文がその手法を呼んでいるかを結び付けてください。
経営の設問を、打ち手へ変換する6分類
後半6カテゴリは第2問の後半から最終問に出ます。原価・IT化・設備投資・製品開発・新規事業・戦略の順です。
原価・コスト・価格交渉(見立てでは6問)
| 与件の言い回し | 理論・手法 | 効果 |
|---|---|---|
| 材料費・人件費の高騰で収益が悪化 | 原価管理・原価低減(歩留り改善・ロス削減) | 収益性改善 |
| 顧客の単価下げ要求・契約単価が厳しい | 工程改善によるコストダウン・内製化の検討 | 利益確保 |
| 価格交渉の社内根拠がない | 原価の可視化(実際原価の把握・標準原価) | 交渉力・適正価格 |
| グループ別管理で調達・輸送にロス | 全社集約(共同購買・物流統合) | コスト低減 |
IT化・デジタル化(見立てでは5問)
| 与件の言い回し | 理論・手法 | 効果 |
|---|---|---|
| 生産管理をIT化・コンピュータ化したい | 前提として標準化・データの整備・コードの統一 | IT化の実効性確保 |
| 情報が紙・口頭で分散している | 生産管理システムで一元管理し共有する | リードタイム短縮・精度向上 |
| 設計と製造が分断している | CAD/CAMの導入・設計データの連携 | 設計リードタイム短縮・精度向上 |
| 受注獲得の接点がない | ホームページや展示会の活用と受注に繋ぐ社内対応 | 受注拡大 |
設備投資(見立てでは3問)
| 与件の言い回し | 理論・手法 | 効果 |
|---|---|---|
| 競合に装備や生産性で劣後している | 投資の実行と生産管理体制の整備を同時に行う | 競争力維持 |
| 投資が繁忙期のみで稼働が不安 | 閑散期の受注拡大(企画営業)やリース活用 | 稼働率確保・資金負担軽減 |
| 特定工程に投資が偏重している | ネック工程を基準にした投資判断 | 全体最適・能力均衡 |
製品開発・企画(見立てでは3問)
| 与件の言い回し | 理論・手法 | 効果 |
|---|---|---|
| 受託に特化していて企画機能がない | 製品企画部門の新設・外部人材や既存技術の活用 | 自社企画製品の実現 |
| 自社ブランドを開発したい | コンカレントエンジニアリング・試作体制の整備 | 開発リードタイム短縮・差別化 |
| 既存の強み(技術)が眠っている | 強みを核にした高付加価値製品の企画 | 付加価値向上 |
新規事業・参入(見立てでは8問)
| 与件の言い回し | 理論・手法 | 効果 |
|---|---|---|
| 新分野の品質基準が厳しい(食品・医療など) | 品質保証体制・工程能力の確保・認証の取得 | 参入要件クリア・信頼確保 |
| 新規事業で納期が変動し個人情報も扱う | 在庫と生産管理の柔軟化・情報管理体制の整備 | 変動対応・信頼確保 |
| OEMや新規受託の機会がある | 効果(量・稼働)とリスク(依存・変動)を両論で述べる | 機会活用・リスク管理 |
| 新体制を新規採用中心で組む | 標準化と教育体制を前提に据える(妥当性と留意点) | 立上げ成功・品質維持 |
戦略・高付加価値(最終問。見立てでは9問)
| 与件の言い回し | 理論・手法 | 効果 |
|---|---|---|
| 第1問で挙げた強みを最終問で使う | 強みと機会(外部環境)の戦略的な適合 | 競争優位・持続的成長 |
| 特定顧客への依存・価格競争 | 高付加価値化と販路開拓で依存から脱却する | 収益安定・リスク分散 |
| 立地や経営資源を生かしたい | 一貫体制・技術・近接性を核にした差別化 | 付加価値・国内生産の維持 |
後半は、工場の改善だけでは答えになりません。原価や体制の話に接続し、最後は第1問で挙げた強みを回収して終えます。強みを使わずに終わる答案は、設問の流れから外れます。
読み替え・二段パス・与件にないことは書かない
得点はキーワードではなく因果の鎖に付きます。この3原則が、変換表を答案に変える手順です。
読み替えの原則
左列を見たら中列と右列が即座に出る状態を作ります。清書は、矢印を接続語に変える作業に落とせます。「理由は〜」「具体的には①②」「もって〜」の3つでつなぎます。
拾い方は二段パスで
- 1第1パスは、与件に設問番号だけをマークする。中身はまだ書かない。
- 2複数の番号が付いた段落は、設問どうしが連動しているサインとして扱う。
- 3第2パスは、設問側から与件を回収し、四つのブロックに割り付ける。
与件にないことは書かない
一般論での穴埋めは事故の元です。稼働率向上やCRM導入を、根拠なく投入しないでください。各文について「与件の何行目か」を指させるか自問し、指せない文は削除します。
この記事で言えないこと
- 変換表は作成者の見立てです。当サイトの実測で確かめたのは、第1問と最終問の位置づけの2点だけです。
- 見立ての14分類を足すと74、当サイトの実測は80問です。設問を1件と数える単位も体系で違うため、2つの合計は一致しません。
- 並んでいる理論や手法は、この試験で一般に使われている言葉です。当サイトが作った分類ではありません。
- 19年という窓は、事例Ⅲでは19事例しかありません。89%と84%は、残る2年と3年で外れた実績があるという意味でもあります。
- 2次試験は正解が公表されません。この総覧は答案を組み立てる手順であって、点が入ることを保証するものではありません。
本記事の変換表は作成者の見立て、実測部分は当サイトの独自集計です。問題そのもの(与件文・設問文)の著作権は一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会に帰属します。全文は試験実施機関の公表資料でご確認ください。
この記事のまとめ
- この総覧は実測ではなく、作成者の見立てです。12カテゴリ43本の変換表です。
- 第1問が強み・弱みの分析だった年は19年中17年(89%)。ここは実測です。
- 最終問が新事業・受注拡大だった年は19年中16年(84%)。骨格は実測でも確かめられました。
- 分類の切り方が違えば数も変わります。2つの体系の数字を足さないでください。
よくある質問
- この変換表は実測データですか?
- いいえ。12カテゴリ43本の中身は作成者の経験則であって、集計した結果ではありません。実測で確かめたのは、第1問が強み・弱みの分析だった年が19年中17年、最終問が新事業・受注拡大だった年が19年中16年という2点だけです。表を読むときは、各表のキャプションで見立てか実測かを確認してください。
- 見立ての数字と当サイトの数字が違うのはなぜですか?
- 分類の粒度が違うためです。見立ては14分類、当サイトは8分類で、同じ19年を数えても数字は変わります。たとえば当サイトの「新事業・受注拡大28問」は、見立ての「戦略・高付加価値9」と「新規事業・参入8」を含む、より広い枠です。2つの体系の数字は足し合わせないでください。
- 第1問と最終問だけ準備すれば足りますか?
- 足りません。この2問は型を先に作れる一方で、設問の多くは中盤にあります。中盤は生産計画・生産統制と情報共有・IT化が主戦場で、近年は原価やコストの設問も目立つ、というのが作成者の見立てです。前半6分類の変換表は、そこで使うためのものです。
- 手法の名前を覚えれば点になりますか?
- この総覧の前提は逆です。得点はキーワードではなく因果の鎖に付く、という見立てに立っています。手法名だけを置いても、与件のどの記述から来たのか、どんな効果につながるのかが書かれていなければ鎖になりません。与件に根拠を指させない文は削ってください。

