令和2年度 事例Ⅲの解説|与件文のどこを使い、答案に何を書くか
この記事の結論
- 2次試験に正解は公表されません。公表されるのは設問ごとの出題の趣旨です。
- 令和2年度 事例Ⅲは第2問が設問2つに分かれ、趣旨は5行あります。
- 5行のうち4行が助言。分析と書かれているのは第1問だけです。
- 解答欄は8つ。40字が2つ、60字が4つ、120字が2つです。
2次試験は正解が公表されないので、答案が当たっていたかを誰も確かめられません。ただし試験実施機関は毎年「出題の趣旨」を公表しており、何を問うたのかを出題側が語っている文はここにしかありません。この記事では令和2年度 事例Ⅲの4設問について、趣旨を引用し、そこから答案に入れる要素と字数の配り方を導きます。この年は第2問が2つの設問に分かれ、しかもそれぞれが問題点と対応策の2欄。解答欄は全部で8つあります。要素は一般論ではなく、すべて与件文の記述に紐づけ、どの段落から来ているかを添えました。
この年の事例Ⅲは、どんな回か
与件文2,444字・解答字数の合計400字。80分の内訳は読む12分/考える52分/書く16分です。
| 設問 | 要求語 | 配点 | 解答字数 | この位置で多い論点 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 述べる | 20点 | 40字 | ◎ 強み・弱みの分析 90%(69〜97%) |
| 第2問(小問2) | 述べる | 40点 | 60字 / 60字 | 生産計画・工程管理 42%(23〜64%) |
| 第3問 | 述べる | 20点 | 120字 | 新事業・受注拡大 32%(15〜54%) |
| 第4問 | 助言 | 20点 | 120字 | ◎ 新事業・受注拡大 67%(44〜84%) |
| 設問 | 書く時間の目安 | 考える時間の目安 |
|---|---|---|
| 第1問 | 2分 | 10分 |
| 第2問 | 5分 | 21分 |
| 第3問 | 5分 | 10分 |
| 第4問 | 5分 | 10分 |
読む時間は与件文の分量から、書く時間は解答字数から決まります。動かせるのは真ん中の考える52分だけなので、これをどの設問に配るかが、この年の80分の設計になります。上の数字は前提を置いた試算なので、自分の読む速さ・書く速さを一度計って置き換えてください。
与件文の形(段落ごとの字数と語の数)
逆接と否定・課題を表す語がいちばん多いのは第13段落で、合わせて2語です。
本文は載せていません。段落ごとに何字あり、逆接・否定・年代の語が何回出てくるかだけを数えたものです。これらの語が集まる段落は課題を問う設問の根拠になっていることが多いので、どこを速く読み、どこで手を止めるかの当たりをつける用途に使ってください。
① この会社に何が起きたか
ステンレスの装飾品を1点ずつ作ってきた会社が、納期の遅れを根絶すると決め、営業と製造の両方を見直す場面の話です。
まだ解いていない年度は、先に解いてから読むことをすすめます。この記事は与件文の中身に触れます。
C社は1955年創業、従業員30名(営業部5名・製造部23名・総務部2名)。ステンレス製品を受注して設計し、製作し、現場に取り付けるところまでを担います。製品はビル用の金属製品と、作家の図案どおりに作る立体の造形物の2種類で、どちらも1点ずつの注文品です。
始まりはサッシや手摺の特注品でした。鏡のように仕上げる表面の質にこだわり、溶接と磨きの技術を高めます。3代目の社長はその技術を生かせる市場として造形物へ踏み出し、いまでは売上の4割を占め、ビル用より利ざやも大きい分野になりました。
「溶接と研磨の腕を生かせる先を探し、モニュメントの仕事を取ってきた。」
「4つの班に分けているが、難しい形は任せられない班もある。」
仕事の流れでは、受注・設計・取り付け工事の仕切りをすべて営業部が担います。承認の段階で仕様や図面の変更が次々に出て、とくに造形物では形のイメージを合わせるのに時間がかかります。製作は切る・曲げる・溶接して組む・磨く・検査の5工程で、溶接以降は4つの班の手作業。班によって技術の水準に差があります。
契約から引き渡しまでは平均2か月ですが、図面の承認に時間を取られて製作の期間が足りない、難しい注文で製作が計画をはみ出す、という形で納期の遅れが起きています。工場は大型化で手狭になり、製造部長が調べたところ、手が止まっている時間の中身はモノの移動と打ち合わせによる不在が目立ちました。
(月ごとに計画を立てているが、納期の遅れが止まらない。作業者の動きを調べてみた。)
ここからは、この年の読みどころです。与件文を正しく読めても、設問との噛み合わせを外すと点になりません。
- **第2問は設問1が営業部門、設問2が製造部門と分かれています。** しかもそれぞれ問題点と対応策で60字ずつ。1つの欄に入るのは要素1つか2つで、部門をまたいだ話を書くともう片方の設問と重なります。
- **営業部門の問題は「営業の仕方」ではありません。** 受注・設計・取り付けの仕切りを1つの部が抱えていること、承認までのやり取りが長いことが、納期の遅れにつながっています。
- **第3問はIT活用ですが、目的は納期の遅れをなくすことです。** 何を導入するかを並べるより、どの遅れにどう効くのかまで書かないと、120字が道具の羅列で終わります。
- **第4問だけは、遅れの話ではありません。** 造形物の事業を広げる話で、材料は会社の外側(都市型の建築が増えている)にもあります。②③の表はC社の内側なので、ここは①に戻ってください。
読みどころは当サイトの見立てで、公表された正解ではありません。2次試験に公式解答はないので、ここは「どこで噛み合わなくなりやすいか」の整理として読んでください。
② 使ってほしい資産|与件文のどの言葉を答案に持ち込むか
この事例の資産は、加工の技術・設計から取り付けまでの一貫体制・作家との直接の関係の3つに固まっています。
以下の段落番号は、与件文の先頭から数えた順番です。【C社の概要】のような見出しの行も1段落として数えます(当サイトの答案の書院で表示している番号と同じです)。
左の列は与件文をそのまま引いたものです。右の列は、それを答案の語に置き換えたもの。置き換えれば加点されるという意味ではありません(加点の基準は公表されていません)。答案の字数が短いので、同じ内容を短い語で持ち込む必要がある、という事情によるものです。
| 与件文の言葉 | 答案での言い方 | 段落 | 効く設問 |
|---|---|---|---|
| 「特別仕様の装飾性を要求されるステンレス製品」 | 装飾性の高い特別仕様への対応 | 第3段落 | 第1問(強み) |
| 「溶接技術や研磨技術を高めることに努力した」 | 溶接と研磨の技術 | 第4段落 | 第1問(強み)・第2問(設問2)・第4問 |
| 「設計から製作、据付工事までを受注する企業になった」 | 設計から据付までの一貫体制 | 第4段落 | 第1問(強み)・第4問 |
| 「デザイナーから、モニュメントの製作依頼を受けた」 | 作家からの直接の依頼 | 第5段落 | 第4問 |
| 「特殊加工と仕上げ品質が要求されるステンレス製モニュメント製品」 | 特殊加工と仕上げ品質が要るモニュメント製品 | 第5段落 | 第1問(強み)・第4問 |
| 「ビル建築用金属製品と比較して付加価値が高い」 | 付加価値の高いモニュメント製品 | 第6段落 | 第4問 |
| 「設計には2 次元CAD を早くから使用している」 | 早くから使っている2次元の作図ソフト | 第9段落 | 第3問 |
| 「製作プロセスを含む業務プロセス全体の見直しを進めている」 | 全社で進む業務プロセスの見直し | 第12段落 | 第2問(設問1)・第3問 |
| 「切断加工工程と曲げ加工工程はNC 加工機による加工」 | 数値制御の機械による切断と曲げ | 第14段落 | 第1問(強み) |
| 「熟練技術者が各班のリーダーとなって作業管理を行う」 | 熟練の技術者が班長を務める体制 | 第14段落 | 第1問(強み)・第2問(設問2) |
| 「個別受注生産に適した設備や作業スペースのレイアウトに改善した」 | 1点ずつ作る仕事に合わせた工場の配置 | 第17段落 | 第2問(設問2) |
上の6行は、何で稼いできたかを示す資産です。飾り性の高い加工、溶接と磨きの技術、設計から取り付けまでを1社で引き受ける形。第1問の強みと第4問の土台は、この6行から作れます。
下の5行は現場と仕組みの資産です。作図ソフト、数値制御の機械、班長を務める熟練者、そして建て替えたときの配置。第2問と第3問で対応策を書くとき、ここに乗せる形にすると与件文から離れません。
作家から直接依頼を受けている点は、この事例で見落としやすい資産です。間に商社が入らないので、早い段階から設計に関われる余地があります。第4問はここが効きます。
③ 改善してほしいこと|与件文が課題として書いている言葉
課題は営業側と製造側にきれいに分かれます。第2問が2つの設問に割れているのは、この構造をそのまま問うためです。
表の形は②と同じです。左が与件文の言葉、右が答案での言い方。上の5行が営業側、下の8行が製造側の課題にあたります。
| 与件文の言葉 | 答案での言い方 | 段落 | 効く設問 |
|---|---|---|---|
| 「工場建屋の制約から設置高さ7 m 以内の製品」 | 工場の制約による高さ7mの上限 | 第3段落 | 第1問(弱み)・第4問 |
| 「仕様変更や図面変更などによって顧客とのやりとりが多く発生する」 | 図面承認の段階で多い変更のやり取り | 第9段落 | 第2問(設問1)・第3問 |
| 「造形物のイメージの摺合わせに時間を要する場合が多く」 | 造形のイメージ合わせに要する時間 | 第9段落 | 第2問(設問1)・第4問 |
| 「図面承認後の製作段階でも打ち合わせが必要な場合がある」 | 製作段階でも続く打ち合わせ | 第9段落 | 第2問(設問1) |
| 「製作前プロセスに時間を要して製作期間を十分に確保できない」 | 製作前に時間を取られ足りない製作期間 | 第11段落 | 第2問(設問1) |
| 「製作期間が生産計画をオーバーする」 | 生産計画を超える製作期間 | 第11段落 | 第2問(設問2) |
| 「各作業チームの技術力には差があり、高度な技術が必要な製作物の場合には任せられない作業チームもある」 | 作業チーム間の技術力の差 | 第14段落 | 第1問(弱み)・第2問(設問2)・第4問 |
| 「生産計画は、製造部長が月次で作成している」 | 月に1度しか作らない生産計画 | 第16段落 | 第2問(設問2)・第3問 |
| 「基準となる工程順序や工数見積もりなどの標準化が確立しているとはいえない」 | 工程順序と工数見積もりの標準化の遅れ | 第16段落 | 第1問(弱み)・第2問(設問2)・第3問 |
| 「最近の加工物の大型化によって狭隘な状態が進み」 | 大型化で狭くなった作業スペース | 第17段落 | 第1問(弱み)・第2問(設問2) |
| 「新たな製品の着手によって作業途中の加工物の移動などを強いられている」 | 作りかけの加工物の移動 | 第17段落 | 第2問(設問2) |
| 「モノの移動に関連する作業が多く」 | モノの移動に取られる不稼働の時間 | 第18段落 | 第2問(設問2)・第3問 |
| 「営業部担当者などとの打ち合わせ」 | 営業との打ち合わせによる不在 | 第18段落 | 第2問(設問1)・第3問 |
②③はC社の内側を並べた2つの表です。都市型の建築が増えているという外側の変化は、ここには載っていません。材料は①に書きました。
営業側の課題は第9段落と第11段落に固まっています。承認の段階で変更が出て、造形のイメージ合わせに時間がかかり、その分だけ製作の期間が削られる。原因と結果が1本につながっています。
製造側は第14段落から第18段落までに散っています。基準がそろっていない、計画が月に1度しかない、場所が狭い、モノの移動が多い。こちらは4つの別々の話なので、対応策も別々に用意します。
最後の1行だけ性格が違います。営業との打ち合わせで作業者が持ち場を離れているという記述で、営業側と製造側のどちらにも関わります。第3問で情報の共有を書くときの根拠になります。
手がかりは、公表された出題の趣旨にある
趣旨は設問ごとに「何を問うたか」を書いた文です。この年の事例Ⅲは5行のうち4行が助言。分析は第1問だけです。
出題の趣旨は「〜する能力を問う問題である」という定型文で書かれます。この「〜する能力」の部分が、答案の文末の向きを決めます。分析と書かれていれば起きている事実を切り分け、助言と書かれていれば打ち手を示します。
令和2年度 事例Ⅲは、ステンレスの装飾製品と造形物を1点ずつ受注するC社が、納期の遅れをなくそうとしている事例です。設問は4問ですが、第2問が2つに分かれているため、趣旨は5行あります。配点・字数と、趣旨が名指ししている能力を並べると次のようになります。
| 設問 | 配点 | 解答字数 | 趣旨が名指しする能力 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 20点 | 40字以内(強み・弱みそれぞれ) | 分析 |
| 第2問(設問1) | 40点(設問1・2で) | 60字以内(問題点・対応策それぞれ) | 整理して助言 |
| 第2問(設問2) | 40点(設問1・2で) | 60字以内(問題点・対応策それぞれ) | 整理して助言 |
| 第3問 | 20点 | 120字以内 | 助言 |
| 第4問 | 20点 | 120字以内 | 助言 |
第2問の趣旨は「問題点を整理し、その解決策を助言する」という形です。設問文も問題点と対応策を別の欄に分けているので、片方だけを厚く書くという逃げ道がありません。60字が4つ並びます。
配点は第2問だけが40点で、全体の4割。しかも解答欄は8つあり、1つの欄で迷い込むと、そのまま最後まで足りなくなります。第1問の40字は先に型を作っておくと安全です。
第1問 強みと弱み|40字ずつ
趣旨は「事業内容を把握し」と前置きしています。何をしている会社かが分かる形で、強みと弱みを書く設問です。
出題の趣旨(引用)。「ステンレス加工業C社の事業内容を把握し、C社の強みと弱みを分析する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
名指しされている能力は分析です。打ち手を書く設問ではありません。加えて「事業内容を把握し」という条件が付いており、1点ずつ注文を受けて作る会社だということが読み取れる書き方が求められます。
| 観点 | ②③のどの材料を使うか |
|---|---|
| 強み(内) | 溶接と研磨の技術/設計から据付までの一貫体制/装飾性の高い特別仕様への対応/特殊加工と仕上げ品質が要るモニュメント製品/熟練の技術者が班長を務める体制 |
| 弱み(内) | 工程順序と工数見積もりの標準化の遅れ/作業チーム間の技術力の差/大型化で狭くなった作業スペース/工場の制約による高さ7mの上限 |
強みは5つ、弱みは4つ。40字に入るのは2つです。強みは技術と体制から1つずつ取ると、何が作れる会社なのかと、どこまで引き受けられるのかの両方が示せます。
弱みの選び方は割れます。工場の高さの制約は動かしにくい条件で、第4問で事業を広げるときにも効きます。この記事は、納期の遅れに直結する標準化の遅れと作業場所の狭さを取りました。
40字で2つ入れるには、文で説明せずに名詞で締めます。強みは「〜できる点」、弱みは「〜な点」で終える形が短くなります。
次は正解ではありません。趣旨が求めた分析を40字ずつに収めるとこうなる、という例です。
以下2つは当サイトの解答例です。模範解答ではありません。
溶接と研磨の技術が高く、設計から製作、据付まで一貫して個別受注に応じられる点。
39マス / 40マス
工程順序や工数見積もりの標準化が未確立で、作業スペースも大型化で狭くなった点。
38マス / 40マス
第2問(設問1) 営業部門の問題点と対応策|60字ずつ
趣旨は「納期遅延の発生に影響している」と範囲を限っています。営業の問題を全部書くのではなく、納期に効くものだけを選びます。
出題の趣旨(引用)。「納期遅延の発生に影響しているC社営業部門の問題点を整理し、その解決策を助言する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
趣旨は3つの条件を重ねています。納期の遅れに関係していること、営業部門の話であること、そして問題点と解決策の両方を出すこと。60字が2つに分かれているので、それぞれ1つの欄で完結させます。
営業部が抱えている仕事の幅を先に押さえます。受注から設計、取り付けの仕切りまでを同じ部が担当しており、しかも製品ごとに担当者が1人つく形です。ここに変更のやり取りが乗ります。
- 詰まりの中心。図面承認の段階で多い変更のやり取りがあり、時間を取られる(第9段落)。
- 造形物ならでは。造形のイメージ合わせに要する時間が長くなりやすい(第9段落)。
- 終わらない打ち合わせ。製作段階でも続く打ち合わせが発生する(第9段落)。
- 結果。製作前に時間を取られ足りない製作期間になる(第11段落)。
- 現場への波及。営業との打ち合わせによる不在が、作業者の手を止めている(第18段落)。
- 使える土台。早くから使っている2次元の作図ソフトと、全社で進む業務プロセスの見直し(第9・第12段落)。
問題点の欄は、原因と結果を1本にして書きます。営業が広い範囲を抱えていること、承認の段階で変更が続くこと、その結果として製作の期間が削られること。この3つがつながると60字が埋まります。
対応策の欄は、時間を短くする方向で組み立てます。過去の図面と仕様をためて型を作ること、役割を分けて担当者1人に集めないこと、早い段階で客と形をそろえることの3つです。
早い段階で形をそろえる手段として立体的な作図に踏み込むかは判断が分かれます。与件文にあるのは2次元の作図ソフトだけなので、この記事は道具の名前を挙げず、第3問で情報の使い方としてまとめました。
次は正解ではありません。趣旨が求めた問題点と解決策を60字ずつに収めるとこうなる、という例です。
以下2つは当サイトの解答例です。模範解答ではありません。
営業部が受注から設計、施工管理まで抱え、図面の承認段階で顧客との変更のやり取りが長引き、製作前に時間を使い過ぎている。
59マス / 60マス
過去の図面や仕様を蓄積して標準化し、営業と設計の役割を分け、顧客との擦り合わせを早めて製作前にかかる期間を短くする。
58マス / 60マス
第2問(設問2) 製造部門の問題点と対応策|60字ずつ
製造側の材料は4つに散っています。60字に全部は入らないので、計画と現場から1つずつ取る形にします。
出題の趣旨(引用)。「納期遅延の発生に影響しているC社製造部門の問題点を整理し、その解決策を助言する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
設問1と同じ形で、部門だけが入れ替わります。したがって書き方もそろえます。設問1で原因と結果を1本にしたなら、設問2でも同じ組み立てにすると、読む側が対応を追いやすくなります。
- 基準がない。工程順序と工数見積もりの標準化の遅れがある(第16段落)。
- 計画の粗さ。月に1度しか作らない生産計画では、途中の変更を拾えない(第16段落)。
- 人の差。作業チーム間の技術力の差があり、任せられない班がある(第14段落)。
- 場所。大型化で狭くなった作業スペースと、作りかけの加工物の移動(第17段落)。
- 実測。モノの移動に取られる不稼働の時間が多いと、調査で出ている(第18段落)。
- 結果。生産計画を超える製作期間になり、納期の遅れにつながる(第11段落)。
- 使える土台。熟練の技術者が班長を務める体制と、1点ずつ作る仕事に合わせた工場の配置(第14・第17段落)。
問題点の欄は、基準がないことと計画が粗いことを軸にします。この2つが揃うと、注文が変わったときに計画を作り直せません。そこに場所の狭さを1つ足すと60字です。
対応策の欄は、問題点と1対1で並べます。基準を作る、計画を短い周期で見直す、人の差を縮める、置き場を決めて移動を減らす。4つを短く並べると60字に収まります。
人の差を縮める方法として、この記事は班長を務める熟練者が教える形を取りました。与件文に熟練の技術者が班長についているという記述があるので、外から人を入れる案より与件文に沿います。
次は正解ではありません。趣旨が求めた問題点と解決策を60字ずつに収めるとこうなる、という例です。
以下2つは当サイトの解答例です。模範解答ではありません。
工程順序や工数見積もりの標準化がなく、生産計画が月次のため受注の変更に対応できない。作業スペースも狭く移動が多い。
57マス / 60マス
作業標準を整えて工数を見積もり、計画を短い周期で見直す。熟練者が指導して技術力の差を縮め、置き場を決めて移動を減らす。
59マス / 60マス
第3問 納期遅延に効くIT活用|120字
趣旨は「納期遅延の対策に有効な」と限っています。便利になる話ではなく、遅れが減る理由まで書く設問です。
出題の趣旨(引用)。「C社の納期遅延の対策に有効な社内のIT活用について、助言する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
趣旨は「社内の」とも書いています。客や協力会社をつなぐ話ではなく、社内で情報をどう回すかの設問です。第2問で挙げた問題点のうち、情報が届いていないことが原因になっているものを選びます。
第2問との書き分けが要ります。第2問は仕事のやり方そのものを直す設問、第3問はそれを支える仕組みの設問です。同じ言葉を並べると、120字を使って第2問を繰り返すことになります。
- 共有すべき情報。図面承認の段階で多い変更のやり取りが、営業の中に留まっている(第9段落)。
- 止まる現場。営業との打ち合わせによる不在が、作業者の手を止めている(第18段落)。
- ためるべき記録。工程順序と工数見積もりの標準化の遅れは、実績の記録が無いと埋まらない(第16段落)。
- 更新すべき計画。月に1度しか作らない生産計画では、途中の変更を拾えない(第16段落)。
- 動かすべきモノ。モノの移動に取られる不稼働の時間が、調査で最も多かった(第18段落)。
- 既にある土台。早くから使っている2次元の作図ソフトがあり、図面は電子で持てる(第9段落)。
答案は3つに割ります。営業と製造が同じ情報を見られるようにすること、実績をためて基準を作れるようにすること、計画を短い周期で更新して全社に見せることです。
1つめは、打ち合わせのための移動と不在を減らします。2つめは、標準化という第2問の対応策を実行できる状態にします。3つめは、途中の変更を計画に反映できるようにします。どれも遅れが減る理由まで書けます。
立体的な作図ソフトを入れるという案は、造形物のイメージ合わせを早める手として広く語られます。ただし与件文にあるのは2次元の作図ソフトだけなので、当サイトはこれを見立てとして扱い、解答例には入れていません。
次は正解ではありません。趣旨が求めた助言を120字に収めるとこうなる、という例です。
①受注・設計・製作の進捗と図面情報を全社で共有する仕組みを作り、営業と製造の打ち合わせによる不在を減らす。②過去の図面と実績工数を蓄積して工程順序と工数見積もりの標準を作る。③生産計画を短い周期で更新し、負荷と納期を全社で見えるようにする。
120マス / 120マス
第4問 モニュメント事業の拡大|120字
趣旨は「充実と拡大」と2つ書いています。受注を増やす話だけだと、いまの事業を厚くする側が空になります。
出題の趣旨(引用)。「モニュメント事業の充実と拡大を狙うC社の戦略について、助言する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
趣旨が求めているのは戦略です。工程をどう直すかではなく、どこを強くしてどこへ広げるかを書きます。第2問と第3問で現場の話を書いたあとなので、ここで同じ話に戻らないことが大切です。
この事業がすでに持っているものは②に並べました。特殊な加工と仕上げの質、設計から取り付けまでの一貫体制、そして作家から直接依頼を受けている関係です。市場の側は都市型の建築が増えており、①に書きました。
- 強くする軸。特殊加工と仕上げ品質が要るモニュメント製品と、溶接と研磨の技術(第4・第5段落)。
- 広げる軸。付加価値の高いモニュメント製品が売上の4割を占めている(第6段落)。
- 接点。作家からの直接の依頼があり、間に他社が入らない(第5段落)。
- 早く動く余地。造形のイメージ合わせに要する時間を、設計に早く入ることで短くできる(第9段落)。
- 供給の壁。作業チーム間の技術力の差があり、任せられる班が限られる(第14段落)。
- 設備の壁。工場の制約による高さ7mの上限がある(第3段落)。
- 市場。都市型の建築が増え、製作の依頼も増えている(①に記載)。
充実の側は、任せられる班を増やすことです。技術の差があるままでは、受注が増えても受けきれません。溶接と磨きの技術を班をまたいで移す、という形にすると与件文から離れません。
拡大の側は、作家との関係を軸にします。直接つながっているので、図案が固まる前から相談に入れます。イメージ合わせの時間が縮めば、受けられる件数も増えます。
工場の高さの制約に踏み込むかは判断が分かれます。設備の投資は与件文に検討の記述が無いので、この記事は解答例に入れず、本文で触れるだけにしました。
120字なら3つ並びます。設計への早期の関与、技術の横展開、そして一貫体制を示して受注を広げること。最後に付加価値の高い製品の比率を上げる、と締めると戦略の形になります。
次は正解ではありません。趣旨が求めた助言を120字に収めるとこうなる、という例です。
①デザイナーとの直接の関係を広げ、早い段階から設計に加わって形の擦り合わせを短くする。②溶接と研磨の技術を全チームに移し、高度な製作を任せられる班を増やす。③設計から据付までの一貫体制を示して受注を広げ、付加価値の高い製品の比率を高める。
117マス / 120マス
書いた答案を数える
答案を書き終えたら、上の②③の表から作ったこの一覧で、自分が何を入れられたかを数えてください。
| 設問 | 与件文から持ち込める材料 |
|---|---|
| 第1問 | 装飾性の高い特別仕様への対応/溶接と研磨の技術/設計から据付までの一貫体制/特殊加工と仕上げ品質が要るモニュメント製品/数値制御の機械による切断と曲げ/熟練の技術者が班長を務める体制/工場の制約による高さ7mの上限/作業チーム間の技術力の差/工程順序と工数見積もりの標準化の遅れ/大型化で狭くなった作業スペース |
| 第2問 | 溶接と研磨の技術/全社で進む業務プロセスの見直し/熟練の技術者が班長を務める体制/1点ずつ作る仕事に合わせた工場の配置/図面承認の段階で多い変更のやり取り/造形のイメージ合わせに要する時間/製作段階でも続く打ち合わせ/製作前に時間を取られ足りない製作期間/生産計画を超える製作期間/作業チーム間の技術力の差/月に1度しか作らない生産計画/工程順序と工数見積もりの標準化の遅れ/大型化で狭くなった作業スペース/作りかけの加工物の移動/モノの移動に取られる不稼働の時間/営業との打ち合わせによる不在 |
| 第3問 | 早くから使っている2次元の作図ソフト/全社で進む業務プロセスの見直し/図面承認の段階で多い変更のやり取り/月に1度しか作らない生産計画/工程順序と工数見積もりの標準化の遅れ/モノの移動に取られる不稼働の時間/営業との打ち合わせによる不在 |
| 第4問 | 溶接と研磨の技術/設計から据付までの一貫体制/作家からの直接の依頼/特殊加工と仕上げ品質が要るモニュメント製品/付加価値の高いモニュメント製品/工場の制約による高さ7mの上限/造形のイメージ合わせに要する時間/作業チーム間の技術力の差 |
- 材料の数ではなく、選んだ理由を言えるかを見る。同じ材料でも、設問の要求語に合っていなければ答案は噛み合いません。
- その材料が与件文の第何段落から来たかを、答案を見ながら言えるか。言えないものは、与件文ではなく自分の一般論から来ています。
- 文末の向きが要求語と合っているか。助言なら施策の提案で、説明なら理由の記述で終わっているか。
書けなかった材料が多い設問は、与件文の読み落としではなく、時間が足りなかっただけのことがあります。どちらだったかは、答案を書いた直後にしか思い出せません。数え終えたら、その場でひとこと書き残しておくと次に効きます。
答案の書き方の型
100字前後のマスに要素を詰めるには、書き方の型が要ります。この型は年度と事例を問いません。
- 因果を明示する。「◯◯により△△」の形にすると、材料と結論のつながりが読み手に伝わります。
- 番号で並べる。「①…②…」は、要素をいくつ入れたかが自分にも採点する側にも見える形です。
- 名詞で締める。「〜を強化」「〜の向上」と体言で終えると、同じ内容が短いマス数に収まります。
この型は、用語そのものに点が入るという意味ではありません。字数の上限が決まっている以上、同じ内容をより短い形で持ち込めるほうが要素を多く入れられる、という事情によるものです。与件文にない事実をそれらしい言葉で埋めても、加点の根拠にはなりません。
この記事で言えないこと
- 2次試験は正解が公表されません。ここで示したのは要素の選び方と字数の収め方で、正解ではありません。
- 趣旨は「何を問うたか」であって「どう書けば加点されるか」ではありません。加点の検証は別の作業です。
- 設問ごとの配点は公表されていますが、要素ごとの内訳は公表されていません。第2問の40点を4つの解答欄でどう配るかは分かりません。
- 第1問でどの2つを選ぶかは当サイトの判断です。強みの候補は5つ、弱みの候補は4つあり、選び方は1通りではありません。
- 第2問(設問2)で技術の差を熟練者の指導で埋めると置いたのは当サイトの見立てです。与件文に教育の記述はありません。
- 第3問で立体的な作図ソフトを解答例に入れなかったのも当サイトの判断です。与件文にあるのは2次元の作図ソフトだけです。
- 第4問で工場の高さの制約に触れなかったのも当サイトの判断です。与件文に設備投資を検討している記述はありません。
- 段落番号は与件文の先頭からの通し番号で、見出しの行も1段落として数えます(答案の書院の表示と同じです)。
本記事の要素の整理と解答例は当サイトの独自のものです。出題の趣旨と問題(与件文・設問文)の著作権は一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会に帰属します。全文は試験実施機関の公表資料でご確認ください。
この記事のまとめ
- 2次試験に正解は公表されません。公表されるのは設問ごとの出題の趣旨です。
- 令和2年度 事例Ⅲは第2問が設問2つに分かれ、趣旨は5行あります。
- 5行のうち4行が助言。分析と書かれているのは第1問だけです。
- 解答欄は8つ。40字が2つ、60字が4つ、120字が2つです。
よくある質問
- この記事の解答例をそのまま覚えればよいですか?
- いいえ。2次試験は正解が公表されないため、この例が当たっているかは誰にも確かめられません。使い道は、趣旨が挙げた要素が字数にどう収まるかを見ることです。要素の選び方と削り方を自分の答案に移してください。
- 第2問と第3問で同じことを書いてしまいます。どう分けますか?
- 第2問は仕事のやり方そのものを直す設問、第3問はそれを支える仕組みの設問です。標準化を例にすると、第2問は基準を作ると書き、第3問は実績を蓄積して基準を作れる状態にすると書きます。狙いが違えば答案は重なりません。
- 第1問の弱みに工場の高さの制約を入れてもよいですか?
- 入れられます。与件文が明記している制約で、第4問で事業を広げるときにも効きます。この記事は納期の遅れに直結する2つを取りましたが、選び方は1通りではありません。40字なので2つまでという点だけが動きません。
- 第4問で工程改善を書いてはいけませんか?
- 趣旨が「戦略について」と書いています。工程の直し方は第2問と第3問で問われているので、第4問で繰り返すと120字のうち戦略を書く場所が消えます。強くする軸と広げる軸の2つで組み立てるほうが趣旨に沿います。
- 記事の段落番号は、どこで数えた番号ですか?
- 与件文の先頭から数えた順番で、当サイトの答案の書院に表示している番号と同じです。【C社の概要】のような見出しの行も1段落として数えます。この年の問題冊子には与件文の前に【注意事項】の枠がありますが、与件文ではないので数えていません。




