事例Ⅰの因果チェーン総覧|与件の言い回しを打ち手と効果に変換する32本
この記事の結論
- この総覧は実測ではなく、作成者の見立てです。10カテゴリ32本の変換表です。
- 第1問の最多論点でも19年中7年だけ。ここは当サイトの実測です。
- 最終問も割れます。何が来るかを待ち構える型は、この事例では作れません。
- だから変換表を持ちます。言い回しから打ち手が出る状態を作るのが準備です。
このサイトの記事は、ほとんどが実測データです。この記事は違います。中身は「与件の言い回し→理論・打ち手→効果」という変換辞書で、作成者の経験則をまとめたものです。ただし、この見立てが立っている前提は当サイトの集計で確かめられました。事例Ⅲと違い、事例Ⅰは第1問の型すら固まりません。どこまでが見立てで、どこからが実測なのかを分けて示します。
この総覧は実測ではなく、見立てです
10カテゴリ32本の変換表は作成者の経験則です。当サイトの実測とは別ものとして読んでください。
事例Ⅰの設問は、与件に書かれた出来事を組織・人事の言葉に読み替え、効果まで書く形が多くなります。この総覧は、その置き換えの型を10カテゴリ32本に整理したものです。
並んでいる理論や打ち手は、権限委譲や多能工化のように、この試験で広く使われている言葉です。当サイトが作った分類ではありません。どの言い回しにどれを当てるかの組み合わせが、作成者の見立てにあたります。
使い方は単純です。左列の言い回しを見たら、中列と右列がすぐ出てくる状態にしておきます。答案では矢印を接続語に変えるだけで、文の骨格ができます。
以降の表には、見立てか実測かをキャプションに必ず書いています。表だけを拾い読みするときは、そこを先に見てください。
第1問すら型が固まらない(ここは実測)
第1問に最も多く来た論点でも19年中7年です。事例Ⅲの第1問とは別の科目だと考えてください。
事例Ⅲなら、第1問は強みと弱みの分析だと決め打ちできます。事例Ⅰは違います。当サイトが19年の設問に1問ずつラベルを付けて数えると、第1問に最も多く来た論点でも7年しかありませんでした。
最終問も割れます。当サイトの実測では組織構造・管理6年/人事・人材6年/事業戦略・ドメイン5年の順でした。第1問と最終問の両方で型が決まらないのは、4つの事例のなかでこの事例だけです。
つまり、待ち構える型が作れません。準備は「何が来ても、与件の言い回しから打ち手を引ける」形にするしかありません。それがこの変換表の役割です。
見立ての10分類は、実測のラベルと重ならない
見立ての1カテゴリが実測の1ラベルに対応するとは限りません。2つの体系の数字を足さないでください。
| 当サイトの実測ラベル | 19年での設問数 | 対応する見立てのカテゴリ |
|---|---|---|
| 事業戦略・ドメイン | 29問 | ドメイン・成長戦略/外部との連携 |
| 組織構造・管理 | 19問 | 組織の形/理念と組織文化 |
| 人事・人材 | 17問 | 採用/定着/育成・技能承継/評価・報酬 |
| 強み・経営資源 | 7問 | ドメイン・成長戦略(第1問の分析として) |
| 事業承継・M&A | 7問 | 権限委譲・後継者育成/同族と承継 |
| 環境・市場の分析 | 5問 | ドメイン・成長戦略(外部環境の側から) |
実測は6ラベル、見立ては10カテゴリです。実測の「人事・人材」は、見立てでは採用・定着・育成・評価の4つに割れます。逆に見立ての「ドメイン・成長戦略」は、実測の3ラベルにまたがります。
使うときは、どちらか一方の体系に統一してください。2つの数字を足したり、割合の分母に混ぜたりすると、実態と合わない数になります。
1枚のまとめ(保存して使う)
下の10分類・32本を1枚にしました。演習中に横に置いて、左の言い回しから引くのが使い方です。

人の設問を、打ち手へ変換する6分類
前半6カテゴリは人と組織の中の話です。組織の形・権限と承継・採用・定着・育成・評価の順に並びます。
組織の形(4本)
| 与件の言い回し | 理論・打ち手 | 効果 |
|---|---|---|
| 部門どうしの連携が悪い・縦割りになっている | 機能別組織の見直し・部門をまたぐ調整役や会議体の設置 | 部門間連携・意思決定の迅速化 |
| 社長が一人で決めている・判断が遅い | 権限委譲と決裁範囲の明確化 | 意思決定の迅速化・社長の負担軽減 |
| 新規事業を既存の部署の中で始めた | 専任のプロジェクトチームとして切り出す | 資源の集中・既存事業との摩擦回避 |
| 多角化して管理が行き届かない | 事業の単位で責任と権限をそろえる | 責任の明確化・現場の自律 |
権限委譲・後継者育成(3本)
| 与件の言い回し | 理論・打ち手 | 効果 |
|---|---|---|
| 社長の子息が入社した・後継者が決まった | 現場を経験させ、権限を段階的に移す | 承継の円滑化・社内の求心力 |
| 社長のカリスマで会社が回っている | 経営理念の明文化と共有・幹部の育成 | 属人性の低下・組織的な経営への移行 |
| 一族以外の社員が育たない・任されない | 非同族の内部登用と抜擢 | モラール向上・人材の定着 |
採用(3本)
| 与件の言い回し | 理論・打ち手 | 効果 |
|---|---|---|
| 人手が足りない・応募が来ない | 中途採用と非正規の戦力化・処遇の見直し | 必要な人員の確保 |
| 新しい分野の知識を持つ人がいない | 専門人材の中途採用・外部人材の登用 | 能力の補完・立ち上げの短縮 |
| 採用しても続かない | 教育の体系と評価の整備・道筋の提示 | 定着率の向上 |
定着・離職(3本)
| 与件の言い回し | 理論・打ち手 | 効果 |
|---|---|---|
| 若手が辞めていく | 処遇の改善・目標管理・上司との対話の仕組み | 離職の抑制 |
| 非正規の比率が高く戦力が安定しない | 正社員登用の道を作り、教育の対象に含める | 定着とサービス品質の安定 |
| 賃金が同業より低い・不満が出ている | 役割と成果を反映した賃金・処遇制度へ | 納得感・モラール向上 |
育成・技能承継(3本)
| 与件の言い回し | 理論・打ち手 | 効果 |
|---|---|---|
| ベテランの経験と勘に頼っている | 作業の標準化とOJTで技能を移し、記録に残す | 技能承継・品質の安定 |
| 従業員の高齢化で退職が近い | 若手とベテランを組ませる・技能のデータ化 | 承継のリスク低減 |
| 一人が何役も抱えている・繁閑の差が大きい | 多能工化と計画的な配置転換 | 繁閑の吸収・育成の同時進行 |
評価・報酬(3本)
| 与件の言い回し | 理論・打ち手 | 効果 |
|---|---|---|
| 年功序列で若手が報われない | 役割と成果を反映した評価制度の導入 | 若手のモラール・定着 |
| 何を評価されるのか分からない | 目標管理制度と評価基準の明示 | 行動の方向づけ・納得感 |
| 成果主義を入れたが上手くいかない | 結果だけでなく過程も評価する・チームの評価を併用 | 協働の維持・短期志向の抑制 |
6つのどれも、行き着く先は「任せられるようにする」か「辞めずに育つようにする」のどちらかです。打ち手の名前を覚えるより、与件のどの一文がその打ち手を呼んでいるかを結び付けてください。
組織と戦略の設問を、打ち手へ変換する4分類
後半4カテゴリは会社全体の話です。理念と文化・同族と承継・ドメイン・外部との連携の順です。
理念と組織文化(3本)
| 与件の言い回し | 理論・打ち手 | 効果 |
|---|---|---|
| 部署ごとにバラバラで一体感がない | 経営理念の共有・全社で情報を共有する場を作る | 求心力・一体感の醸成 |
| 保守的で新しいことに動かない | 権限委譲と、失敗を責めない評価・小さく試す場 | 挑戦の促進・組織の活性化 |
| 買収や統合で二つのやり方が混ざっている | 理念とルールの統一・人事交流 | 摩擦の低減・統合の効果 |
同族と承継(3本)
| 与件の言い回し | 理論・打ち手 | 効果 |
|---|---|---|
| 先代と現社長で方針が違う | 役割の分担と権限の線引きを決める | 混乱の回避・現場の迷いの解消 |
| 親族が要職を占めている | 能力による登用・非一族の幹部育成 | 人材の確保・納得感 |
| 承継を機に事業を見直したい | ドメインの再定義と経営資源の再配分 | 選択と集中 |
ドメイン・成長戦略(4本)
| 与件の言い回し | 理論・打ち手 | 効果 |
|---|---|---|
| 特定の取引先に依存している | 依存からの脱却=新しい市場や自社製品への展開 | リスク分散・収益の安定 |
| これまでの強みが生きる市場を探したい | 強みと機会を適合させるドメインの再定義 | 差別化・競争優位 |
| 価格競争に巻き込まれている | 高付加価値化・価格以外の競争軸へ | 収益性の改善 |
| 新しい事業をどう位置づけるか | 既存事業との相乗効果を示す | 経営資源の有効活用 |
外部との連携(3本)
| 与件の言い回し | 理論・打ち手 | 効果 |
|---|---|---|
| 同業を買収した・される | 人事制度と理念の統一・要となる人材の引き止め | 統合の効果を実現する |
| 大学や公的機関と組んだ | 外部の資源で自社に無い能力を補う | 開発力の補強・信用の獲得 |
| 取引先や地域と一緒に取り組む | 目的と役割分担を先に決める | 経営資源の補完 |
後半は、人事の打ち手だけでは答えになりません。組織の話を戦略に接続し、最後は与件に書かれた強みを回収して終えます。強みを使わずに終わる答案は、設問の流れから外れます。
読み替え・拾う語と持ち込む語・与件にないことは書かない
得点はキーワードではなく因果の鎖に付きます。この3原則が、変換表を答案に変える手順です。
読み替えの原則
左列を見たら中列と右列が即座に出る状態を作ります。清書は、矢印を接続語に変える作業に落とせます。「理由は〜」「具体的には①②」「もって〜」の3つでつなぎます。
拾う語と持ち込む語を分ける
上の表の中列には、与件文にはまず出てこない語が並びます。当サイトの別の集計では、事業部制・OJT・分社化は25年間で一度も与件文に出ていません。与件文で探すのは左列、答案で引き出すのは中列です。
与件にないことは書かない
一般論での穴埋めは事故の元です。モチベーション向上や権限委譲を、根拠なく投入しないでください。各文について「与件の何行目か」を指させるか自問し、指せない文は削除します。
この記事で言えないこと
- 変換表は作成者の見立てです。当サイトの実測で確かめたのは、第1問と最終問の型が固まらないという1点だけです。
- 実測は6ラベル、見立ては10カテゴリです。分け方が違うので、2つの体系の数字は足し合わせられません。
- 並んでいる理論や打ち手は、この試験で一般に使われている言葉です。当サイトが作った分類ではありません。
- 19年という窓は、事例Ⅰでは19事例しかありません。「型が固まらない」も、この19年での話です。
- 2次試験は正解が公表されません。この総覧は答案を組み立てる手順であって、点が入ることを保証するものではありません。
本記事の変換表は作成者の見立て、実測部分は当サイトの独自集計です。問題そのもの(与件文・設問文)の著作権は一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会に帰属します。全文は試験実施機関の公表資料でご確認ください。
この記事のまとめ
- この総覧は実測ではなく、作成者の見立てです。10カテゴリ32本の変換表です。
- 第1問の最多論点でも19年中7年だけ。ここは当サイトの実測です。
- 最終問も割れます。何が来るかを待ち構える型は、この事例では作れません。
- だから変換表を持ちます。言い回しから打ち手が出る状態を作るのが準備です。
よくある質問
- この変換表は実測データですか?
- いいえ。10カテゴリ32本の中身は作成者の経験則であって、集計した結果ではありません。実測で確かめたのは骨格のほうで、第1問に最も多く来た論点でも19年中7年しかない、という点です。表を読むときは、各表のキャプションで見立てか実測かを確認してください。
- 型が読めないなら、何を準備すればよいのですか?
- 変換の速さです。第1問に何が来るかは読めませんが、与件文に出てくる言い回しの種類は限られます。左列を見たら中列と右列が出る状態を作っておけば、設問の並びが変わっても対応できます。待ち構えるのではなく、引き出しから出す速さで備える、という考え方です。
- 事業部制やOJTは、与件文に出るのですか?
- 当サイトが数えた範囲では出ていません。事業部制・OJT・分社化は25年間で0年です。これらは与件文から拾う語ではなく、答案に持ち込む語です。探す場所が違うので、覚え方も分けてください。詳しくは組織・人事の引き出しの記事にまとめています。
- 打ち手の名前を覚えれば点になりますか?
- この総覧の前提は逆です。得点はキーワードではなく因果の鎖に付く、という見立てに立っています。打ち手の名前だけを置いても、与件のどの記述から来たのか、どんな効果につながるのかが書かれていなければ鎖になりません。与件に根拠を指させない文は削ってください。

