令和5年度 事例Ⅱの解説|与件文のどこを使い、答案に何を書くか
この記事の結論
- 2次試験に正解は公表されません。公表されるのは設問ごとの出題の趣旨です。
- 令和5年度 事例Ⅱは4問中3問が助言です。分析だけの準備では足りません。
- 第1問は3C分析です。顧客と競合は会社の外側なので、①の要約から取ります。
- 第2問は割賦販売が設問文で除かれています。分割払いを書くと外れます。
2次試験は正解が公表されないので、答案が当たっていたかを誰も確かめられません。ただし試験実施機関は毎年「出題の趣旨」を公表しており、何を問うたのかを出題側が語っている文はここにしかありません。この記事では令和5年度 事例Ⅱの4設問について、趣旨を引用し、そこから答案に入れる要素と字数の配り方を導きます。この年は第1問が3C分析、残る3問が助言でした。要素は一般論ではなく、すべて与件文の記述に紐づけ、どの段落から来ているかを添えています。
この年の事例Ⅱは、どんな回か
与件文3,066字・解答字数の合計500字。80分の内訳は読む15分/考える45分/書く20分です。
| 設問 | 要求語 | 配点 | 解答字数 | この位置で多い論点 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 述べる | 30点 | 150字 | ◎ 現状分析(SWOT・3C) 68%(46〜85%) |
| 第2問 | 助言 | 20点 | 100字 | プロモーション 32%(15〜54%) |
| 第3問 | 助言 | 20点 | 100字 | 関係性強化・愛顧 26%(12〜49%) |
| 第4問 | 助言 | 30点 | 150字 | プロモーション 24%(10〜47%) |
| 設問 | 書く時間の目安 | 考える時間の目安 |
|---|---|---|
| 第1問 | 6分 | 14分 |
| 第2問 | 4分 | 9分 |
| 第3問 | 4分 | 9分 |
| 第4問 | 6分 | 14分 |
読む時間は与件文の分量から、書く時間は解答字数から決まります。動かせるのは真ん中の考える45分だけなので、これをどの設問に配るかが、この年の80分の設計になります。上の数字は前提を置いた試算なので、自分の読む速さ・書く速さを一度計って置き換えてください。
与件文の形(段落ごとの字数と語の数)
逆接と否定・課題を表す語がいちばん多いのは第10段落で、合わせて2語です。
本文は載せていません。段落ごとに何字あり、逆接・否定・年代の語が何回出てくるかだけを数えたものです。これらの語が集まる段落は課題を問う設問の根拠になっていることが多いので、どこを速く読み、どこで手を止めるかの当たりをつける用途に使ってください。
① この会社に何が起きたか
少年野球チームに支えられてきた地域のスポーツ用品店が、専門店と量販店に挟まれ、次の客と次の売り方を探す話です。
まだ解いていない年度は、先に解いてから読むことをすすめます。この記事は与件文の中身に触れます。
B社はスポーツ用品の加工と販売を手がける8名の会社で、店は1つ。ユニフォームの加工や刺しゅうをする作業場が併設されています。X県の都市部近郊にあり、近くの河川敷は運動施設として整えられ、野球場の数がふつうより多い、野球熱の高い土地です。
1955年に現社長の父が衣料品店として開き、公立小中学校の体操服と運動靴の指定業者になりました。このとき身につけた校章のプリントと名前の刺しゅうの技が、いまも受け継がれています。1970年代に少年野球チームが次々にでき、ユニフォームと用品の相談が集まったことから、2代目がスポーツ用品店へ切り替えました。
(衣料品の店を野球用品の店に変えた。量販店とは値段で戦えない。)
「体操服に校章を入れる技を身につけた。それが今も店の芯にある。」
2000年代に入ると近隣に専門店が相次いで開き、品揃えで見劣りします。数年前には車で15分の場所にチェーンの大型量販店ができ、価格では張り合えません。そこでB社は野球用品を深く扱う道を選びました。各少年野球チームは、加工の腕と納品の確かさ、体格や技術に合わせた提案を評価しています。
ただ、価格を理由に保護者が量販店で個別に買う動きが出ており、監督も強くは言えません。買い替えの負担で野球をやめる子どももいます。チーム側はメンバー集めに苦労しており、データ管理の相談も届いています。ICT企業にいた30代の長男が継ぐことになり、社長は事業の見直しに動きました。
「ICTの会社から戻ってくる。データやアプリで、チームの力になれるはずだ。」
ここからは、この年の読みどころです。与件文を正しく読めても、設問との噛み合わせを外すと点になりません。
- **第1問は150字で3Cです。** 顧客・競合・自社を均等に書くと1つ50字。この事例は競合が2種類(専門店と量販店)あり、顧客も2層(チームと保護者)あるので、どちらも書くと足りません。重みの置き方が答案の差になります。
- **第2問は「買い替えの負担」に限られた設問です。** 用品を売る施策ではなく、負担を軽くする売り方の話。成長に合わせた買い替えという事情が起点です。
- **第3問はチームのメンバー集めで、B社の売上の話ではありません。** 女子の軟式野球が広がりつつあるのに参加希望者が少ない、という状態をどう動かすか。用品の提案に寄せると要求からずれます。
- **第4問は150字で、相手と手段の両方を出します。** 後継ぎがICT企業出身であること、いまはホームページがあるだけであること、SNSやアプリの話が与件文に並んでいることが手がかりです。
読みどころは当サイトの見立てで、公表された正解ではありません。2次試験に公式解答はないので、ここは「どこで噛み合わなくなりやすいか」の整理として読んでください。
② 使ってほしい資産|与件文のどの言葉を答案に持ち込むか
この事例の資産は、加工の技術・チームとの関係・提案力・後継者の4つに固まっています。すべてB社の内側の話です。
以下の段落番号は、与件文の先頭から数えた順番です。問題PDFの印刷どおりに数えています。
左の列は与件文をそのまま引いたものです。右の列は、それを答案の語に置き換えたもの。置き換えれば加点されるという意味ではありません(加点の基準は公表されていません)。答案の字数が短いので、同じ内容を短い語で持ち込む必要がある、という事情によるものです。
| 与件文の言葉 | 答案での言い方 | 段落 | 効く設問 |
|---|---|---|---|
| 「ユニフォームなどの加工、刺しゅうを行う作業場併設」 | 店舗併設の加工作業場 | 第1段落 | 第1問(自社)・第2問 |
| 「付近にはJRと大手私鉄が乗り入れている駅があり、交通の便がよい」 | 駅に近い立地 | 第2段落 | 第1問(自社) |
| 「体操服に校章をプリントしたり、刺しゅうでネームを入れたりする加工技術」 | プリント・刺しゅうの加工技術 | 第4段落 | 第1問(自社)・第3問 |
| 「公立小中学校の体操服や運動靴を納品する業者として指定を受けた」 | 公立小中学校の指定業者 | 第4段落 | 第1問(自社)・第3問 |
| 「チーム名や背番号の切り文字の切り抜き、貼り付け加工」 | チーム名・背番号の加工対応 | 第5段落 | 第1問(自社)・第2問 |
| 「各少年野球チームから指定業者となっていた」 | 少年野球チームの指定業者 | 第7段落 | 第1問(自社)・第2問・第4問 |
| 「各種有名スポーツブランド用品の取り揃え」 | 有名ブランド用品の品揃え | 第12段落 | 第1問(自社) |
| 「オリジナルバッグなどのオリジナル用品への対応力」 | オリジナル用品への対応力 | 第12段落 | 第1問(自社)・第3問 |
| 「子どもたちの体格や技術に応じた野球用品の提案力」 | 体格や技術に応じた提案力 | 第12段落 | 第1問(自社)・第2問・第4問 |
| 「引き続きB社からの購入を薦めてくれている」 | チーム側からの推奨 | 第12段落 | 第1問(自社)・第4問 |
| 「ユニフォームやオリジナル用品などは、各チームに一括納品できる」 | チームへの一括納品 | 第13段落 | 第2問 |
| 「ICT企業に勤めている30代の長男がB社を事業承継する決意をして戻ってくる」 | ICT経験を持つ後継者 | 第17段落 | 第4問 |
12のうち加工に関わる3つ、「店舗併設の加工作業場」「プリント・刺しゅうの加工技術」「チーム名・背番号の加工対応」は、量販店が真似しにくい部分です。第1問の自社にも、第2問の売り方にも効きます。
関係に関わる3つ、「公立小中学校の指定業者」「少年野球チームの指定業者」「チーム側からの推奨」は、すでに届く相手がいるという資産です。第3問と第4問で、誰に話しかけられるかを決めます。
残る「体格や技術に応じた提案力」と「ICT経験を持つ後継者」は、この事例の主役です。前者は量販店との違いそのもので、後者は第4問の打ち手を実行できる根拠になります。
③ 改善してほしいこと|与件文が課題として書いている言葉
課題は2種類あります。競合に押されている点と、社長が見直しの方針として自分で挙げた点です。
表の形は②と同じです。左が与件文の言葉、右が答案での言い方。第17段落から第21段落の4行は、社長が事業の見直しとして自ら並べたもので、そのまま設問の骨格になっています。
| 与件文の言葉 | 答案での言い方 | 段落 | 効く設問 |
|---|---|---|---|
| 「B社は品揃えの点で見劣りがしている」 | 専門店に劣る品揃え | 第10段落 | 第1問(自社) |
| 「B社は価格面で太刀打ちができない」 | 量販店に対する価格対応力の弱さ | 第10段落 | 第1問(自社)・第2問 |
| 「各チームの監督ともB社で購入することをなかなか強く言えなくなっている」 | 監督が推奨しにくくなった状況 | 第13段落 | 第1問(自社)・第4問 |
| 「より良い用品への買い替えも保護者には金銭的な負担となっていて」 | 保護者の買い替え負担 | 第14段落 | 第2問 |
| 「買い替えの負担を理由に野球をやめてしまう子どもたち」 | 負担を理由とした野球離れ | 第14段落 | 第2問・第3問 |
| 「SNSを用いた募集活動への対応がある」 | SNSでの募集活動への対応 | 第15段落 | 第3問 |
| 「どのチームも女子のメンバー獲得に苦しんでいる」 | 女子メンバー獲得の苦戦 | 第15段落 | 第3問 |
| 「たとえばスマートフォンを使って何かできないか」 | スマートフォン活用の相談 | 第16段落 | 第4問 |
| 「各少年野球チームの監督とのより密接なコミュニケーションを図り」 | 監督との密接な意思疎通 | 第19段落 | 第4問 |
| 「用品に関する買い替えなどの多様なニーズに応えるいくつかの販売方法を導入する」 | 多様なニーズに応える販売方法 | 第19段落 | 第2問 |
| 「女子向けの野球用品の提案力を高め、新規顧客としての女子チームの開拓を行う」 | 女子チームの新規開拓 | 第20段落 | 第3問 |
| 「現在は店舗紹介のホームページを設けている程度である」 | 店舗紹介にとどまるホームページ | 第21段落 | 第4問 |
②③はどちらもB社の内側を並べた表です。3C分析の顧客と競合は会社の外側にあるので、この2つの表には載っていません。顧客と競合の材料は①に書きました。
第10段落と第13段落の3つは、競合に押されて生じた課題です。第1問の自社の弱みにそのまま入ります。第14段落から第16段落の4つは、チームや保護者から持ち込まれた相談で、第2問から第4問の出発点になります。
第19段落から第21段落の4つは、社長が自分で立てた見直しの方針です。設問文と重なっているので、これを答案の結論として書くだけでは助言になりません。どうやるかを足して初めて、趣旨が求めた助言になります。
手がかりは、公表された出題の趣旨にある
趣旨は設問ごとに「何を問うたか」を書いた文です。この年の事例Ⅱは、4問のうち3問が助言でした。
出題の趣旨は「〜する能力を問う問題である」という定型文で書かれます。この「〜する能力」の部分が、答案の文末の向きを決めます。分析と書かれていれば起きている事実を切り分け、助言と書かれていれば打ち手を示します。
令和5年度 事例Ⅱは、少年野球チームを主な取引先とするスポーツ用品店の事例です。4設問の配点・字数と、趣旨が名指ししている能力を並べると次のようになります。
| 設問 | 配点 | 解答字数 | 趣旨が名指しする能力 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 30点 | 150字以内 | 分析(内外の経営環境) |
| 第2問 | 20点 | 100字以内 | 助言(プライシングの観点から) |
| 第3問 | 20点 | 100字以内 | 助言(プロモーション戦略とイベント) |
| 第4問 | 30点 | 150字以内 | 助言(オンライン・コミュニケーション戦略) |
第1問の趣旨は「B社内外の経営環境を分析する能力」とだけ書かれており、3Cという語は出てきません。3つの視点を求めているのは設問文のほうです。趣旨と設問文の両方を読まないと、書く形が決まりません。
第1問と第4問で60点、全体の6割です。どちらも150字あるので、書く時間そのものがかかります。100字の第2問と第3問は、材料を決めたら一気に書き切れるところまで型を作っておくのが現実的です。
第1問 3C分析|150字
趣旨は「内外の経営環境を分析する」と書いています。顧客・競合・自社の3つがそろわないと、3Cを問われた答案になりません。
出題の趣旨(引用)。「B社内外の経営環境を分析する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
趣旨は短く、「内外」としか言っていません。内と外の両方に触れることだけが確実な要求です。設問文が3Cと指定しているので、顧客・競合・自社の3つに割ります。顧客と競合はB社の外側なので、②③ではなく①から材料を取ります。
| 3Cの観点 | 使う材料 | どこに書いてあるか |
|---|---|---|
| 顧客(外) | 指定業者として取引する各少年野球チーム/メンバーと保護者/体操服を納める公立小中学校/中学の部活動/女子の軟式野球チーム | ①(第4・第7・第9・第15段落) |
| 競合(外) | サッカーやバスケットボール用品の専門店/車で15分の大型スポーツ用品量販店 | ①(第10段落) |
| 自社の強み(内) | プリント・刺しゅうの加工技術/体格や技術に応じた提案力/少年野球チームの指定業者/チーム側からの推奨 | ②の表 |
| 自社の弱み(内) | 専門店に劣る品揃え/量販店に対する価格対応力の弱さ/監督が推奨しにくくなった状況 | ③の表 |
150字を3つに割ると1観点あたり50字前後です。顧客は誰かを3つ並べ、競合は業態と押されている点に触れ、自社は強みと弱みを両方入れる。どれかを厚く書いた時点で、別のどれかが消えます。
顧客の書き方が分かれるところです。B社の直接の取引先はチームですが、実際に使うのは子どもで、払うのは保護者です。第2問と第4問がこの3者を分けて扱うので、第1問でも分けて書くほうが後半とつながります。
女子チームを顧客に入れるかも判断です。まだ取引はありませんが、第20段落が新規顧客として名指ししており、第3問がそれを問います。この記事では、これから狙う相手として顧客の側に置きました。
次は正解ではありません。趣旨が求めた内外の分析を150字に収めるとこうなる、という例です。
顧客は①指定業者として取引する少年野球チームとその保護者、②体操服を納める公立小中学校、③新たに狙う女子チーム。競合は品揃えで勝る専門店と、低価格の大型スポーツ用品量販店で、価格では対抗できない。自社はユニフォーム加工技術と体格や技術に応じた提案力が強みだが、品揃えと価格で見劣りする点が弱みである。
149マス / 150マス
第2問 買い替えの負担を軽くする|100字
趣旨は「プライシングの観点から」。設問文は割賦販売を除いています。分割払いを書いた時点で条件から外れます。
出題の趣旨(引用)。「顧客のニーズに対応した販売方法について、プライシングの観点からB社に助言する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
ここから能力が助言に変わります。設問文は、成長やより良い道具への願望で何度も買い替えが起きること、そのため保護者に金銭的な負担を減らしたいニーズがあることを前提として示しています。
条件が2つ付いています。プライシングの新しい流れを考慮すること、そして割賦販売による取得は除くこと。後者は明示された除外なので、分割払いやローンを書くと設問の条件に反します。
- 埋める穴。保護者の買い替え負担があり、負担を理由とした野球離れまで起きている(第14段落)。
- 使える資産。店舗併設の加工作業場と、チーム名・背番号の加工対応がある(第1・第5段落)。
- 使える資産。体格や技術に応じた提案力があり、いつ何に替えるかを見立てられる(第12段落)。
- 使える資産。チームへの一括納品ができ、まとまった単位で回せる(第13段落)。
- 社長の方針。多様なニーズに応える販売方法を導入すると自ら挙げている(第19段落)。
- 外れる打ち手。量販店に対する価格対応力の弱さがあるので、値下げでの対抗は続かない(第10段落)。
- 除外。割賦販売による取得は設問文が明示して外している(設問文)。
所有を前提にすると、成長のたびに買い直す構造は変わりません。使う期間だけ料金を払う形や、使い終わった品を引き取って次の子へ回す形にすると、1回あたりの支払いが下がります。
この方向はB社の加工の技と相性が良いところです。名前や背番号を入れ替えられるので、引き取った品を別の子の名前で戻せます。量販店には作業場がないので、同じことをしにくい打ち手になります。
ただし、月額制や下取りという具体的な仕組みは与件文にも趣旨にも書かれていません。プライシングの新しい流れという設問文の言葉から当サイトが立てた見立てです。
100字なので、売り方を2つ書いて効果を1文添えると埋まります。趣旨が「顧客のニーズに対応した」と書いている以上、誰の負担がどう軽くなるかが消えると、要求に届きません。
次は正解ではありません。趣旨が挙げた観点を100字に収めるとこうなる、という例です。
月額定額で用品を使い、成長に応じて交換できるサブスクリプションを導入する。あわせて使用済み用品を下取りし、加工技術で名前を入れ替えて再販する。体格に応じた提案と併せ、保護者の負担を抑え継続を促す。
98マス / 100マス
第3問 女子チームのメンバーを増やす|100字
趣旨は「プロモーション戦略およびイベントの実施」。両方を名指ししているので、片方だけだと半分になります。
出題の趣旨(引用)。「B社が新たな顧客を開拓するためのプロモーション戦略およびイベントの実施について、助言する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
趣旨は2つを並べています。伝える手立てと、催しを開くこと。設問文もプロモーションとイベントの両方を求めています。発信だけを書くとイベントが抜け、体験会だけを書くと知らせる手段が抜けます。
もうひとつ、趣旨は「新たな顧客を開拓するため」と目的を書いています。増員に協力する話ですが、B社にとっては女子チームという取引先を作る話でもあります。効果まで書くなら、この向きで締めます。
- 相手。女子メンバー獲得の苦戦が続き、女子の参加希望者そのものが少ない(第15段落)。
- 手段。SNSでの募集活動への対応が課題として挙がっている(第15段落)。
- 届く経路。公立小中学校の指定業者なので、学校を通じて女子児童に届く(第4段落)。
- 場所。近くの河川敷には野球場が多く、練習や催しの場所に困らない(第3段落)。
- 見せる物。オリジナル用品への対応力があり、チームらしい装いを作れる(第12段落)。
- 解ける不安。負担を理由とした野球離れがあるので、費用の説明も入口の障害になる(第14段落)。
- 社長の方針。女子チームの新規開拓を、見直しの3つめとして自ら挙げている(第20段落)。
この設問でいちばん効く資産は「公立小中学校の指定業者」です。体操服を納めている相手なので、女子児童に直接届く経路をすでに持っています。SNSだけを書くと、この経路が答案から落ちます。
イベントの中身は、始める前の不安を解く形にします。やったことがない子が相手なので、道具を持っていなくても参加できる体験の場が要る、という組み立てです。ここは当サイトの見立てです。
100字なので、手立てを3つか4つ並べて効果を1文で締めるのが限界です。趣旨が「新たな顧客を開拓するため」と書いているので、最後は入部と取引の獲得につなげます。
次は正解ではありません。趣旨が挙げた2つを100字に収めるとこうなる、という例です。
①SNSで女子選手の練習風景や活躍を発信し、②公立小中学校とのつながりを使って女子児童に告知し、③河川敷で女子限定の野球体験会を開き、④女子向け用品の試着と提案を行う。以て入部を促し新規顧客を開拓する。
99マス / 100マス
第4問 誰にどう発信するか|150字
設問文が「誰に」と聞いています。相手を書かずに手段だけを並べると、要求の半分が抜けます。
出題の趣旨(引用)。「重要な顧客との関係性を強化するためのオンライン・コミュニケーション戦略について、助言する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
趣旨は「重要な顧客」と書いています。誰が重要かを決めるところから始まる設問です。設問文もホームページ、SNS、スマートフォンアプリを挙げたうえで、誰にどう対応するかを聞いています。
重要な顧客は2組に絞れます。取引の入口である各少年野球チームの監督と、実際に買うメンバーと保護者です。③の課題も、この2組それぞれに1つずつ対応する形で並んでいます。
- 相手その1。監督との密接な意思疎通を、社長が見直しの方針として挙げている(第19段落)。
- 監督の困りごと。スマートフォン活用の相談が、データ管理について持ち込まれている(第16段落)。
- 監督の状況。監督が推奨しにくくなった状況にあり、関係が弱まりつつある(第13段落)。
- 相手その2。メンバーと保護者は、量販店で個別に買う選択肢を持っている(第13段落)。
- 渡せる価値。体格や技術に応じた提案力があり、一人ずつに違う話ができる(第12段落)。
- いまの状態。店舗紹介にとどまるホームページで、他店と差がつかない(第21段落)。
- 実行できる根拠。ICT経験を持つ後継者が戻ってくる(第17段落)。
監督への打ち手は、データ管理の相談にそのまま答える形になります。チームの記録を預かる仕組みを用意すれば、要望や相談が日常的に集まり、監督が推奨しにくくなった状況を戻す糸口になります。
保護者への打ち手は、一斉の広告ではなく一人ずつの提案です。誰の子がどの体格で、いつ何を替える時期かが分かれば、量販店には出せない案内になります。第2問の売り方の告知先にもなります。
150字は、相手2組と手段と狙いを書くとちょうど埋まります。趣旨が「関係性を強化するため」と書いているので、一方的な発信ではなく、やり取りが続く形で締めます。
次は正解ではありません。趣旨が挙げた要求を150字に収めるとこうなる、という例です。
対象は①各少年野球チームの監督、②メンバーと保護者。監督にはアプリでチームとメンバーのデータ管理を提供し、要望の把握と相談への対応を行う。保護者にはホームページとSNSで、体格や技術に応じた用品提案と買い替え時期、女子向け用品の情報を配信する。後継者のICT知識を活かし、双方向の交流で関係性を強化する。
148マス / 150マス
書いた答案を数える
答案を書き終えたら、上の②③の表から作ったこの一覧で、自分が何を入れられたかを数えてください。
| 設問 | 与件文から持ち込める材料 |
|---|---|
| 第1問 | 店舗併設の加工作業場/駅に近い立地/プリント・刺しゅうの加工技術/公立小中学校の指定業者/チーム名・背番号の加工対応/少年野球チームの指定業者/有名ブランド用品の品揃え/オリジナル用品への対応力/体格や技術に応じた提案力/チーム側からの推奨/専門店に劣る品揃え/量販店に対する価格対応力の弱さ/監督が推奨しにくくなった状況 |
| 第2問 | 店舗併設の加工作業場/チーム名・背番号の加工対応/少年野球チームの指定業者/体格や技術に応じた提案力/チームへの一括納品/量販店に対する価格対応力の弱さ/保護者の買い替え負担/負担を理由とした野球離れ/多様なニーズに応える販売方法 |
| 第3問 | プリント・刺しゅうの加工技術/公立小中学校の指定業者/オリジナル用品への対応力/負担を理由とした野球離れ/SNSでの募集活動への対応/女子メンバー獲得の苦戦/女子チームの新規開拓 |
| 第4問 | 少年野球チームの指定業者/体格や技術に応じた提案力/チーム側からの推奨/ICT経験を持つ後継者/監督が推奨しにくくなった状況/スマートフォン活用の相談/監督との密接な意思疎通/店舗紹介にとどまるホームページ |
- 材料の数ではなく、選んだ理由を言えるかを見る。同じ材料でも、設問の要求語に合っていなければ答案は噛み合いません。
- その材料が与件文の第何段落から来たかを、答案を見ながら言えるか。言えないものは、与件文ではなく自分の一般論から来ています。
- 文末の向きが要求語と合っているか。助言なら施策の提案で、説明なら理由の記述で終わっているか。
書けなかった材料が多い設問は、与件文の読み落としではなく、時間が足りなかっただけのことがあります。どちらだったかは、答案を書いた直後にしか思い出せません。数え終えたら、その場でひとこと書き残しておくと次に効きます。
答案の書き方の型
100字前後のマスに要素を詰めるには、書き方の型が要ります。この型は年度と事例を問いません。
- 因果を明示する。「◯◯により△△」の形にすると、材料と結論のつながりが読み手に伝わります。
- 番号で並べる。「①…②…」は、要素をいくつ入れたかが自分にも採点する側にも見える形です。
- 名詞で締める。「〜を強化」「〜の向上」と体言で終えると、同じ内容が短いマス数に収まります。
この型は、用語そのものに点が入るという意味ではありません。字数の上限が決まっている以上、同じ内容をより短い形で持ち込めるほうが要素を多く入れられる、という事情によるものです。与件文にない事実をそれらしい言葉で埋めても、加点の根拠にはなりません。
この記事で言えないこと
- 2次試験は正解が公表されません。ここで示したのは要素の選び方と字数の収め方で、正解ではありません。
- 趣旨は「何を問うたか」であって「どう書けば加点されるか」ではありません。加点の検証は別の作業です。
- 設問ごとの配点は公表されていますが、要素ごとの内訳は公表されていません。第1問の30点を3つの視点でどう配るかは分かりません。
- 第1問の顧客と競合は、②③の表のような逐語引用と答案語の対応表を持ちません。①の要約と段落番号までが渡せる範囲です。
- 第2問で挙げた月額制や下取りの仕組みは、与件文にも趣旨にも書かれていない当サイトの見立てです。
- 第3問のイベントの中身も当サイトの見立てです。与件文には催しの記述がありません。
- 字数は句読点も1字として数えています。実際の解答用紙のマスの数え方は、受験案内と解答用紙でご確認ください。
本記事の要素の整理と解答例は当サイトの独自のものです。出題の趣旨と問題(与件文・設問文)の著作権は一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会に帰属します。全文は試験実施機関の公表資料でご確認ください。
この記事のまとめ
- 2次試験に正解は公表されません。公表されるのは設問ごとの出題の趣旨です。
- 令和5年度 事例Ⅱは4問中3問が助言です。分析だけの準備では足りません。
- 第1問は3C分析です。顧客と競合は会社の外側なので、①の要約から取ります。
- 第2問は割賦販売が設問文で除かれています。分割払いを書くと外れます。
よくある質問
- この記事の解答例をそのまま覚えればよいですか?
- いいえ。2次試験は正解が公表されないため、この例が当たっているかは誰にも確かめられません。使い道は、趣旨が挙げた要素が字数にどう収まるかを見ることです。要素の選び方と削り方を自分の答案に移してください。
- 第2問で分割払いを書いてはいけませんか?
- 設問文が「ただし、割賦販売による取得は除く」と明示して外しています。分割払いやローンは、条件から外れた答案になります。所有を前提にしない売り方か、使い終わった品を回す売り方を考える設問です。
- 第1問の顧客と競合は、与件文のどこから取りますか?
- 顧客は第4段落・第7段落・第9段落・第15段落、競合は第10段落に固まっています。この記事の②③の表はB社の内側を並べたものなので、顧客と競合は載っていません。①のストーリー要約と、第1問の節の表に段落番号を添えました。
- 第3問はチームの支援の話なのに、B社の利益を書いてよいのですか?
- 趣旨が「新たな顧客を開拓するため」と目的を書いています。増員に協力することと、女子チームという取引先を得ることは同じ動きの表と裏です。効果を書くなら、この向きでそろえるほうが趣旨に沿います。
- 第4問で重要な顧客を誰に絞ればよいですか?
- 与件文が名指ししているのは各少年野球チームの監督と、メンバーおよび保護者です。監督にはデータ管理の相談、保護者には買い替えの相談が持ち込まれており、渡すものが両者で違います。150字なら2組までが限界です。




