事例Ⅳの投資判断を3年分通す|令和7・5・4年度の第3問を、条件表から答えまで
この記事の結論
- 令和7・5・4年度の第3問は、手順が同じで、割れる場所だけが違います。
- 令和7年度は運転資本の支出時期でNPVが13,868,220円と13,526,220円に割れ、どちらも「する」です。
- 令和5年度は1年遅らせると期待NPVが99万円から620万円に増え、2年度期首が有利です。
- 令和4年度は外注の上限412,500円・回収期間5.24年・NPV10,121,684円で、前提は割れません。
投資判断は、公式を知っているかではなく、条件を年ごとの表に落とせるかで決まります。この記事は、令和7年度・令和5年度・令和4年度の第3問を、条件の表から答えまで通したものです(令和6年度は別の記事で通しています)。条件の数値は試験実施機関が公表している問題PDFを画像で目視して転記し、答えは同じ問題文だけを渡して独立に解かせた3つのAIと当サイトの計算を突き合わせました。割れた所は、前提つきで両方を載せます。2次試験に公式解答は無いので、答えは当サイトの解答例です。
3問に共通する骨格と、答えが割れた場所の一覧
手順は3問とも同じ(差額を取る→時点を決める→年ごとの表→係数を掛ける)。違ったのは、運転資本・遅延・在庫の扱いという前提の置き方でした。
| 年度(配点) | 投資の中身 | 割れた場所 | 答えの動き |
|---|---|---|---|
| 令和7年度(25点) | 新規製造設備Z・4年間・倉庫の賃借料収入を失う | 運転資本9,000千円をいつ支出するか | NPV 13,868,220円/13,526,220円(どちらも「する」) |
| 令和5年度(30点) | 販売量が確率で決まる設備投資・1年遅らせる案 | 遅らせた案で5,000個と分かったとき投資するか | 期待NPV 620万円(取りやめる)/△1,025万円(実行する) |
| 令和4年度(35点) | 外注の分岐点・工場拡張・6年目以降の永続CF | 割れなかった(在庫投資は設問文が含めると明記) | 外注の上限412,500円・回収5.24年・NPV 10,121,684円 |
手順そのものは、令和6年度の第3問で5つにまとめた記事(投資判断は差額を年ごとの表にする)にあります。ここでは手順を繰り返さず、年度ごとの条件で実際に表を作ります。
答えには3段のラベルを付けます。【確定】は前提が一つに定まる計算、【前提により2解】は前提の置き方で割れる計算(両方を前提つきで併記)、【解答例】は記述などです。「一致」は当サイトの解答例との一致で、正誤の断定ではありません。
令和7年度 第3問:運転資本をいつ払うかで、答えが2つに割れる
設問1は割れません。設問2・3は、運転資本9,000千円を1年末とするか時点0とするかで答えが変わり、どちらでも採否は「する」です。
| 条件 | 値 |
|---|---|
| 設備Z(新規製造設備) | 初期投資 60,000千円(時点0)。耐用年数4年・残存価額ゼロの定額法=減価償却 15,000千円/年 |
| 倉庫 | いまは近隣企業に年2,400千円で貸している。更新しないので、使えば賃借料収入を失う |
| 販売 | 1基300千円×毎年300基×4年。変動製造費は1基120千円 |
| 現金支出の業務費用 | 毎年 30,000千円 |
| 4年後 | 設備Zを6,000千円で売却。運転資本の増加9,000千円を全額取り崩す |
| 税率・資本コスト | 税率30%(黒字が続く)・資本コスト4% |
| キャッシュフローの時点 | 設備Zへの初期投資以外は各年末 |
| 係数(4%) | 複利現価 0.962/0.925/0.889/0.855、年金現価(4年)3.631 |
設問1 設備Zの売却によるキャッシュフロー ──【確定】
4年後の帳簿価額は0(残存価額ゼロを4年で定額法)なので、売却額6,000千円の全額が売却益です。税30%が1,800千円で、手取りは6,000−1,800=4,200千円(4,200,000円)。3つのAIと当サイトの計算が全員一致しました。
設問2 各年末のキャッシュフロー ──【前提により2解】
- 営業キャッシュフロー=(売上90,000−変動費36,000−現金支出30,000−賃借料2,400)×(1−30%)+減価償却15,000×30%=19,620千円/年。
- 賃借料2,400千円は「貸していれば得られた収入」=機会費用として、毎年差し引きます。
- 4年末は、営業キャッシュフローに設備Zの売却4,200千円と運転資本の回収9,000千円を足して32,820千円。
| 立場 | 1年末 | 2・3年末 | 4年末 |
|---|---|---|---|
| A 運転資本を1年末に支出(「初期投資以外は各年末」を文字どおり読む) | 10,620,000円 | 19,620,000円 | 32,820,000円 |
| B 運転資本を時点0に支出(初期投資に含める) | 19,620,000円 | 19,620,000円 | 32,820,000円 |
設問3 正味現在価値と採否 ──【前提により2解】
| 立場 | NPV | 採否 | 式(千円) |
|---|---|---|---|
| A 1年末に支出 | 13,868,220円 | する | 10,620×0.962+19,620×0.925+19,620×0.889+32,820×0.855−60,000 |
| B 時点0に支出 | 13,526,220円 | する | 19,620×3.631+(4,200+9,000)×0.855−(60,000+9,000) |
採否が同じなので、どちらを選んでも失点は小さいと見ています(見立て)。大事なのは、(a)欄に数字と「する」の○を書き、(b)欄の最初に「運転資本は1年末に支出」または「初期投資時に支出」と1行書くことです。
この問題で落としやすい3点
- 賃借料2,400千円を忘れる。年間キャッシュフローが1,680千円(税引後)大きくなります。
- 売却額6,000千円に課税するのを忘れる。売却のキャッシュフローが4,200千円でなく6,000千円になります。
- 運転資本9,000千円の取り崩しを4年末に足し忘れる。最終年の数字が9,000千円小さくなります。
令和5年度 第3問:確率つきの設備投資を、1年遅らせたほうが得か
設問1は割れません。設問2は、5,000個と分かったら投資をやめる前提で、遅らせた期待NPVが620万円。すぐ実行する99万円を上回ります。
| 条件 | 値 |
|---|---|
| 販売 | 価格1万円。初年度は0.7の確率で10,000個、0.3の確率で5,000個。2〜5年度は初年度と同数(5年間) |
| 費用 | 変動費0.4万円/個。現金支出の固定費 2,200万円/年 |
| 運転資本の残高 | 10,000個なら800万円、5,000個なら400万円(初年度〜4年度末)。5年度末に全額回収 |
| 設備投資 | 11,000万円(初年度期首)。5年・残存価額ゼロの定額法=2,200万円/年。5年度末の処分価額は取得原価の10%=1,100万円 |
| 税率・割引率 | 税率30%(黒字が続く)・割引率8% |
| 係数(8%) | 複利現価 0.926/0.857/0.794/0.735/0.681、年金現価(5年)3.993 |
| 設問2(1)の条件 | 1年遅らせると、初年度の固定費は回避でき、2年度期首の運転資本はゼロ、耐用年数は4年。残存価額・処分価額は変わらない |
| 端数処理 | 計算の途中は丸めず、最終段階で万円未満を四捨五入。マイナスは数値の前に△ |
設問1 NPVと期待値 ──【確定】
| 販売量 | 1年度 | 2〜4年度 | 5年度 | NPV(万円) |
|---|---|---|---|---|
| 10,000個 | 2,520 | 3,320 | 4,890 | 2,585.13 |
| 5,000個 | 820 | 1,220 | 2,390 | △5,702.17 |
5,000個は税引前利益が△1,400万円ですが、全社は黒字なので税の節約420万円を足します。期待値は0.7×2,585.13+0.3×(△5,702.17)=98.94万円。万円未満を四捨五入して99万円、プラスなので「ある」に○です。10,000個・5,000個・期待値の答え(2,585/△5,702/99)は、全員一致しました。
設問2(1) 1年遅らせた場合のNPV ──【前提により2解】
2年度期首に実行する場合の減価償却は11,000÷4=2,750万円。10,000個ならNPVは886万円、5,000個なら△5,484万円です。5,000個と分かったら投資しないので、期待値は0.7×886.065+0.3×0=620.25万円(620万円)。係数は年度ごとの絶対の値(2年度末は0.857)をそのまま使います。
| 読み方 | 期待NPV |
|---|---|
| 5,000個と分かったら投資しない(本命) | 620万円 |
| 同じ前提で、2年度期首のNPVに0.926を掛けて現在に戻す | 619万円(係数の丸めで1万円ずれる) |
| 5,000個でも実行する | △1,025万円(採りにくい) |
設問2(2) 実行時期の判断(50字以内)──【解答例】
解答例:「2年度期首に実行すべき。延期時の期待NPV620万円が、初年度期首実行の99万円を上回るため。」(47字)。根拠の数値を2つ(延期した場合の期待NPVとすぐ実行した場合の期待NPV)入れて、結論を先に書く形です。
令和4年度 第3問:外注の分岐点・回収期間・6年目以降の永続CF
3設問とも、独立に解かせた3者と当サイトの答えが全員一致しました。前提が割れない代わりに、設問ごとの落とし穴を外せるかが分かれ目と見ています(見立て)。
| 条件 | 値 |
|---|---|
| 中古車 | 取得原価 1台50万円。現地で1台60万円で売れる。期首に1か月分の在庫投資が必要 |
| 設問1 | 整備を自社でやる費用(1台)は直接労務費6,000円・間接費7,500円(うち30%が変動費・70%が固定費の配賦)。外注料は買取価格の2% |
| 設問2 | 月間30台から50台へ。増える20台の整備は直接労務費10,000円・間接費4,500円(現金支出)。設備投資7,200万円(耐用15年・定額法・残存価額は10%)。設備と在庫投資は2年目期首に支出。税率30% |
| 設問3 | 当初5年間は月間50台。その後は拡張分で年150万円のCFが続く。5年後に増えた在庫を全額取り崩す。割引率6%・複利現価係数(5年)0.7473・年金現価係数(5年)4.2124 |
設問1 外注に出してよい買取価格の上限 ──【確定】
自社でやる費用のうち、外注すれば減らせるのは直接労務費6,000円と変動間接費7,500×30%=2,250円の合計8,250円です。固定費の配賦額は外注しても減らないので比べません。外注料0.02×買取価格が8,250円以下なら外注、つまり買取価格が412,500円以下です。
設問2 年間キャッシュフローと回収期間 ──【確定】
- 増える台数は20台×12か月=240台。1台の利益は600,000−500,000−(10,000+4,500)=85,500円。
- 減価償却は(72,000,000−7,200,000)÷15=4,320,000円。年間CF=(20,520,000−4,320,000)×0.7+4,320,000=15,660,000円。
- 初期投資は設備72,000,000円+在庫投資20台×500,000円=82,000,000円。回収期間は82,000,000÷15,660,000=5.2363…→5.24年。
設問文が「設備投資額と在庫投資の増加額は2年目期首にまとめて支出」と書いているので、在庫投資も初期投資に入れます。設備だけで割る4.60年は、この条件を読み落とした形です。
設問3 正味現在価値 ──【確定】
6年目以降の年150万円は、割引率6%の永続として5年目末に150万円÷0.06=25,000,000円。在庫の取り崩し10,000,000円と合わせた35,000,000円に複利現価係数0.7473を掛けます。NPV=15,660,000×4.2124+35,000,000×0.7473−82,000,000=10,121,684円。
- 設問1で固定費の配賦額まで含めて比べる(13,500円÷2%=675,000円)。外注しても減らない費用を入れると、上限が675,000円に化けます。
- 設問2で在庫投資を初期投資に入れ忘れる。回収期間が5.24年から4.60年に縮みます。
- 設問3で6年目以降の永続CFを係数に掛け忘れる、または5年目末の在庫回収を足し忘れる。
3問を通して答案に書く1行:時点・前提・係数の使い方
3問で答えを分けたのは公式ではなく、時点の置き方と前提でした。(b)欄の最初に前提を1行書いておけば、割れる問題でも過程点が残ると見ています(見立て)。
- 運転資本・在庫の支出は、設問文の「いつ」を最優先で読む(令和7年度は「初期投資以外は各年末」、令和4年度は「2年目期首にまとめて」)。
- 前提が割れそうな所は、(b)欄の冒頭に採った前提を1行書く(「運転資本は1年末に支出」「5,000個なら投資しない」など)。
- 係数は問題文の表をそのまま使う。年度ごとの絶対の係数(2年度末は0.857)で割り引き、自分で計算し直さない。
- 丸めと単位は最後に合わせる。円・万円・千円、△、小数第何位まで、の指示を最後にもう一度読む。
これは当サイトの見立てで、公式の採点基準ではありません。令和6年度の第3問は別の記事で通しています。残りの年度も同じ型で通せるので、順次足す予定です。
この記事で言えないこと
2次試験に公式解答は公表されていません。答えは当サイトの解答例で、「一致」は当サイトと独立に解かせた3つのAI(Opus・Codex・Gemini)の答えの一致を指します。AIは問題文だけを渡され、互いの答えも当サイトの答えも見ていません。
当サイトの最初の計算は2か所間違えていました。令和7年度の運転資本の支出を入れ忘れ、令和5年度の設問2(1)では係数を二重に掛けていました。どちらも、独立に解かせた3者との突き合わせで見つかりました。当サイトの2通りの検算が同じ見落としを共有していたので、同じ人が2回計算しても気づけない誤りです。
- 条件は問題PDFを画像にして目視で照合し、転記は独立に2回行って数値の種類が一致することを確かめました。
- 令和7年度の運転資本の置き方は、3つのAIが2対1に割れました。どちらが多数かは正しさの証拠ではないので、両方を載せています。
- 令和5年度の619万円と620万円は、同じ前提の組み立て違いです。独立に解かせた3つのAIは全員620万円でした。
配点は第3問全体のもの(令和7年度25点・令和5年度30点・令和4年度35点)で、設問ごとの配点は公表されていません。得点への影響は測っていません。
この記事のまとめ
- 令和7・5・4年度の第3問は、手順が同じで、割れる場所だけが違います。
- 令和7年度は運転資本の支出時期でNPVが13,868,220円と13,526,220円に割れ、どちらも「する」です。
- 令和5年度は1年遅らせると期待NPVが99万円から620万円に増え、2年度期首が有利です。
- 令和4年度は外注の上限412,500円・回収期間5.24年・NPV10,121,684円で、前提は割れません。
よくある質問
- 運転資本の増加は、いつ支出したものとして計算すればよいですか。
- 設問文に「初期投資以外のキャッシュフローは各年末」とあれば、運転資本の増加は1年末とするのが文字どおりの読みです(令和7年度では13,868,220円)。初期投資に含める読みでも13,526,220円で、採否は変わりません。どちらの場合も、(b)欄の最初に採った前提を1行書いてください。
- 回収期間を求めるとき、在庫投資も初期投資に入れますか。
- 設問文が決めます。令和4年度は「設備投資額と在庫投資の増加額は2年目期首にまとめて支出」と書いてあるので、入れて82,000,000円で割る5.24年です。設備投資額だけで割る4.60年は、この条件を読み落とした形になります。

