事例Ⅳの投資判断を、もう3年分通す|平成27年度・平成26年度・平成23年度
この記事の結論
- 平成27年度は2つのプロジェクトの比較、平成26年度は改装時期の比較、平成23年度は期待値の判断です。
- 平成27年度は在庫等の回収を見込むかでNPVが割れ(Zは35.1/53.9百万円)、どちらもEが有利です。
- 平成26年度は平成26年度期末の改装が有利(NPV 3,904千円と2,986.75千円)。
- 平成23年度は割り引かずに期待値を取り、NPV期待値は△10百万円。R&D後に選べば37.5百万円です。
前の2本の記事に続いて、平成27年度・平成26年度・平成23年度の投資判断を、条件の表から答えまで通します。条件の数値は試験実施機関が公表している問題PDFを画像で目視して転記し、答えは同じ問題文だけを渡して独立に解かせた3つのAIと当サイトの計算を突き合わせました。割れた所は前提つきで両方を載せます。平成23年度は割引計算をしない期待値の問題で、NPVの手順とは別の型です。2次試験に公式解答は無いので、答えは当サイトの解答例です。
3問に共通する骨格と、答えが割れた場所の一覧
割れたのは平成27年度だけで、在庫等の回収を見込むかでした。平成26年度は3者と当サイトが全員一致し、平成23年度は期待値の計算です。
| 年度(配点) | 問われたこと | 割れた場所 | 答えの動き |
|---|---|---|---|
| 平成27年度 第3問(26点) | 遊休設備を使う2つのプロジェクトのCF・NPV・回収期間 | 在庫等の純投資額を第×5期末に回収するか | Z 35.1/53.9、E 64.8/87.3百万円(どちらもE) |
| 平成26年度 第2問(30点) | 店舗の改装を1年早めるか(CFとNPV) | 割れなかった | NPV 3,904千円(26年度期末)/2,986.75千円(27年度期末) |
| 平成23年度 第4問(25点) | 好調・不調と高コスト・低コストの期待値、R&Dの価値(150字) | 割れなかった | NPV期待値 △10百万円・R&D後 37.5百万円 |
手順は、令和6年度の記事(投資判断は差額を年ごとの表にする)と前の2本にあります。ここでは年度ごとの条件で表を作ります。ラベルの意味は前の記事と同じです。
平成27年度 第3問:遊休設備を使う2つのプロジェクトを比べる
設問1と設問2は、在庫等の純投資額を最後に回収するかで数字が変わります。どちらの読みでも、設問2の採用はEで、設問3の回収期間はZが早いです。
| 条件 | 値 |
|---|---|
| 遊休化する機械設備g | 取得原価50百万円・年間減価償却費10百万円・残存耐用年数3年。税率30% |
| プロジェクトZ | gを使ってz鋼板を生産。売上100・費用70(第×3〜5期とも)。投資額は当初20、第×3期5(在庫等への純投資) |
| プロジェクトE | gと新設備h(80百万円・5年定額・残存ゼロ・第×5期末の価値は簿価と同じ32)を使う。売上100/250/250・費用70/150/150。投資額は当初90、第×3期20 |
| 設問1の2つのケース | ケース1: Z以外の税引前利益がゼロ。ケース2: Z以外の税引前損失が10百万円 |
| 設問2 | 資本コスト10%。係数 0.9091/0.8264/0.7513。小数第2位を四捨五入(百万円)。Z以外の税引前利益はゼロ |
| 設問3 | 財務状況に鑑みて流動性を検討する指標を計算し、両プロジェクトを比較 |
設問1 Zを採用して増える各期のキャッシュフロー ──【前提により2解】
gの減価償却費10は、Zを採用しなくても全社の損益にあります。ケース1はZなしの税引前利益が△10(税0)、Zありで30−10=20(税6)なので、増える税は6、CFは30−6=24。第×3期は投資5を引いて19です。ケース2はZなしが△20(税0)、Zありが10(税3)で、CFは27、第×3期は22です。
| ケース/読み | 第×3期 | 第×4期 | 第×5期 |
|---|---|---|---|
| ケース1・在庫等を回収しない | 19 | 24 | 24 |
| ケース1・第×5期末に回収する | 19 | 24 | 49 |
| ケース2・在庫等を回収しない | 22 | 27 | 27 |
| ケース2・第×5期末に回収する | 22 | 27 | 52 |
設問2 両プロジェクトのNPVと採用 ──【前提により2解】
| 読み | Z | E | 採用 |
|---|---|---|---|
| 在庫等を回収しない | 35.1百万円 | 64.8百万円 | E |
| 在庫等を回収する | 53.9百万円 | 87.3百万円 | E |
採用は同じEなので、(b)欄の「○」は変わりません。(a)欄の数字だけが割れるので、(b)欄に「在庫等は回収しない」または「第×5期末に回収」と1行書いて、最後まで同じ読みで通してください。
設問3 流動性の評価指標(回収期間)──【確定寄りの解答例】
流動性は、割り引かない回収期間で見ます。Zは当初20に対して第×3期の19で、残り1を第×4期の24で補うので1.04年。Eは当初90に対して第×3期8.8+第×4期77.8=86.6で、残り3.4を第×5期の営業CF77.8で補うので2.04年です(最終期の売却・回収を含めると2.02〜2.03年)。Zのほうが早く回収でき、流動性は高いと言えます。
この問題で落としやすい点
- gの減価償却費10をZの損益から外してCFを24でなく21にしてしまう(税をZだけで考えた場合)。gの償却は、Zなしでも全社の損益にあります。
- ケース2で、Z以外の損失10を無視する。損失があると、Zの利益が先にその損失を埋めるので、増える税が3で済みます。
- Eで、hの減価償却16だけを入れてgの10を入れ忘れる。EのNPVが小さくなります。
平成26年度 第2問:改装を1年早めるか、CFとNPVで決める
設問1・2とも3者と当サイトの答えが全員一致。NPVは平成26年度期末の改装が3,904千円、平成27年度期末の改装が2,986.75千円で、早めるほうが有利です。
| 条件 | 値 |
|---|---|
| 平成26年度の予想損益(千円) | 売上高42,000・売上原価10,500(売上に比例)・人件費19,500・店舗賃借料3,000・その他経費6,500・減価償却費2,000=営業利益500 |
| 現在の設備 | 取得原価1,000万円・5年定額・残存ゼロ。平成27年度期末で償却が終わる。改装を平成26年度期末に行う場合は、翌年度期首に帳簿価額(2,000千円)で除却する |
| 改装 | 1,500万円(15,000千円)・5年定額・残存ゼロ。改装後はその他経費が平成26年度より10%増える |
| 売上(改装時期ごと) | 平成26年度期末に改装: 今後5年間 +10%。平成27年度期末に改装: 平成27年度は +5%、平成28年度以降の4年間は +10% |
| 税率・資本コスト | 法人税率40%・運転資本の増減なし・資本コスト5% |
| 係数(5%) | 1〜5年 0.95/0.91/0.86/0.82/0.78。平成27〜31年度の5年間を評価する |
設問1 平成27年度の税引後キャッシュフロー ──【確定】
- (a) 26年度期末に改装: 売上46,200−原価11,550−人件費19,500−賃借料3,000−その他7,150−新設備の償却3,000−除却損2,000=0。税0。CF=0+償却3,000+除却損2,000=5,000千円。
- (b) 27年度期末に改装: 売上44,100−原価11,025−人件費19,500−賃借料3,000−その他6,500−旧設備の償却2,000=2,075。税830。CF=税引後1,245+償却2,000=3,245千円。
設問2 NPVで改装時期を判断する ──【確定】
平成28年度以降の毎年のCFは、どちらの案でも4,200千円(営業利益2,000→税800→税引後1,200+償却3,000)。2〜5年目の係数の和は3.37。(a)=−15,000+5,000×0.95+4,200×3.37=3,904千円。(b)=(3,245−15,000)×0.95+4,200×3.37=2,986.75千円。(b)の投資は1年後なので0.95で割り引きます。
平成26年度期末に改装するほうがNPVが大きいので、再開発の完成に合わせて早めるのが有利です。問題は平成27〜31年度の5年間のCFで比べると指定しているので、(b)の平成31年度末の簿価3,000の価値は入れていません。
- (a)で旧設備の除却損の節税を忘れる。平成27年度のCFが5,000千円でなく4,200千円になります(除却損2,000×40%=800の差)。
- (b)の平成27年度に、改装後のその他経費の増加(+10%)を入れてしまう。改装は期末なので、平成27年度のその他経費は6,500のままです。
- (b)の改装投資15,000を、平成27年度のCFに含めてしまう。設問1は営業上のCFで、投資はNPVの設問で1年後として入れます。
平成23年度 第4問:割り引かない期待値で、R&Dの価値を判断する
この問題は割引計算をしません。売上とコストの期待値を足し、R&Dでコストが分かってから投資を選べるなら、NPVの期待値が正に変わります。
| 条件 | 値 |
|---|---|
| 売上予想(百万円) | 好調/不調: 1年目100/50、2年目150/100、3年目200/100。確率はどちらも50% |
| コスト予想 | 年あたり 低コスト80/高コスト150(確率各50%) |
| 投資・割引 | 初期投資15百万円。設問1は現在価値に割り引かない |
| 設問2 | R&D費10百万円(150字以内で説明) |
設問1 各年のCF期待値とNPV期待値 ──【確定】
売上の期待値は75/125/150、コストの期待値は(80+150)÷2=115(毎年)。CFの期待値は△40/10/35百万円。NPVの期待値は△40+10+35−15=△10百万円で、マイナスなので投資しません。
設問2 R&Dの価値(150字以内)──【解答例】
低コスト(80)と分かれば3年のCFが−5/45/70で合計110、NPVは110−15=95百万円で投資します。高コスト(150)なら−75/−25/0で合計−100、NPVは△115百万円なので投資しません。R&D後の期待値は0.5×95+0.5×0−10=37.5百万円で、設問1の△10百万円より良くなります。
解答例:「R&D費10百万円でコストの高低が判明すれば、低コストなら投資しNPVは95百万円、高コストなら投資せず0。R&D後の期待値は95×0.5−10=37.5百万円と正で、設問1の△10百万円を上回るため、R&Dを行い低コスト時のみ投資すべきである。」(123字)。結論(R&Dを行い低コスト時のみ投資)と、根拠の数値(95・37.5・△10)を入れる形です。
3問を通して答案に書く1行:回収の有無・時点・期待値の取り方
3問で答えを分けたのは、問題文に書かれていない回収の扱いと、割り引くかどうかでした。(b)欄の最初に前提を1行書けば、読みが割れても過程点が残ると見ています(見立て)。
- 問題文に回収の記載がない在庫等の純投資額は、回収するかしないかを1行で宣言する(平成27年度)。
- 設備の除却損や既存設備の償却は、Zなしでも全社の損益にあるものとして、増える税を比べる。
- 割り引く問題か、割り引かない期待値の問題かを、設問文の指示で最初に確かめる(平成23年度は割り引かない)。
- 改装・投資の時点で、その年度の費用が変わるかを確かめる(平成26年度の(b)は改装が期末)。
これは当サイトの見立てで、公式の採点基準ではありません。残りの年度は、前の問題や与件文の数値を参照する問題が多く、順次足す予定です。
この記事で言えないこと
2次試験に公式解答は公表されていません。答えは当サイトの解答例で、「一致」は当サイトと独立に解かせた3つのAI(Opus・Codex・Gemini)の答えの一致です。AIは問題文だけを渡され、互いの答えも当サイトの答えも見ていません。
- 条件は問題PDFを画像にして目視で照合し、転記は独立に2回行って数値の種類が一致することを確かめました。
- 平成27年度の在庫等の回収は、3つのAIが2対1に割れました。どちらが多数かは正しさの証拠ではないので、両方を載せています。
- 平成27年度で、gの減価償却費をどう扱うかは問題文から読み取りにくく、3つのAIは全員「Zなしでも全社の損益にある」読みでした。別の読みはここでは扱っていません。
- 平成26年度と平成23年度は、3つのAIと当サイトの計算が全員一致しました。
配点は第3問(平成26年度は第2問、平成23年度は第4問)全体のもので、設問ごとの配点は公表されていません。得点への影響は測っていません。
この記事のまとめ
- 平成27年度は2つのプロジェクトの比較、平成26年度は改装時期の比較、平成23年度は期待値の判断です。
- 平成27年度は在庫等の回収を見込むかでNPVが割れ(Zは35.1/53.9百万円)、どちらもEが有利です。
- 平成26年度は平成26年度期末の改装が有利(NPV 3,904千円と2,986.75千円)。
- 平成23年度は割り引かずに期待値を取り、NPV期待値は△10百万円。R&D後に選べば37.5百万円です。
よくある質問
- 問題文に書かれていない在庫等の投資額は、最後に回収しますか。
- 平成27年度は記載がなく、3つのAIが回収しない読み(2つ)と回収する読み(1つ)に割れました。回収しない読みならZは35.1・Eは64.8百万円、回収する読みならZは53.9・Eは87.3百万円で、どちらも採用はEです。(b)欄の最初に、採った読みを1行書いてください。
- NPVの問題で、割り引かない期待値の問題が出たらどうしますか。
- 設問文の指示が最優先です。平成23年度の設問1は「割り引かない」と指定していたので、年ごとのCFの期待値を足してNPVの期待値を出します。係数が与えられていない問題では、まず割り引くかどうかを確かめてください。

