中小企業診断士 事例ⅣのCVP|苦手を消す7段の訓練
この記事の結論
- この記事では、公式の手前にある費目の仕分けと、式のつながりを重点的に扱います。
- 架空のE社の数字を7段に分け、各段に検算を1つずつ付けました。
- CVPは19年で10回。うち4回は記述つきで、計算だけでは終わりません。
- E社の数字は架空です。小問ごとの配点内訳と採点基準は公表されていません。
公式は分かるのに答えが合わない人へ。この記事では、費目の仕分けから80字の記述まで7段に分けて訓練します。事例ⅣのCVPの式そのものは、中学の一次方程式と変わりません。重点を置くのは、その手前にある仕分けと、式どうしのつながりです。架空のE社の数字を使い、電卓で追える形で積み上げます。各段に検算を1つずつ置きました。過去問の数値や設問文は使っていません。
CVPの苦手の正体は、公式ではなくその手前の2つ
CVPの式は割り算だけです。詰まりやすいのは、費目の仕分けと、式どうしのつながりの2か所です。
損益分岐点売上高は固定費÷限界利益率です。詰まる原因の多くは、この式そのものではなく、その手前と後ろにあります。
手前は仕分けです。どの費目を固定費に入れるかを間違えると、あとの計算はすべてずれます。式が正しくても答えは合いません。
後ろはつながりです。限界利益率が分かれば損益分岐点が出て、そこから安全余裕率が出ます。1つの数字が次の数字の材料になる並びを、順に手で追える状態にします。
- 11段目:費目を固定費と変動費に仕分ける
- 22段目:限界利益と限界利益率を出す
- 33段目:損益分岐点売上高を出す
- 44段目:安全余裕率と損益分岐点比率を出す
- 55段目:目標利益から必要な売上高を逆算する
- 66段目:高低点法で費用を分け、感度分析(条件の変化)と端数を確かめる
- 77段目:損益分岐点を下げる方向を80字で書く
7段は1日1段のつもりで作ってあります。5段目までの基礎計算は割り切れる数字を選んだので、電卓が無くても追えます。
CVPの出題は19年で10回。計算だけの年もある
CVPは10問中4問が記述つきです。計算が合っても、書けなければそこで止まります。
| 年度 | 設問 | 配点 | 記述の字数 |
|---|---|---|---|
| 令和7年度 | 第2問 | 30点 | なし(計算のみ) |
| 令和6年度 | 第2問 | 20点 | なし(計算のみ) |
| 令和5年度 | 第2問 | 30点 | 20字・80字 |
| 令和4年度 | 第2問 | 20点 | なし(計算のみ) |
| 令和3年度 | 第3問 | 20点 | なし(計算のみ) |
| 令和2年度 | 第2問 | 30点 | なし(計算のみ) |
| 平成29年度 | 第2問 | 18点 | なし(計算のみ) |
| 平成27年度 | 第2問 | 34点 | 40字・60字 |
| 平成21年度 | 第3問 | 20点 | 100字 |
| 平成19年度 | 第2問 | 25点 | 60字 |
計算だけの年が続いたあとに、記述つきの年が来ます。どちらが来ても困らないように、この記事では7段目の記述まで通します。
CVPの基礎:費目を固定費と変動費に仕分ける(1段目)
固定費は、一定の操業範囲では売上や生産量(操業度)が変わっても総額が変わらない費用です。ここを間違えると、あとの6段がまとめてずれます。
E社は町の弁当製造・卸です。社長の問いは1つで、年間いくら売れば黒字になるかを知りたがっています。まず1年ぶんの数字を置きます。単位は千円です。
- 売上高 60,000
- 変動費 36,000(変動費率60%)
- 固定費 18,000
- 営業利益 6,000
この4つが土台です。ここから先の計算は、この4つと下の仕分け表だけで足ります。
| 費目 | 仕分け | なぜそうなるか |
|---|---|---|
| 材料費 | 変動費 | 弁当を1個多く作れば、その分だけ増える |
| 容器・包装材 | 変動費 | 1個につき1つ使うので、数量に比例する |
| 配送の燃料費 | 変動費 | 運ぶ量が増えれば便数が増える |
| 工場の家賃 | 固定費 | 1個も売れなくても毎月同じ額が出ていく |
| 正社員の給与 | 固定費 | 生産量では変わらない契約になっている |
| 減価償却費 | 固定費 | E社は定額法で、生産量に関係なく毎期同額とする |
| 保険料 | 固定費 | 年払いの契約で、生産量と関係がない |
| 配送車のリース料 | 固定費 | 走っても走らなくても月額は同じ |
| 広告宣伝費 | 裁量固定費 | 経営者が予算額を決めるので、生産量では変わらない |
| パートの人件費 | 準変動費 | 忙しい日だけシフトを増やすので、両方の性格がある |
| 水道光熱費 | 準変動費 | 基本料金は固定で、使用量の分は変動する |
| 修繕費 | 準変動費 | 定期点検は固定で、故障の修理は稼働量で増える |
検算します。変動費36,000と固定費18,000を足すと54,000です。売上高60,000から営業利益6,000を引いた総費用と一致します。
この表には費目ごとの金額を置いていません。このE社の例では、費目ごとの金額を置かなくても計算が進みます。仕分けたあとの合計が、与えられた総費用と合うかだけを見ます。準変動費の3つも、指示どおりに寄せたあとの合計で数えます。
社長にはこう言います。売れても売れなくても出ていくお金が固定費で、売れた分だけ増えるお金が変動費です。
よくあるつまずきは、問題文の指示の読み飛ばしです。「パート人件費は変動費として扱う」のような1行が、末尾の注記に置かれていることがあります。自分の常識で分けると、そこですべてずれます。
もう1つは支払利息です。営業利益を問う設問なら、営業外費用は固定費に入れません。経常利益・税引前利益・税引後利益を問う設問なら、設問の条件に応じて固定的な営業外費用として含めます。どちらを求める設問かで変わるので、問題文で確かめます。
損益分岐点計算の準備:限界利益と限界利益率(2段目)
限界利益は額、限界利益率は率です。取り違えると、次の割り算の分母を間違えます。
限界利益は、売上高から変動費を引いた額です。固定費を回収するために残るお金だと考えます。限界利益率は、それが売上高の何割にあたるかです。
E社では60,000から36,000を引いて24,000です。限界利益率は24,000を60,000で割って40%になります。
検算します。変動費率60%と限界利益率40%を足すと100%です。ここが合わなければ、変動費の拾い漏れがあります。
社長にはこう言います。1,000円ぶん売れると、材料や容器に600円かかり、手元に400円が残ります。その400円で家賃と給与を払います。
よくあるつまずきは、額と率の混同です。固定費を限界利益率で割ると損益分岐点売上高、1個あたりの限界利益で割ると損益分岐点販売数量になります。E社の総限界利益24,000で割っても、出るのは個数ではありません。設問が金額を聞いているのか数量を聞いているのかを、先に確かめます。
損益分岐点売上高を出す(3段目)
固定費を限界利益率で割ります。E社は45,000で、いまの売上60,000にはまだ余裕があります。
損益分岐点売上高は、限界利益がちょうど固定費と同じになる売上高です。式は固定費÷限界利益率です。E社では18,000を0.4で割って45,000になります。
検算します。45,000に限界利益率0.4を掛けると18,000で、固定費と一致します。そこから固定費を引くとゼロになり、利益も損も出ていない状態だと確かめられます。
社長にはこう言います。年間45,000千円まで売って、ようやくとんとんです。月に直すと3,750千円です。そこを超えた分から利益が出ます。
よくあるつまずきは、分母と分子の逆です。0.4を18,000で割ると0.0000222になり、売上高としてありえない桁になります。答えが桁違いに小さいときは、割る向きを疑います。
安全余裕率と損益分岐点比率を出す(4段目)
2つを足すと100%です。E社は安全余裕率25%、損益分岐点比率75%になります。
安全余裕率は、いまの売上高が損益分岐点からどれだけ離れているかの割合です。分母は実際の売上高です。損益分岐点比率は、損益分岐点売上高が実際の売上高の何割かを表します。
E社では60,000から45,000を引いた15,000を、60,000で割って25%です。損益分岐点比率は45,000を60,000で割って75%になります。
検算します。25%と75%を足すと100%です。足して100%にならなければ、どちらかの分母を損益分岐点売上高にしています。
社長にはこう言います。いまの売上が4分の1(15,000)減って45,000になるまでは、赤字にはなりません。それより多く減ると赤字です。
よくあるつまずきは、分母の取り違えです。15,000を45,000で割ると33.3%になり、75%と足しても100%になりません。分母はいつも実際の売上高です。
目標利益から必要な売上高を逆算する(5段目)
固定費に目標利益を足して、限界利益率で割ります。税引後で示されたら、先に税引前へ戻します。
税引前:固定費に目標利益を足して割る
社長が営業利益8,000を目標にしたとします。必要な売上高は、固定費18,000に8,000を足した26,000を0.4で割って65,000です。
検算します。65,000の変動費は0.6を掛けた39,000です。65,000から39,000と18,000を引くと8,000になり、目標と一致します。
税引後:先に税引前へ戻してから割る
E社には営業外損益も特別損益も無いものとします。つまり営業利益がそのまま税引前利益です。実際の設問では、支払利息などがあれば税引前利益は営業利益と違う額になります。
社長が手元に残したい額を4,800、税率を40%とします。税引前の利益は、4,800を0.6で割って8,000です。0.6は1から税率0.4を引いた数です。
税引前が8,000なら、必要な売上高はさきほどと同じ65,000です。税引後の目標は、税引前に直せば前の計算に合流します。新しい式を覚える必要はありません。
検算します。65,000の税引前利益は8,000で、税金は8,000に0.4を掛けた3,200です。8,000から3,200を引くと4,800が残り、社長の希望と一致します。
社長にはこう言います。手元に4,800残すには、税金の分まで稼ぐ必要があります。売上の目標は65,000です。
よくあるつまずきは、割り算を掛け算にすることです。4,800に0.6を掛けると2,880になり、目標より小さい利益で満足してしまいます。税金は利益を減らすので、必要な税引前利益は目標より大きくなります。
高低点法と感度分析、そして端数(6段目)
固定費と変動費率が与えられない場合があります。2つの実績から引き算で出し、使わなかった期で確かめます。
高低点法:2つの実績から費用を2つに分ける
E社には過去2期の実績があります。前々期は売上50,000で総費用48,000、前期は売上70,000で総費用60,000でした。当期は売上60,000で総費用54,000です。
高低点法は、売上がいちばん多い期といちばん少ない期の2点だけを使います。E社では前期と前々期です。当期は使いません。
変動費率は、総費用の差12,000を売上の差20,000で割って0.6です。固定費は、前々期の総費用48,000から、50,000に0.6を掛けた30,000を引いて18,000になります。
検算します。使わなかった当期に当てはめると、60,000に0.6を掛けた36,000に18,000を足して54,000です。実際の総費用と一致します。1段目の仕分けの合計とも同じ額です。
よくあるつまずきは、総費用の大小で高い期と低い期を選ぶことです。選ぶ基準は操業度、つまり売上や生産量のほうです。
感度分析:条件を1つずつ動かして比べる
変動費率が60%から62%に上がったとします。限界利益率は38%に下がり、損益分岐点売上高は18,000を0.38で割った値になります。これは割り切れず、小数第1位まで見ると47,368.4です。
固定費のほうが2,000増えて20,000になった場合は、20,000を0.4で割って50,000です。安全余裕率は25%から16.7%へ下がります。16.7%は小数第2位を四捨五入した値です。
検算します。50,000に0.4を掛けると20,000で、増えたあとの固定費と一致します。
社長にはこう言います。変動費率が2ポイント上がるのと、固定費が2,000増えるのとでは、あとのほうが損益分岐点を大きく押し上げます。同じ2という数字でも効き方は違います。
端数:指示があれば従い、無ければ最後に丸める
端数の扱いは、問題文に指示があればそれに従います。切り上げ・切り捨て・四捨五入のどれを使うかは、指示があればそこで決まります。
指示が無いときの当サイトの見立ては、途中では丸めず、最後に千円未満を四捨五入することです。E社なら47,368になります。
丸めたあとの数字で検算すると、ぴったりには戻りません。47,368に0.38を掛けると17,999.84で、固定費18,000とわずかにずれます。これは計算違いではなく、丸めた分です。
感度と端数は、答えそのものより手順が残るところです。動かす前の数字と動かしたあとの数字を並べて書いておくと、計算過程の欄にそのまま写せます。
損益分岐点を下げる方向を書く(7段目)
下げる方向は2つだけです。固定費を減らすか、限界利益率を上げるかです。
CVPの記述は、計算の結果をどう使うかを聞かれます。損益分岐点を下げるには、式の分子を小さくするか、分母を大きくするかの2つしかありません。
- 分子を小さくする:固定費を減らす(家賃の安い場所へ移す・リース料を見直す)
- 分母を大きくする:限界利益率を上げる(値上げする・材料の歩留まりを上げて変動費率を下げる)
E社で書いてみます。弁当の卸なので、容器代と配送の費用が変動費の中心です。値上げが難しければ、容器の規格をそろえて変動費率を下げる方向になります。
固定費の圧縮と限界利益率の改善の二方向で対応する。配送車のリース料を見直して固定費を減らし、容器の規格を共通化して変動費率を下げ、損益分岐点売上高を引き下げる。
80マス / 80マス
書いたら確かめます。これが7段目の検算にあたります。
- 80字以内に収まっているか
- 与件文の語を1つ以上入れたか
- 損益分岐点を下げる方向になっているか
- 打ち手だけでなく効果まで書いたか
与件文の言葉を1語入れます。E社なら「配送」や「容器」です。会社の名前を変えてもそのまま通る文章は、一般論として読まれます。
よくあるつまずきは、会社の特性を無視した一般論です。「固定費を削減する」だけでは、どの費目をどうするのかが書かれていません。与件文にある費目の名前を入れると、その会社の話になります。
訓練は1日1段。7日たったら過去問へ
1日1段で7日です。7日目まで来たら、計算だけの年の過去問から始めます。
- 1紙と電卓を用意して、1日に1段ずつ自分の手で計算し直します。答えだけを見て、途中の式は自分で組みます。
- 2各段の検算を必ず1回やります。検算まで含めて1段だと考えてください。
- 37日目まで来たら過去問に移ります。計算だけで答える年から始めて、記述つきの年は後に回します。
- 4式どうしのつながりがあやしいときは、財務の塔のCVPの階にある式ツリーで確かめます。
- 5間違えたら、どの段でつまずいたかを紙に記録します。その段だけE社の数字に戻ってやり直せばよく、全部をやり直す必要はありません。
順番を守ることに意味があります。仕分けができていないまま損益分岐点だけ練習しても、本番では手前で止まるからです。7段のどこで止まったかが分かれば、直す場所も決まります。
この記事で言えないこと
- E社の数字は架空です。過去問の数値や設問文は使っていません。
- 小問ごとの配点内訳と採点基準は公表されていません。
- 端数の扱いは当サイトの見立てで、採点の基準ではありません。
- 7段で得点が上がるという実測はありません。手順の提案です。
2次試験(筆記)の公式解答は公表されていないため、当サイトでは模範解答の提示・採点は行いません。この記事の解答例は当サイトが書いたものです。実測といえるのは、出題回数・配点・字数の集計だけです。
この記事のまとめ
- この記事では、公式の手前にある費目の仕分けと、式のつながりを重点的に扱います。
- 架空のE社の数字を7段に分け、各段に検算を1つずつ付けました。
- CVPは19年で10回。うち4回は記述つきで、計算だけでは終わりません。
- E社の数字は架空です。小問ごとの配点内訳と採点基準は公表されていません。
よくある質問
- 製品が2つあるときも、同じ手順で解けますか?
- 限界利益率が製品ごとに違うので、そのままでは解けません。販売数量の比でひとまとまりの箱を作り、1製品の形に戻します。当サイトの別記事「損益分岐点は製品が2つで解き方が変わる」に手順があります。この記事の7段は、その手前の基礎固めにあたります。
- 準変動費はどう扱えばよいですか?
- 問題文の指示に従います。「水道光熱費は変動費とする」のような1行があれば、そこで決まります。高低点法を求める設問や、費用と操業度の直線関係を仮定してよい場合は高低点法で分けます。自分の常識で分けるのは最後の手段です。
- 損益分岐点比率と安全余裕率の関係が覚えられません。
- 足して100%になる関係です。極端な例で思い出してください。売上がちょうど損益分岐点なら、損益分岐点比率は100%で安全余裕率は0%です。どちらも分母は実際の売上高で、損益分岐点売上高ではありません。
- 端数は四捨五入と切り上げのどちらですか?
- 問題文の指示が最優先です。指示があれば必ずそれに従います。無いときの当サイトの見立ては、途中では丸めず、最後に千円未満を四捨五入することです。切り上げの指示が出たときは、切り上げたあとの数字で目標に届くかを確かめると、向きの取り違えに気づけます。
- なぜ7段に分けて訓練するのですか?
- どこでつまずいたかを1か所に絞り込むためです。通しで解いて答えが合わないと、仕分けが悪いのか式のつながりが切れたのかが分かりません。段ごとに検算を置けば、止まった段がそのまま直す場所になります。記述までを段に入れているのは、計算が合わなくても記述で答案を残せる形にするためです。
- 80分のうち、CVPに何分かければよいですか?
- 万人共通の分数はありません。当サイトに本番の実測タイムが無いためです。時間配分の記事に、自分の所要分を記録して見切り線を決める手順を置いています。まずは3回ぶん記録して、その中央値を出発点にしてください。

