中小企業診断士 事例Ⅳ|NPV・CVPの解き方:4色と1つの表
この記事の結論
- 色はお金の種類ではなく、表のどこに置くかで決めます。黄は列、青は+の行、赤は−の行、緑は表の外の前提です。
- 同じ4色でNPVもCVPも解けます。塗る先が、どちらも同じ形の表だからです。
- 目的は速さではなく、表を正しく作れることです。表まで書ければ、割引が終わらなくても計算過程の欄に残せます。
- 色分けで点が上がったという実測はありません。あくまで手順の提案です。
事例Ⅳの条件を、お金の種類ではなく「表のどこに置くか」で黄・青・赤・緑の4色に分ける、当サイトの解き方です。塗った数字は、そのまま1つの差額CFの表に収まります。この記事に出てくる数値はすべて架空のD社のもので、過去問の数値ではありません。塗るところから答えまで1回通します。
色分けは「お金の種類」でなく「表の置き場所」で決める
4色は意味の分類ではなく、置き場所の指示です。黄は列、青は+の行、赤は−の行、緑は表の外の前提になります。
事例Ⅳの条件を色で分ける発想は、公開されている記事にもあります。ただし多くは、投資支出や税引後の収入といった、お金の種類で色を割り当てています。
当サイトは置き場所で決めます。塗った瞬間に、その数字が表のどこへ行くかまで決まっている状態を作るためです。種類で分けると、表を作るときにもう一度考え直すことになります。
| 色と役割 | 設問文で塗るもの | 表のどこへ置くか |
|---|---|---|
| 黄:いつ | 年数・耐用年数・期首と期末・回収の時期・「3年目から」・販売数量の比 | 列にする。CVPでは製品の数量比(箱の中身)になる |
| 青:入る | 売上や利益の増加・売却収入・運転資本の回収・節税効果・限界利益 | 行の+側 |
| 赤:出る | 投資支出・変動費・固定費・運転資本の増加・税金・売却益にかかる税 | 行の−側 |
| 緑:決まり | 税率・割引率・現価係数・端数処理・単位・「差額で」「小数第2位まで」 | 表の外に前提として1行。答えの形を決める |
塗らないのは、数字の入っていない説明文と、与件の背景です。使うかどうか分からない数字は、黄の横に小さな印を付けて残します。表を作ってから、使わなかったものを捨てます。捨てる判断も表の上で行います。
投資まわりで色に迷う言葉を、先に決めておく
投資の設問で色に迷うのは、6つの分類だけです。先に色を決めておくことで、本番で考える回数を減らすことを狙います。
| 設問文の言葉 | 色 | 表のどこへ置くか |
|---|---|---|
| 初期投資額・取得支出・改装費 | 赤 | 時点0の列の−側 |
| 減価償却費(耐用年数・残存価額・定額法) | 緑で拾い青に置く | 償却前の営業利益が与えられたら償却費×税率、償却後の営業利益なら償却費の全額を+の行に置く |
| 旧設備の売却収入 | 青 | 時点0の列の+側 |
| 売却損や売却益にかかる税 | 損は青・益は赤 | 損なら税金が減るので+、益なら税金が増えるので− |
| 運転資本の増加と回収 | 増加は赤・回収は青 | 増えた年の−側、回収する年の+側。残高で与えられたら前の年との差に直す |
| 税率・割引率・現価係数・端数処理 | 緑 | 表の外の前提。答えの形を決める |
減価償却費だけは、拾う色と置く色が違います。耐用年数や残存価額は計算の決まりなので、緑(前提)で拾います。表に置くのは償却費そのものではなく、そこから計算した金額を青(+の行)に置きます。
+の行に置く金額は、設問文がどちらの営業利益を与えているかで変わります。減価償却費を引く前の営業利益なら償却費×税率、引いたあとの営業利益なら償却費の全額です。緑(前提)で拾い、計算した金額を青(+の行)に置く、と順番で覚えます。
このあとのD社は償却前の営業利益を与えているので、1,200万円×0.7と800万円×0.3を足した1,080万円になります。これは(1,200−800)×0.7+800と同じ額です。償却後の営業利益が与えられる設問の形は、NPVの記事の落とし穴の節にまとめています。
NPVの解き方:塗ってから差額CFの表に置くまで
緑で前提を1行書き、黄で列を作り、青と赤を行に置く。この順で手を動かすと、迷う場所が前提の1行に集まります。
D社は総菜の小分け包装をしている会社です。いま使っている包装機を、新しい機種に更新するかどうかを検討しています。設問文にあたる条件を、色ごとに並べます。
- 黄:新しい包装機は5年使う。運転資本の回収も5年目に行う
- 赤:新しい包装機の取得支出は4,000万円。導入と同時に運転資本が200万円増える
- 青:包装機を替えると、減価償却費を引く前の営業利益が毎年1,200万円増える
- 青:いま使っている包装機は簿価がゼロで、300万円で売却できる
- 赤:売却益300万円には税金がかかる
- 緑:税率30%、割引率5%、単位は万円。新しい包装機は定額法で5年、残存価額はゼロ
- 緑:売却益の税金は時点0に生じる。5年後は新旧どちらの機械も売却価値はない
- 緑:現価係数は1年0.952、2年0.907、3年0.864、4年0.823、5年0.784
- 緑:現在価値とNPVは小数第2位を四捨五入し、小数第1位まで求める
前提と列
- 1緑を集めて前提を1行書きます。税率30%、割引率5%、単位は万円、売却益の税金は時点0、5年後の売却価値はなし、答えは小数第1位まで。ここで答えの形が決まります。
- 2黄で列を作ります。時点0から5年目までの6列です。運転資本の回収は5年目の列に入れます。
行の配置
- 1時点0の行に赤と青を置きます。取得支出のマイナス4,000万円、売却収入の300万円、売却益にかかる税金のマイナス90万円、運転資本の増加のマイナス200万円です。
- 21年目から5年目の行を置きます。営業利益の増加1,200万円に0.7を掛けた840万円と、減価償却費800万円に税率を掛けた240万円です。償却費は4,000万円を5年で割った額です。
集計と割引
- 1列ごとに縦に足して、年ごとのキャッシュフローを出します。時点0はマイナス3,990万円、1年目から4年目は1,080万円、5年目は回収の200万円が乗って1,280万円です。
- 2緑の係数を掛けます。5つの係数を足すと4.330になるので、毎年同額の1,080万円にはこれを1回掛けても同じです。回収の200万円だけは5年目の係数0.784を掛けます。
- 3割引が終わらなくても、前提の1行と表はそのまま計算過程の欄に写します。部分点が入るかどうかは公表されていないので、当サイトの見立てです。
| 項目 | 時点0 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 赤:包装機の取得支出 | −4,000 | — | — | — | — | — |
| 青:旧機械の売却収入 | 300 | — | — | — | — | — |
| 赤:売却益にかかる税金 | −90 | — | — | — | — | — |
| 赤:運転資本の増加 | −200 | — | — | — | — | — |
| 青:営業利益の増加×0.7 | — | 840 | 840 | 840 | 840 | 840 |
| 青:減価償却費×税率 | — | 240 | 240 | 240 | 240 | 240 |
| 青:運転資本の回収 | — | — | — | — | — | 200 |
| 年ごとのキャッシュフロー | −3,990 | 1,080 | 1,080 | 1,080 | 1,080 | 1,280 |
| 緑:現価係数 | 1.000 | 0.952 | 0.907 | 0.864 | 0.823 | 0.784 |
| 現在価値 | −3,990.0 | 1,028.2 | 979.6 | 933.1 | 888.8 | 1,003.5 |
NPVは843.2万円のプラスなので、この更新は行う、と答えます。判断の基準は符号であって、金額の大小ではありません。
CVPの解き方:同じ4色で箱の表を作る
CVPも置き場所は同じです。黄で数量の比を拾って箱を作り、青と赤を1つの表に並べると、あとは割り算だけになります。
CVPは計算そのものが軽い論点です。それでも落とすときは、条件の読み落としと単位の取り違えが理由になります。色分けは、その2つを防ぐために使います。
調査した範囲では、CVPの条件を色分けする手順は見つかりませんでした。ここから先は当サイトの提案です。D社は総菜を2種類売っているとします。
- 黄:製品Aと製品Bは3対2の比で売れる。この比が箱の中身になる
- 青:販売単価は製品Aが800円、製品Bが500円
- 赤:1個あたりの変動費は製品Aが500円、製品Bが300円
- 赤:固定費は製品Aに1,500,000円、製品Bに1,100,000円、2つに共通で2,600,000円かかる
- 緑:求めるのは損益分岐点の売上高。目標の利益はゼロ
- 1緑を先に書きます。求めるのは損益分岐点の売上高で、目標の利益はゼロです。
- 2黄で箱を作ります。3対2なので、箱1つは製品A3個と製品B2個です。
- 3青を置きます。箱1つの売上は、800円×3個の2,400円と500円×2個の1,000円で3,400円です。
- 4赤を置きます。箱1つの変動費は、500円×3個の1,500円と300円×2個の600円で2,100円です。固定費は3つ足して5,200,000円になります。
- 5箱1つの限界利益は、3,400円から2,100円を引いた1,300円です。固定費5,200,000円を1,300円で割ると4,000箱になります。
- 6答えは4,000箱ぶんの売上です。3,400円×4,000箱で13,600,000円。内訳は製品Aが12,000個、製品Bが8,000個です。
- 7検算します。12,000個×300円と8,000個×200円を足すと5,200,000円で、固定費と一致します。
| 色:拾うもの | 製品A | 製品B | 箱1つ(A3個とB2個) |
|---|---|---|---|
| 黄:販売数量の比 | 3 | 2 | — |
| 青:販売単価 | 800円 | 500円 | 3,400円 |
| 赤:1個あたりの変動費 | 500円 | 300円 | 2,100円 |
| 青:1個あたりの限界利益 | 300円 | 200円 | 1,300円 |
| 赤:個別の固定費 | 1,500,000円 | 1,100,000円 | — |
| 赤:共通の固定費 | — | — | 2,600,000円 |
| 損益分岐点の販売数量 | 12,000個 | 8,000個 | 4,000箱 |
| 損益分岐点の売上高 | 9,600,000円 | 4,000,000円 | 13,600,000円 |
目標の営業利益が示されたときも、緑に1行足すだけです。1,300,000円の利益を目標にするなら、固定費に足した6,500,000円を1,300円で割って5,000箱、売上は17,000,000円になります。
表まで書けば、割引が終わらなくても残る
当サイトの集計では、差額キャッシュフローの表が合っている人ほど合計点が高い傾向でした。相関であって配点ではありません。
事例Ⅳは設問ごとの得点が開示されません。そこで当サイトは再現答案378件を集め、合計点を小問ごとの答えの一致で説明しました。内訳は令和6年度の176件と令和7年度の202件です。
令和6年度の176件では、第3問設問1の差額キャッシュフローの一致が最もよく効いていました。他の小問の出来をそろえて比べると、一致度が1標準偏差高い人は合計点が7.6点高い傾向です。差額CFを構成する数値の平均充足率は40%でした。
同じ第3問でも、設問3の平均充足率は1%しかありません。難しい小問は、当たった人が少なすぎて重みが測れません。差がついていたのは、表そのものを作れたかどうかのところです。
この数字は相関で、設問ごとの配点ではありません。得点は本人の自己申告で、標本は再現答案を公開した人に偏っています。令和7年度は一致の基準が違うので、2つの年を横に並べて比べることはできません。
だから、計算過程の欄には前提の1行と表を写します。割引まで届かなくても、表は残ります。ただし、そう書けば点が入ると確かめたデータは当サイトにありません。部分点の扱いは見立てです。
訓練は式ツリー・過去問1問・記録の順に
色分けだけを練習しても身につきにくい可能性があります。式のつながりを先に覚えてから、過去問1問を色と表の順で解き、表まで何分かを記録します。
- 1財務の塔の4階(設備投資)と2階(CVP)で、式のつながりを1段ずつ埋めます。減価償却費から課税所得、税引後のキャッシュフロー、正味現在価値へと上がる並びを、色を使わずに覚えます。
- 2過去問を1問だけ選び、色を塗る、表を作る、答えを出す、の順で解きます。表を作り終えるまでは電卓を持ちません。
- 3表を作り終えるまでに何分かかったかを記録します。時間配分の記事の記録シートに、表まで何分という列を1つ足してください。
- 43回ぶん記録したら、表までの分の中央値を自分の見切り線の目安にします。守ってみて、線を上下させます。
参考にした記事
条件を色で分ける発想と、計算過程の書式を先に用意する発想の出どころです。当サイトの手法そのものではありません。
この記事で言えないこと
- 色分けで得点が上がったという実測はありません。当サイトにも、調べた範囲の公開記事にもありませんでした。
- 読む順序や、色を塗るのにかかる時間の効果も測れません。何色で塗ったかは答案に残らないからです。
- 合計点との関係は相関です。設問ごとの配点も採点基準も公表されていません。
この記事の計算の数値はすべて架空のD社のもので、過去問の数値ではありません。他サイトの手法は当サイトが読んで要約したもので、逐語の引用はしていません。2次試験(筆記)の公式解答は公表されていないため、当サイトでは模範解答の提示・採点は行いません。
この記事のまとめ
- 色はお金の種類ではなく、表のどこに置くかで決めます。黄は列、青は+の行、赤は−の行、緑は表の外の前提です。
- 同じ4色でNPVもCVPも解けます。塗る先が、どちらも同じ形の表だからです。
- 目的は速さではなく、表を正しく作れることです。表まで書ければ、割引が終わらなくても計算過程の欄に残せます。
- 色分けで点が上がったという実測はありません。あくまで手順の提案です。
よくある質問
- 何色のペンを用意すればよいですか?
- 黄・青・赤・緑の4本です。蛍光ペンでもボールペンでもかまいません。大事なのは色の数ではなく、塗った瞬間に表のどこへ置くかが決まっていることです。色を増やすほど本番で迷いやすくなると考えているので、当サイトは4本にとどめています。
- 使うかどうか分からない数字はどうしますか?
- 黄の横に小さな印を付けて残し、表を作ってから捨てます。先に捨てると、あとで必要だったときに設問文を読み直すことになります。埋没原価かどうかのように判断が割れる数字は、前提の1行に「これは含めない」と書いておくと、計算過程の欄でも説明できます。
- 減価償却費は何色ですか?
- 拾うときは緑(前提)、表に置くときは青(+の行)です。+の行に置く金額は設問文で変わります。減価償却費を引く前の営業利益が与えられているなら償却費×税率、引いたあとの営業利益なら償却費の全額です。償却費そのものをマイナスの行にすると、税金の計算ですでに引いた分をもう一度引くことになります。
- CVPにも色分けは必要ですか?
- 必須ではありません。CVPは計算量が少ないので、色を使わずに解ける人も多いはずです。それでも製品が2つ以上あるときは、販売数量の比を黄で拾っておくと箱を作り忘れません。NPVと同じ色の使い方にしておけば、事例Ⅳの中での頭の切り替えを減らしやすくします。
- 本番の問題用紙に蛍光ペンは使えますか?
- 筆記用具の決まりは、年度ごとの受験案内に書かれています。当サイトでは確認していないので、出願のときに受験案内で必ず確かめてください。使えない場合は、色の代わりに印で同じ区別ができます。丸・三角・四角と下線を割り当てれば、置き場所の区別という役割は変わりません。

