事例Ⅳの投資判断を、さらに3年分通す|令和3年度・令和元年度・平成29年度
この記事の結論
- 令和3年度は取替投資の差額、令和元年度は利益表から作るCF、平成29年度は除却損の扱いが論点です。
- 令和3年度はNPVが3,868,800円。1年延期でも有利になるフルセルフレジは1台1,932,159円までです。
- 令和元年度は回収期間3.03年・NPV12.63百万円。削減率が10.52%を超えれば高性能設備が有利です。
- 平成29年度は処分支出を除却損に含めるかで、第X1年度末の差額CFが76と73に割れ、どちらも採用です。
前の記事(令和7・5・4年度)に続いて、令和3年度・令和元年度・平成29年度の投資判断を条件の表から答えまで通します。条件の数値は試験実施機関が公表している問題PDFを画像で目視して転記し、答えは同じ問題文だけを渡して独立に解かせた3つのAIと当サイトの計算を突き合わせました。割れた所は前提つきで両方を載せます。2次試験に公式解答は無いので、答えは当サイトの解答例です。
3問に共通する骨格と、答えが割れた場所の一覧
手順は同じ(差額を取る→時点を決める→年ごとの表→係数)。割れたのは、令和3年度の設問1の読み方と、平成29年度の除却損の扱いでした。
| 年度(配点) | 投資の中身 | 割れた場所 | 答えの動き |
|---|---|---|---|
| 令和3年度 第2問(30点) | セミセルフレジ100台のフルセルフレジへの取替・「取替しない」案との差額 | 設問1が差額か取替案そのものか | 25,600,000円(差額)/31,600,000円(取替案そのもの) |
| 令和元年度 第3問(30点) | 新製品の設備投資・損益予測表からCFを作る・高性能設備との比較 | 割れなかった | 回収期間3.03年・NPV 12.63百万円・削減率10.52%超 |
| 平成29年度 第3問(29点) | 旧機械設備の取替・差額キャッシュフロー | 処分支出10百万円を除却損に含めるか | 第X1年度末 76/73百万円(どちらも採用) |
手順そのものは、令和6年度の第3問で5つにまとめた記事(投資判断は差額を年ごとの表にする)と、前の記事(令和7・5・4年度)にあります。ここでは年度ごとの条件で実際に表を作ります。ラベルの意味は前の記事と同じです。
令和3年度 第2問:取り替えない案との差額で、NPVと延期の限界価格を出す
「取り替えない案」を基準に差額を取れば、設問2のNPVは3,868,800円、設問3の購入価格の上限は1,932,159円まで一本の式で出ます。
| 条件 | 値 |
|---|---|
| 現行のセミセルフレジ | 100台。2018年度期首に1台100万円で購入。耐用年数5年・残存価額ゼロの定額法。2022年度期首の時点で耐用年数が1年残る |
| 取り替えない場合 | 2023年度期首に、取得原価・耐用期間が同じセミセルフレジへ更新する |
| フルセルフレジ | 1台210万円(付随費用込み)・耐用期間6年(耐用年数6年・残存価額ゼロの定額法)。2022年度期首に取り替える |
| 下取り | 現行レジは1台8万円(フルセルフレジの代価から差し引く) |
| 人件費の削減 | D社全体で毎年2,500万円。税率30%(黒字が続く) |
| キャッシュフローの時点 | 初期投資は期首、それ以外は年度末 |
| 設問2の係数(6%) | 1〜6年の現価係数 0.943/0.890/0.840/0.792/0.747/0.705 |
| 設問3の条件 | 1年延期(2023年度期首に更新)。下取りは0円、人件費の削減は同額、耐用年数5年・残存価額ゼロ。購入価格が未知数。小数点以下切り捨て |
設問1 2022年度中のキャッシュフロー ──【前提により2解】
- 人件費の削減は税引後で 25,000,000×(1−30%)=17,500,000円。
- 償却の差は フルセルフ 2,100,000×100÷6=35,000,000円 − 取替しない場合の 20,000,000円=15,000,000円で、節税 4,500,000円。
- 売却損は 帳簿価額20,000,000円 − 下取り8,000,000円=12,000,000円で、節税3,600,000円。合計 25,600,000円。
3つのAIは全員、取り替えない案との差額として25,600,000円で答えました。設問文を取替案そのもののキャッシュフローと読めば、取り替えない案の償却の節税6,000,000円を引かないので31,600,000円です(1つのAIが注記)。続く設問2・3が差額で進むので、差額の読みを本命と見ています(見立て)。
設問2 取替投資の採否 ──【確定】
| 時点 | 差額のキャッシュフロー | 係数 | 内訳 |
|---|---|---|---|
| 2022年度期首 | △202,000,000円 | — | フルセルフ 210,000,000−下取り 8,000,000 |
| 2022年度末 | 125,600,000円 | 0.943 | 設問1の25,600,000円+取替しない案の更新支出100,000,000円を回避 |
| 2023〜2027年度末 | 毎年22,000,000円 | 0.890〜0.705(和3.974) | 17,500,000+償却差の節税 4,500,000 |
NPV=△202,000,000+125,600,000×0.943+22,000,000×3.974=3,868,800円。プラスなので採用です。3つのAIと当サイトの計算(差額で組んだ式と、3つの案を絶対の現金で組んだ式)が一致しました。
設問3 延期でも有利になるフルセルフレジの購入価格 ──【確定】
1台の価格を X 円とします。1年延期した案のNPVは、取り替えない案との差額で 140,001,000−70.456X。これが設問2の3,868,800円を上回る条件を解くと X<1,932,159.08。設問文は小数点以下切り捨ての指示なので、答えは1台1,932,159円です(これ未満の価格なら、延期しないより有利になります)。
この問題で落としやすい点
- 取り替えない案の更新支出100,000,000円の回避を足し忘れる。NPVが94,300,000円小さくなり、採否が「採用」から「不採用」に反転します。
- 売却損の節税(3,600,000円)を忘れる。設問1・2の数字がずれます。
- 設問3で、延期した案の1年目(2022年度)の人件費削減を足す。延期した案では2022年度はまだ取り替えていません。
令和元年度 第3問:損益予測表からCFを作り、設備の比較まで
3設問とも前提は割れません。損益予測表の「税引前利益」から、税引後利益+減価償却費でCFを作るのが出発点です。
| 期 | 売上高 | 原材料費 | 労務費 | 償却費・その他・販売費 | 税引前利益 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1期 | 20 | 8 | 8 | 11 | △7 |
| 第2期 | 42 | 15 | 12 | 12 | 3 |
| 第3期 | 60 | 20 | 12 | 13 | 15 |
| 第4期 | 45 | 14 | 11 | 12 | 8 |
| 第5期 | 35 | 10 | 6 | 11 | 8 |
設問1 各期のキャッシュフロー ──【確定】
各期のCF=税引前利益×(1−30%)+減価償却費4。第1期は△7×0.7+4=△0.9、第2期は6.1、第3期は14.5、第4期・第5期は9.6(百万円)。全社の利益は十分なので、第1期の赤字にも税の節約が付きます。
設問2 回収期間とNPV ──【確定】
累積は第1期△0.9、第2期5.2、第3期19.7で、初期投資20に0.3足りません。第4期の9.6で補うので回収期間は3+0.3÷9.6=3.03年。NPVは(△0.9×0.952+6.1×0.907+14.5×0.864+9.6×0.823+9.6×0.784)−20=12.63百万円(現価係数は問題の表のまま)。
設問3 高性能設備が有利になる削減率 ──【確定】
高性能設備(取得原価30・償却6/年)との差額NPVは、△(30−20)+償却増の節税0.6×係数の和4.330+0.7×r×(原材料費+労務費の現在価値の合計100.488)。これが0を超える r は 10.52%です。原材料費と労務費の合計を10.52%より多く削減できれば有利になります。
- 第1期の赤字△7に税の節約を付けず、CFを△3にしてしまう。
- 設問3で、償却費が2増える分の節税(0.6/年)を忘れる。境界の削減率が大きく出ます。
- 設問3で「CFの削減率」と読む。削減されるのは原材料費と労務費の合計で、売上高やその他の経費は変わりません。
平成29年度 第3問:処分支出を除却損に含めるかで、第X1年度末の差額が割れる
設問1は、処分支出10百万円を損金に含めるかで第X1年度末が76と73に割れます。設問2は、どちらでも採用です。
| 条件 | 値 |
|---|---|
| 新機械設備 | 初期投資200百万円(第X1年度初め)。耐用年数5年・定額法・残存価額0円 |
| 旧機械設備 | 帳簿価額50百万円・残存耐用年数5年・定額法・残存価額0円。処分のために10百万円の支出(第X1年度初め) |
| 除却損の税への影響 | 第X1年度末に生じる |
| 年間の収益と費用 | 旧: 収益520・費用380。新: 従来の染色加工分 収益520・費用330、新技術加工分 収益60・費用40(現金収支は各年度末) |
| 耐用年数経過後 | 処分支出は新旧とも5百万円(第X5年度末) |
| 税率・資本コスト | 税率30%(十分な利益)・資本コスト7% |
| 設問2の係数(7%) | 複利現価 0.9346/0.8734/0.8163/0.7629/0.7130 |
設問1 差額キャッシュフロー ──【前提により2解】
営業の差額は(580−370)−(520−380)=+70、償却の差額は 200÷5−50÷5=+30。除却損は、帳簿価額50に処分支出10を含めるかで変わります。毎年の差額CFは 70×0.7+30×0.3=58 で、第X2〜X5年度末はどちらの読みでも58です。
| 項目(百万円) | A 処分支出を含める(除却損60) | B 含めない(除却損50) |
|---|---|---|
| 税引前利益の差額 | △20 | △10 |
| 税金支出の差額 | △6 | △3 |
| 税引後利益の差額 | △14 | △7 |
| 非現金支出項目の差額 | 90 | 80 |
| 第X1年度末の差額CF | 76 | 73 |
| 第X1年度初め/X2〜X5年度末 | △210/58 | △210/58 |
設問2 安全性の指標(回収期間)と収益性の指標(NPV)──【前提により2解】
| 立場 | 回収期間 | NPV | 採否 |
|---|---|---|---|
| A 処分支出を含める | 3.31年 | 44.63百万円 | 採用 |
| B 含めない | 3.36年 | 41.83百万円 | 採用 |
採否は同じなので、どちらの読みを採っても結論は変わりません。(b)欄の冒頭に「処分支出は除却損に含める」または「含めない」と1行書き、どちらかの数字で最後まで通してください。途中で読みを混ぜないことが大事です。
3問を通して答案に書く1行:差額の基準・時点・損金の扱い
3問で答えを分けたのは公式ではなく、何との差額か・いつ払うか・何を損金に入れるかでした。(b)欄の最初に1行書けば、読みが割れても過程点が残ると見ています(見立て)。
- 取替・延期は、何を基準にした差額かを先に決める(令和3年度は「取り替えない案」)。基準側の将来の支出(更新支出)の回避も差額に入れる。
- 損益予測表から作るCFは、税引後利益+減価償却費。赤字の期は、全社が黒字なら税の節約を付ける。
- 除却損・処分支出は、損金に入れるか入れないかを1行で宣言してから計算する。
- 最後に、採否の結論が読みの違いで反転しないかを確かめる(今回の3問は反転しません)。
これは当サイトの見立てで、公式の採点基準ではありません。残りの年度も同じ型で通せるので、順次足す予定です。
この記事で言えないこと
2次試験に公式解答は公表されていません。答えは当サイトの解答例で、「一致」は当サイトと独立に解かせた3つのAI(Opus・Codex・Gemini)の答えの一致です。AIは問題文だけを渡され、互いの答えも当サイトの答えも見ていません。
- 条件は問題PDFを画像にして目視で照合し、転記は独立に2回行って数値の種類が一致することを確かめました。
- 令和3年度の差額の読み、平成29年度の除却損の扱いは、どちらが多数かは正しさの証拠ではないので、両方を載せています。
- 令和3年度の設問2・3、令和元年度の3設問は、3つのAIと当サイトの計算が全員一致しました。
配点は第3問(令和3年度は第2問)全体のもので、設問ごとの配点は公表されていません。得点への影響は測っていません。
この記事のまとめ
- 令和3年度は取替投資の差額、令和元年度は利益表から作るCF、平成29年度は除却損の扱いが論点です。
- 令和3年度はNPVが3,868,800円。1年延期でも有利になるフルセルフレジは1台1,932,159円までです。
- 令和元年度は回収期間3.03年・NPV12.63百万円。削減率が10.52%を超えれば高性能設備が有利です。
- 平成29年度は処分支出を除却損に含めるかで、第X1年度末の差額CFが76と73に割れ、どちらも採用です。
よくある質問
- 旧設備の処分支出は、除却損に含めますか。
- 設問文は「処分のために10百万円の支出が必要」とだけ書いています。損金(除却損)に含める読みなら第X1年度末の差額CFは76百万円、含めない読みなら73百万円で、NPVは44.63と41.83百万円。どちらも採用です。(b)欄の最初に採った読みを1行書いてください。
- 取替投資の差額は、何を基準に取ればよいですか。
- 設問文が「取替投資をしない場合」の行動を書いているときは、その行動を基準にします。令和3年度は、取り替えなければ2023年度期首にセミセルフレジを更新する、と書かれていたので、その更新支出の回避も取替案の効果として差額に入れます。

