令和8年度 事例ⅣをAI3つが解いた|計算はどこで割れたか
この記事の結論
- 別々の会社が作った3つのAIに、同じ問題文だけを配りました。
- 9つの小問のうち6つは、3つの数値と結論がそろいました。
- 割れた3つのうち2つは、解答欄への転記と足し算の誤りでした。
- 残る1つは期末資産に何を含めるかの違いで、どちらも誤りではありません。
事例Ⅳは答えが数値で出るので、どこで割れたかがはっきり見えます。令和8年度 事例Ⅳの問題文だけを、別々の会社が作った3つのAIに独立して配り、9つの小問を突き合わせました。この記事は本試験の当日に作った記録です。割れた数値は当サイトが再計算して確かめましたが、公式解答ではありません。答案の数値と記述は原文のまま載せています。
別々の会社が作った3つのAIに、同じ問題文を配った
渡したのは問題文と、3つに共通の指示書だけです。互いの答案は見せていません。
別々の会社が作った3つのAI(本稿ではAI(A)・AI(B)・AI(C)と呼びます)に、同じ指示書と同じ問題文だけを配りました。3つとも、他の2つが何を書いたかを知らないまま解いています。予備校の答案例も、当サイトの解説も渡していません。
問題文は、試験当日に受験者の問題冊子の写真から当サイトが書き起こしたものです。財務諸表と事業別の損益の表も、同じ写真から書き起こしています。
2次試験に公式解答は公表されません。令和8年度の出題の趣旨もまだ公表されていないため、この記事は趣旨を引用していません。「当サイトが再計算した値」は、3つの答案が割れた場所を当サイトが計算し直したもので、公式解答ではありません。
9つの小問のうち、数値が割れたのは3か所
第1問設問1、第2問設問2、第3問設問3の3か所で数値が割れました。残る6つは3つの答えがそろっています。
| 設問 | 基準にした値・要点 | AI(A) | AI(B) | AI(C) |
|---|---|---|---|---|
| 第1問設問1 ①CCC | D社 59.04日/同業他社 13.92日 | 同じ | 同じ | D社を48.80日と記入 |
| 第1問設問1 ②③ | 売上高営業利益率 1.27%/自己資本比率 9.03% | 同じ | 同じ | ②を売上総利益率 33.02%と記入 |
| 第1問設問2(記述) | CCCが長く自己資本比率は低いが、販管費が少なく売上高営業利益率は高い | 同じ向き | 同じ向き | 同じ向き |
| 第2問設問1 | △3.36% | 同じ | 同じ | 同じ |
| 第2問設問2 | 前提により2通り(△3.05%/△3.02%) | △3.05% | △3.02% | △3.05% |
| 第3問設問1 | 売却益 6,000千円/37,600千円 | 同じ | 同じ | 同じ |
| 第3問設問2 | 売却益 3,000千円/6,630千円/13,730千円 | 同じ | 同じ | 同じ |
| 第3問設問3 | 撤退案が3,635.20千円有利 | 同じ | 同じ | 撤退案 3,623.09千円と記入 |
| 第4問設問1(記述) | 安全性の悪化と手元資金の減少に注意する | 同じ向き | 同じ向き | 同じ向き |
| 第4問設問2(記述) | EC運営支援事業へ資源を寄せ、赤字の飲食店事業は縮小・撤退 | 同じ向き | 同じ向き | 同じ向き |
割れなかった6つには、落としやすい条件も含まれています。第3問設問1では、売却に伴う税金の影響が第1期末に出るという条件を3つとも読み、期首のキャッシュフローから外しました。型どおりの計算が通る場所では、3つの答えは端数までそろっています。
第1問設問1は、計算過程と解答欄が食い違っていた
AI(C)の計算過程には、59.04日と売上高営業利益率が書いてありました。解答欄へ移すときに、別の値を書いています。
| AI | ①D社のCCC(原文のまま) | ②(a)の指標名(原文のまま) | ②(b)の値(原文のまま) |
|---|---|---|---|
| AI(A) | 59.04日 | 売上高営業利益率 | 1.27(%) |
| AI(B) | 59.04日 | 売上高営業利益率 | 1.27(%) |
| AI(C) | 48.80日 | 売上総利益率 | 33.02(%) |
CCCは、売上債権と棚卸資産の回転期間を足し、仕入債務の回転期間を引いて求めます。当サイトが再計算すると、D社は59.04日、同業他社は13.92日でした。D社は、仕入れの代金を払ってから売上の代金を回収するまでの日数が、同業他社の4倍を超えています。
AI(C)は、解答欄の①に48.80日と書いています。ところが同じ答案の計算過程では、D社のCCCを59.04日と計算し、最後に59.04日へ直すとまで書いていました。②も同じで、計算過程の結論は売上高営業利益率 1.27%なのに、欄には売上総利益率を書いています。
売上総利益率は、D社が33.02%、同業他社が54.99%で、D社のほうが低い指標です。優れている指標の欄に入れると、答えの向きが逆になります。
本番でも起こりうる誤りです。計算用紙で正しく出した値を、解答欄に写すときに違える。書き終えたら、欄の値と計算過程の結論を1つずつ突き合わせることが対策になります。
第2問設問2は、期末資産に何を含めるかで割れた
改装後に増える現金を、飲食店事業の期末資産に含めるかどうか。前提の置き方の違いで、どちらも誤りとは言えません。
| AI | (a)次期のROI(原文のまま) | 期末資産の置き方 |
|---|---|---|
| AI(A) | △3.05% | 当期末の149,000千円に改装の20,000千円を足し、1年分の償却2,000千円を引いた167,000千円 |
| AI(B) | △3.02% | 上の167,000千円に、売上の増加と変動費の増加の差1,900千円を足した168,900千円 |
| AI(C) | △3.05% | AI(A)と同じ167,000千円 |
3つとも、次期の利益は△5,100千円で一致しています。当期の△5,000千円に売上の増加8,500千円を足し、変動費の増加6,600千円と改装の償却費2,000千円を引いた値です。違ったのは、割る側の期末資産だけでした。
AI(B)は、売上の増加と変動費の増加がどちらも現金で動くので、その差の1,900千円が事業の現金として残ると考えました。AI(A)とAI(C)は、その分を期末資産に足していません。設問は投資額に期末資産を使うよう指定していますが、何を含めるかまでは書いていません。
与件文は人件費の減少も見込んでいますが、金額が書かれていないため、3つとも計算に入れていません。AI(A)は、そのことを計算過程に断っています。
こうした分かれ目では、どちらを選んだかより、選んだ前提を(b)欄の計算過程に書いておくことが大事だと当サイトは見ています(見立て)。この設問は(b)欄に計算過程を書かせる作りなので、前提を1行書けば読み手に伝わります。
第3問設問3は、足し算の1か所で差額がずれた
撤退案が有利という結論は3つとも同じです。差額は、AI(C)だけが継続案の足し算を誤ってずれました。
| AI | 第3問設問3 (a)欄の答案(原文のまま) |
|---|---|
| AI(A) | 3,635.20千円 |
| AI(B) | 撤退案が3,635.20千円有利 |
| AI(C) | 撤退案:3,623.09千円 |
当サイトが再計算すると、撤退案の正味現在価値は36,864.46千円、継続案は33,229.26千円で、撤退案が3,635.20千円有利でした。撤退案は、期首に入る37,600千円から、第1期末に払う税金780千円の現在価値を引いた値です。
過去に払った設備の代金と、最初に積んだ運転資本の増加は、3つとも今の時点の支出に入れていません。どちらもすでに払い終えたお金で、これからの判断では動かせないからです。設問1と設問2がそろったうえで、設問3の組み立ても同じでした。
AI(C)の(b)欄では、継続案の正味現在価値を33,241.37千円と書いています。式の2つの項は27,925.56千円と5,303.70千円で、足すと33,229.26千円になります。ここは足し算の誤りです。同じ答案の計算過程には、33,229.26千円と差額3,635.20千円が正しく書かれていました。
第1問設問1と同じ形の誤りです。正しい値を一度は出しているのに、最後に書く欄の数字がずれる。計算問題の失点は、計算の途中より最後の転記で起きることもある、という例です。
第4問の記述は、3つとも同じ向きの助言になった
買収では安全性と手元資金の悪化に注意し、事業はEC運営支援へ寄せて飲食店を縮小・撤退する。3つとも同じ向きでした。
| AI | 第4問設問1の答案(原文のまま) |
|---|---|
| AI(A) | 自己資本比率が約9%と低く借入依存のため、追加借入で安全性が一層低下する。自己資金流出で手元流動性も減る。Y社のCFで返済可能か、のれん減損リスクも検討すべき。 |
| AI(B) | 自己資本比率が低く借入依存が大きい。自己資金2億円の支出と借入2億円の追加で資金繰りや返済能力が悪化しないよう、買収後の収益と資金回収を慎重に検証する。 |
| AI(C) | 自己資金支出で手元流動性が低下し、追加借入で元々低い自己資本比率がさらに悪化し財務安全性が損なわれる点や、買収額が企業価値に見合うかという収益性に注意する。 |
| AI | 第4問設問2の答案(原文のまま) |
|---|---|
| AI(A) | 資産効率が高いEC運営支援事業に経営資源を重点配分し、改装後も赤字の飲食店事業とミールキット事業は撤退し、売却資金で借入を返済して財務体質を改善すべき。 |
| AI(B) | 赤字の飲食店事業は縮小・撤退し、EC事業は在庫を圧縮する。利益率・資産効率の高いEC運営支援事業へ資源を重点配分し、借入依存を抑えて財務体質を改善する。 |
| AI(C) | 不採算の飲食店事業や低採算のミールキット事業は縮小・撤退して資産効率とCFを改善し、高収益で成長するEC運営支援事業や主力EC事業へ経営資源を集中すべき。 |
書き添えは分かれました。設問1ではAI(A)がのれんの減損を、AI(C)が買収額が企業価値に見合うかを足しています。設問2ではAI(A)とAI(C)がミールキット事業の撤退にも触れ、AI(B)はEC事業の在庫を減らすことを挙げました。
ミールキット事業の撤退は、第3問設問3の結論とつながります。前の設問で出した数値を、後の記述の根拠に使う組み立てです。計算の結論を記述で生かせると、答案全体の筋が通ると当サイトは見ています(見立て)。
割れた場所から、本番の答案で確かめること
割れた3か所のうち、考え方の違いは1か所だけでした。残る2か所は、最後に欄を見直せば防げる誤りです。
- 1計算を終えたら、解答欄の値と計算過程の結論を1つずつ突き合わせる。この回の割れのうち2か所は、ここで防げました。
- 2優れている・劣っている指標は、欄に書く前に向きを確かめる。D社のほうが低い指標を優れている側の欄に入れると、計算が合っていても答えが逆になります。
- 3前提で値が変わる設問では、採った前提を計算過程に1行書く。期末資産に何を含めたかを書いておけば、どちらの前提でも読み手に筋が伝わります。
型どおりの計算は3つともそろい、差は最後の転記と前提の置き方で出ました。計算そのものより、計算を終えたあとの見直しで点が動く回だったと当サイトは見ています(見立て)。
解答用紙の形で3つの答案を見る
本試験と同じつくりの用紙に、3つのAIの答案をそのまま入れました。上のボタンで切り替えられます。どれも正解ではありません。
令和8年度 第2次筆記試験 事例Ⅳ(解答用紙)
AI(A)の答案
第1問(配点25点)
(設問1)
| ①D社 | 59.04 | 日 |
|---|---|---|
| ①同業他社 | 13.92 | 日 |
| ②(a) | 売上高営業利益率 | |
| ②(b) | 1.27 | % |
| ③(a) | 自己資本比率 | |
| ③(b) | 9.03 | % |
(設問2)
自社工場の一貫体制で原材料在庫が多くCCCが長く効率性が低く、借入依存で自己資本比率が低く安全性も低い。一方で販管費を抑え売上高営業利益率は高く収益性は優れる。
第2問(配点20点)
(設問1)
| (a) | △3.36 | % |
|---|
(b)
営業利益=売上高156,000-変動費123,000-個別固定費38,000=△5,000千円。ROI=△5,000÷期末資産149,000×100=△3.36%
(設問2)
| (a) | △3.05 | % |
|---|
(b)
減価償却費=20,000÷10=2,000千円。利益=△5,000+8,500-6,600-2,000=△5,100千円。期末資産=149,000+20,000-2,000=167,000千円。ROI=△5,100÷167,000×100=△3.05%
第3問(配点30点)
(設問1)
| (a) | (売却損・売却益)売却益に○6,000 | 千円 |
|---|---|---|
| (b) | 37,600 | 千円 |
(c)
年償却費=48,000÷8=6,000。第1期首簿価=48,000-6,000×3=30,000。売却損益=36,000-30,000=6,000(売却益)。売却時CF=売却収入36,000-撤去・整備費用3,400+運転資本取崩5,000=37,600千円(税金の影響(6,000-3,400)×30%=780の支払は第1期末に生じる)
(設問2)
| (a) | (売却損・売却益)売却益に○3,000 | 千円 |
|---|---|---|
| (b) | 6,630 | 千円 |
| (c) | 13,730 | 千円 |
(d)
第5期末簿価=48,000-6,000×8=0、売却損益=3,000-0=3,000(売却益)。毎期:売上1.1×16,000=17,600、変動費0.5×16,000=8,000、その他2,700、償却6,000→税引前利益900、税270。CF=17,600-8,000-2,700-270=6,630(第1期末)。第5期末=6,630+売却収入3,000-売却益の税900+運転資本取崩5,000=13,730千円
(設問3)
| (a) | (撤退案・継続案)撤退案に○3,635.20 | 千円有利 |
|---|
(b)
撤退案NPV=37,600-780×0.943=37,600-735.54=36,864.46。継続案NPV=6,630×4.212+(2,100+5,000)×0.747=27,925.56+5,303.70=33,229.26。差額=36,864.46-33,229.26=3,635.20千円で撤退案が有利
第4問(配点25点)
(設問1)
自己資本比率が約9%と低く借入依存のため、追加借入で安全性が一層低下する。自己資金流出で手元流動性も減る。Y社のCFで返済可能か、のれん減損リスクも検討すべき。
(設問2)
資産効率が高いEC運営支援事業に経営資源を重点配分し、改装後も赤字の飲食店事業とミールキット事業は撤退し、売却資金で借入を返済して財務体質を改善すべき。
この記事で言えないこと
- 照らし合わせた相手は3つのAIの答案どうしと、当サイトの再計算だけです。予備校の解答や再現答案のような外の基準はありません。
- 当サイトが再計算した値は公式解答ではありません。この記事は本試験の当日に作った記録で、出題の趣旨はまだ公表されていません。
- 第2問設問2の2つの値のどちらに点が入るかは分かりません。採点の基準は公表されていません。
- AIの答案は、人間の受験生の答案の代わりにすぎません。得点の見立ても出していません。
答案の分け方と再計算は当サイトの独自のものです。問題(与件文・設問文)の著作権は一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会に帰属します。全文は試験実施機関の公表資料でご確認ください。
この記事のまとめ
- 別々の会社が作った3つのAIに、同じ問題文だけを配りました。
- 9つの小問のうち6つは、3つの数値と結論がそろいました。
- 割れた3つのうち2つは、解答欄への転記と足し算の誤りでした。
- 残る1つは期末資産に何を含めるかの違いで、どちらも誤りではありません。
よくある質問
- 第2問設問2は、△3.05%と△3.02%のどちらを書けばよかったのですか?
- 当サイトはどちらも誤りとは言えないと考えています。改装後に増える現金を飲食店事業の期末資産に含めるかどうかの違いで、設問はそこまで指定していないためです。どちらを選んだ場合も、選んだ前提を計算過程に書いておくことが大事です。
- AI(C)の答えは、本番なら点が入らないのですか?
- 分かりません。採点の基準は公表されていないからです。分かるのは、解答欄の値が計算過程の結論と食い違っていたことと、当サイトの再計算とも違ったことまでです。
- 3つの答えがそろった小問は、正解だと考えてよいですか?
- 公式解答ではありません。3つの答えと当サイトの再計算がそろった、というところまでです。型どおりに解けば同じ数字に着く小問だった、と読むのが正確です。

