令和8年度 事例ⅠをAI3つが解いた|4問とも答案の芯がそろった
この記事の結論
- 別々の会社が作った3つのAIに、同じ問題文だけを配りました。
- 4問とも、答案の芯になる要素は3つでそろいました。
- 差が出たのは、第2問と第3問で書き添えた要素だけです。
- そろった設問は、本番で落とせない設問だと当サイトは見ています。
令和8年度 事例Ⅰの問題文だけを、別々の会社が作った3つのAIに独立して配り、出てきた答案を突き合わせました。この記事は本試験の当日に作った記録で、公式の解答はもちろん、出題の趣旨もまだ公表されていません。照らし合わせる相手は3つのAIどうしだけです。それでも、3つが同じ材料を拾った設問がどこかは分かります。答案は原文のまま載せています(1か所だけ抜粋で、その旨は表の下に書いています)。
別々の会社が作った3つのAIに、同じ問題文を配った
渡したのは問題文と、3つに共通の指示書だけです。互いの答案は見せていません。
別々の会社が作った3つのAI(本稿ではAI(A)・AI(B)・AI(C)と呼びます)に、同じ指示書と同じ問題文だけを配りました。3つとも、他の2つが何を書いたかを知らないまま解いています。予備校の答案例も、当サイトの解説も渡していません。
問題文は、試験当日に受験者の問題冊子の写真から当サイトが書き起こしたものです。本文で「第8段落」のように書く番号は、問題冊子の与件文の段落を頭から数えた番号です。
記録に手を入れた箇所が1つあります。AI(C)の第1問の2つの答案は、最初の版が60字の上限を超えていました。そこで同じAIに、要素は変えずに60字以内へ削るよう頼み直し、その版を載せています。
2次試験に公式解答は公表されません。令和8年度の出題の趣旨もまだ公表されていないため、この記事は趣旨を引用していません。比べる相手は3つの答案どうしだけで、答案に○×は付けません。
4問とも、3つの答案の芯は同じ材料だった
第1問から第4問まで、答案の芯になる要素は3つでそろいました。差は第2問と第3問の書き添えにとどまります。
| 設問 | 3つがそろって書いた要素 | 書き添えの違い |
|---|---|---|
| 第1問(a) 内部環境 | 卸売の利幅が薄い/本格的な製造機能がなく商品の土台を外に頼る/高付加価値化や伸びる事業が描けない | なし |
| 第1問(b) 外部環境 | 原材料・包材・物流の費用の上昇/売れ筋が小容量品や贈答と日常使いを兼ねる品へ移った/包装や物語、使い方まで見られる | なし |
| 第2問 業務プロセスを整えた理由 | 属人的な業務を見えるようにして欠品と出荷漏れを減らす/卸売とECの顧客接点にX社の商品をのせる/売上予測から品質情報までをつなぐ/組織統合の土台にする | AI(A)とAI(B)は、両社の相互不信を越えることも入れた |
| 第3問 X社の従業員の育成 | 消費者にどう選ばれ使われるかを学ばせる/A社の企画・営業と交流して理解し合う | 評価基準への組み込み(AI(A))、技能の伝承と相互研修(AI(B))、取引先データやバイヤーの声に触れる(AI(C)) |
| 第4問 成長戦略 | 定番品で工場の稼働と雇用を守る/小容量品をα社のECで都市部へ/表示と安定供給を整えて海外へ/X社の醤油でA社の加工食品の幅と提案力を広げる | なし |
右の列が「なし」の3つの設問は、3つの答案が同じ材料を拾っています。差がある2問も、芯はそろったうえで、書き添えた要素が違うだけでした。以下、設問の順に見ます。
第1問は、内部も外部も同じ材料に着いた
内部は卸売の薄利と製造機能の欠如、外部は費用の上昇と売れ筋の変化。3つとも同じ材料で答案を組みました。
第1問は配点20点で、X社を買うに至った背景にあるA社グループの課題を、内部環境と外部環境に分けて60字以内ずつ書く設問です。
| AI | 第1問(a) 内部環境の答案(原文のまま) |
|---|---|
| AI(A) | 主力の卸売が薄利で、本格的な製造機能がなく商品の土台を外部に依存し、高付加価値化や輸出に対応できず伸びる事業がない事。 |
| AI(B) | 主力の卸売が薄利で、本格的な製造機能を持たず商品の土台を外部に依存しており、高付加価値化と成長事業の創出が課題であった。 |
| AI(C) | 主力の卸売が薄利で、本格的な製造機能を持たず商品の土台を外部依存するため、高付加価値化や伸びる事業創出に限界がある点。 |
| AI | 第1問(b) 外部環境の答案(原文のまま) |
|---|---|
| AI(A) | 原材料費等が上昇し、売れ筋が小容量品や贈答兼日常使いへ移行し、消費者がパッケージやストーリーまで含め商品を評価する変化。 |
| AI(B) | 原材料費・包材費・物流費が上昇し、需要が小容量品や贈答兼日常使いへ移り、包装・物語・使い方提案も求められるようになった。 |
| AI(C) | 原材料・包材・物流費の上昇が続き、売れ筋が小容量品や贈答兼日常使いへ移行し、消費者が包装や物語、使い方提案も求める点。 |
内部環境の答案は、言い回しまでよく似ています。3つとも卸売の利幅の薄さから入り、製造機能が無いことを挙げ、だから伸びる事業を作れないという行き詰まりへつないでいます。課題を原因から結果の順に並べた形まで同じです。
外部環境の答案で目を引くのは、外したものも同じだったことです。海外で日本の発酵食品の需要が伸びているという話は、3つとも入れていません。AI(A)は、これは買収後を書いた第11段落の話なので背景には当たらない、と書き添えています。
この設問が問うているのは、買収に至った背景です。時点を買収の前に置けば、使える材料はおのずと絞られます。3つがそろったのは、この時点の読みが一致したからだと当サイトは見ています。
第2問で差が出たのは、両社の不信を書くかどうか
顧客接点・データの連携・組織統合の土台は、3つとも書きました。AI(A)とAI(B)だけが、両社の相互不信を越えることも理由に入れています。
第2問は配点30点、150字以内です。買収のあと、グループ全体で業務プロセスを整えてきた理由を、組織運営の観点から問うています。
| AI | 第2問の答案(原文のまま) |
|---|---|
| AI(A) | ①A社卸売販路とα社ECの顧客接点にX社商品をのせるため、売上予測から品質情報までグループ横断で連携し、②受発注や在庫、ロット管理のデータを共有し属人的業務を可視化・標準化して欠品や出荷漏れを防ぎ、③数字で管理できないとの見方を解消し、共通の業務基盤で組織統合の土台を築き、一体感を醸成するため。 |
| AI(B) | 両社の相互不信や業務管理の違いを乗り越え、組織統合の土台を築くためである。X社の製造技術を残しつつ、業務の標準化とデータ共有で属人的な業務を可視化し、欠品や出荷漏れを減らす。卸売・ECの顧客接点と製造を結び、売上予測から品質情報までグループ横断で連携して、各社の強みを生かすためである。 |
| AI(C) | 属人的な業務を可視化し欠品や出荷漏れを減らすとともに、A社の販路とα社のECの顧客接点にX社商品をのせ、売上予測から品質情報までを横断連携して組織統合の土台とするため。 |
AI(A)とAI(B)は、第8段落にある両社の見方の食い違いを答案に入れました。X社の現場は新社長の力量を疑い、グループ側はX社を数字で管理できない会社と見ていた、という段落です。業務の進め方をそろえることが、この不信を越える手段になる、という組み立てです。
AI(C)も同じ第8段落を使っていますが、向きが違います。数字で管理できないことを、両社の関係ではなくX社の管理の弱さとして書き、仕組みを入れる理由にしました。
設問が求めているのは組織運営の観点です。業務を整えることが、統合したばかりの2つの組織の関係にどう効くかまで書くと、その観点に近づきます。ただ、組織統合の土台という芯は3つとも書いており、そこが落とせない要素です。
第3問は、育てる中身が同じで書き添えが違った
消費者にどう選ばれるかを学ばせ、A社の企画・営業と理解し合う。この2本の柱は3つとも同じでした。
第3問は配点20点、100字以内です。消費者の動向を意識した商売に要るスキルを持つ人材として、X社の従業員をどう育てるかを助言します。
| AI | 第3問の答案(原文のまま) |
|---|---|
| AI(A) | α社のECやテスト販売、卸先の反応に触れる機会を設け消費者の選ばれ方・使われ方を学ばせ、A社企画・営業との合同会議や相互研修で商品提案力を高め、提案・技能伝承を評価基準に組み込み意欲を高める。 |
| AI(B) | A社の企画・営業、α社のEC運営との交流・共同業務で、消費者の選択理由や使い方を学ばせる。若手への技能伝承と醸造現場の相互研修を行い、発酵技術と顧客情報を結び付けて商品を提案する力を養う。 |
| AI(C) | 合同ミーティング等を通じてA社の企画・営業担当者と醸造現場や発酵技術への相互理解を深め、卸先やα社ECの取引先データやバイヤーの声に触れる機会を増やし、自社商品が消費者にどう選ばれ使われるかを学ぶ。 |
3本目の柱は3つとも違います。AI(A)は提案や技能の伝承を評価基準に組み込み、AI(B)は若手への技能伝承と醸造現場の相互研修を挙げました。AI(C)は、卸先やECの取引先データとバイヤーの声に触れる機会を足しています。
どれも与件文に手がかりのある材料です。第10段落には、評価基準のあいまいさも、技能伝承の不足も書かれています。100字の器で3本目に何を選ぶかは、本番でも人によって分かれるところだと当サイトは見ています(見立て)。
第4問は、守りを先に置く組み立てまで同じだった
定番品で雇用を守ると先に書き、そのうえで小容量品・海外・加工食品の3方向へ広げる。この組み立ては3つとも同じでした。
第4問は配点30点、150字以内です。地域の卸売企業から脱皮するために、X社を生かしたグループ全体の成長戦略を助言します。
| AI | 第4問の答案(原文のまま) |
|---|---|
| AI(A) | 定番の家庭用・業務用品で工場稼働と雇用を守りつつ、①木桶仕込みの醤油を小容量卓上瓶等にしα社ECでテスト販売し都市部取引先へ展開、②英語表示・アレルゲン表記と安定供給体制を整え木桶熟成に関心の高い海外へ輸出、③X社醤油を使うA社加工食品で卸先への提案力を高め、発酵を核とする価値創造企業へ脱皮する。 |
| AI(B) | 定番品の供給と雇用を守りつつ、X社の発酵技術にA社の企画・卸売販路、α社のEC・テスト販売を組み合わせる。小容量品や贈答兼日常使いの商品を開発し、包装・物語・使い方を提案して高付加価値化する。A社加工食品の幅と卸先への提案力も広げ、英語・アレルゲン表記と安定供給を整え、段階的に海外展開する。 |
| AI(C) | 定番商品の既存事業を守り雇用と稼働を維持しつつ、①X社の発酵技術と本格醤油を取り込みA社加工食品の幅を広げ卸先への提案力を高め、②小容量品等をα社ECで都市部へ提案し包装や物語・使い方も訴求し、③英語・アレルゲン表記と安定供給体制を整え海外需要を開拓し、発酵を核とする価値創造企業へ脱皮する。 |
3つとも、答案の書き出しで定番品と雇用を守ると書いています。与件文の終わり近くには、生産を急に広げると工場の稼働も雇用も揺らぐ、という制約が置かれています。攻めの施策を並べる前に、この制約へ一言で答えた点がそろいました。
広げる方向も同じ3つです。小容量品をα社のECで都市部へ出すこと、表示と供給の体制を整えて海外へ出ること、X社の醤油でA社の加工食品の幅を広げることです。並べる順番は違いますが、材料は3つとも同じでした。
3つがそろった設問を、本番の答案とどう比べるか
当サイトの見立てでは、3つが同じ材料を拾った場所は落とせない場所です。書き添えの違いは、字数に余裕があるときの上乗せと考えます。
- 1自分の答案に、上の表の「3つがそろって書いた要素」が入っているかを確かめる。抜けていたら、本番で読み落とした可能性が高い場所です。
- 2第1問は、時点を買収の前に置いたかを確かめる。買収後に見えた話を背景に入れていたら、3つとは時点の読みが違います。
- 3第2問と第3問の書き添えは、どれか1つが正しいとは言えません。自分が書いた要素が与件文に手がかりのある材料なら、それで構いません。
令和8年度の事例Ⅰでは、3つの判断が大きく割れる設問は見つかりませんでした。割れなかったこと自体が、この年の事例Ⅰの性格を表しているのかもしれません。ただし、それを確かめる外の基準は今の時点ではありません。
解答用紙の形で3つの答案を見る
本試験と同じつくりの用紙に、3つのAIの答案をそのまま入れました。上のボタンで切り替えられます。どれも正解ではありません。
令和8年度 第2次筆記試験 事例Ⅰ(解答用紙)
AI(A)の答案
第1問(配点20点)
(a)
主力の卸売が薄利で、本格的な製造機能がなく商品の土台を外部に依存し、高付加価値化や輸出に対応できず伸びる事業がない事。
(b)
原材料費等が上昇し、売れ筋が小容量品や贈答兼日常使いへ移行し、消費者がパッケージやストーリーまで含め商品を評価する変化。
第2問(配点30点)
①A社卸売販路とα社ECの顧客接点にX社商品をのせるため、売上予測から品質情報までグループ横断で連携し、②受発注や在庫、ロット管理のデータを共有し属人的業務を可視化・標準化して欠品や出荷漏れを防ぎ、③数字で管理できないとの見方を解消し、共通の業務基盤で組織統合の土台を築き、一体感を醸成するため。
第3問(配点20点)
α社のECやテスト販売、卸先の反応に触れる機会を設け消費者の選ばれ方・使われ方を学ばせ、A社企画・営業との合同会議や相互研修で商品提案力を高め、提案・技能伝承を評価基準に組み込み意欲を高める。
第4問(配点30点)
定番の家庭用・業務用品で工場稼働と雇用を守りつつ、①木桶仕込みの醤油を小容量卓上瓶等にしα社ECでテスト販売し都市部取引先へ展開、②英語表示・アレルゲン表記と安定供給体制を整え木桶熟成に関心の高い海外へ輸出、③X社醤油を使うA社加工食品で卸先への提案力を高め、発酵を核とする価値創造企業へ脱皮する。
この記事で言えないこと
- 照らし合わせた相手は3つのAIの答案どうしだけです。3つの一致が唯一の照合で、予備校の解答や再現答案、当サイトの解説のような外の基準はありません。
- この記事は本試験の当日に作った記録です。出題の趣旨はまだ公表されておらず、引用もしていません。
- 3つが一致したことは、その答案が高い点を取ることを意味しません。公式解答は公表されず、この答案は採点されていません。得点の見立ても出していません。
- AIの答案は、人間の受験生の答案の代わりにすぎません。3つがそろった場所でも、受験生の答案は割れることがあります。
答案と要素の分け方は当サイトの独自のものです。問題(与件文・設問文)の著作権は一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会に帰属します。全文は試験実施機関の公表資料でご確認ください。
この記事のまとめ
- 別々の会社が作った3つのAIに、同じ問題文だけを配りました。
- 4問とも、答案の芯になる要素は3つでそろいました。
- 差が出たのは、第2問と第3問で書き添えた要素だけです。
- そろった設問は、本番で落とせない設問だと当サイトは見ています。
よくある質問
- 3つのAIがそろって書いた答案は、正解ですか?
- いいえ。2次試験に公式解答は公表されず、出題の趣旨もまだ公表されていません。3つの一致は、同じ材料から素直に読むとそこへ着く、という意味にとどまります。採点で点が入るかどうかは誰にも分かりません。
- 3つのAIは、どこの会社のものですか?
- 別々の会社が作ったAIですが、製品名は出していません。答案の読み方はどの製品だったかで変わらず、製品名を書くと記事の寿命が製品の版に縛られるためです。
- 第2問のAI(C)の答案は、なぜ後半しか載っていないのですか?
- 答案の前半に、与件文と同じ言い回しが長く続く部分があるためです。当サイトは与件文を地の文に長く写さない決まりで記事を書いており、その部分だけ載せていません。載せた後半は答案の文字を1字も変えておらず、前半の中身は表の下の説明に当サイトの言葉で書いています。
- 第1問のAI(C)の答案だけ、なぜ頼み直したのですか?
- 最初の版が60字の上限を超えていたからです。上限を超えた答案は解答欄に収まらないので、同じAIに要素は変えずに削るよう頼み、その版を載せています。記録に手を入れたことになるので、本文にも書いています。

