令和8年度 事例ⅢをAI3つが解いた|芯はそろい、足した施策で分かれた
この記事の結論
- 別々の会社が作った3つのAIに、同じ問題文だけを配りました。
- 5問とも、答案の芯になる要素は3つでそろいました。
- 割れたのは第3問と第5問で、芯に足した施策の違いです。
- 第1問では1つのAIだけが、設備も強みに入れました。
令和8年度 事例Ⅲの問題文だけを、別々の会社が作った3つのAIに独立して配り、出てきた答案を突き合わせました。この記事は本試験の当日に作った記録で、公式の解答も出題の趣旨もまだありません。照らし合わせる相手は3つのAIどうしだけです。それでも、生産の事例で3つがどこまで同じ材料を拾い、どこで助言の中身が分かれたかは分かります。答案はすべて原文のまま載せています。
別々の会社が作った3つのAIに、同じ問題文を配った
渡したのは問題文と、3つに共通の指示書だけです。互いの答案は見せていません。
別々の会社が作った3つのAI(本稿ではAI(A)・AI(B)・AI(C)と呼びます)に、同じ指示書と同じ問題文だけを配りました。3つとも、他の2つが何を書いたかを知らないまま解いています。予備校の答案例も、当サイトの解説も渡していません。
問題文は、試験当日に受験者の問題冊子の写真から当サイトが書き起こしたものです。本文で「第8段落」のように書く番号は、問題冊子の与件文の段落を頭から数えた番号です。与件文には業務の流れを示した図もありますが、図は段落に数えていません。
記録に手を入れた箇所が3つあります。AI(C)の第1問・第2問・第5問の答案は、最初の版がそれぞれの字数の上限を超えていました。そこで同じAIに、要素は変えずに上限の内へ削るよう頼み直し、その版を載せています。
2次試験に公式解答は公表されません。令和8年度の出題の趣旨もまだ公表されていないため、この記事は趣旨を引用していません。比べる相手は3つの答案どうしだけで、答案に○×は付けません。
5問とも、3つの答案の芯は同じ材料だった
第1問から第5問まで、答案の芯になる要素は3つでそろいました。割れたのは第3問と第5問で、芯に足した施策が違いました。
| 設問 | 3つがそろって書いた要素 | 書き添え・割れた点 |
|---|---|---|
| 第1問 生産面の強み | 経験の長い従業員の技術/品質の高さと正確さ/納期への対応 | AI(C)だけが、最近入れたデジタル印刷機(設備)も強みに入れた |
| 第2問 受注価格の決め方 | 課題=過去の見積と他社の動きに頼った価格の決め方/解決策=工程ごとの工数や増えた費用をつかんで見積に反映する | なし |
| 第3問 デジタル印刷機の生かし方 | 部数や品質で印刷方式を選ぶ基準を決め、少部数で簡単な印刷物をデジタル印刷機へ回す(AI(A)とAI(B)はベテランに操作を覚えさせることも) | 刷版と試し刷りの省略と負荷の平準化(AI(A))、折り・綴じ・裁断の自動機能と負荷・進捗の共有(AI(B))、校正確認を早めることと日程計画(AI(C)) |
| 第4問 技術力の維持・強化 | 課題=ベテランの経験に頼る調整の技術を引き継ぐ/解決策=用紙・インク・気温・湿度に応じた調整を記録して標準にし、従業員に教える | なし |
| 第5問 一括請負での収益拡大 | 一括請負の役割分担と業務の手順を標準にする/官公庁と民間企業へ提案する | 専任チームの編成と工数の見積への反映(AI(A))、各課の連携体制と高単価の受注(AI(B))、マニュアル化と手離れのよさの訴求(AI(C)) |
右の列が「なし」の2問は、3つの答案が同じ材料を拾っています。第3問と第5問は、芯をそろえたうえで、そこに足した施策が3つとも違いました。以下、設問の順に見ます。
第1問は、人の技術と品質・納期の3点がそろった
経験の長い従業員の技術、品質と正確さ、納期への対応。この3点は3つとも同じでした。AI(C)だけが、設備も強みに入れています。
第1問は配点10点、40字以内です。C社の生産面での強みを書く設問です。
| AI | 第1問の答案(原文のまま) |
|---|---|
| AI(A) | ベテランの豊富な経験による文字や色の美しい高い印刷品質と正確性、納期を守る信頼。 |
| AI(B) | 経験豊富な従業員による、高品質で正確な印刷物の生産と納期対応力。 |
| AI(C) | 経験豊富な作業者の技術力、工程が機内完結するデジタル印刷機、高品質と納期対応力。 |
3つの答案は、品質の高さの理由を従業員の経験の長さに置いた点で同じです。根拠に挙げた段落もそろっていて、3つとも、顧客の信頼を書いた第3段落と、品質の理由を社内の声として書いた第12段落を使っています。
AI(C)は、最近入れたデジタル印刷機を強みに加えました。印刷から仕上げまでが機械の中で済む点を拾っています。AI(A)とAI(B)は、この機械を強みには入れていません。
第7段落には、ベテランが慣れたオフセット印刷を選びがちだと書かれています。第3問でも、この機械をどう生かすかが課題として問われています。持っている設備を強みに数えるか、まだ生かせていない資源と見るかで、判断が分かれたと当サイトは読みました。どちらが採点に沿うかは、出題の趣旨が出るまで分かりません。
第2問は、課題も解決策も同じ組み立てになった
課題は価格の決め方が過去の見積と他社の動きに頼っていること、解決策は工数と費用をつかんで見積に入れること。3つとも同じ組み立てです。
第2問は配点15点、80字以内です。収益性を確保するために、受注価格の決め方の課題と解決策を問うています。
| AI | 第2問の答案(原文のまま) |
|---|---|
| AI(A) | 課題は過去の見積と他社動向頼みの価格決定である。解決策は工程別の工数や材料費等の実績原価を蓄積し、費用増大や一括請負の対応工数を反映した原価基準の見積とする。 |
| AI(B) | 課題は過去の類似案件と他社動向に依存した価格設定。工程別の作業工数と増大する原材料費・エネルギー費・人件費を把握し、採算を確保できる見積基準を定める。 |
| AI(C) | 課題は過去実績に頼る見積から脱却し増大する費用や対応工数を価格に反映すること。解決策は仕様別の原価や校正変更・一括請負の工数を正確に把握し見積書に反映すること。 |
3つとも、課題の根拠を第4段落に置いています。見積を作るときに、過去の似た印刷物の見積書や他社の動きを参考にしている、という段落です。そのうえで、費用が増えている第11段落と、一括請負に社内の手間がかかる第14段落を、解決策の材料にしました。
AI(B)は、費用の増加が価格に映っていないという点は、いまの見積の手順から推し量ったものだと書き添えています。与件文がそこまではっきり書いていないことを、自分で断った形です。
第3問で割れたのは、デジタル印刷機へ回したあとの手当て
選ぶ基準を決めて少部数の仕事をデジタル印刷機へ回す、という芯は3つとも同じです。そのあとに足した施策が3つとも違いました。
第3問は配点25点、120字以内です。残業や外注を減らすために、デジタル印刷機をどう生かすかを問うています。
| AI | 第3問の答案(原文のまま) |
|---|---|
| AI(A) | 部数や品質要求で印刷方式の選択基準を定めて受注伝票作成時に決定し、少部数で簡易な印刷物はデジタル印刷機に割り当てる。刷版や試し刷り等の工程を省き、作業者に操作教育を行い、オフセット機の負荷を平準化して残業や外注を減らす。 |
| AI(B) | 少部数で簡易な印刷物はデジタル印刷、大量で高品質の印刷物はオフセット印刷と選択基準を明確化する。ベテランにもデジタル印刷機の操作を習得させ、折り・綴じ・裁断の自動機能を活用する。各課の負荷と進捗を事前に共有し、作業を割り当てる。 |
| AI(C) | ①部数や仕様に応じた印刷機の選択基準を定め、ベテランが選ぶオフセットから少部数・簡易な印刷物をデジタル印刷機へ移行する。②顧客との校正確認を迅速化しデータ確定遅れを防ぐ。③日々の生産会議を見直し、納期までの日程計画と負荷・進捗管理を行う。 |
芯がそろった根拠は第7段落です。少部数の簡単な印刷物はデジタル印刷機に向くのに、ベテランは慣れたオフセット印刷を選びがちだ、という段落です。3つとも、選ぶ基準を決めて人の好みで振り分けない形にしました。AI(A)とAI(B)は、ベテランに操作を覚えさせることも入れています。
足した施策は分かれました。AI(A)は、刷版や試し刷りの工程を省けることと、オフセット機の負荷をならすことを書きました。AI(B)は、折り・綴じ・裁断を自動でこなす機能を使うことと、各課の負荷と進捗を前もって共有することを挙げています。
AI(C)は、機械の外へ目を向けました。顧客との校正確認を早めてデータの確定の遅れを防ぐことと、毎日の生産会議を見直して日程計画を立てることです。第5段落と第8段落にある、残業の元になる遅れを拾った形です。
機械の使い方の中にとどめるか、残業の元になる前後の工程まで広げるかで、120字の使い方が変わります。どれも与件文に手がかりのある材料で、本番でも人によって分かれるところだと当サイトは見ています(見立て)。
第4問は、記録して標準にし、教えるという流れがそろった
ベテランの経験に頼る調整の技術を引き継ぐことを課題に置き、記録して標準にしたうえで教える。この流れは3つとも同じでした。
第4問は配点25点、120字以内です。ベテランの高齢化が進むなかで、技術力を保ち高めるための課題と解決策を問うています。
| AI | 第4問の答案(原文のまま) |
|---|---|
| AI(A) | 課題はベテランの経験に依存する用紙・インク・気温湿度に応じた調整技術の継承である。解決策は印刷条件と調整内容を記録・データ化して作業標準とし、過去の印刷提案書等も共有し、ベテランと若手を組ませたOJTで計画的に教育する。 |
| AI(B) | 課題は高齢化するベテランの経験に依存した技術の継承。用紙・インクの特質や気温・湿度に応じた印刷調整、校正、企画・調整の手順を記録・共有する。経験豊富な従業員が他の従業員を実務で指導し、高品質と正確性を維持・強化する。 |
| AI(C) | 課題はベテラン従業員の経験に依存する印刷や企画・制作技術の標準化と若手への技能承継。解決策は①用紙やインクの特質、気温や湿度に応じた試し刷り・調整技術をマニュアル化し、②過去の印刷物や企画・校正のノウハウをデータベース化して教育訓練を行う。 |
3つとも、印刷の調整の技術を課題の中心に置きました。印刷機の担当者が紙とインク、その日の気温と湿度に合わせて試し刷りを重ねる、という第6段落の話です。この調整は経験の長さに支えられているので、記録に残して標準にする、という解決策まで同じでした。
教える場面まで書いた点も3つで同じです。AI(A)とAI(B)は実務の中で教える形、AI(C)はノウハウをデータベースにまとめて教育訓練に使う形で書いています。
第5問で割れたのは、体制の組み方と売り込み方
役割分担と手順を標準にし、官公庁と民間企業へ提案する。芯は3つとも同じで、体制の組み方と売り込み方に足した施策が分かれました。
第5問は配点25点、120字以内です。顧客に評価されている一括請負の仕事で、さらに収益を伸ばすための助言を問うています。
| AI | 第5問の答案(原文のまま) |
|---|---|
| AI(A) | 受注の都度模索する実行体制を改め、制作・製版課を中心に各課の担当者で専任チームを編成し、企画から印刷・仕分け・発送までの業務手順と過去事例を標準化・共有する。対応工数を見積に反映し、官公庁や民間企業へ提案営業を強化し高単価受注を拡大する。 |
| AI(B) | 制作・製版課を中心に各課の連携体制を整え、企画・印刷・仕分け・発送の役割分担と手順を標準化する。顧客の業務効率化と正確性を訴求し、官公庁や民間企業へ提案する。対応工数を把握して既存設備・人員を有効に使い、高単価受注で収益を拡大する。 |
| AI(C) | ①受注の都度模索する各課の役割分担や実行体制、業務手順を標準化・マニュアル化し、社内の対応工数を削減する。②企画立案や仕分け・発送までの一括請負の実績を活かし、業務効率化や手離れのよさを訴求して官公庁や民間企業へ積極提案し受注を拡大する。 |
芯の根拠は第13段落と第14段落です。一括請負は社内の手間がかかる代わりに値段を高くとれるのに、受注のたびにやり方を手探りしている、という流れです。3つとも、この手探りを標準の手順に置きかえる施策を入れています。
足した施策は分かれました。AI(A)は各課の担当者で専任のチームを組み、手間を見積に入れて値段に映すとしました。AI(B)は各課の連携体制を整え、高い単価の受注で収益を広げるとしています。AI(C)は手順をマニュアルにまとめ、顧客の手離れのよさを売り込みの言葉にしました。
第15段落には、設備も人も今のままで収益を伸ばしたい、という条件があります。AI(B)はこの条件を答案に書き込みました。AI(A)は、この条件をはっきり書くかどうか迷ったと書き添えています。
そろった芯と割れた施策を、本番の答案とどう比べるか
当サイトの見立てでは、3つがそろった芯は落とせない場所です。割れた施策は、どれか1つが正しいとは言えません。
- 1自分の答案に、上の表の「3つがそろって書いた要素」が入っているかを確かめる。抜けていたら、本番で読み落とした可能性が高い場所です。
- 2第3問と第5問は、芯のあとに足した施策が与件文のどの段落から出ているかを確かめる。手がかりのある材料なら、3つと違っていても構いません。
- 3第1問で設備を強みに書いた人は、その設備が第3問でどう扱われているかと合わせて読み直す。強みと見るか課題と見るかは、出題の趣旨が出るまで決められません。
令和8年度の事例Ⅲでは、3つの判断が別々の結論に着いた設問はありませんでした。割れた2問も、芯をそろえたうえでの違いです。ただし、そろった答案が高い点を取るかどうかを確かめる外の基準は、今の時点ではまだありません。
解答用紙の形で3つの答案を見る
本試験と同じつくりの用紙に、3つのAIの答案をそのまま入れました。上のボタンで切り替えられます。どれも正解ではありません。
令和8年度 第2次筆記試験 事例Ⅲ(解答用紙)
AI(A)の答案
第1問(配点10点)
ベテランの豊富な経験による文字や色の美しい高い印刷品質と正確性、納期を守る信頼。
第2問(配点15点)
課題は過去の見積と他社動向頼みの価格決定である。解決策は工程別の工数や材料費等の実績原価を蓄積し、費用増大や一括請負の対応工数を反映した原価基準の見積とする。
第3問(配点25点)
部数や品質要求で印刷方式の選択基準を定めて受注伝票作成時に決定し、少部数で簡易な印刷物はデジタル印刷機に割り当てる。刷版や試し刷り等の工程を省き、作業者に操作教育を行い、オフセット機の負荷を平準化して残業や外注を減らす。
第4問(配点25点)
課題はベテランの経験に依存する用紙・インク・気温湿度に応じた調整技術の継承である。解決策は印刷条件と調整内容を記録・データ化して作業標準とし、過去の印刷提案書等も共有し、ベテランと若手を組ませたOJTで計画的に教育する。
第5問(配点25点)
受注の都度模索する実行体制を改め、制作・製版課を中心に各課の担当者で専任チームを編成し、企画から印刷・仕分け・発送までの業務手順と過去事例を標準化・共有する。対応工数を見積に反映し、官公庁や民間企業へ提案営業を強化し高単価受注を拡大する。
この記事で言えないこと
- 照らし合わせた相手は3つのAIの答案どうしだけです。3つの一致が唯一の照合で、予備校の解答や再現答案、当サイトの解説のような外の基準はありません。
- この記事は本試験の当日に作った記録です。出題の趣旨はまだ公表されておらず、引用もしていません。
- 3つが一致したことは、その答案が高い点を取ることを意味しません。公式解答は公表されず、この答案は採点されていません。得点の見立ても出していません。
- AIの答案は、人間の受験生の答案の代わりにすぎません。3つがそろった場所でも、受験生の答案は割れることがあります。
答案と要素の分け方は当サイトの独自のものです。問題(与件文・設問文)の著作権は一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会に帰属します。全文は試験実施機関の公表資料でご確認ください。
この記事のまとめ
- 別々の会社が作った3つのAIに、同じ問題文だけを配りました。
- 5問とも、答案の芯になる要素は3つでそろいました。
- 割れたのは第3問と第5問で、芯に足した施策の違いです。
- 第1問では1つのAIだけが、設備も強みに入れました。
よくある質問
- 3つのAIがそろって書いた答案は、正解ですか?
- いいえ。2次試験に公式解答は公表されず、出題の趣旨もまだ公表されていません。3つの一致は、同じ材料から素直に読むとそこへ着く、という意味にとどまります。採点で点が入るかどうかは誰にも分かりません。
- 第1問でデジタル印刷機を強みに書いたら、失点ですか?
- 分かりません。出題の趣旨がまだ公表されておらず、3つのAIの間でも判断が分かれたためです。この記事は、どちらが正しいかを決めていません。強みに数えた根拠が与件文のどこにあるかを確かめてください。
- AI(C)の答案だけ、なぜ頼み直したのですか?
- 第1問・第2問・第5問で、最初の版が字数の上限を超えていたからです。上限を超えた答案は解答欄に収まらないので、同じAIに要素は変えずに削るよう頼み、その版を載せています。記録に手を入れたことになるので、本文にも書いています。
- 3つのAIは、どこの会社のものですか?
- 別々の会社が作ったAIですが、製品名は出していません。答案の読み方はどの製品だったかで変わらず、製品名を書くと記事の寿命が製品の版に縛られるためです。

