中小企業診断士2次|AI4者が一致する設問、しない設問
この記事の結論
- 4つのAIに6事例を解かせ、再現答案1,387セットの開示得点と突き合わせました。
- 今回の6事例では、打ち手が一意に決まる設問で4者一致の要素が点に写りました。
- 狙いを読み替える設問では写らず、逆を向いた要素もありました。
- 設問の型で信じるか疑うかを分ける、というのが当サイトの見立てです。
2次試験をAIに解かせて、自分の答案の答え合わせに使う人がいます。ただ、その答えをどこまで信じてよいかは、これまで確かめられていませんでした。この記事を読むと、AIの解答をどこまで信じてよいかの基準が分かります。4つのAIに令和6年度と令和7年度の事例Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ、あわせて6事例を解かせ、4者が挙げた要素を再現答案1,387セットの開示得点と突き合わせました。分かったのは、AI4者の一致が点に写る設問と、写らない設問があることです。
2次試験6事例のAI解答を、開示得点と突き合わせた
4者に同じ材料で解かせ、要素ごとに開示得点の上位25%と下位25%で「書いた人の割合」を比べました。答案の本文はAIに見せていません。
渡したのは与件文と設問文だけです。4者は互いの答案を知らないまま解いています。予備校の答案例も、当サイトの解説も渡していません。そのうえで、答案の要素ごとに、根拠となる与件文の一節を添えるよう指示しました。4者が添えた根拠は、いずれも与件文にある内容でした。
4者が出した要素は言い回しが違うので、同じものを人の手でまとめました。次に再現答案を開示得点の順に並べ、上位四分位と下位四分位(上位25%と下位25%)で「その要素を書いた人の割合」を比べます。この差が、記事で「上位−下位」と呼ぶ数字です。
書いたかどうかの判定は、要素ごとに用意した同義語の部分一致です。以下の表に出す割合は、すべてこの判定によるものです。
答案の本文はAIに見せていません。突き合わせは集計スクリプトだけが行いました。またここで出す数字は相関であって因果ではなく、その要素を書けば点が上がることの証明にはなりません。
4者は同じ条件で解いていますが、80分の時間制限は課していません。本番の時間圧の下でも同じ結果になるかは、この実験では分かりません。
6事例で、AI解答の一致が点に写ったのはどこか
事例Ⅲは2年度とも点に写り、事例Ⅰは2年度とも写りませんでした。事例Ⅱは年度で分かれています。
| 年度 | 事例 | 答案セット | 4者一致要素の上位−下位(平均) | 一致が点に写った設問 |
|---|---|---|---|---|
| 令和6年度 | 事例Ⅰ | 260 | +2.1pt | なし |
| 令和7年度 | 事例Ⅰ | 200 | +3.5pt | なし |
| 令和7年度 | 事例Ⅱ | 202 | +1.9pt | 第4問は逆向き(−0.21) |
| 令和7年度 | 事例Ⅲ | 202 | +8.9pt | 第4問(+0.35) |
| 令和6年度 | 事例Ⅱ | 256 | +8.6pt | 第3問(+0.40) |
| 令和6年度 | 事例Ⅲ | 267 | +13.3pt | 第2問・第3問・第5問 |
事例Ⅲは2年度とも差が大きく、事例Ⅰは2年度とも小さいままでした。事例Ⅱは令和6年度で点に写り、令和7年度は第4問が逆を向いています。事例の種類で決まるのではありません。
当サイトの見立てでは、分かれ目は設問の型です。与件文の課題に対する打ち手が一つに定まる設問では、AIも上位者も同じところに着きます。狙いを読み替える必要がある設問では、AIは与件文の字面に近いほうを選びます。
今回の6事例では、打ち手が一意な設問でAIと上位者が重なった
設問文の制約に対する打ち手が与件文から一意に決まる設問では、その要素を書いた上位者が8〜9割に達しました。
| 設問 | 4者が一致した要素 | 上位四分位 | 下位四分位 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 令和6年度 事例Ⅱ 第3問 | 複数の窯元の器を定額で貸し出して交換する | 90.0% | 32.3% | +57.7pt |
| 令和7年度 事例Ⅲ 第4問 | 検査・不適合の記録・原因追及・再発防止の品質管理体制 | 83.3% | 32.1% | +51.2pt |
| 令和6年度 事例Ⅲ 第2問 | 他工程からの応援と多能工化 | 83.1% | 45.6% | +37.5pt |
| 令和6年度 事例Ⅲ 第3問 | ITで一元管理して共有する | 93.0% | 66.2% | +26.8pt |
| 令和7年度 事例Ⅰ 第3問 | 次世代リーダーの育成 | 80.4% | 66.1% | +14.3pt |
上の4行に共通するのは、設問文が制約を書いていることです。収納する場所がない、厳密な品質基準がある、受注増に対応する、納期を短くする。この制約に対して、与件文が示す打ち手は一つに定まると見立てました。
そのためAIは4者ともそこへ着いたと考えられます。上位者も実際にそこを書いていました。令和6年度 事例Ⅱ第3問の定額レンタルは、6事例24設問のなかで最も差が大きく、上位者の9割が書いています。
当サイトの見立てでは、この型の設問でAIに解かせる価値は高いと考えます。今回の6事例では、自分が思いつかなかったような打ち手を、上位者も書いていました。
同じ6事例で、狙いを読み替える設問ではAIと上位者がずれた
4者がそろって挙げた要素ほど点が低く、1者しか挙げなかった要素のほうが点に写った設問があります。
| 設問 | 要素 | 挙げたAI | 上位四分位 | 下位四分位 | 差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 令和7年度 事例Ⅱ 第4問 | セルフケア・ストレッチの実演 | 4者 | 12.7% | 38.9% | −26.2pt |
| 令和7年度 事例Ⅱ 第4問 | 専属トレーナーの実績・評価を示す | 3者 | 96.4% | 59.3% | +37.1pt |
| 令和6年度 事例Ⅰ 第2問 | 後継者として経験を積ませる | 3者 | 81.8% | 51.5% | +30.3pt |
| 令和6年度 事例Ⅰ 第1問 | 協力会・地域物流のとりまとめ役 | 1者 | 40.3% | 14.7% | +25.6pt |
| 令和7年度 事例Ⅰ 第4問 | 理念に木育・子どもの育ちを加える | 4者 | 39.2% | 53.2% | −14.0pt |
令和7年度 事例Ⅱ第4問は、動画に何を載せるかを問う設問でした。4者は「役に立つ動画」を選び、セルフケアの実演を核にしています。上位者が書いていたのは「信頼させる動画」で、専属トレーナーの実績や評価を示すほうでした。
令和6年度 事例Ⅰ第1問は30字の設問です。4者のうち3者は協力会を「字数に入らない」として落としました。上位者はその協力会を書いています。字数の取捨選択で、AIと人間が逆を向いた例です。
令和6年度 事例Ⅰ第2問の「後継者として経験を積ませる」は、与件文に明示がありません。3者が入れ、うち1者は推測と注記しました。1者は入れていません。与件文に明示のない要素のほうが点に写った設問です。
当サイトの見立てでは、これらに共通するのは設問の狙いを読み替える手順です。呼び込む、なぜその配置なのか、理念をどう広げるか。答えるには、与件文の事実を一段まとめた語が要ります。AIは字面に近い要素を選びがちです。
設問を先に読むか、与件文を先に読むか
読む順を変えると拾う要素は3分の1ほど入れ替わりますが、どちらが良いかは決まりませんでした。
令和6年度 事例Ⅰで、同じAIに2通りの順で解かせました。設問を全部読んでから与件文へ進む条件と、与件文から読む条件です。3者で試しています。
拾った要素の重なりを0から1の値で測りました。1なら両方の条件で同じ要素、0なら重なりなしです。中央値は0.67で、同じAIでも3分の1ほどが入れ替わる計算です。ただし入れ替わりの向きは一定ではありません。ある者は設問先読みで協力会を拾い、別の者は同じ条件で落としました。
点につながった5つの要素は、どちらの条件でも誰かが拾っていました。読む順を変えたせいで取りこぼす要素は、今回は見つかりませんでした。
共通して変わったのは手順の言葉です。3者とも、設問ごとに探す語と時点を先に決めてから与件文へ入る、と書くようになりました。当サイトの見立てでは、勧められるのは順番そのものではなくこの決め方です。設問ごとに探す語と時点を紙に書き出してから、与件文を読み始めてください。
AIに解かせた答案を、どこまで信じるか
根拠が与件文にある要素だけを残し、設問の型で信じるか疑うかを分けてください。
- 1与件文と設問文だけを渡して解かせる。答案例や解説を一緒に渡すと、AIはそれをなぞるだけになります。
- 2要素ごとに、根拠となる与件文の一節をそのまま引かせる。中略や言い換えを許すと、検査の役に立ちません。
- 3引いた根拠が与件文に見当たらない要素は捨てる。逐語の規律を守らない引用が混じることがあります。
- 4自分の答案と、残った要素を突き合わせる。足りない要素を足すより先に、設問の要求から外れた要素を削ります。
- 5打ち手が一つに定まる設問では、4者が一致した要素を有力な候補として扱う。自分の答案と設問の要求に照らして、採るかどうかを決めてください。事例Ⅲの施策や、制約がはっきりした助言の設問がこれにあたります。
- 6狙いを読み替える設問では、AIの一致を疑う。事例Ⅰの組織・人事や、呼び込むと問う助言の設問です。設問文の制約から考え直してください。
この順で使うと、AIは答えを出す道具ではなく、候補を並べる道具になります。どれを残すかは、まず設問文の制約に照らして選びます。そのうえで字数に収まらない分は、制約から遠い要素から削ってください。
この記事で言えないこと
- AIの答案は正解ではありません。2次試験に公式の解答は公表されず、この6事例の答案も採点されていません。
- ここで出したのは割合の差と関係の強さです。その要素を書けば点が上がることの証明ではありません。
- ここで出した差は、その要素を書いた人と書かなかった人の割合の差です。要素に何点入るかは分かりません。開示得点は事例の合計点だけです。
- 要素を書いたかどうかは同義語の部分一致で判定しています。辞書から漏れた言い換えは「書いていない」と数えるので、割合は下限です。実際にはこれより多くの人が書いています。
- 4者が添えた根拠のうち、1者には中略した引用がありました。逐語では与件文と一致しません。引用を逐語で検査する仕組みは、そのまま残しています。
- 4者に80分の時間制限は課していません。本番の時間圧の下でも同じ結果になるかは、この実験では分かりません。
- 対象は令和6年度と令和7年度の事例Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの6事例です。他の年度は再現答案が30〜93セットで、同じ精度では測れません。
- 再現答案は本人の書き起こしで、開示得点も本人の申告です。標本は答案を公開した人に偏っています。
- 読む順の実験は3者・1事例で、各条件1回ずつです。同じ条件で解き直したときの揺れは測っていません。
要素の定義・同義語・集計はすべて当サイトの独自のものです。当サイトは解答速報ではありません。問題(与件文・設問文)の著作権は一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会に帰属します。
この記事のまとめ
- 4つのAIに6事例を解かせ、再現答案1,387セットの開示得点と突き合わせました。
- 今回の6事例では、打ち手が一意に決まる設問で4者一致の要素が点に写りました。
- 狙いを読み替える設問では写らず、逆を向いた要素もありました。
- 設問の型で信じるか疑うかを分ける、というのが当サイトの見立てです。
よくある質問
- AIが出した答案は模範解答ですか。
- いいえ。2次試験に公式の解答は公表されないので、どの答案が何点かは誰にも分かりません。この記事が示すのは、AI4者が挙げた要素について、それを書いた人の割合が開示得点の上位と下位でどれだけ違ったか、それだけです。
- どのAIがいちばん良かったのですか。
- 測っていません。見たのは4者の一致度であって、者ごとの優劣ではありません。製品名も出していません。4者のうち1者しか挙げなかった要素が点に写った設問もあり、少数意見の要素のほうが上位者に多い設問もあります。
- 再現答案は本番で書いた答案そのものですか。
- 本人が試験のあとに書き起こしたものです。答案用紙そのものではありません。開示得点も本人の申告で、標本は再現答案を公開した人に偏っています。数字はその前提で読んでください。
- 自分が受ける年度でも同じ傾向になりますか。
- 確かめられたのは令和6年度と令和7年度の事例Ⅰ・Ⅱ・Ⅲだけです。他の年度は再現答案が30〜93セットしかなく、同じ精度では測れません。打ち手が一意な設問か、狙いを読み替える設問かという分け方は、本番で判断するための仮説としては使えます。ただし他年度での有効性は未検証です。

