令和7年度 事例Ⅱの解説|与件文のどこを使い、答案に何を書くか
この記事の結論
- 2次試験に正解は公表されません。公表されるのは設問ごとの出題の趣旨です。
- 令和7年度 事例Ⅱは4問中3問が助言です。分析だけの準備では足りません。
- 第1問は3C分析です。顧客と競合は会社の外側なので、①の要約から取ります。
- 答案に入れる要素は与件文に紐づけます。この記事は段落番号まで示します。
2次試験は正解が公表されないので、答案が当たっていたかを誰も確かめられません。ただし試験実施機関は毎年「出題の趣旨」を公表しており、何を問うたのかを出題側が語っている文はここにしかありません。この記事では令和7年度 事例Ⅱの4設問について、趣旨を引用し、そこから答案に入れる要素と字数の配り方を導きます。事例Ⅰと違い、この年の事例Ⅱは4問のうち3問が助言でした。要素は一般論ではなく、すべて与件文の記述に紐づけ、どの段落から来ているかを添えています。
この年の事例Ⅱは、どんな回か
与件文2,023字・解答字数の合計500字。80分の内訳は読む10分/考える50分/書く20分です。
| 設問 | 要求語 | 配点 | 解答字数 | この位置で多い論点 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 述べる | 15点 | 150字 | ◎ 現状分析(SWOT・3C) 68%(46〜85%) |
| 第2問 | 助言 | 25点 | 100字 | プロモーション 32%(15〜54%) |
| 第3問 | 助言 | 30点 | 150字 | 関係性強化・愛顧 26%(12〜49%) |
| 第4問 | 助言 | 30点 | 100字 | プロモーション 24%(10〜47%) |
| 設問 | 書く時間の目安 | 考える時間の目安 |
|---|---|---|
| 第1問 | 6分 | 8分 |
| 第2問 | 4分 | 13分 |
| 第3問 | 6分 | 15分 |
| 第4問 | 4分 | 15分 |
読む時間は与件文の分量から、書く時間は解答字数から決まります。動かせるのは真ん中の考える50分だけなので、これをどの設問に配るかが、この年の80分の設計になります。上の数字は前提を置いた試算なので、自分の読む速さ・書く速さを一度計って置き換えてください。
与件文の形(段落ごとの字数と語の数)
逆接と否定・課題を表す語がいちばん多いのは第6段落で、合わせて4語です。
本文は載せていません。段落ごとに何字あり、逆接・否定・年代の語が何回出てくるかだけを数えたものです。これらの語が集まる段落は課題を問う設問の根拠になっていることが多いので、どこを速く読み、どこで手を止めるかの当たりをつける用途に使ってください。
① この会社に何が起きたか
アスリート向けのスポーツマッサージ店が、口コミで客層を広げた先で、再来店と予約の偏りに突き当たった話です。
まだ解いていない年度は、先に解いてから読むことをすすめます。この記事は与件文の中身に触れます。
B社はスポーツマッサージ店で、店舗は1つ、施術ベッドは5床。働くのは6名で、社長以外の5名は契約社員です。うち4名が競技経験者(野球・バレーボール・バスケットボール・サッカー)で、それぞれ専門性とトレーナーの経験を持ちます。社長が頻繁に指導を入れて技術水準を保っています。基本のコースは30分4,000円、60分8,000円です。
「競技ごとに専門の違う4人。社長から頻繁に手ほどきを受けている。」
社長は陸上短距離の選手でしたが、大学2年のけがで競技を続けられなくなりました。そのとき親身に話を聞いてくれた部活のトレーナーに影響を受け、卒業後は有名スポーツマッサージ店のZ社へ。手技に加えてテーピングやストレッチを身につけ、トップアスリートから技術と心のケアの両面で評価を得ます。
「けがで競技を諦めた私を支えてくれたのがトレーナーだった。今度は私が支える側にいる。」
2022年に独立。トップアスリートに限らず、部活の中高生や大学生、一般の顧客にも届けたいというのが動機でした。しかしチラシやWebでは伸びず、初回限定15分1,000円のお試しコースも設けています。流れを変えたのは口コミでした。通うようになった著名な選手の話がメディアで取り上げられ、そこから客層が広がります。
近郊の大学運動部からは専属トレーナー契約の打診があり、週3日1名を出す形で結びました。一方で困りごとが4つ残ります。お試しコースが再来店につながらないこと。初回に登録してもらっても顧客情報が貯まらないこと。予約が特定の時間に重なること。そして近隣との競争が価格でもサービスでも激しいことです。
ここからは、この年の読みどころです。与件文を正しく読めても、設問との噛み合わせを外すと点になりません。
- **第1問は150字の3Cです。** 競合が4種類(保険が使える接骨院、大規模で回転の速い接骨院、格安チェーン、整体院)並んでいます。全部書くと顧客と自社が消えるので、どう束ねるかが答案の差になります。
- **第2問は「価格で」混雑を分散する設問です。** 予約の取り方や人員の増減を書くと、条件から外れます。基本のコースが30分と60分で分かれていること、お試しコースがあることが手がかりです。
- **第3問は蓄積と活用の両方を150字で書きます。** 初回に登録してもらっているのに貯まらない、という状態が起点。貯める仕組みだけ書くと、活用の側が空きます。
- **第4問は動画の「内容」です。** 発信の手段や頻度を書くと要求とずれます。社長の来歴(けがで競技を諦めた経験)と、心のケアまで含めて評価されてきたことが、内容の核になります。
読みどころは当サイトの見立てで、公表された正解ではありません。2次試験に公式解答はないので、ここは「どこで噛み合わなくなりやすいか」の整理として読んでください。
② 使ってほしい資産|与件文のどの言葉を答案に持ち込むか
答案の材料は与件文の言葉から取ります。この事例の資産は、施術者の腕・傾聴・立地・評判の4つに固まっています。
以下の段落番号は、与件文の先頭から数えた順番です。問題PDFの印刷どおりに数えています。
左の列は与件文をそのまま引いたものです。右の列は、それを答案の語に置き換えたもの。置き換えれば加点されるという意味ではありません(加点の基準は公表されていません)。答案の字数が短いので、同じ内容を短い語で持ち込む必要がある、という事情によるものです。
| 与件文の言葉 | 答案での言い方 | 段落 | 効く設問 |
|---|---|---|---|
| 「スポーツ競技別に専門性を有していて、各競技でのトレーナー経験を持っている」 | 競技別の専門性とトレーナー経験 | 第1段落 | 第1問(自社)・第3問・第4問 |
| 「社長が求める高い技術水準を維持している」 | 社長の指導で保つ高い技術水準 | 第1段落 | 第1問(自社)・第3問 |
| 「駅前通りに面したビルの1階に入居している」 | 駅前で通いやすい立地 | 第3段落 | 第1問(自社)・第2問 |
| 「けがで競技を続けることが難しくなった」 | 社長自身のけがによる挫折経験 | 第4段落 | 第4問 |
| 「テーピングやストレッチなどのトレーナーとして必要な技術や知識」 | テーピング・ストレッチの技術 | 第4段落 | 第4問 |
| 「顧客の声に耳を傾け、顧客の不安や心の痛みの解消も目指した」 | 不安や心の痛みまで扱う対応 | 第4段落 | 第1問(自社)・第3問 |
| 「心のしこりも揉みほぐす」 | 心のケアまで含む施術への評価 | 第4段落 | 第1問(自社)・第4問 |
| 「初回限定の15分1,000円のお試しコース」 | 初回のお試しコース | 第6段落 | 第2問 |
| 「顧客の声に耳を傾けるコミュニケーション力」 | 顧客の声を聴く力 | 第7段落 | 第1問(自社)・第3問 |
| 「有名トップアスリートがB社について語ったことがメディアで紹介されて一時期評判となった」 | 有名アスリート経由の評判 | 第8段落 | 第1問(自社)・第4問 |
| 「B社社長がZ社出身という経歴は強く」 | 有名店Z社出身という経歴 | 第8段落 | 第1問(自社)・第4問 |
| 「専属トレーナー契約による安定収入」 | 専属契約による安定収入 | 第9段落 | 第1問(自社) |
| 「強豪運動部を要する大学のトレーナーに選ばれているという知名度」 | 強豪大学に選ばれた知名度 | 第9段落 | 第1問(自社)・第4問 |
13のうち施術の腕に関わる4つは、第1問の自社にそのまま入ります。「競技別の専門性とトレーナー経験」「社長の指導で保つ高い技術水準」「テーピング・ストレッチの技術」「心のケアまで含む施術への評価」の4つです。第4問の動画で見せる中身にもなります。
傾聴に関わる2つ、「不安や心の痛みまで扱う対応」と「顧客の声を聴く力」は、第3問の顧客情報の話に直結します。何を聞き取れる店なのかが決まれば、蓄積する情報の中身も決まるからです。
評判に関わる3つ、「有名アスリート経由の評判」「有名店Z社出身という経歴」「強豪大学に選ばれた知名度」は、社外から見たB社の信用です。第4問で動画に何を映すかを考えるときの材料になります。
③ 改善してほしいこと|与件文が課題として書いている言葉
課題は与件文の第10段落に固まっています。ここに並ぶ困りごとが、そのまま第2問と第3問の設問文になっています。
表の形は②と同じです。左が与件文の言葉、右が答案での言い方。9つのうち5つが第10段落、つまり社長が診断士に相談する直前に並べた困りごとです。
| 与件文の言葉 | 答案での言い方 | 段落 | 効く設問 |
|---|---|---|---|
| 「Webサイトによって認知度を高めようとしたが、あまり成果は見られなかった」 | 認知度向上の取り組みの不発 | 第6段落 | 第1問(自社)・第4問 |
| 「施術者紹介、施術内容、料金体系、店舗アクセスなどの一般的な情報」 | 一般的な情報だけのWebサイト | 第6段落 | 第4問 |
| 「一般的にはアスリート向けと思われている施術」 | アスリート向けという思い込み | 第6段落 | 第2問・第4問 |
| 「店舗で施術できる顧客数が減少してしまう」 | 派遣による店舗施術数の減少 | 第9段落 | 第2問 |
| 「リピーターにならず、来店頻度が低いという課題」 | 再来店の少なさ | 第10段落 | 第1問(自社)・第3問 |
| 「必要な顧客情報がうまく蓄積できず」 | 顧客情報の蓄積不足 | 第10段落 | 第1問(自社)・第3問 |
| 「顧客に寄り添った対応がまだ不十分である」 | 寄り添った対応の不足 | 第10段落 | 第3問 |
| 「予約が取りづらい時間と空きが出る時間が出てしまっている」 | 予約時間帯の偏り | 第10段落 | 第2問 |
| 「価格面や提供サービス面で近隣との競争が激しくなり、顧客が流出する」 | 競争激化による顧客流出 | 第10段落 | 第1問(自社)・第2問 |
②③はどちらもB社の内側を並べた表です。3C分析の顧客と競合は会社の外側にあるので、この2つの表には載っていません。顧客と競合の材料は①に書きました。
第6段落の3つは、開業してから評判が立つまでの助走期間の課題です。第9段落と第10段落の6つは、客層が広がったあとに出てきた課題です。前者は第4問、後者は第2問と第3問に効く、という分かれ方をしています。
「派遣による店舗施術数の減少」の置き場は判断が割れます。与件文は専属トレーナー契約の代償として書いており、契約自体は社長が納得して結んだものだからです。この記事では、店舗の供給が減る話として第2問側に置きました。
手がかりは、公表された出題の趣旨にある
趣旨は設問ごとに「何を問うたか」を書いた文です。この年の事例Ⅱは、4問のうち3問が助言でした。
出題の趣旨は「〜する能力を問う問題である」という定型文で書かれます。この「〜する能力」の部分が、答案の文末の向きを決めます。分析と書かれていれば起きている事実を切り分け、助言と書かれていれば打ち手を示します。
令和7年度 事例Ⅱは、アスリート向けのスポーツマッサージ店の事例です。4設問の配点・字数と、趣旨が名指ししている能力を並べると次のようになります。
| 設問 | 配点 | 解答字数 | 趣旨が名指しする能力 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 15点 | 150字以内 | 分析(顧客・競合・自社) |
| 第2問 | 25点 | 100字以内 | 助言(価格設定と顧客の分散化) |
| 第3問 | 30点 | 150字以内 | 助言(顧客情報データベース) |
| 第4問 | 30点 | 100字以内 | 助言(動画の内容) |
同じ令和7年度でも、事例Ⅰは4問中2問が助言でした。事例Ⅱは3問です。分析は第1問の15点だけで、残る85点はすべて打ち手を書かせる設問だったことになります。
時間の配り方も変わります。第3問と第4問で60点、全体の6割です。第1問は150字と長いのに15点しかないので、ここに時間を使いすぎると配点の大きい後半が薄くなります。
第1問 3C分析|150字
趣旨は「分析する能力」と書いています。顧客・競合・自社の3つがそろわないと、3Cを問われた答案になりません。
出題の趣旨(引用)。「現在のB社内外の経営環境を、顧客・競合・自社の3つの視点から分析する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
名指しされている能力は分析です。しかも「内外の経営環境」と書かれているので、内と外の両方に触れないと趣旨の要求を満たしません。3つのうち顧客と競合はB社の外側なので、②③の表ではなく①の要約から材料を取ります。
| 3Cの観点 | 使う材料 | どこに書いてあるか |
|---|---|---|
| 顧客(外) | トップアスリート/保険が効かず高くても本格的な施術を受けたい肩こり・腰痛・けがの層/中高の部活生と大学運動部の学生 | ①(第1・第7〜第9段落) |
| 競合(外) | 保険診療が使える地域密着の接骨院/回転の速い大規模接骨院/格安チェーンのマッサージ店/カイロプラクティック・整体院 | ①(第2段落) |
| 自社の強み(内) | 競技別の専門性とトレーナー経験/社長の指導で保つ高い技術水準/不安や心の痛みまで扱う対応/有名アスリート経由の評判 | ②の表 |
| 自社の弱み(内) | 顧客情報の蓄積不足/再来店の少なさ/認知度向上の取り組みの不発/競争激化による顧客流出 | ③の表 |
150字を3つに割ると1観点あたり50字前後です。顧客は誰かを3つ並べ、競合は業態と競争の激しさに触れ、自社は強みと弱みを両方入れる。この配分だと、どれかを厚く書いた時点で別のどれかが消えます。
自社の弱みを落とす答案が出やすいところです。趣旨は「内外の経営環境」としか書いていませんが、設問文は「B社の現状」を求めており、第2問以降で解く課題は与件文が現状として書いています。弱みを外すと後半の設問と話がつながりません。
次は正解ではありません。趣旨が求めた3つの視点を150字に収めるとこうなる、という例です。
顧客は①トップアスリート、②保険適用外でも本格施術を求める肩こり・腰痛層、③中高の部活生と大学運動部。競合は保険診療の接骨院や大規模接骨院、格安チェーン店、整体院で、価格とサービス面の競争が激しい。自社は競技別の専門性と高い技術水準、傾聴による心のケアが強みだが、顧客情報の蓄積と再来店に課題がある。
150マス / 150マス
第2問 価格で混雑を分散する|100字
趣旨は「価格設定およびダイナミックプライシングによる顧客の分散化」。値引きだけを書くと、分散の話が抜けます。
出題の趣旨(引用)。「B社におけるターゲット層を意識した価格設定およびダイナミックプライシングによる顧客の分散化について、助言する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
ここから能力が助言に変わります。設問文は営業時間が平日9時から21時までで、施術が18時から21時に集中していると書いています。混雑時間と空き時間があり、それを価格戦略で解決したい、という条件つきの設問です。
趣旨は3つの語を並べています。ターゲット層、価格設定、分散化です。値段を下げる話だけを書くと分散化が抜け、時間帯を分ける話だけを書くと価格設定が抜けます。3つが1文の中でつながる形にします。
- 空き時間は平日の日中。周辺に住宅街があり、駅から歩ける距離に大学のキャンパスがある(第3段落)。
- 日中に動ける層。学生や、時間に融通の利く近隣の住民が想定できる(第3段落からの当サイトの見立て)。
- 混雑時間は18時から21時。営業は平日9時から21時までなので、空くのは9時から18時(設問文)。
- 混雑の中身。仕事や部活を終えた社会人と学生が重なると読める(設問文からの当サイトの見立て)。
- 既存の価格。基本コースは30分4,000円、60分8,000円(第1段落)。
- 既存の入口。初回のお試しコースは15分1,000円で設定済み(第6段落)。
- 供給の制約。ベッドは5床で、週3日は専属トレーナーとして1名を大学へ出している(第1・第9段落)。
「派遣による店舗施術数の減少」がここに効きます。週3日は店に立てる施術者が1名減るので、その曜日の夜に予約を集めると受けきれません。価格で日中へ動かす理由は、値引きの原資ではなく供給の側にあります。
「アスリート向けという思い込み」も日中の層に関わります。日中に来られる近隣の住民は、そもそもこの店を自分向けだと思っていない可能性があります。価格を動かす相手として名指しする意味があります。
100字は短いので、ターゲット層と時間帯と価格の対応を2つ書いたら、効果を1文添えて終わりです。曜日別や季節別まで広げると、対応が書ききれません。
次は正解ではありません。趣旨が挙げた3つの語を100字に収めるとこうなる、という例です。
①空き時間の平日9〜18時は、時間に融通の利く学生や住宅街の主婦層向けに割引価格を設定し、②混雑する18〜21時は社会人向けに通常価格を維持する。時間帯別の変動価格で需要を平準化し、稼働率を高める。
96マス / 100マス
第3問 顧客情報の蓄積と活用|150字
設問は、何を新たに蓄積するかと、それをどう活用するかの2つを求めています。片方だけでは要求の半分しか埋まりません。
出題の趣旨(引用)。「B社が顧客との長期的な関係性を高めるための顧客情報データベース構築について、助言する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
設問文は、いま登録しているのが氏名・年齢・連絡先・受けた施術コースだけだと明かしたうえで、B社の強みを活かして何を新たに蓄積し、どう活用するかを聞いています。強みを活かせ、という条件が付いている点が要です。
活かす強みは②の3つ、「競技別の専門性とトレーナー経験」「不安や心の痛みまで扱う対応」「顧客の声を聴く力」です。この3つが取れる情報だから、他店には貯まらない情報になります。埋める穴は③の「顧客情報の蓄積不足」と「寄り添った対応の不足」、そして「再来店の少なさ」です。
- 競技の情報。競技種目や練習量は、競技別の専門性を持つ施術者がいるから意味を読み取れる(第1段落)。
- 日程の情報。大会や試合の予定は与件文に無いが、部活生と運動部の学生が顧客なので意味を持つ(第8・第9段落)。
- 体の情報。けがの履歴、痛みの部位、施術内容とその後の経過(第8・第10段落)。
- 心の情報。不安や悩みは、傾聴を強みとするB社だから聞き取れる(第4・第7段落)。
- 活用①。競技別に専門性を持つ施術者を担当として固定し、指名で来てもらう(第1段落)。
- 活用②。有名アスリートと同じコンディショニング目的の来店を、日程に合わせて提案する(第7段落)。
- 活用③。前回の記録を踏まえた対話で、寄り添った対応の不足を埋める(第10段落)。
趣旨は「長期的な関係性」と書いています。1回きりの満足ではなく、次にいつ来るかまで設計する話です。第2問が時間帯の分散なら、第3問は来店周期の設計だと考えると、2つの助言が重なりません。
150字に7つは入りません。蓄積の項目を並べるだけで字数が尽きるので、活用を必ず残します。趣旨が「顧客情報データベース構築について」と書いている以上、貯めた情報が何に使われるかが消えると、要求の後半が空になります。
次は正解ではありません。趣旨が挙げた2つの要求を150字に収めるとこうなる、という例です。
蓄積は①競技種目と練習量、②大会日程、③けがの履歴と体の状態、④悩みや不安、⑤施術内容と経過。活用は①競技別に専門性を持つ施術者を担当に付け、②大会日程に合わせた来店とコンディショニングを提案し、③蓄積した記録を基に心のケアを含む対話を行う。以て顧客に寄り添い、長期的な関係性と再来店を高める。
146マス / 150マス
第4問 動画の内容を助言する|100字
趣旨は「オンラインで掲載する効果的な動画内容」。手段(撮る・載せる)ではなく、何を映すかを書く設問です。
出題の趣旨(引用)。「新規顧客獲得のためにB社がオンラインで掲載する効果的な動画内容について、助言する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
設問文は相手を絞っています。コンディショニング不良に悩み、未来のアスリートを目指す中高や大学の部活生です。この層に何を見せれば来店につながるかを、動画の中身として書きます。
いまのWebサイトが③の「一般的な情報だけのWebサイト」であることが出発点です。施術者紹介・施術内容・料金・アクセスは、周辺の接骨院や整体院にも同じように載っています。差がつかないから「認知度向上の取り組みの不発」につながりました。
- 映せる技術。テーピングやストレッチは、動画にすると部活生が自分でも試せる形になる(第4段落)。
- 映せる人。4名の施術者はサッカー・バスケ・バレー・野球の競技経験者で、部活生と競技が重なる(第1段落)。
- 映せる物語。社長自身が大学2年のけがで競技を断念しており、悩む部活生と重なる(第4段落)。
- 映せる姿勢。技術だけでなく不安や心の痛みまで扱う点が、他店との違いになる(第4段落)。
- 映せる信用。有名アスリート経由の評判、Z社出身の経歴、強豪大学に選ばれた実績(第8・第9段落)。
- 解ける誤解。アスリート向けという思い込みを、部活生向けの内容だと示して外す(第6段落)。
「社長自身のけがによる挫折経験」は、この設問でだけ効く材料です。部活生は競技を続けたいから悩んでいるので、同じ場所で立ち止まった人が語る、という一点が他店には作れません。
100字なので、映す中身を3つ並べて狙いを1文で締めるのが限界です。撮影方法や配信先を書くと中身が入りません。趣旨が聞いているのは内容であって、運用ではありません。
次は正解ではありません。趣旨が求めた動画の中身を100字に収めるとこうなる、という例です。
①競技別の施術者によるテーピングやストレッチの実演、②けがで挫折した社長が心のケアまで行う姿と部活生の体験談、③強豪大学運動部の専属トレーナーの実績を示す動画とする。以て不安を解消し来店を促す。
97マス / 100マス
書いた答案を数える
答案を書き終えたら、上の②③の表から作ったこの一覧で、自分が何を入れられたかを数えてください。
| 設問 | 与件文から持ち込める材料 |
|---|---|
| 第1問 | 競技別の専門性とトレーナー経験/社長の指導で保つ高い技術水準/駅前で通いやすい立地/不安や心の痛みまで扱う対応/心のケアまで含む施術への評価/顧客の声を聴く力/有名アスリート経由の評判/有名店Z社出身という経歴/専属契約による安定収入/強豪大学に選ばれた知名度/認知度向上の取り組みの不発/再来店の少なさ/顧客情報の蓄積不足/競争激化による顧客流出 |
| 第2問 | 駅前で通いやすい立地/初回のお試しコース/アスリート向けという思い込み/派遣による店舗施術数の減少/予約時間帯の偏り/競争激化による顧客流出 |
| 第3問 | 競技別の専門性とトレーナー経験/社長の指導で保つ高い技術水準/不安や心の痛みまで扱う対応/顧客の声を聴く力/再来店の少なさ/顧客情報の蓄積不足/寄り添った対応の不足 |
| 第4問 | 競技別の専門性とトレーナー経験/社長自身のけがによる挫折経験/テーピング・ストレッチの技術/心のケアまで含む施術への評価/有名アスリート経由の評判/有名店Z社出身という経歴/強豪大学に選ばれた知名度/認知度向上の取り組みの不発/一般的な情報だけのWebサイト/アスリート向けという思い込み |
- 材料の数ではなく、選んだ理由を言えるかを見る。同じ材料でも、設問の要求語に合っていなければ答案は噛み合いません。
- その材料が与件文の第何段落から来たかを、答案を見ながら言えるか。言えないものは、与件文ではなく自分の一般論から来ています。
- 文末の向きが要求語と合っているか。助言なら施策の提案で、説明なら理由の記述で終わっているか。
書けなかった材料が多い設問は、与件文の読み落としではなく、時間が足りなかっただけのことがあります。どちらだったかは、答案を書いた直後にしか思い出せません。数え終えたら、その場でひとこと書き残しておくと次に効きます。
答案の書き方の型
100字前後のマスに要素を詰めるには、書き方の型が要ります。この型は年度と事例を問いません。
- 因果を明示する。「◯◯により△△」の形にすると、材料と結論のつながりが読み手に伝わります。
- 番号で並べる。「①…②…」は、要素をいくつ入れたかが自分にも採点する側にも見える形です。
- 名詞で締める。「〜を強化」「〜の向上」と体言で終えると、同じ内容が短いマス数に収まります。
この型は、用語そのものに点が入るという意味ではありません。字数の上限が決まっている以上、同じ内容をより短い形で持ち込めるほうが要素を多く入れられる、という事情によるものです。与件文にない事実をそれらしい言葉で埋めても、加点の根拠にはなりません。
この記事で言えないこと
- 2次試験は正解が公表されません。ここで示したのは要素の選び方と字数の収め方で、正解ではありません。
- 趣旨は「何を問うたか」であって「どう書けば加点されるか」ではありません。加点の検証は別の作業です。
- 設問ごとの配点は公表されていますが、要素ごとの内訳は公表されていません。第1問の15点を3つの視点でどう配るかは分かりません。
- 第1問の顧客と競合は、②③の表のような逐語引用と答案語の対応表を持ちません。①の要約と段落番号までが渡せる範囲です。
- 第2問で示した時間帯の区切りと対象層は、与件文と設問文から当サイトが立てた見立てです。与件文に日中の来店者の記述はありません。
- 要素の拾い方は当サイトの判断です。「派遣による店舗施術数の減少」のように、どの設問に置くかで分かれる記述があります。
- 字数は句読点も1字として数えています。実際の解答用紙のマスの数え方は、受験案内と解答用紙でご確認ください。
本記事の要素の整理と解答例は当サイトの独自のものです。出題の趣旨と問題(与件文・設問文)の著作権は一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会に帰属します。全文は試験実施機関の公表資料でご確認ください。
この記事のまとめ
- 2次試験に正解は公表されません。公表されるのは設問ごとの出題の趣旨です。
- 令和7年度 事例Ⅱは4問中3問が助言です。分析だけの準備では足りません。
- 第1問は3C分析です。顧客と競合は会社の外側なので、①の要約から取ります。
- 答案に入れる要素は与件文に紐づけます。この記事は段落番号まで示します。
よくある質問
- この記事の解答例をそのまま覚えればよいですか?
- いいえ。2次試験は正解が公表されないため、この例が当たっているかは誰にも確かめられません。使い道は、趣旨が挙げた要素が字数にどう収まるかを見ることです。要素の選び方と削り方を自分の答案に移してください。
- 第1問の顧客と競合は、与件文のどこから取りますか?
- 顧客は第1段落と第7段落から第9段落、競合は第2段落に固まっています。この記事の②③の表はB社の内側を並べたものなので、顧客と競合は載っていません。①のストーリー要約と、第1問の節の表に段落番号を添えました。
- 事例Ⅱは助言ばかりだと聞きますが、本当ですか?
- 平成24年度から令和7年度の趣旨を数えると、事例Ⅱの53設問のうち助言・提案が62%、分析が45%でした(1設問が両方を名指しする年があるため合計は100%を超えます)。令和7年度も4問中3問が助言でした。
- ダイナミックプライシングという言葉を答案に書く必要がありますか?
- 趣旨に出てくる語ですが、答案に書けば加点されるという根拠はありません。趣旨が伝えているのは、時間帯によって価格を変えて顧客を分散させる、という打ち手の中身です。語より、対象層と時間帯と価格の対応が書けているかが要です。
- 第4問で撮影方法や配信先を書いてはいけませんか?
- 趣旨は「効果的な動画内容について」と書いており、聞かれているのは中身です。100字しかないので、運用の話を入れると映す中身が入りません。誰に何を見せるかを先に固めてください。



