令和4年度 事例Ⅰの解説|与件文のどこを使い、答案に何を書くか
この記事の結論
- 2次試験に正解は公表されません。公表されるのは設問ごとの出題の趣旨です。
- 令和4年度 事例Ⅰは設問4問に対し、趣旨は5行あります。第4問が2つに分かれるためです。
- 趣旨で分析と書かれたのは第1問だけ。残る4行はすべて助言です。
- 答案に入れる要素は与件文に紐づけます。この記事は段落番号まで示します。
2次試験は正解が公表されないので、答案が当たっていたかを誰も確かめられません。ただし試験実施機関は毎年「出題の趣旨」を公表しており、何を問うたのかを出題側が語っている文はここにしかありません。この記事では令和4年度 事例Ⅰの4設問について、趣旨を引用し、そこから答案に入れる要素と字数の配り方を導きます。この年は第4問が2つの設問に分かれており、趣旨も5行あります。要素は一般論ではなく、すべて与件文の記述に紐づけ、どの段落から来ているかを添えました。
この年の事例Ⅰは、どんな回か
与件文3,024字・解答字数の合計450字。80分の内訳は読む15分/考える47分/書く18分です。
| 設問 | 要求語 | 配点 | 解答字数 | この位置で多い論点 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 分析・指摘 | 20点 | 100字 | 強み・経営資源 37%(19〜59%) |
| 第2問 | 助言 | 20点 | 100字 | 事業戦略・ドメイン 42%(23〜64%) |
| 第3問 | 助言 | 20点 | 100字 | 事業戦略・ドメイン 37%(19〜59%) |
| 第4問(小問2) | 助言 | 40点 | 50字 / 100字 | 人事・人材 39%(20〜61%) |
| 設問 | 書く時間の目安 | 考える時間の目安 |
|---|---|---|
| 第1問 | 4分 | 9分 |
| 第2問 | 4分 | 9分 |
| 第3問 | 4分 | 9分 |
| 第4問 | 6分 | 19分 |
読む時間は与件文の分量から、書く時間は解答字数から決まります。動かせるのは真ん中の考える47分だけなので、これをどの設問に配るかが、この年の80分の設計になります。上の数字は前提を置いた試算なので、自分の読む速さ・書く速さを一度計って置き換えてください。
与件文の形(段落ごとの字数と語の数)
逆接と否定・課題を表す語がいちばん多いのは第6段落で、合わせて5語です。
本文は載せていません。段落ごとに何字あり、逆接・否定・年代の語が何回出てくるかだけを数えたものです。これらの語が集まる段落は課題を問う設問の根拠になっていることが多いので、どこを速く読み、どこで手を止めるかの当たりをつける用途に使ってください。
① この会社に何が起きたか
米作りから始まった農業法人が、苺と野菜で伸び、加工と直営店まで広げた末に、人の確保と世代交代に向き合う話です。
まだ解いていない年度は、先に解いてから読むことをすすめます。この記事は与件文の中身に触れます。
A社は農業を営む株式会社で、働くのは40名(うちパート10名)。代々の米作りから始まり、1970年代に苺、1990年代の後半からは作り方を工夫した野菜へと軸を移してきました。バブル崩壊で贈答用の苺が鈍り、値下げ競争に巻き込まれた、という順番です。
(水稲を継いだが、人と違うことがしたくて苺を始めた。仕事は見て盗むものだと思ってきた。)
流れを変えたのは、首都圏の大手流通業から戻った弟(常務)との二人体制でした。掲げたのは「人にやさしく、環境にやさしい農業」。有機野菜の販売業者と組み、有機JASとJGAPの認証を取り、地元の菓子メーカーとサツマイモの洋菓子を共同開発します。2000年代の半ばに株式会社となり、大手の中食業者と直に取引する機会も得ました。
「販売と経営管理は私が受け持つ。有機の売り先を開き、直営店と加工にも手を広げた。」
近年は直営店と食品加工まで広げています。自社工場でサンドイッチや総菜を作り、誰がどう作ったかが見える商品として卸しています。直営店を任されているのは、昨年入った常務の娘です。
「飲食の世界で店をつくってきた。農業は門外漢だが、若手の案を形にしている。」
一方で詰まっているところがあります。技術は見て覚えるものという気質のまま人数が増え、誰が何を受け持つかがはっきりしません。天候と収穫期に振られて忙しさに山と谷があり、人が居着かない。大手中食業者の要求に応えるうちに、新しい品種へ手が回らなくなってもいます。
ここからは、この年の読みどころです。与件文を正しく読めても、設問との噛み合わせを外すと点になりません。
- **第1問は「法人化前」で時点が切られています。** 株式会社になったのは2000年代の半ばで、大手中食業者との取引も直営店も、そのあとの話です。強みとして書きたくなる材料ほど、時点の外にあります。
- **第2問は「採る」と「残す」の両方が問われています。** 募集や採用の工夫だけで100字を使うと、定着の側が空きます。与件文には、休日の突発的な対応や地域の輪に入りにくさなど、辞める理由のほうが多く書かれています。
- **第3問の大手中食業者は、強みとしても弱みとしても書かれています。** 対応してきた力と信頼は資産、売上に占める割合の高さと新品種の停滞は課題。どちらか一方だけを見ると、設問の要求とずれます。
- **第4問は設問1が50字**と短く、組織の形を答えるだけで埋まります。理由や効果まで詰め込もうとすると、設問2(権限委譲と人員配置・100字)で書くことが無くなります。
読みどころは当サイトの見立てで、公表された正解ではありません。2次試験に公式解答はないので、ここは「どこで噛み合わなくなりやすいか」の整理として読んでください。
② 使ってほしい資産|与件文のどの言葉を答案に持ち込むか
この事例の資産は、商品と技術に関わるものと、後継者と直営店に関わるものに割れます。第1問に使えるのは前者だけです。
以下の段落番号は、与件文の先頭から数えた順番です。問題PDFの印刷どおりに数えています。
左の列は与件文をそのまま引いたものです。右の列は、それを答案の語に置き換えたもの。置き換えれば加点されるという意味ではありません(加点の基準は公表されていません)。答案の字数が短いので、同じ内容を短い語で持ち込む必要がある、という事情によるものです。
| 与件文の言葉 | 答案での言い方 | 段落 | 効く設問 |
|---|---|---|---|
| 「糖度が高いことに加え、大粒で形状や色合いが良く人気を博した」 | 高糖度で大粒の苺 | 第2段落 | 第1問(強み) |
| 「贈答用果物として地元の百貨店を中心に販売され始めた」 | 百貨店の贈答用の販路 | 第2段落 | 第1問(強み) |
| 「作り方にこだわった野菜の栽培」 | こだわりの野菜づくり | 第3段落 | 第1問(強み)・第3問 |
| 「農業経験が豊富な従業員が互いにうまく連携し」 | 経験豊富な従業員の連携 | 第3段落 | 第1問(強み) |
| 「人にやさしく、環境にやさしい農業」 | 人と環境にやさしい農業の考え方 | 第4段落 | 第1問(強み)・第3問 |
| 「有機JAS とJGAP(農業生産工程管理)の認証を受けた」 | 有機JASとJGAPの認証 | 第4段落 | 第1問(強み)・第3問 |
| 「地元の菓子メーカーと連携し、同社の栽培するサツマイモを使った洋菓子を共同開発した」 | 菓子メーカーとの洋菓子の共同開発 | 第5段落 | 第1問(強み)・第3問 |
| 「上品な甘さとホクホクとした食感があり人気商品であった」 | 上品な甘さのサツマイモ | 第5段落 | 第1問(強み) |
| 「地域の新たな特産品としての認知度を高めた」 | 地域の特産品としての認知度 | 第5段落 | 第3問 |
| 「同社との取引を通じて対応能力を蓄積することができた」 | 大手中食業者への対応能力 | 第8段落 | 第3問 |
| 「作り手や栽培方法が見える化された商品」 | 作り手と栽培方法が見える商品 | 第9段落 | 第3問 |
| 「一貫して飲食サービス業で店舗マネジメントや商品開発の業務に従事してきた」 | 後継者の店舗運営と商品開発の経験 | 第10段落 | 第4問(設問2) |
| 「後継者が若手従業員からの提案を上手に取り入れ」 | 若手の提案を活かす後継者 | 第10段落 | 第4問(設問1)・第4問(設問2) |
| 「A 社は自社商品に関する消費者の声を取得できるようになった」 | 直営店で得る消費者の声 | 第10段落 | 第3問 |
| 「噂を聞きつけて買い付けにくる都市部の顧客も取り込んでいる」 | 都市部からの顧客 | 第10段落 | 第3問 |
上の9行が第5段落までの材料です。第1問は法人化する前を問うており、法人化は第8段落に出てくる2000年代半ばの出来事なので、第1問に使えるのはここまでになります。
9行の中身は2つに割れます。苺とサツマイモという商品そのものと、それを支える作り方や認証、そして従業員の連携です。強みを2つ挙げるなら、商品から1つ、作り方や体制から1つ取ると幅が出ます。
下の6行は法人化したあとの材料です。大手中食業者への対応能力は第3問で、後継者の店舗運営と商品開発の経験は第4問(設問2)で使います。第1問に持ち込むと時点を外します。
③ 改善してほしいこと|与件文が課題として書いている言葉
課題は人に関わるものに集中しています。第2問と第4問は、下の表の人まわりの行からほぼ作れます。
表の形は②と同じです。左が与件文の言葉、右が答案での言い方。上の7行が法人化する前から続く社内の状態で、下の5行は法人化したあとに出てきた課題です。
| 与件文の言葉 | 答案での言い方 | 段落 | 効く設問 |
|---|---|---|---|
| 「現経営者は職人気質で、仕事は見て盗めというタイプであった」 | 見て盗めに任せた技術の伝承 | 第6段落 | 第1問(弱み)・第2問 |
| 「従業員間で明確な役割分担がなされていなかった」 | 役割分担の不明確さ | 第6段落 | 第1問(弱み)・第2問・第4問(設問1) |
| 「繁忙期は従業員総出でも人手が足りず、パート従業員をスポットで雇用して対応する一方、閑散期は逆に人手が余るような状況であった」 | 季節による人手の過不足 | 第6段落 | 第1問(弱み)・第2問 |
| 「従業員の定着が悪く、新規就農者を確保することが難しかった」 | 定着の悪さと新規就農者の確保難 | 第7段落 | 第1問(弱み)・第2問 |
| 「台風などの際には、休日であっても突発的な対応が求められる」 | 休日の突発的な対応 | 第7段落 | 第2問 |
| 「新参者が地域の農業関係者の中に溶け込み関係をつくることも難しかった」 | 地域に溶け込む難しさ | 第7段落 | 第2問 |
| 「帰属意識の高い従業員を確保することが難しかった」 | 帰属意識の低さ | 第7段落 | 第1問(弱み)・第2問 |
| 「売上高の依存割合が年々増加していった」 | 大手中食業者への依存 | 第8段落 | 第3問 |
| 「新たな品種の生産が思うようにできていない状況であった」 | 新品種の生産の停滞 | 第8段落 | 第3問 |
| 「5 名の生産に従事する若手従業員と5 名のパート従業員が兼任の形で従事している」 | 新分野を兼任で回す体制 | 第9段落 | 第4問(設問1) |
| 「人手不足が顕著になってきており、生産を兼務する従業員だけでは対応できなくなりつつあった」 | 直営店の人手不足 | 第10段落 | 第4問(設問1)・第4問(設問2) |
| 「本格的に後継者への世代交代を検討し始める時期に差し掛かっている」 | 世代交代の時期 | 第11段落 | 第4問(設問2) |
②③はA社の内側を並べた表です。取引先が求める安定した品質と出荷のような、会社の外から来る事情はこの2つの表には載っていません。材料は①に書きました。
上から7行目までが人の話です。育て方、役割、繁閑、定着、休日、地域、帰属意識。第2問はこの範囲から材料を取り、第1問の弱みも同じ範囲から2つ選ぶことになります。
第7段落の4行は、採用そのものの難しさと、入ったあとに続かない難しさの両方を書いています。第2問が獲得と定着を並べて問うているのは、与件文がこの2つを分けて書いているからです。
残る5行は法人化したあとの課題です。大手中食業者への依存と新品種の生産の停滞は第3問、新分野を兼任で回す体制と直営店の人手不足は第4問(設問1)に対応します。
手がかりは、公表された出題の趣旨にある
趣旨は設問ごとに「何を問うたか」を書いた文です。この年は5行のうち4行が助言で、分析は第1問だけでした。
出題の趣旨は「〜する能力を問う問題である」という定型文で書かれます。この「〜する能力」の部分が、答案の文末の向きを決めます。分析と書かれていれば起きている事実を切り分け、助言と書かれていれば打ち手を示します。
令和4年度 事例Ⅰは、水稲農家から始まった農業法人A社の事例です。設問は4問ですが、第4問が2つに分かれているため、趣旨は5行あります。配点・字数と、趣旨が名指ししている能力を並べると次のようになります。
| 設問 | 配点 | 解答字数 | 趣旨が名指しする能力 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 20点 | 100字以内 | 分析(内部環境分析) |
| 第2問 | 20点 | 100字以内 | 助言 |
| 第3問 | 20点 | 100字以内 | 助言 |
| 第4問(設問1) | 40点(設問1・2で) | 50字以内 | 助言 |
| 第4問(設問2) | 40点(設問1・2で) | 100字以内 | 助言 |
第1問だけ書き方が違います。他の4行が「助言する能力を問う問題である」と定型で終わるのに対し、第1問は「内部環境分析に関わる問題である」と書かれています。能力の語としては分析ですが、定型文には乗っていません。
残る4行がすべて助言だという事実は、時間配分に直結します。分析で使う頭と助言で使う頭は違うので、この年は打ち手を作る作業に80分のほとんどを充てることになります。
第4問だけ配点が40点で、全体の4割です。しかも50字と100字を別々に書きます。50字は要素が2つしか入らないので、迷いを断って言い切る練習をしておくと効きます。
第1問 法人化前の強みと弱み|100字
趣旨は「法人化前における内部環境分析」。時点を切る設問なので、第8段落から後ろの材料は入りません。
出題の趣旨(引用)。「法人化前における内部環境分析に関わる問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
趣旨は1文だけで、しかも短い。読み取れるのは2つです。内部環境に限ること、そして法人化する前に限ること。市場の追い風や向かい風は入らず、株式会社になったあとの話も外れます。
法人化がいつかは与件文に書かれています。有機野菜の販売業者から事業を引き継いだ2000年代の半ばです。第8段落より後ろは、この設問では使えません。
| 観点 | ②③のどの材料を使うか |
|---|---|
| 強み(内部) | 高糖度で大粒の苺/百貨店の贈答用の販路/こだわりの野菜づくり/経験豊富な従業員の連携/人と環境にやさしい農業の考え方/有機JASとJGAPの認証/菓子メーカーとの洋菓子の共同開発/上品な甘さのサツマイモ |
| 弱み(内部) | 見て盗めに任せた技術の伝承/役割分担の不明確さ/季節による人手の過不足/定着の悪さと新規就農者の確保難/帰属意識の低さ |
強みの候補は8つ、弱みは5つ。100字で両方を書くので、それぞれ50字前後です。1つの観点に入るのは2つか3つでしょう。
強みは商品と作り方から選ぶと、A社が何で稼いできたのかが1文で示せます。苺とサツマイモを並べるより、苺と、認証まで取ったこだわりの野菜づくりを並べたほうが、時間の流れも見えます。
弱みは人の話に集まります。誰が何をするか決まっていないこと、技術が個人任せであること、季節で人手が合わないこと、そして人が続かないこと。並べると原因と結果の関係にも見えますが、与件文はそこまで書いていません。
書き出しは「強みは」「弱みは」と置くと、採点する側が探す手間を減らせます。100字で2つの観点を書くので、文をつなげずに前半と後半で切るほうが安全です。
次は正解ではありません。趣旨が求めた内部環境の分析を、100字に収めるとこうなる、という例です。
強みは①糖度が高く大粒の苺と、有機JASとJGAPの認証を得たこだわりの野菜、②菓子メーカーと共同開発した洋菓子。弱みは①役割分担が不明確で技術の伝承が個人任せ、②季節の繁閑による人手の過不足と定着の悪さ。
99マス / 100マス
第2問 新規就農者をどう採り、どう残すか|100字
趣旨は「基盤事業における」と場所を限っています。直営店や食品加工の人手不足の話ではなく、農業の人の話です。
出題の趣旨(引用)。「基盤事業における人材の採用と定着の方法について、助言する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
趣旨が求めているのは2つです。採用と定着。設問文も獲得と定着を並べています。片方だけを厚く書くと、もう片方が空になります。
見落としやすいのが「基盤事業における」という限定です。A社の基盤事業は農業で、直営店や食品加工は後から広げた分野です。第4問で扱う人手不足とは別の話になります。
- 採用の入口。未経験者にも中途の門戸を開き、県の農業大学校の卒業生も採り始めている(第7段落)。
- 続かない理由その1。定着の悪さと新規就農者の確保難が並んで書かれている(第7段落)。
- 続かない理由その2。休日の突発的な対応があり、時刻を決めて働きにくい(第7段落)。
- 続かない理由その3。地域に溶け込む難しさがあり、よそから来た人が関係を作りにくい(第7段落)。
- 続かない理由その4。帰属意識の低さが、長く働く人が出ない状態につながっている(第7段落)。
- 社内の状態その1。役割分担の不明確さがあり、誰が何を受け持つかが決まっていない(第6段落)。
- 社内の状態その2。見て盗めに任せた技術の伝承で、育成の仕組みが無い(第6段落)。
- 社内の状態その3。季節による人手の過不足があり、忙しさが年間で偏る(第6段落)。
並べると、採用より定着に材料が多いことが分かります。与件文が採用について書いているのは門戸と新卒の2行だけで、残りはすべて入ったあとの話です。答案も定着に重心を置くのが自然でしょう。
定着の打ち手は、社内の状態の3つと結び付きます。役割を決めれば何をすればよいかが分かり、育成の仕組みを作れば技術が身に付き、繁閑をならせば休みが取れます。いずれも与件文に穴として書かれているものです。
地域に溶け込む難しさへの手当ては、与件文に打ち手が書かれていません。この記事は地域との関係づくりを会社が支える形を挙げましたが、これは当サイトの見立てです。
100字なので、採用に1つ、定着に3つ、最後に狙いを1文。狙いは趣旨の語である定着に戻すと、要求と対応が取れます。
次は正解ではありません。趣旨が挙げた2つの要求を100字に収めるとこうなる、という例です。
施策は①農業大学校など地域の教育機関と組み未経験者にも門戸を広げる、②役割分担と作業手順を明確にし技術を計画的に教える、③繁閑に応じた要員配置で休日を確保する。以て帰属意識を高め、定着を図る。
96マス / 100マス
第3問 大手中食業者とどう付き合うか|100字
趣旨は取引関係の強化に加えて「新しい分野の探索」も挙げています。設問文だけを読むと、後半が丸ごと落ちます。
出題の趣旨(引用)。「主要取引先との関係の強化と新しい分野の探索について、助言する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
設問文は「どのような取引関係を築いていくべきか」としか書いていません。ところが趣旨は、関係の強化と新しい分野の探索という2つを挙げています。この年でいちばん差が出るのはここでしょう。
なぜ探索まで求められるのかは、与件文を読むと分かります。大手中食業者との取引は安定した稼ぎになった一方で、依存が進み、新しい品種に手が回らなくなっていました。強化だけを書くと、その状態を追認することになります。
- 強化の土台。大手中食業者への対応能力を、厳しい要求に応える中で身に付けてきた(第8段落)。
- 強化の材料その1。こだわりの野菜づくりと、有機JASとJGAPの認証がある(第3・第4段落)。
- 強化の材料その2。作り手と栽培方法が見える商品が、食の安全を気にする流れに合っている(第9段落)。
- 強化の材料その3。人と環境にやさしい農業の考え方が、商品の性格を一言で示している(第4段落)。
- 探索の理由。大手中食業者への依存が年々進み、新品種の生産の停滞も起きている(第8段落)。
- 探索の材料その1。直営店で得る消費者の声が、作るものを決める手がかりになる(第10段落)。
- 探索の材料その2。菓子メーカーとの洋菓子の共同開発と、地域の特産品としての認知度がある(第5段落)。
- 探索の材料その3。都市部からの顧客が直営店に来ており、地元の外にも需要がある(第10段落)。
強化の中身は、単に量を増やすことではありません。要求に応え続けて身に付けた力があるので、言われたものを作る関係から、一緒に商品を考える関係へ動かす余地があります。
探索の中身は、直営店と加工に軸があります。消費者の声が直接入るようになったので、その声を新しい品種や加工品につなげる形が、与件文の材料だけで書けます。
依存を下げるという書き方には注意が要ります。趣旨は関係の強化と言っており、取引を減らせとは書いていません。強化と探索を両立させる形にしないと、趣旨の前半と食い違います。
100字なので、前半で強化、後半で探索。半分ずつ配ると、趣旨の2つの要求がどちらも見える答案になります。
次は正解ではありません。趣旨が挙げた2つの要求を100字に収めるとこうなる、という例です。
大手中食業者とは、要求に応えて蓄積した対応能力を活かし共同で商品を企画する関係へ高め、安定取引を続ける。同時に依存を下げるため、直営店で得た消費者の声を活かした新品種と加工品を開発し販路を広げる。
98マス / 100マス
第4問(設問1) どんな組織構造にするか|50字
趣旨は「経営戦略の展開にあたっての」と条件を付けています。いまの不便を直す話ではなく、これから広げる形の話です。
出題の趣旨(引用)。「経営戦略の展開にあたっての経営組織の構造について、助言する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
50字しか書けません。要素は2つか3つが限界です。組織構造の型を1つ示し、それを選ぶ理由を短く添える形になります。
与件文が書いている不便は3つです。新分野を兼任で回す体制、直営店の人手不足、そして役割分担の不明確さ。いずれも、誰がどの事業に責任を持つのかが決まっていないことから来ています。
- いまの姿。常務が中心となり、新分野を兼任で回す体制で直営店と食品加工を動かしている(第9段落)。
- 限界。直営店の人手不足が顕著で、畑と掛け持ちの従業員だけでは回らなくなってきた(第10段落)。
- 土台。役割分担の不明確さが、法人化する前から続いている(第6段落)。
- 広げる先。農業を基盤に置きつつ新しい分野にも挑みたい、と経営者が考えている(第10段落)。
- 担い手。若手の提案を活かす後継者がおり、直営店の商品はそこから生まれている(第10段落)。
選び方は分かれます。事業ごとに責任を持たせる形と、仕事の種類で分ける形。どちらを取るにしても、兼任をやめて専任を置くことが答案の芯になります。
この記事は仕事の種類で分ける形を取りました。従業員は40名で、事業ごとに人を丸ごと分けるには小さいからです。ここは当サイトの見立てで、趣旨は型まで指定していません。
50字は、名詞で締めて修飾を削ると入ります。理由を書く余裕はほとんど無いので、構造の名前と、そこに専任を置くという一点に絞ります。
次は正解ではありません。趣旨が求めた組織構造を50字に収めるとこうなる、という例です。
生産・食品加工・直営店の三つの部門に分け、兼任をやめてそれぞれに専任の責任者を置く機能別組織とする。
49マス / 50マス
第4問(設問2) 権限委譲と人員配置|100字
趣旨は「移行プロセス」と書いています。到達した姿ではなく、5年かけてどう移すかの順番が問われています。
出題の趣旨(引用)。「円滑な次世代経営体制への移行プロセスについて、助言する能力を問う問題である。」(出典=一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「出題の趣旨」)
趣旨の言葉で目を引くのはプロセスです。設問文も「今後5年程度の期間で」と時間を切っています。完成形だけを書くと、期間を切った意味が消えます。
設問文が挙げている要求は2つ、権限委譲と人員配置です。趣旨の円滑にという語も落とせません。急に全部を渡すと現場が止まる、という前提が置かれています。
- 渡す相手。後継者の店舗運営と商品開発の経験があり、直営店をいま任されている(第10段落)。
- 相手の性格。若手の提案を活かす後継者で、周りから引き出す動き方をしている(第10段落)。
- 渡す側。世代交代の時期に差し掛かり、経営者と常務がともに60歳代後半になった(第11段落)。
- 足りない経験。後継者は農業が畑違いで、生産の現場を知らないまま入社している(第10段落)。
- 人の穴。直営店の人手不足があり、畑と掛け持ちでは回らなくなってきた(第10段落)。
- 配置の元手。畑の若手5名とパート5名が、新分野を兼任で回す体制で動いている(第9段落)。
順番の軸は、後継者がいま持っている経験です。直営店は任されているので、そこから食品加工へ、最後に全社へと広げる形なら、知っている範囲から順に渡せます。
人員配置は、設問1で作った部門と噛み合わせます。若手を各部門の責任者に据えて兼任を解けば、直営店の人手不足も同時に手当てできます。
現経営者と常務をどう扱うかは、与件文に書かれていません。この記事は生産と販売の助言役に回る形を置きましたが、これは当サイトの見立てです。
100字なので、段階を示す1文、配置の1文、退く側の1文、そして狙いの一言。番号を振ると、プロセスであることが形からも伝わります。
次は正解ではありません。趣旨が求めた移行プロセスを100字に収めるとこうなる、という例です。
①後継者に直営店から食品加工、全社へと段階的に権限を委譲する。②若手従業員を各部門の責任者に登用し、生産との兼任を解いて専任とする。③現経営者と常務は生産と販売の助言役に退く。以て円滑に移行する。
98マス / 100マス
書いた答案を数える
答案を書き終えたら、上の②③の表から作ったこの一覧で、自分が何を入れられたかを数えてください。
| 設問 | 与件文から持ち込める材料 |
|---|---|
| 第1問 | 高糖度で大粒の苺/百貨店の贈答用の販路/こだわりの野菜づくり/経験豊富な従業員の連携/人と環境にやさしい農業の考え方/有機JASとJGAPの認証/菓子メーカーとの洋菓子の共同開発/上品な甘さのサツマイモ/見て盗めに任せた技術の伝承/役割分担の不明確さ/季節による人手の過不足/定着の悪さと新規就農者の確保難/帰属意識の低さ |
| 第2問 | 見て盗めに任せた技術の伝承/役割分担の不明確さ/季節による人手の過不足/定着の悪さと新規就農者の確保難/休日の突発的な対応/地域に溶け込む難しさ/帰属意識の低さ |
| 第3問 | こだわりの野菜づくり/人と環境にやさしい農業の考え方/有機JASとJGAPの認証/菓子メーカーとの洋菓子の共同開発/地域の特産品としての認知度/大手中食業者への対応能力/作り手と栽培方法が見える商品/直営店で得る消費者の声/都市部からの顧客/大手中食業者への依存/新品種の生産の停滞 |
| 第4問 | 後継者の店舗運営と商品開発の経験/若手の提案を活かす後継者/役割分担の不明確さ/新分野を兼任で回す体制/直営店の人手不足/世代交代の時期 |
- 材料の数ではなく、選んだ理由を言えるかを見る。同じ材料でも、設問の要求語に合っていなければ答案は噛み合いません。
- その材料が与件文の第何段落から来たかを、答案を見ながら言えるか。言えないものは、与件文ではなく自分の一般論から来ています。
- 文末の向きが要求語と合っているか。助言なら施策の提案で、説明なら理由の記述で終わっているか。
書けなかった材料が多い設問は、与件文の読み落としではなく、時間が足りなかっただけのことがあります。どちらだったかは、答案を書いた直後にしか思い出せません。数え終えたら、その場でひとこと書き残しておくと次に効きます。
答案の書き方の型
100字前後のマスに要素を詰めるには、書き方の型が要ります。この型は年度と事例を問いません。
- 因果を明示する。「◯◯により△△」の形にすると、材料と結論のつながりが読み手に伝わります。
- 番号で並べる。「①…②…」は、要素をいくつ入れたかが自分にも採点する側にも見える形です。
- 名詞で締める。「〜を強化」「〜の向上」と体言で終えると、同じ内容が短いマス数に収まります。
この型は、用語そのものに点が入るという意味ではありません。字数の上限が決まっている以上、同じ内容をより短い形で持ち込めるほうが要素を多く入れられる、という事情によるものです。与件文にない事実をそれらしい言葉で埋めても、加点の根拠にはなりません。
この記事で言えないこと
- 2次試験は正解が公表されません。ここで示したのは要素の選び方と字数の収め方で、正解ではありません。
- 趣旨は「何を問うたか」であって「どう書けば加点されるか」ではありません。加点の検証は別の作業です。
- 設問ごとの配点は公表されていますが、要素ごとの内訳は公表されていません。第4問の40点を2つの設問でどう配るかは分かりません。
- 第1問に何を選ぶかは当サイトの判断です。強みの候補は8つあり、100字に入るのは2つか3つなので、選び方で答案は変わります。
- 第2問で地域との関係づくりに触れたのは当サイトの見立てです。与件文には溶け込みにくいとしか書かれていません。
- 第4問(設問1)で機能別の形を選んだのも当サイトの見立てです。趣旨は組織構造とだけ書いており、型は指定していません。
- 字数は句読点も1字として数えています。実際の解答用紙のマスの数え方は、受験案内と解答用紙でご確認ください。
本記事の要素の整理と解答例は当サイトの独自のものです。出題の趣旨と問題(与件文・設問文)の著作権は一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会に帰属します。全文は試験実施機関の公表資料でご確認ください。
この記事のまとめ
- 2次試験に正解は公表されません。公表されるのは設問ごとの出題の趣旨です。
- 令和4年度 事例Ⅰは設問4問に対し、趣旨は5行あります。第4問が2つに分かれるためです。
- 趣旨で分析と書かれたのは第1問だけ。残る4行はすべて助言です。
- 答案に入れる要素は与件文に紐づけます。この記事は段落番号まで示します。
よくある質問
- この記事の解答例をそのまま覚えればよいですか?
- いいえ。2次試験は正解が公表されないため、この例が当たっているかは誰にも確かめられません。使い道は、趣旨が挙げた要素が字数にどう収まるかを見ることです。要素の選び方と削り方を自分の答案に移してください。
- 第1問の「法人化前」は、与件文のどこまでを指しますか?
- 第8段落で有機野菜の販売業者から事業を引き継いだときに株式会社化しています。したがって第1問で使えるのは第1段落から第7段落までです。大手中食業者との取引も、直営店も、この設問には入りません。
- 第3問は取引関係だけを書けばよいのではありませんか?
- 設問文はそう読めますが、趣旨は関係の強化と新しい分野の探索の2つを挙げています。強化だけを書くと、趣旨の後半が空になります。設問文と趣旨で要求の数が違う年は、趣旨に合わせるほうが安全です。
- 第2問と第4問は、どちらも人の話に見えます。書き分けの軸は何ですか?
- 第2問の趣旨は「基盤事業における」と限っており、農業の現場で働く人の採用と定着の話です。第4問は組織の形と、経営を誰に渡すかの話になります。第2問で世代交代を書くと、問われていない範囲に字数を使うことになります。




