採用・増員の提案は答案に書かれているか|再現答案3,165人分で数えた事例Ⅰ〜Ⅳ
この記事の結論
- 提案を求める設問で採用・増員に触れた答案は、事例Ⅰで16.1%、事例Ⅲで13.4%でした。
- 事例Ⅱは0.0%、事例Ⅳは2.0%。事例によっては、ほぼ書かれていません。
- 令和5年度 事例Ⅲ 第2問は93人中2人。標準化とOJTが中心でした。
- 書いた人と書かなかった人で、全事例の得点差は見えませんでした。
Xで、ある受験生が令和5年度 事例Ⅲ 第2問について、高齢のパートが辞めて受注が増えたのだから人を増やす案を考えた、事例Ⅲだからという理由以外にその案を排除できる根拠はあるのか、と尋ねました。当サイトは「おぼろげですが人員増加提案は今までの事例の中で、一度もなかった気がします」と答えましたが、数えて答えたものではありませんでした。この記事は、その記憶を2018〜2025年度の再現答案3,165人分で確かめた結果です。結論は、「一度もない」ではありませんでした。
数えた結果:事例Ⅰと事例Ⅲでは1割以上の答案が書いていた
「一度もない」は事例Ⅰ・Ⅲには当てはまりません。事例Ⅱ・Ⅳがほぼ無いのは実測どおりです。
つまり「事例Ⅲでは人を増やす提案を書いてはいけない」という決まりは、数字には出ていません。一方で、書かれる設問は偏っています。次の節以降で、どの設問で書かれ、書いた人の点がどうだったかを見ます。
| 年度 | 事例Ⅰ | 事例Ⅱ | 事例Ⅲ | 事例Ⅳ |
|---|---|---|---|---|
| 2018年度 | 10/40 | 0/41 | 0/39 | 11/33 |
| 2019年度 | 0/30 | 0/30 | 3/29 | 0/28 |
| 2020年度 | 6/40 | 0/40 | 4/40 | 0/39 |
| 2021年度 | 11/30 | 0/30 | 3/30 | 0/30 |
| 2022年度 | 19/77 | 0/77 | 8/77 | 5/76 |
| 2023年度 | 4/93 | 0/93 | 12/93 | 0/93 |
| 2024年度 | 44/282 | 0/283 | 59/282 | 0/282 |
| 2025年度 | 34/202 | 0/202 | 17/202 | 0/202 |
事例Ⅲは2024年度が突出して多く、2018年度は0でした。事例Ⅰは年によって大きく振れます。年度で見ても「一度もない」とは言えず、「毎年は書かれない」が実測に近い言い方です。
令和5年度 事例Ⅲ 第2問:93人中2人しか書かなかった
高齢のパートが辞めて受注が増えたこの設問でも、答案の中心は「今いる人で回す」手段でした。
設問は、答える範囲を「生産面の対応策」に絞っています。当サイトの見立てでは、人を増やすのは採用・人事の領域で、設問が求めている標準化・多能工化・設備といった生産面の打ち手とは別の引き出しです。受験生が尋ねた「排除できる根拠」は、設問の範囲指定そのものだと読めます。
ただし、公式の解答は公表されていません。増員を書くと減点されるという意味ではなく、書いた人が少なかったという事実です。再現答案を見る限り、この設問は、人を足す前に、今いる人の作業をどう標準化し、どう多能化するかを答えるものとして読まれていました。
書かれやすいのは、体制づくりや新規事業を問う設問
採用・増員が出るのは、設問が組織・人事・新規事業を問うとき。生産面の設問では少なめです。
| 事例 | 設問の論点 | 書いた答案の割合 | 答案数 |
|---|---|---|---|
| 事例Ⅰ | 人事・人材 | 8.4% | 19/227通 |
| 事例Ⅳ | リスク管理 | 6.9% | 14/202通 |
| 事例Ⅰ | 組織構造・管理 | 6.4% | 58/903通 |
| 事例Ⅲ | 新事業・受注拡大 | 6.0% | 68/1133通 |
| 事例Ⅰ | 事業承継・M&A | 5.9% | 17/286通 |
| 事例Ⅰ | 事業戦略・ドメイン | 3.5% | 41/1166通 |
| 事例Ⅲ | 生産計画・工程管理 | 3.4% | 33/957通 |
| 事例Ⅲ | 納期・リードタイム | 1.9% | 6/319通 |
| 事例Ⅲ | 標準化・技能育成 | 1.5% | 2/132通 |
| 事例Ⅳ | CVP・損益分岐点 | 0.3% | 2/649通 |
事例Ⅲでは、新事業・受注拡大の設問(6.0%)が、生産計画・工程管理の設問(3.4%)より高く出ます。設問が新しい体制や人材を問うなら採用は書かれやすく、生産現場の対応を問うなら書かれにくい。答案に書くか迷ったら、設問が範囲をどこに置いているかを先に確かめてください。
事例Ⅳでは、リスク管理の設問が目立ちます。内訳は2018年度と2022年度の第4問で、人材不足や海外事業の経験者不足への対策として書かれていました。投資判断やCVPの設問では、ほぼ書かれていません。
採用・増員を書いた人は、点が高かったのか
全事例では差が見えません。書けば加点とも、書けば減点とも言えません。
全事例では差が約0点で、区間は0をまたぎます(p=0.74)。事例Ⅲだけは区間が0を外れましたが、4年分・96人の差で、3つの比較を並べた中の1つです。確かな差としては扱いません。
採用を書くかどうかを、点を上げる工夫として決めるのはやめたほうがよいと、当サイトは考えます。決める基準は、設問の範囲に合うか、与件文に根拠があるかです。
答案に採用・増員を書く前の3つの確認
書くかどうかは、設問の範囲・与件文の根拠・先に書く手段の3つで決めます。
- 設問が範囲を指定していないか。「生産面」などの指定があれば、まずその範囲の打ち手を出す。
- 与件文に、人手が足りない根拠(退職・欠員・採用活動など)があるか。根拠が無い増員は一般論になる。
- 標準化・多能工化・設備・外注など、人を増やさずに回す手段を先に書いたうえで、足りない分に採用を足しているか。
これは当サイトの見立てで、公式の採点基準ではありません。令和5年度 事例Ⅲ 第2問のような設問を解き直すときは、3つの確認を順に当てて、自分の答案がどこで人を増やす案に傾いたかを探してください。
この記事で言えないこと
数えたのは、答案に「増員」「人員を増やす」「新規採用」「中途採用」「再雇用」などが肯定的に書かれたものです。「採用を抑える」「人員増を招く」といった否定は除き、「方式を採用する」の採用も数えていません。
- 現状分析の設問(強み・弱みなど)は除きました。そこでの「人材確保」は課題の指摘で、提案ではないためです。
- 設問文そのものが採用・増員に触れる設問は除きました(令和5年度 事例Ⅱ 第3問、令和5年度 事例Ⅲ 第5問)。答案は設問の語を受けて評価しているだけだからです。
- 語の拾い方の精度は、事例Ⅲで30件中30件、事例Ⅰで30件中約25件が提案でした(残りは既存の新規採用者への言及や欠点の指摘)。言い換えの取りこぼしは測っていないので、割合は低めに出ている可能性があります。
再現答案は、受験者がブログなどで公開したもので、合格者に偏ります。公式の解答・採点基準は公表されていません。対象は2018〜2025年度の8年分で、それ以前の年度は含みません。本文は載せず、人数と割合だけを使っています。
この記事のまとめ
- 提案を求める設問で採用・増員に触れた答案は、事例Ⅰで16.1%、事例Ⅲで13.4%でした。
- 事例Ⅱは0.0%、事例Ⅳは2.0%。事例によっては、ほぼ書かれていません。
- 令和5年度 事例Ⅲ 第2問は93人中2人。標準化とOJTが中心でした。
- 書いた人と書かなかった人で、全事例の得点差は見えませんでした。
よくある質問
- 事例Ⅲで、人を増やす提案を書くと減点されますか。
- 公式の採点基準は公表されていないので、減点されるとは言えません。実測では、事例Ⅲの答案の13.4%が採用・増員に触れていて、書いた人と書かなかった人の得点差は全事例では見えませんでした。ただし令和5年度 第2問のように、設問が生産面の対応策に範囲を絞っているときは、先に生産面の打ち手を書くほうが設問の範囲に合います。
- 事例Ⅰでは採用を書くのが普通ですか。
- 事例Ⅰの答案の16.1%が採用・増員に触れていました。人事・人材や組織の設問、事業承継の設問で多く、年度によって0%から37%まで振れます。普通と言い切れる水準ではなく、設問と与件文の根拠で決めるものです。

