事例Ⅳの投資判断を、あと3年分通す|平成22年度・平成20年度・平成19年度
この記事の結論
- 平成22年度・平成20年度・平成19年度の投資判断を、条件表から答えまで通します。
- 平成22年度はNPV 16.9百万円で採用、第2年度以降の損益分岐点売上高は3,713百万円です。
- 平成20年度は現在価値△1,439万円、売却損1,825万円、税引前純利益△1,250万円。
- 割れたのは平成20年度の節税効果(922/685万円)と平成19年度の期待NPV(77/35百万円)です。
前の3本の記事に続いて、平成22年度・平成20年度・平成19年度の投資判断を、条件の表から答えまで通します。条件の数値は試験実施機関が公表している問題PDFを画像で目視して転記し、答えは同じ問題文だけを渡して独立に解かせた3つのAIと当サイトの計算を突き合わせました。割れた所は前提つきで両方を載せます。平成20年度の第3問は、与件の予想損益計算書の数字を使う問題です。2次試験に公式解答は無いので、答えは当サイトの解答例です。
4つの問題の骨格と、答えが割れた場所の一覧
割れたのは2か所です。平成20年度は赤字の年の節税効果を数えるか、平成19年度はYのとき設備投資を見送れるか。ほかは3者と当サイトが全員一致しました。
| 年度(配点) | 問われたこと | 割れた場所 | 答えの動き |
|---|---|---|---|
| 平成22年度 第3問(20点) | 設備投資のNPVと第2年度以降の損益分岐点売上高、採否(60字) | 割れなかった | NPV 16.9百万円・損益分岐点 3,713百万円(採用) |
| 平成20年度 第2問(25点) | 現主力設備を続けた場合の税引前営業CFの現在価値と対策(50字) | 割れなかった | 現在価値 △1,439万円 |
| 平成20年度 第3問(25点) | 設備更新の売却損・税引前純利益と、負債の節税効果の現在価値 | 設問1は割れず、設問2で赤字の年の節税効果を数えるか | 売却損 1,825・純利益 △1,250/節税効果 922か685万円 |
| 平成19年度 第3問(25点) | 研究開発から設備投資までの期待NPVと意思決定(50字) | Yのとき設備投資を見送れる前提か | 期待NPV 77か35百万円 |
手順は、令和6年度の記事(投資判断は差額を年ごとの表にする)と前の3本にあります。ここでは年度ごとの条件で表を作ります。平成20年度の第2問と第3問は同じ設備の続きの問題です。
平成22年度 第3問:値下げを受けた上での設備投資をNPVと損益分岐点で判断する
3者と当サイトが全員一致。NPVは16.9百万円で正、第2年度以降の損益分岐点売上高は3,826百万円から3,713百万円に下がるので、採用です。
| 条件 | 値 |
|---|---|
| 前提(第2問の資料) | 部品Qの現在の売上高2,823・変動費1,129・固定費1,640(百万円)。納入価格を30%引き下げ、発注量が2倍になる。原価構造は現状と変わらない |
| 設備投資 | 5億円(500百万円)。5年定額・残存ゼロ。不要になる設備はない |
| 変動費の削減 | 初年度は現状に比べ3%、第2年度〜第5年度は7% |
| 税率・資本コスト | 実効税率40%・資本コスト6%・運転資本の増減なし・CFは期末 |
| 係数 | 年金現価係数 Σ(t=1〜4) 1/(1+r)^t = 3.4651(r=0.06) |
| 設問 | 設問1 (a)NPV、(b)第2年度以降の損益分岐点売上高(百万円)/設問2 採否を理由とともに60字以内 |
設問1(a) NPV ──【確定】
比べるのは「投資しない場合(値下げ・受注量2倍は同じ)」との差額です。受注量2倍の変動費は1,129×2=2,258。減価償却費は500÷5=100で、節税効果は100×40%=40です。
| 年度 | 変動費の削減額 | 税引後(×0.6) | 償却の節税効果 | 増分CF |
|---|---|---|---|---|
| 初年度 | 67.74 | 40.644 | 40 | 80.644 |
| 第2〜5年度(毎年) | 158.06 | 94.836 | 40 | 134.836 |
与えられた係数3.4651は4年分(t=1〜4)なので、第2〜5年度の4年分の価値は134.836×3.4651=467.22で、これは第1年度末の時点の値です。初年度のCF 80.644と足して、1年分の1.06で割り引き、投資500を引きます。NPV=(80.644+467.22)÷1.06−500=16.85百万円です。
設問1(b) 第2年度以降の損益分岐点売上高 ──【確定】
第2年度以降の売上高は2,823×0.7×2=3,952.2、変動費は2,258×0.93=2,099.94で、限界利益率は46.87%。固定費は既存の1,640に新設備の減価償却費100を加えて1,740です。損益分岐点売上高=1,740÷0.4687=3,712.67、つまり約3,713百万円です。
設問2 採否(60字以内)──【解答例】
解答例:「設備投資を行うべき。NPVが約17百万円で正であり、損益分岐点売上高も3,826から3,713百万円に下がるため。」(57字)。結論(投資する)と、NPVが正であること、損益分岐点が下がることの2つの根拠を入れる形です。投資しない場合の損益分岐点は1,640÷(1−2,258÷3,952.2)=3,825.76百万円です。
この問題で落としやすい点
- 4年分の係数3.4651を、第1〜4年度に当ててしまう。第2〜5年度の4年分なので、1年分(1.06)で割り引く必要があります。
- 損益分岐点売上高で、新設備の減価償却費100を固定費に入れ忘れる。固定費1,640のままだと3,499.30百万円になります。
- 変動費の削減率を、現在の変動費1,129に掛けてしまう。受注量2倍後の変動費2,258が基準です。
平成20年度 第2問・第3問:現設備を続ける場合と、設備更新後の損益・節税効果
第2問の現在価値と第3問の設問1は全員一致。第3問の設問2だけ、平成20年度が赤字の年の節税効果を数えるかで922万円と685万円に割れました。
| 条件 | 値 |
|---|---|
| 現主力設備 | 5年前(平成15年度期首)に3,500万円。耐用年数10年・残存価額は取得原価の10%・定額法。あと5年(平成24年度期末まで)使える |
| 現設備を続けた場合(第2問) | 売上高収入は毎期26,000万円。平成20年度の操業費22,000万円は毎年10%ずつ増える。5年後の処分価額0。年金現価係数(n=5・r=0.1)3.7908 |
| 新主力設備(第3問) | 8,000万円を平成20年度期首に全額借入(年8%・利息は年度末払い)。耐用年数10年・残存ゼロ・定額法。操業費は平成20年度20,000万円。現設備は100万円で売却 |
| 返済 | 半額を平成22年度期末、残りを平成25年度期末。税率40%・税の繰越控除は考えない |
| 与件の予想損益計算書 | 第1問が「平成20年度の予想財務諸表」と指定した表。税引前当期純利益は△3百万円(=△300万円) |
| 係数(第3問 設問2) | 年金現価係数 2.5771(n=3・r=0.08)、現価係数 0.7938(n=3・r=0.08) |
第2問 設問1 税引前営業CFの現在価値 ──【確定】
各年のCFは26,000−操業費で、4,000/1,800/△620/△3,282/△6,210.2万円。操業費の伸び率と割引率がどちらも10%なので、操業費の現在価値は毎年22,000÷1.1=20,000で一定です。現在価値=26,000×3.7908−20,000×5=△1,439.2万円、つまり△1,439万円です。
係数を使わず1年ずつ割り引くと△1,439.54万円で、四捨五入すると△1,440万円とずれます。問題が係数を与えているので、与えられた係数で出した△1,439万円を答えにします。
第2問 設問2 経営状況の予想と対策(50字以内)──【解答例】
解答例:「操業費の増加で平成22年度から営業CFが赤字になる。設備を更新して操業費を削減すべきである。」(46字)。平成22年度から営業CFがマイナスに転じる(△620万円)ことを根拠に、第3問の設備更新につなげます。現在価値が負になることも、書ければ根拠が増えます。
第3問 設問1 売却損と平成20年度の予想税引前純利益 ──【確定寄りの解答例】
現設備の年間償却費は(3,500−350)÷10=315、5年で1,575、期首の簿価は1,925です。売却価額100を引いて、売却損は(a)=1,825万円。
(b)は、与件の予想損益計算書の税引前純利益△300を起点に、設備更新による増減を足します。操業費の減少+2,000、旧設備の償却の消滅+315、新設備の償却−800、支払利息−640(8,000×8%)、売却損−1,825で、増減は△950。税引前純利益は△300+(△950)=△1,250万円です。
設備1つだけの損益(26,000−20,000−800−640−1,825)で見ると2,735万円の黒字になり、本文の「平成21年度以降に黒字に転ずる」(つまり平成20年度は赤字)と合いません。3者とも、全社の予想損益計算書を起点にする読みを採りました。
第3問 設問2 負債の節税効果の現在価値(最大)──【前提により2解】
利息は平成20〜22年度が8,000×8%=640、平成23〜25年度が4,000×8%=320。節税効果は毎年256と128(税率40%)です。
| 読み | 式 | 現在価値(万円) | 採った者 |
|---|---|---|---|
| 全期間の節税効果が実現する(最大) | 256×2.5771+128×2.5771×0.7938 | 922 | Opus・Gemini |
| 平成20年度は赤字で実現しない | 上の値から、256÷1.08(平成20年度分)を引く | 685 | Codex |
設問文の「最大」と、与えられた係数(2.5771と0.7938)だけで解けることからは、前の読み(全期間)が出題の自然な形に見えます。一方、設問1で平成20年度が赤字になり、繰越控除は考えないと指定されているので、その年の節税効果が実現しない読みにも根拠があります。計算の途中に「平成20年度分を数える/数えない」と1行書いて、最後まで同じ読みで通してください。
この問題で落としやすい点
- 売却損を、売却価額100ではなく取得原価や簿価から直接出す。期首の簿価1,925から売却価額100を引きます。
- (b)で、設備1つの損益だけを足し上げる。与件の予想損益計算書(△300)を起点にします。
- 返済後の利息を、8,000のままにする。平成23年度からは残高4,000で、節税効果も128に減ります。
- 第2問の現在価値で、減価償却費を引いたり税を考えたりする。問われたのは「税引前」の営業CFです。
平成19年度 第3問:研究開発の結果で設備投資を選べるときの期待NPV
割れたのは、Yのとき設備投資を見送れるかです。見送る前提なら77百万円、Yでも投資するなら35百万円。設問2でYの見送りを答えるなら、77と揃います。
| 条件 | 値 |
|---|---|
| 時間の流れ | 平成19年度期首が現時点。研究開発は1期(平成19年度)で、投資額4,000万円(図では1期末に0.4億円) |
| 研究開発の結果 | 製造方法XかYのどちらかになる。確率は各1/2 |
| 設備投資(2期末) | X 5億円、Y 7億円 |
| 営業CF(3期〜7期末の5年間) | X 毎期2億円、Y 毎期1.6億円。運転資本の増減等は無視 |
| 資本コスト・係数 | 10%・すべてのCFは期末。年金現価係数(n=5・r=0.1)3.7908 |
| 設問 | 設問1 1期末の期待NPV(百万円)/設問2 研究開発への着手と設備投資の意思決定(50字以内) |
設問1 1期末の期待NPV ──【前提により2解】
まず2期末の時点で、設備投資のNPVを出します。X=200×3.7908−500=258.16、Y=160×3.7908−700=△93.472百万円。2期末の期待値を1期末に1年分割り引き、研究開発費40を引きます。
| 読み | 式 | 1期末の期待NPV | 採った者 |
|---|---|---|---|
| Yのとき設備投資を見送る(価値0) | (0.5×258.16+0.5×0)÷1.1−40 | 77.35→77百万円 | Opus・Gemini |
| Yでも設備投資を実行する | (0.5×258.16+0.5×△93.472)÷1.1−40 | 34.86→35百万円 | Codex |
「実行可否の意思決定」という文言と、設問2でYのときの設備投資を見送ると答えることからは、見送れる前提(77百万円)で揃うように見えます。ただ、前提は問題文に明記されていないので、計算の途中に「Yは見送る前提」と1行書いておくのが安全です。
設問2 意思決定(50字以内)──【解答例】
解答例:「研究開発に着手する。Xなら設備投資を実行し、Yは2期末のNPVが負なので見送る。」(40字)。研究開発に着手する理由は、期待NPVが正だから。設備投資はXのときだけ行い、Yのときは2期末のNPVが負なので見送ります。
この問題で落としやすい点
- 年金現価係数3.7908は3期末〜7期末の5年分で、2期末の時点の値になる。1期末に直すには、さらに1年分割り引きます。
- 研究開発費を2期末の時点で引いてしまう。1期末の支出なので、1期末の期待NPVからそのまま引きます。
- 設備投資額を割り引き忘れる。2期末の時点のNPVを出してから、1期末に直します。
4つの問題を通して答案に書く1行:前提の宣言と、与件の数字の拾い方
答えを分けたのは、赤字の年の節税効果と、設備投資を見送れるかという、問題文に明記のない前提でした。計算過程の最初に前提を1行書けば、読みが割れても過程点が残ると見ています(見立て)。
- 与件の予想損益計算書や、前の問題の数字を使う問題は、どの表のどの数字を起点にしたかを書く(平成20年度の第3問は△300から)。
- 与えられた係数が何年分かを確かめる。4年分の係数が出たら、どの年度にかかるか、さらに何年割り引くかを決める(平成22年度)。
- 「実行可否を選べる」問題は、見送った場合を0として期待値を取るかを決める(平成19年度)。
- 「最大」と指定された現在価値は、全期間で効果が実現する前提で出し、その前提を1行で書く(平成20年度)。
これは当サイトの見立てで、公式の採点基準ではありません。残りの年度は、損益計算書を作る問題など別の型が多く、順次足す予定です。
この記事で言えないこと
2次試験に公式解答は公表されていません。答えは当サイトの解答例で、「一致」は当サイトと独立に解かせた3つのAI(Opus・Codex・Gemini)の答えの一致です。AIは問題文だけを渡され、互いの答えも当サイトの答えも見ていません。
- 条件は問題PDFを画像にして目視で照合し、転記は独立に2回行って数値の種類が一致することを確かめました。
- 平成20年度の節税効果は、3つのAIが2対1に割れました。平成19年度の期待NPVも2対1です。どちらが多数かは正しさの証拠ではないので、両方を載せています。
- 平成20年度の第3問 設問1(b)は、与件の予想損益計算書を現主力設備を使い続ける場合の予想とみなしています。3つのAIは全員この読みでした。別の読みはここでは扱っていません。
- 平成22年度と、平成20年度の第2問・第3問の設問1は、3つのAIと当サイトの計算が全員一致しました。
配点は第3問(平成20年度は第2問・第3問)全体のもので、設問ごとの配点は公表されていません。得点への影響は測っていません。
この記事のまとめ
- 平成22年度・平成20年度・平成19年度の投資判断を、条件表から答えまで通します。
- 平成22年度はNPV 16.9百万円で採用、第2年度以降の損益分岐点売上高は3,713百万円です。
- 平成20年度は現在価値△1,439万円、売却損1,825万円、税引前純利益△1,250万円。
- 割れたのは平成20年度の節税効果(922/685万円)と平成19年度の期待NPV(77/35百万円)です。
よくある質問
- 研究開発のあとに設備投資を選べる問題は、期待NPVをどう出しますか。
- 平成19年度は、2期末の時点で製造方法ごとのNPV(X 258.16・Y △93.472百万円)を出し、1年分割り引いて研究開発費40を引きます。Yのとき見送る前提なら77百万円、Yでも投資するなら35百万円です。問題文に前提の記載がないので、採った読みを計算の途中に1行書いてください。
- 負債の節税効果の現在価値で、赤字の年は数えますか。
- 平成20年度の第3問 設問2は、平成20年度が赤字で繰越控除も考えないため、その年の節税効果を数えるかで922万円と685万円に割れました。「最大」の指定と与えられた係数だけで解ける形からは前者が自然ですが、後者にも根拠があります。計算の途中に前提を1行書いてください。

