令和8年度2日目の3科目講評:19年実測42.9%の債権系、新用語3割の情報、乱高下する中小
この記事の結論
- 法務で今年問われた債権系分野は、19年の実測正答率42.9%と最も取れていない領域です。
- 情報の新用語を含む問題は直近10年で20.9%、直近5年では30.4%まで増えています。
- 中小は科目合格率が2024年度5.6%から2025年度30.7%へ乱高下。運任せにできません。
- 2日目は暗記科目に見えて、実際は情報の更新速度で差がつく3科目でした。
令和8年度1次試験の2日目、経営法務/経営情報システム/中小企業経営・中小企業政策の3科目を振り返ります。この3科目は「暗記科目」と一括りにされがちですが、19年分(2007〜2025年度・全数)のデータを当てると、それぞれまったく違う顔をしています。以下、正答率は当サイト利用者の実測(19年分の過去問を解いた記録)、出題数と科目合格率は全数集計と公式公表値です。今年の出題が、その顔とどう噛み合っていたのかを見ていきます。
2日目は「情報の鮮度」で差がついた
民法改正の細目、AI関連ガイドライン、新設補助金。3科目とも問われたのは知識の更新でした。
2日目の3科目に共通していたのは、覚えている量よりも「いつの情報を覚えているか」が問われたことです。経営法務は改正論点の細目、経営情報システムはAI関連の最新動向、中小企業政策は2026年に改編・新設された補助金。いずれも、古いテキストのまま仕上げた人ほど点を落とす構造でした。
数字の読み方について。比率・正答率はいずれも2007〜2025年度(19年分)の集計で、令和8年度(2026年度)の出題は含まれていません。今年度の問題は演習できる状態で収録済みですが、分野別の集計に反映するのはこれからです。本記事では「今年度こうだった」は公式正解と当サイトの分析にもとづく所感、「19年ではこうだ」は実測データ、と区別して書いています。
経営法務:今年問われた債権系は、19年で最も取れていない分野だった
消滅時効・契約解除が属する債権系分野の実測正答率は42.9%。法務のなかで最下位です。
今年は会社法、知的財産(パリ条約、実用新案の技術評価書、商標の分割)、民法(消滅時効、即時取得、契約解除、契約不適合、不当利得、不法行為、相続)と広く問われました。改正論点の正確な理解と引っかけ肢の見極めが必要で、やや難しめの出題です。
縦線=科目全体 57.2%
今年ボリュームを割かれた消滅時効・契約解除・契約不適合は、いずれも「債権総論・保証・時効・解除・契約」の領域です。ここは19年の実測で42.9%(n=161)と、法務のなかで最も取れていない分野。逆に最も取れているのは特許・実用新案の基本(70.1%)で、その差は27ポイントあります。つまり今年の出題は、受験生が構造的に弱い側を突いてきたことになります。
法務にはもう一つ固有の事情があります。過去問のうち37問(463問中8.0%)は、その後の法改正で前提が変わっています。内訳は東証の市場区分再編が7問、意匠法改正が7問、民法(債権法)改正が6問など。ただし2007〜2015年の218問では11.9%あったものが、2016〜2025年の245問では4.5%に下がっており、近年の問題ほど安全に使えます。古い年度を回すときだけ注意すれば足ります。
当サイトなら、「肢別演習」(1肢ずつ○×)で細かい正誤感度を鍛え、「知識の大樹」で条文・要件を暗記できます。改正で前提が変わった問題には注記が付き、除外して演習することもできます。
経営情報システム:新しい用語を含む問題は、19年で6.3%から30.4%へ増えた
今年のAI論点は突然変異ではありません。直近5年で、問題の3割が新しい用語を含んでいます。
今年は基礎(NFC、RAID、正規化、SQL、IMAP、RASIS)に加え、AIの民主化、スマートコントラクト、デジタルスキル標準ver2.0、AI事業者ガイドラインなど最新動向が目立ちました。「情報だけ試験範囲が毎年動く」と言われる科目ですが、これは印象論ではなく数字に出ています。
区切り方を変えても向きは同じです。古い側の9年(2007〜2015年度)は223問中14問=6.3%、これと対になる新しい側の9年(2017〜2025年度)は224問中50問=22.3%。19年のちょうど真ん中にあたる2016年度も含めた直近10年(2016〜2025年度)で見ると249問中52問=20.9%になります。さらに直近5年(2021〜2025年度)に絞ると125問中38問=30.4%で、2025年度単年は40.0%と19年で最高でした。用語の初出年を見ると、AI・人工知能が2017年、機械学習・ディープラーニングが2020年(9問中8問が直近5年)、生成AI・大規模言語モデルが2024年。今年度のAIの民主化、スマートコントラクト、デジタルスキル標準ver2.0、AI事業者ガイドラインも、この新語群に連なります。グラフの右端はまだ2025年度ですが、今年度が高止まり側に加わることは、出題を見るかぎりほぼ確実です。
一方で、土台が入れ替わったわけではありません。SQLは19年で20問、関係データベースは14問、稼働率・MTBFは9問と、古典的な論点は出続けています。つまり情報は「基礎を固めたうえで、毎年の新語を上乗せする」二階建ての科目です。どちらか一方だけでは足りません。
なお、経営情報システムは公式の科目合格率の振れ幅が7科目で最大です(最低3.8%・最高51.8%・標準偏差11.8ポイント)。当たり年と外れ年の落差が最も大きい科目なので、得意だからと安心して仕上げを薄くするのは危険です。
対策も二階建てにするのが自然です。基礎用語は用語集と用語ゲームで反復し、仕組み系は図解で押さえる。そのうえで、直前期に最新論点を上書きする時間を別枠で確保しておく、という組み方になります。
中小企業経営・中小企業政策:今年の最難関枠。合格率は2年で5.6%→30.7%
白書統計の細部と新設補助金が大量に出ました。この科目の合格率は年ごとに極端に振れます。
前半の白書統計(従業者・付加価値・労働生産性・価格転嫁・研究開発費)は数字と順位の細部が問われ、後半の政策は2026年に改編・新設された補助金(成長加速化、新事業進出、持続化・創業型、Go-Tech)や下請法改正が大量に出ました。当サイトの速報でも、AIの解答が6問で割れ、うち2問は公式正解と食い違いました。今年の最難関枠だったと考えています。
この科目は、隣り合う2年で科目合格率が5.6%から30.7%へ跳ねます。19年の平均は15.6%、最低2.9%(2009年度)、最高31.1%(2014年度)で、振れ幅は28.3ポイント(表示を小数第1位に丸めているため、最高と最低の引き算とは0.1ポイントずれます)。受験者数は1万6千〜1万8千人規模で大きくは動いていません。ただし、そこから「出題の当たり外れが主因」と断定はできません。科目合格制度があるため、ある年に合格者が多く出れば翌年その科目を受ける層が入れ替わるという交絡があるからです。データから言えるのは、受験者数の増減だけでは説明のつかない大きさで科目合格率が動いている、という事実までです。
出題構成は19年で800問(中小企業経営409問・中小企業政策391問)とほぼ半々ですが、政策の割合は年によって31.0%から59.5%まで動きます。白書側に山が来る年と政策側に山が来る年があるということで、どちらかに寄せた準備は危険です。
当サイトなら、暗記の主戦場なので「知識の大樹」のフラッシュカードと用語ゲームで数字・制度を回し、「分野を指定」で政策分野を集中演習できます。
2日目から来年に持ち帰る3つのこと
法務は弱い分野を名指しで潰す、情報は二階建てで積む、中小は当たり外れを前提に守る。
- 1法務は債権系(時効・解除・契約不適合)を名指しで潰す。19年の実測で最も取れていない領域であり、今年もそこが問われた。
- 2情報は基礎の反復と新語の上乗せを並行させる。新用語を含む問題は直近5年で2〜4割を占め、基礎だけでは届かない。
- 3中小は当たり外れが最も大きい科目。得点源として当て込まず、40点未満を作らない守りの科目として設計する。
この記事のまとめ
- 法務で今年問われた債権系分野は、19年の実測正答率42.9%と最も取れていない領域です。
- 情報の新用語を含む問題は直近10年で20.9%、直近5年では30.4%まで増えています。
- 中小は科目合格率が2024年度5.6%から2025年度30.7%へ乱高下。運任せにできません。
- 2日目は暗記科目に見えて、実際は情報の更新速度で差がつく3科目でした。
よくある質問
- 令和8年度の経営法務はなぜ難しく感じたのですか?
- 民法の消滅時効・契約解除・契約不適合など、債権系の細目が正面から問われたためです。この領域は19年分の実測正答率が42.9%と、経営法務のなかで最も取れていない分野でした(科目全体は57.2%)。改正論点の正確な理解と引っかけ肢の見極めが必要で、体感としてもやや難しめの出題でした。
- 経営情報システムでAI関連の出題が増えているのは今年からですか?
- 今年からではありません。問題文と選択肢の全文から後年に登場した用語を数えると、それを含む問題の割合は古い側の9年(2007〜2015年度・223問)で6.3%、新しい側の9年(2017〜2025年度・224問)で22.3%、真ん中の2016年度も含めた直近10年(249問)では20.9%です。直近5年(2021〜2025年度・125問)に絞ると30.4%、2025年度単年では40.0%になります。AI・人工知能の初出は2017年、生成AI・大規模言語モデルは2024年で、今年の出題はこの傾向の延長線上にあります。
- 中小企業経営・中小企業政策は得点源にできますか?
- 当て込むのは危険です。公式の科目合格率は2024年度5.6%、2025年度30.7%と隣り合う年で大きく振れ、19年平均は15.6%(標準偏差9.0ポイント)です。科目合格制度で受験する層が毎年入れ替わるため、この振れが出題難易度だけによるものとは断定できませんが、いずれにせよ年ごとの変動が大きい科目です。得点源ではなく「40点未満の足切りを作らない守りの科目」として設計するほうが安全です。
