2026年度1次試験 直前チェック:この1年の「ニュースな論点」×出題実績データ
試験委員も受験生と同じ1年を生きています。この1年に大きく動いたニュースは作問のヒントになりやすい——ただし出題されるのはニュースそのものではなく、その背後にある基本論点です。この記事では直近1年の18トピックを「問われそうな論点」に翻訳し、当サイト収録19年分の出題実績データ(直近8年の連続出題分野・頻出度)と重ねて、直前期に押さえる順番を提案します。時事は読むだけでOK、手を動かすのは過去問です。

この記事の前提と使い方
本記事は公開情報に基づく学習ガイドであり、特定の論点の出題を保証するものではありません。記事の情報は2026年7月時点のものです。制度・法令の詳細は必ず一次情報(官公庁の公表資料)で確認してください。
各トピックには「何が起きたか」「試験論点への翻訳」「出題実績データとの重なり」を載せ、末尾の「演習」リンクから該当分野の過去問だけをまとめて解けるようにしています。8年連続出題分野のデータは別記事「8年連続で出題されている論点一覧」と同じ集計(直近8年の本試験・当サイト独自の分野タグ)に基づき、問数は執筆時点の集計値です。
演習リンクは該当分野の収録全年度から出題します(解答できる年度は会員プランによって異なります)。
1日目科目の時事トピック(経済・財務・経営理論・運営)
① 原油の乱高下(中東情勢)
2025年は供給過剰で原油価格が5年ぶりの大幅下落となった一方、2026年春には米イラン衝突とホルムズ海峡の緊張で一時1バレル120ドル近くまで急騰し、その後は停戦観測で反落——という乱高下の1年でした。
試験論点に翻訳すると、経済学では供給ショックとAD-AS分析(スタグフレーション)や需要・供給曲線のシフト、財務・会計では変動費率の上昇を織り込むCVP分析、運営管理では在庫・調達の管理が対応します。出題実績では「需要・供給曲線の基礎」が8年連続出題の分野です。問われ方は例年どおりの基本形が中心なので、ニュースを念頭に置きつつ基本問題を固めましょう。
② 日銀の利上げ(0.5%→0.75%→1.0%)
政策金利は2025年1月に0.5%、12月に0.75%、2026年6月に1.0%へと引き上げられ、約31年ぶりの水準になりました。経済学ではIS-LM分析(金融引き締めの効果)とクラウディングアウト、財務・会計ではWACCの上昇・NPVの割引率・金利と債券価格の逆相関が対応論点です。
出題実績では、IS-LM分析は直近8年で7回出題。「投資評価・資本予算」は財務・会計の8年連続出題分野です。
③ 金利差と為替
日本が利上げ、米国が利下げ観測と、日米の金融政策が明確に逆方向を向いた1年でした。金利差の変化と為替の関係はマクロ経済学の王道論点で、マンデル・フレミングモデル(変動相場制下での金融政策・財政政策の効果)、購買力平価、Jカーブ効果が対応します。
「マンデル・フレミングモデル・国際経済」は経済学の8年連続出題分野で、直近8年に16問。時事の追い風がなくても毎年出ますが、今年は特に狙われやすい題材です。
④ 賃上げと最低賃金1,121円
2025年度の最低賃金は全国加重平均1,121円(引き上げ幅66円=6.3%で過去最大)となり、全47都道府県で1,000円を超えました。2026年春闘の賃上げ率は最終集計5.01%で3年連続の5%超です。経済学では労働市場(最低賃金の理論効果・実質賃金)、中小企業経営・政策では賃上げ支援や価格転嫁(後述の取適法への縦串)が対応します。
「労働市場」は経済学の8年連続出題分野(直近8年で15問)。統計数字の入れ替えで問う形が定番です。
⑤ 株高と新NISA
株式市場の高値圏での推移と新NISAによる個人の資産運用拡大で、「分散投資」が一般常識化した1年でした。財務・会計のポートフォリオ理論(分散投資・相関係数とリスク低減・効率的フロンティア)とCAPMが対応論点です。
「ポートフォリオ理論・分散投資」は財務・会計の8年連続出題分野(直近8年で16問)。時事と関係なく毎年出ますが、リスクとリターンの計算問題は落とせません。
⑥ セブン&アイ買収騒動の決着
創業家によるMBO案が2025年2月に白紙となり、クシュタールも2025年7月に買収提案を撤回。北米コンビニ事業のIPOと大規模な自社株買いの方針へ転換しました。企業経営理論では同意なき買収提案への対応とコーポレートガバナンス、財務・会計ではTOB・MBO・LBO・企業価値評価・自社株買いが対応します。
「多角化・M&A・戦略的提携」は企業経営理論の8年連続出題分野(直近8年で15問)。用語の定義の入れ替えが頻出です。
⑦ 育児・介護休業法の改正
2025年4月と10月に段階施行され、子の看護休暇の拡充、3歳から小学校就学前の子を育てる従業員への柔軟な働き方措置の義務化、介護離職防止のための個別周知義務などが加わりました。企業経営理論の労働関連法規では、施行済みの改正が最有力の作問ネタです。措置義務の内容と対象範囲を押さえましょう。
「労働契約・解雇・就業規則・賃金」は8年連続出題分野(直近8年で19問)、社会保険・労働時間の分野も直近8年で6回出題。労働法規はほぼ毎年確実に出る枠です。
⑧ 物流の法制強化(2024年問題のその後)
改正物流2法が段階施行中です。2025年4月に全ての荷主・物流事業者への物流効率化の努力義務(積載効率の向上・荷待ち時間の短縮・荷役時間の短縮)と実運送体制管理簿などが施行され、2026年4月には「特定事業者」の指定と物流統括管理者(CLO)選任義務(取扱貨物量が年9万トン以上の特定荷主など)が施行されました。法律名も通称「物流効率化法」へ改められています。
運営管理では輸送・共同配送・積載率と、努力義務の3点セットや特定事業者・CLO制度、中小企業経営・政策では2024年問題や取引適正化との縦串が対応します。「輸送・配送管理」「物流センター・倉庫管理」はともに運営管理の8年連続出題分野(各21問)です。
2日目科目の時事トピック(法務・情報・中小)
⑨ 取適法(下請法の大改正)——今年の大本命
2025年5月に成立した改正下請法が2026年1月1日に施行され、名称も「中小受託取引適正化法(取適法)」に変わりました。従業員数基準の追加、協議なき一方的な代金決定の禁止、手形払いの禁止、特定運送委託の追加、執行体制の強化が柱です。経営法務では適用基準と禁止行為、中小企業経営・政策では価格転嫁やパートナーシップ構築宣言との関係が対応します。
大本命と考える理由は、試験年度の1月1日に施行済み・中小企業が直接の対象・2科目にまたがる、という条件が揃うテーマが今年はこれだけだからです。
⑩ フリーランス法の運用本格化
フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律・2024年11月施行)の運用が進み、勧告・指導の事例が蓄積してきました。取適法とセットで「取引適正化の法体系」を形成します。問われどころは、対象(従業員を使用しない受託者)、発注者の義務(取引条件の明示・期日までの支払い・ハラスメント対策)、下請法(取適法)との適用関係の整理です。施行翌年から2年目の新法は、経営法務の定番の出題タイミングでもあります。
⑪ 暗号資産の金商法移管
暗号資産を資金決済法から金融商品取引法へ移管する改正法が、試験直前の2026年7月15日に成立しました(施行は2027年見込み)。インサイダー取引規制の創設も盛り込まれています。この手の論点は「現行はどちらの法律か」を問う形が定石です。試験時点の現行法はまだ資金決済法なので、資金決済法上の暗号資産の定義と、金商法との守備範囲の違いを整理しておきましょう。
⑫ パルワールド訴訟
任天堂・ポケモン社がポケットペア社を特許権侵害で提訴した係争が続いています(著作権侵害ではない点がポイント)。ゲームシステムに関する特許3件が対象で、2026年10月に証拠調べの期日が予定されています。特許権(技術的思想を保護)と著作権(表現を保護)の保護対象の違い、差止請求、ゲームのルール自体は著作権では保護されないことが対応論点です。
「特許・実用新案」「商標法」は経営法務の8年連続出題分野。知的財産権どうしの比較は毎年の定番です。
⑬ 生成AIと著作権+AI法
文化庁の「AIと著作権に関する考え方」(2024年3月)とチェックリストに加え、2025年にはAI法(罰則のない基本法)が成立し全面施行されました。経営法務では著作権法30条の4とAI生成物の著作物性、経営情報システムではAIガバナンスとAI法の性格(推進法であって規制法ではない)が対応します。
⑭ アサヒ・アスクルのランサムウェア被害
2025年9月にアサヒグループHD(約191万件の個人情報流出の可能性・出荷停止の長期化)、10月にアスクル(二重恐喝・複数の大手ECサイトへ波及)と、大規模なランサムウェア被害が相次ぎました。経営情報システムでは情報セキュリティの3要素、ランサムウェアと二重恐喝、インシデント対応、バックアップ設計、運営管理ではサプライチェーンリスクが対応します。
「暗号化・認証・攻撃対策」は経営情報システムの8年連続出題分野(直近8年で15問)です。
⑮ PMBOK第8版の公開
2025年11月にPMBOK第8版の英語版が公開されました(12原則から6原則への再編・プロセス群の実質復活)。ただし試験対策としては、版の細部よりもWBS・ガントチャート・EVM・調達(RFI/RFP/RFQ)といった不変の基本手法の再確認が本線です。
⑯ 白書のテーマは「経営力」と成長の壁
2026年8月試験の出題ベースは2025年版の中小企業白書・小規模企業白書です(2025年4月公表)。第1部は、円安・物価高の継続と約30年ぶりの「金利のある世界」の到来(輸入比率や借入依存の高い中小企業への利益下押し)、約30年ぶりの高い賃上げ率の一方で大企業との格差は拡大、労働分配率は既に8割近くに達し業績改善を伴わない防衛的賃上げが増えている、という現状整理です。
第2部のテーマは経営者の「経営力」(個人特性・戦略策定・組織人材の3側面)と、売上高規模ごとの「成長の壁」(100億円企業・補完型人材の確保・M&A・海外展開)。試験論点としては、労働生産性・付加価値・労働分配率の定義と計算、賃上げと価格転嫁、100億企業支援(⑱の成長加速化補助金と直結)を押さえましょう。
「業種別規模・労働生産性・雇用」は中小企業経営・政策の8年連続出題分野で、直近8年33問は当サイトの全140分野中で最多です。白書テーマと完全に重なる今年は、最重要分野と言えます。
2026年4月に公表された2026年版白書(テーマは「稼ぐ力」「経営リテラシー」)は来年度試験の範囲です。参照する白書の年版を混同しないよう注意してください。
⑯補足:2025年版白書で特に見ておきたいグラフ・統計10選
白書全455ページを図表単位で洗い、過去の本試験で繰り返し問われてきたパターン(規模間比較・シェアの数字・率の時系列)に合致するものを選びました。図表番号は2025年版白書のものです。数字そのものの丸暗記より、「大小関係と変化の方向」を押さえるのが定石です。
(1)中小企業のシェア(巻頭・付属統計資料1表/2表/5表):企業数の99.7%・従業者数の69.7%・付加価値額の56.0%(令和3年経済センサス)。3つのシェアの取り違えを突く出題が大定番です。

(2)労働生産性の規模間格差(第1-1-31図):2023年度は大企業1,588.8万円に対し中規模企業578.5万円・小規模企業503.3万円。増加傾向にあるのは大企業のみ、という「方向」も問われどころ。

(3)開業率・廃業率(第1-1-59図・付属統計資料10〜13表):2023年度は開業率3.9%・廃業率3.9%(雇用保険ベース)。業種別ではサービス業の開業率が高く製造業が低い、という並びまで見ておくと安心です。

(4)倒産・休廃業(第1-1-60〜62図・第1-1-64図):2024年の倒産は10,006件と11年ぶりの1万件台。人手不足関連倒産は289件へ急増、休廃業・解散は69,019件。廃業時に黒字だった企業が51.1%と過半を占める点が問われやすいポイントです。

(5)経営者年齢と後継者不在率(第1-1-66図・第1-1-67図):休廃業・解散企業の経営者は平均71.3歳。後継者不在率は2011年66.2%→2024年52.7%と低下傾向にあり、「上昇し続けている」とあれば誤りです。

(6)賃上げ・最低賃金・労働分配率(第1-1-51/52/56図):白書掲載は2024年度の最低賃金1,055円(引上げ率5.1%)、2024年春闘は全規模5.10%・中小4.45%。労働分配率は大企業48.2%に対し中規模76.9%・小規模80.0%と規模間の開きが大きい構図です(④の2025年度1,121円は白書より新しい数字という年度の違いに注意)。

(7)価格転嫁(第1-1-49図・第1-1-50図):転嫁率はコスト全般で49.7%と約5割。労務費44.7%は原材料51.4%より転嫁が進みません。取引段階が深いほど転嫁できず、4次請け以上では「全く転嫁できない」が35.2%——⑨取適法の立法背景として縦串で覚えると効率的です。

(8)「金利のある世界」(第1-1-13図・第1-1-14図):借入金利の上昇実感(DI)は前回利上げ局面の2007年と同水準。借入金依存度は中小企業約38%と大企業約33%より高く、宿泊・飲食業では約72%に達します。

(9)M&A・事業承継支援(第2-2-48〜50図):M&A件数は2024年に4,700件と過去最多。事業承継・引継ぎ支援センターの成約は2,023件まで拡大。M&A実施率は売上規模が大きいほど高い単調増加(10億円未満6.2%→100億円以上30.3%)です。

(10)スケールアップ・100億企業(第2-2-6図ほか第2部):売上高100億円以上の企業は10年で1,594社→1,970社へ増加。テーマ編は「規模が大きいほど輸出・M&A・ガバナンス整備の実施率が上がる」で整理できます。例外が知的財産で、特許出願に占める中小企業シェアは2割弱ですが、保有特許の使用率は中小約7割と大企業約3割を上回る逆転が要注意です。

数値は2025年版白書掲載のグラフ・統計表からの読み取りを含みます。学習の最終確認は、中小企業庁が公開している白書本体で行ってください。
⑰ 人手不足倒産・後継者難の深刻化
人手不足関連倒産・後継者難倒産が高水準で推移し、事業承継・M&A支援が政策の柱になっています。中小企業経営・政策では、開廃業の動向と事業承継施策(事業承継・M&A補助金、経営資源集約化税制)が対応します。「開廃業・倒産動向」「事業承継支援・M&A」はともに直近8年で6回出題の準コア分野です。
⑱ 省力化投資・成長加速化補助金
省力化投資補助金は「一般型」が主力になり、成長加速化補助金は売上高100億円を目指す企業向け(上限5億円・補助率2分の1・「100億宣言」が要件)として動いています。問われるのは施策の対象・上限・要件で、数字の入れ替えが定番です。
まとめ:直前期の配分
- 1まず「8年連続論点」を固める(別記事「8年連続で出題されている論点一覧」参照)。時事はその次です。
- 2時事の最優先は⑨取適法、次いで⑯白書(出題実績データ上も最多分野と重なります)。
- 3残りのトピックは「時事の顔をした基本問題」。ニュースの暗記ではなく、対応分野の過去問を1周してください。
- 4配分の目安は出題実績7:時事3。予想は当たるとは限りません。
時事は「読んで知っている」だけで、本番で問われたときに落ち着いて基本論点へ引き戻せます。最後の伸びしろは、やはり過去問の反復にあります。
