科目別の難易度は予測できるのか?20年の合格率データで検証
「去年は経済が難しかったから、今年は易しいはず」——受験生の間でよく語られる読みです。前年の難易度から翌年の難易度は本当に予測できるのか。1次試験の科目別合格率20年分(2006〜2025年度)を使い、統計的に確かめました。
何を検証したか
使うのは「科目別合格率」=各科目で60点以上を取った受験者の割合です(低いほど難しい年)。この前年値と翌年値の相関(ラグ1自己相関)を科目ごとに計算します。もし『難しい年の翌年は易しい』のような規則があれば相関はマイナスに、『難易度が続く』なら相関はプラスに、まったく予測できない(各年が独立)なら相関はほぼ0になります。
1次試験は総点での合否判定で、科目別の公式な「合格率」は公表されません。ここでの数値は各種公開情報にもとづく難易度の代理指標(科目別の60点以上到達率)で、正確な母集団はデータ元により差が出ることがあります。
結論:来年の難易度は、ほぼ読めない
前年→翌年の相関は、多くの科目でほぼ0でした(経済 +0.07、財務 −0.03、情報 +0.21 など)。つまり、前年が難しかったか易しかったかは、翌年の難易度をほとんど予測しません。統計的には各年がほぼ独立で、難易度は年ごとにランダムに振れるのが実態です。
平均への回帰を仮定して来年値を推定しても、95%の予測レンジは科目によって0〜43%と極端に広く、ピンポイントで当てにいくのは原理的に無理があります。「来年は◯◯が狙われる」といった難易度の断定予想は、データ上の裏付けが弱いと言えます。
科目別の20年データ
| 科目 | 平均合格率 | ブレ(標準偏差) | 前年→翌年の相関 |
|---|---|---|---|
| 経済学・経済政策 | 18.3% | ±9.1 | +0.07 |
| 財務・会計 | 14.1% | ±8.0 | −0.03 |
| 企業経営理論 | 18.0% | ±8.4 | +0.15 |
| 運営管理 | 17.7% | ±6.7 | −0.15 |
| 経営法務 | 15.0% | ±6.1 | +0.45 |
| 経営情報システム | 21.9% | ±12.0 | +0.21 |
| 中小企業経営・政策 | 14.9% | ±8.6 | −0.50 |
折れ線を見ると、どの科目も規則的な波ではなくギザギザに振れているのが分かります。ブレが最も大きいのは経営情報システム(標準偏差±12.0)で、合格率は3.8%〜51.8%まで振れており、年による難易度差が最も激しい科目です。逆に運営管理・経営法務はブレが比較的小さめでした。
わずかに見える傾向(過信は禁物)
唯一、弱いながら傾向が見えたのは2科目です。中小企業経営・政策は相関がマイナス(−0.50)で、高得点だった翌年は反落しやすい傾向(直近2025年度は30.7%と高水準)。経営法務は相関がプラス(+0.45)で、難易度がやや持続する傾向。ただしどちらも20年というサンプルの少なさから、確実な予測材料とはいえません。
学習への示唆
- 「去年難しかったから今年は易しい」は根拠が薄い。難易度は年ごとにほぼランダムに振れる。
- どの科目も『当たり年・外れ年』がある前提で、全科目を一定水準まで仕上げるのが最も堅い。
- 特に経営情報システムはブレが最大。易化を当てにせず、確実な得点源を先に作っておく。
難易度を“予測”するより、“どの難易度でも6割を割らない”備えをすること。20年のデータが示すのは、そのシンプルな結論です。
