「まとめて解くと集中力が落ちる」は本当か——3万件の実測で疲労カーブは平坦だった
この記事の結論
- 疲労で正答率が落ちる「崖」は見つかりませんでした。50問を超えても1問目とほぼ同じ精度です。
- 落ちるのは終盤ではなく序盤。最初の5問がいちばん低く出ました。
- 本試験の出題位置別に見ると、難所の場所は科目でまるで違います。中小企業経営・政策は終盤ほど易しく、経済学・経済政策は前半に谷がありました。
- まとまった量の演習をためらう必要はありません。小分けにすべき根拠はデータ上ありませんでした。
「疲れるから演習は小分けにしたほうがいい」——直感的にはそう思えます。では実際のところ、連続で解き続けると何問目から正答率は落ちるのでしょうか。当サイト利用者の解答記録約3万件(匿名集計)で実測してみると、結果は良い意味で拍子抜けでした。
結果:1問目でも51問目以降でも、正答率は変わらない
疲労で正答率が落ちる「崖」は見つかりませんでした。50問を超えても、1問目とほぼ同じ精度で解けています。
連続演習の「何問目か」別に正答率を並べたのが下のグラフです。「わからない」を選ぶ割合もずっと2〜4%台のままで、集中が切れて投げやりになる兆候は見えませんでした。
縦線=全体の平均 66.4%
「長く解き続けられる人は、そもそも得意な人なのでは?」という偏りも考えて、31問以上続いた回だけに絞った比べ方もしました。それでも序盤67.2%・終盤66.8%で、差と呼べる差はありません。少なくともWeb演習では、疲労で正答率が落ちる証拠は見つかりませんでした。
意外な発見:むしろ「最初の5問」がいちばん低い
落ちるのは終盤ではなく序盤です。最初の5問は「肩慣らし」と思っておくと、出だしの手応えのなさに焦らずに済みます。
面白いのはむしろ逆で、最初の5問だけが少し低めです。「わからない」と答える割合も最初の5問が最多。エンジンがかかる前のウォームアップ期間か、「演習の最初は昨日間違えた問題の解き直しから入る」人が多い影響と考えられます。
本番の1科目は60〜90分。試験開始直後の数問を「ウォームアップ」と自覚しておくと、序盤に手応えがなくても焦らずに済みます。解ける問題から手を付けて後で戻る、という定石とも合っています。
本試験ではどうか:難所の位置は科目でまるで違う
自分の演習の疲労カーブは平坦でしたが、本試験の「問題の並び」には科目ごとのクセがあります。中小企業経営・政策は終盤ほど易しく、経済学・経済政策は前半に谷がありました。
ここまでは「自分が何問目を解いているか」の話でした。では、試験問題そのものの並びはどうでしょうか。各科目の問題を番号順に5等分し、位置ごとに実測正答率を出したのが下のグラフです(1つの大問に小問がぶら下がる設問形式は、番号が飛ぶため除外しています)。
| 科目 | 序盤 1/5 | 前半 2/5 | 中盤 3/5 | 後半 4/5 | 終盤 5/5 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経済学・経済政策 | 58.8% | 48.6% | 53.2% | 62.0% | 50.4% |
| 財務・会計 | 70.6% | 72.8% | 67.6% | 73.4% | 71.0% |
| 企業経営理論 | 77.4% | 69.7% | 72.1% | 58.5% | 81.1% |
| 運営管理 | 69.3% | 66.9% | 56.7% | 67.2% | 61.8% |
| 経営法務 | 72.3% | 67.9% | 69.1% | 64.3% | 62.5% |
| 経営情報システム | 65.0% | 67.2% | 67.7% | 69.3% | 64.0% |
| 中小企業経営・政策 | 64.3% | 62.3% | 70.8% | 74.6% | 82.4% |
はっきり読み取れるのは3つです。中小企業経営・政策は62.3%から82.4%へと後ろに行くほど易しくなります(前半が統計を読ませる中小企業経営、後半が制度を問う中小企業政策という構成と符合します)。企業経営理論は後半4/5だけが58.5%と落ち込み、最後の1/5で81.1%に戻ります。経済学・経済政策は前半2/5の48.6%が全体の谷でした。逆に財務・会計と経営情報システムは、どの位置でもほぼ変わりません。
読むときの注意。1マスあたりの解答数は数百件(少ない科目では400件台)で、数ポイントの差は誤差の範囲です。上で挙げた大きな振れだけを読んでください。また、これは19年分をならした傾向であって、「毎年この位置が難しい」という意味ではありません。時間配分を位置で決め打ちする根拠には使わず、「後ろにも得点が残っている科目がある=時間切れで最後まで塗れないのがいちばんもったいない」という一般則として受け取るのが安全です。
実用的な結論:まとまった演習を躊躇しなくていい
- 1「疲れるから小分けに」と演習量を絞る必要はない。データ上、50問連続でも正答率は落ちていない。
- 2演習の最初の数問は肩慣らしと割り切る。序盤の手応えのなさは実力低下ではない。
- 3本試験では、後半・終盤にも得点が残っている科目がある(中小企業経営・政策、企業経営理論)。最後まで到達する時間配分を優先する。
- 4ただしこれはWeb演習での話。本番の時間制約と緊張下の消耗は別物なので、模試や年度別演習で「90分を通す」練習は別途しておく。
まとめて解く枠を、今週の予定に入れる
疲労で正答率は落ちないので、演習を小分けにする必要はありません。50問続けて解く枠を作り、最初の5問は肩慣らしと決めます。
- 150問続けて解く枠を今週に1つ置く。31問以上続いた回でも序盤67.2%・終盤66.8%で差はない。
- 2最初の5問は肩慣らしと割り切る。1〜5問目の64.0%は全体平均66.4%より低く、実力低下ではない。
- 3中小企業経営・政策は終盤ほど易しく、最後の5分の1で82.4%。最後まで到達する速さを優先して練習する。
疲労カーブの測り方と統計手法
ここから先は、数字の作り方を厳密に知りたい方向けです。結論は上までで完結しているので、読み飛ばして構いません。
- 当サイト利用者の解答記録 約3万件(匿名集計・模試モード除外)を、連続演習のまとまりごとに区切って集計しています。
- 割合のブレ幅(信頼区間)と差の検定を確認した上で、「差がない」と言い切れるものだけを断定して書いています。
- 疲れたら自分で休憩する、という自然な行動が織り込まれたデータです。「休憩なしで何時間でも大丈夫」という主張ではありません。
- 集計の詳細な手順は非公開としています。
この記事のまとめ
- 疲労で正答率が落ちる「崖」は見つかりませんでした。50問を超えても1問目とほぼ同じ精度です。
- 落ちるのは終盤ではなく序盤。最初の5問がいちばん低く出ました。
- 本試験の出題位置別に見ると、難所の場所は科目でまるで違います。中小企業経営・政策は終盤ほど易しく、経済学・経済政策は前半に谷がありました。
- まとまった量の演習をためらう必要はありません。小分けにすべき根拠はデータ上ありませんでした。
よくある質問
- 演習は小分けにしたほうがいいですか?
- データ上その必要はありません。3万件の解答記録では、50問を超えても1問目とほぼ同じ正答率でした。疲労で正答率が落ちる「崖」は見つかりませんでした。
- 解き始めの手応えが悪いのはなぜですか?
- 最初の5問がいちばん正答率が低いためです。肩慣らしと思って、出だしの感触で自分の実力を判断しないでください。
- 本試験では、難しい問題は前半と後半のどちらに置かれていますか?
- 科目によって違います。実測では、中小企業経営・政策は後ろに行くほど易しく(終盤82.4%)、企業経営理論は後半4/5が58.5%と落ち込み、経済学・経済政策は前半2/5の48.6%が谷でした。財務・会計と経営情報システムはどの位置でもほぼ変わりません。ただし19年分をならした傾向なので、時間配分を位置で決め打ちする根拠には使わないでください。

